(別紙)
令和5年3月16日

国税庁 課税部
審理室長 木村 正之 殿

金融庁 総合政策局 総合政策課長
高田 英樹

1 事前照会の趣旨

(1) 職場つみたてNISAの概要

職場つみたてNISAとは、職場という身近な場を通じて、NISA(少額投資非課税制度)を利用した資産形成ができるように事業主等(※1)が利用者を支援する、福利厚生の増進を図ることを目的とした制度です。
 職場つみたてNISAの利用者は、事業主等が契約したNISA取扱業者(※2)が選定する金融商品(以下「対象金融商品」といいます。)の中から投資の対象とするものを選択して投資することになります。
 なお、本照会では、職場つみたてNISAの利用者を従業員とする場合を前提とします。

※1 民間企業等、官公庁等又はその他の事業体をいい、個人事業主を含みます。

※2 NISA推進・連絡協議会に参加する業界団体等に属する金融商品取引業者等をいいます。

(2) 奨励金の給付及びNISA口座への振込等について

事業主等は、職場つみたてNISAを利用する従業員に対し福利厚生の一環として奨励金(職場つみたてNISAによる対象金融商品への投資に際し、事業主等が従業員に給付する金銭をいいます。以下「本件奨励金」といいます。)を給付する場合があり、その場合、事業主等は、従業員に対して支給する給与の額からNISAの積立金相当額(対象金融商品の中から従業員が選択した金融商品について、当該従業員が定めた毎月の積立金額)を天引きするとともに、当該積立金相当額に本件奨励金を加えた金額を従業員のNISA口座に振り込む方法(以下「給与天引き方式」といいます。)により本件奨励金を給付します。
 また、上記のような給与天引き方式以外の方法として、事業主等は、従業員の給与と本件奨励金とを合算して当該従業員に支払い、従業員各自の預貯金口座等からNISAの積立金相当額に本件奨励金を加えた金額が従業員のNISA口座へ振り替えられる方法(以下「口座振替方式」といいます。)もあります。

イメージ図(給与天引き方式による拠出の場合)

(3) 照会関係

事業主等は、本件奨励金を給付した場合、会計上、福利厚生費など給与等以外の科目で費用計上している場合があります。
 このように給与等以外の費用として経理されている場合であっても事業主等が従業員に給付する本件奨励金は、租税特別措置法第10条の5の4又は第42条の12の5に規定する給与等の支給額が増加した場合の所得税額又は法人税額の特別控除(以下「賃上げ促進税制」といいます。)の対象となる「給与等」に該当すると考えてよろしいでしょうか。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

  1. (1) 職場つみたてNISAを導入する事業主等は、NISA取扱業者と職場つみたてNISAに関する契約を締結し、従業員は、NISA取扱業者にNISA口座を開設し、上場株式・投資信託等の有価証券に投資します。
  2. (2) 事業主等は、複数のNISA取扱業者と職場つみたてNISAに係る契約を締結することによって、従業員に多様な選択肢を提供することができます。
  3. (3) NISA取扱業者は、関係法令及び日本証券業協会を含む関係金融団体等で構成されるNISA推進・連絡協議会が定めた「職場つみたてNISAに関するガイドライン」を遵守することとされています。
  4. (4) 職場つみたてNISAを導入する事業主等は、上記(3)のガイドラインに基づき規約を整備します。
  5. (5) 事業主等が口座振替方式を採用する場合、事業主等は従業員の職場つみたてNISAの利用実績を確認する必要があります。
  6. (6) 本件奨励金は所得税法第28条第1項に規定する「給与等」に該当するところ、事業主等は、本件奨励金と従業員の他の給与等を合算し、給与所得の対象として源泉徴収しますが、会計上、給与等以外の科目で費用計上する場合もあります。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 法令の規定等

イ 賃上げ促進税制の概要

賃上げ促進税制は、一定の要件を満たす個人又は法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、その個人又は法人の継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が一定割合以上であること等を要件として、控除対象雇用者給与等支給増加額の一定割合を所得税額又は法人税額から控除する制度です(措法10の5の4、42の12の5)。

ロ 賃上げ促進税制の対象となる「給与等」の範囲

賃上げ促進税制の対象となる「給与等」とは所得税法第28条第1項に規定する給与等をいうとされ(措法10の5の43二、42の12の53三)、同項に規定する給与等とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与をいうとされています。

(2) 当てはめ

本件奨励金は、給与天引き方式又は口座振替方式のいずれの方式によるものであっても所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するところ、賃上げ促進税制においては、「給与等」について、会計上どのような科目で費用計上するかは特に限定されていませんので、事業主等が本件奨励金を給与等以外の費用である「福利厚生費」として費用計上していたとしても、本件奨励金は、賃上げ促進税制の対象となる「給与等」に該当すると考えます。