経済産業省
平成19・02・07中庁第1号
平成19年2月19日
国税庁課税部長 岡本 佳郎 殿
中小企業庁事業環境部長 近藤 賢二
平成18年5月に施行された会社法(平成17年法律第86号をいう。以下同じ。)により多種多様な種類株式の発行が認められるようになりました。この会社法の下で活用幅が広がった種類株式は、中小企業の事業承継においてもその活用が期待されております。
しかしながら、種類株式の相続税法上の評価方法については、不明確であるとの指摘があります。そこで、中小企業の事業承継において活用が想定される典型的な種類株式について、その類型を特定するとともに、適用される評価方法を整理しました。つきましては、下記の類型の種類株式について、平成19年1月1日以降に相続等(相続、遺贈又は贈与をいう。以下同じ。)
により同族株主 (いわゆる原則的評価方式が適用される同族株主等をいう。以下同じ。) が取得した場合には、その評価方法について下記の取扱いを認めていただきたく、照会します。
なお、下記の類型の種類株式は、現時点で中小企業の事業承継目的での活用が期待されているものであり、今後、取引相場のない株式に係る原則的評価方式や下記の評価方法の単純な組合せによっては適正な時価が得られないと考えられる種類株式の活用が期待されることとなった場合には、その評価方法についても明確にすべく御検討いただけるものと理解していることを申し添えます。
記
事業承継目的での活用が期待される種類株式としては、次の3類型を想定している。
第一類型 配当優先の無議決権株式
第二類型 社債類似株式
第三類型 拒否権付株式
(1) 配当優先の株式の評価
同族株主が相続等により取得した配当(資本金等の額の減少に伴うものを除く。以下同じ。)優先の株式の価額については次により評価する。
イ 類似業種比準方式により評価する場合
財産評価基本通達183(評価会社の1株当たりの配当金額等の計算)の(1)に定める「1株当たりの配当金額」については、株式の種類ごとに計算して評価する。
ロ 純資産価額方式により評価する場合
配当優先の有無にかかわらず、財産評価基本通達185(純資産価額)の定めにより評価する。
(2) 無議決権株式の評価
無議決権株式については、原則として、議決権の有無を考慮せずに評価することとなるが、議決権の有無によって株式の価値に差が生じるのではないかという考え方もあることを考慮し、同族株主が無議決権株式(次の3に掲げる社債類似株式を除く。)を相続又は遺贈により取得した場合には、次のすべての条件を満たす場合に限り、上記(1)又は原則的評価方式により評価した価額から、その価額に5パーセントを乗じて計算した金額を控除した金額により評価するとともに、当該控除した金額を当該相続又は遺贈により同族株主が取得した当該会社の議決権のある株式の価額に加算して申告することを選択することができることとする(以下、この方式による計算を「調整計算」という。)。
なお、この場合の具体的な計算は次の算式のとおりとなる。
【条件】
イ 当該会社の株式について、相続税の法定申告期限までに、遺産分割協議が確定していること。
ロ 当該相続又は遺贈により、当該会社の株式を取得したすべての同族株主から、相続税の法定申告期限までに、当該相続又は遺贈により同族株主が取得した無議決権株式の価額について、調整計算前のその株式の評価額からその価額に5パーセントを乗じて計算した金額を控除した金額により評価するとともに、当該控除した金額を当該相続又は遺贈により同族株主が取得した当該会社の議決権のある株式の価額に加算して申告することについての届出書(別添(PDFファイル/58KB))が所轄税務署長に提出されていること。
(注) 無議決権株式を相続又は遺贈により取得した同族株主間及び議決権のある株式を相続又は遺贈により取得した同族株主間では、それぞれの株式の1株当たりの評価額は同一となる。
ハ 当該相続税の申告に当たり、「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」に、次の算式に基づく無議決権株式及び議決権のある株式の評価額の算定根拠を適宜の様式に記載し、添付していること。
【算式】
次の条件を満たす株式(社債類似株式)については、その経済的実質が社債に類似していると認められることから、財産評価基本通達197−2(利付公社債の評価)の(3)に準じて、発行価額により評価するが、株式であることから、既経過利息に相当する配当金の加算は行わない。
なお、社債類似株式を発行している会社の社債類似株式以外の株式の評価に当たっては、社債類似株式を社債として計算する。
【条件】
イ 配当金については優先して分配する。
また、ある事業年度の配当金が優先配当金に達しないときは、その不足額は翌事業年度以降に累積することとするが、優先配当金を超えて配当しない。
ロ 残余財産の分配については、発行価額を超えて分配は行わない。
ハ 一定期日において、発行会社は本件株式の全部を発行価額で償還する。
ニ 議決権を有しない。
ホ 他の株式を対価とする取得請求権を有しない。
拒否権付株式(会社法第108条第1項第8号に掲げる株式)については、拒否権を考慮せずに評価する。
以上
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