(別紙)
令和2年6月24日
国税庁課税部審理室長
北村 厚 殿
標記について、以下のとおり解して差し支えないか、ご照会申し上げます。
照会内容
鉱山開発事業を行う際に実施する、環境社会影響評価(いわゆる環境アセスメント)は、かつては開発段階にて実施が義務付けられるものでしたが、近年では、初期探鉱の段階から環境や社会に対する影響に配慮した事業活動が世界各国において要求される傾向にあります。要求される事業活動の詳細は国や地域によって異なりますが、探鉱活動の実施に際し環境社会影響評価の実施を義務付ける法制化が各国で進んでおり、実務上、環境社会影響評価の実施が探鉱活動の一部として必須となっています。
ところで、租税特別措置法に規定する鉱業所得の課税の特例制度(以下「本制度」といいます。)では、昭和40年4月1日から令和4年3月31日までの期間内の日を含む各事業年度において、鉱物に係る新鉱床探鉱費の支出に備えるため、積立限度額以下の金額を損金経理の方法により探鉱準備金又は海外探鉱準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額を、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できるとされています。また、探鉱準備金又は海外探鉱準備金を有する法人が新鉱床探鉱費の支出を行った場合など一定の要件に該当する場合には、特別控除を受けることができるとされています(措置法58、59、68の61、68の62)。
本制度の対象となる新鉱床探鉱費とは、探鉱のために要する費用で、 探鉱のための地質の調査、
地震探鉱、重力探鉱その他これらに類する探鉱、
探鉱のためのボーリング及び
鉱量が推定されていない鉱床につき鉱量を推定するための坑道の掘削(当該推定に必要な範囲内のものに限ります。)(以下これら
~
を「調査等」といいます。)の費用とされており(措置法58
、68の61
、措置令34
、39の88
)、金属鉱業における範囲については、次により取り扱うこととされています(措置法通達58-12、68の61-13)。
ここで、近年の探鉱活動をとりまく環境の変化により、探鉱活動の実施に係る環境社会影響評価に要する費用として、具体的には、現地国の法令や慣習などにより探鉱活動の許認可要件とされるものや、その作業のために必要な土地への立ち入り等、機械設備等の設置、索道等の開設、鉱害の予防や従事者のための施設の設置に直接要するものが生じています。これらはいずれも調査等を実施するに当たり必要不可欠な費用と認められますが、上記(1)~(4)に掲げる費用には列挙されていないことから、本制度の対象となる新鉱床探鉱費の範囲に含まれないのではないか、という疑義が生じます。
この点、必要不可欠な費用の例として、鉱業法では、鉱物の探査を行おうとする者や、鉱業に関する測量等のため必要があり他人の土地に立ち入り等をしようとする者、鉱業権者や祖鉱権者がその作業のために必要な機械設備等の設置、索道等の開設、鉱害の予防や従事者のための施設の設置を目的に他人の土地を使用するときは、経済産業大臣へ申請し、許可を受けなければならないとされており(鉱業法100の2、101、104、106)、これらの申請や施設等の設置に要する費用は調査等の実施に必須となることから、上記(1)~(4)に掲げる費用の「附帯費用」に当たるものと考えられます。
このことを踏まえると、環境社会影響調査に要する費用として下記に例示する費用について、上記(1)~(4)に掲げる費用の「附帯費用」として適切なものは、本制度の対象となる新鉱床探鉱費の範囲に含まれるとして差し支えないと考えられます。
ただし、環境社会影響評価に要する費用のうち、例えば、現地住民等との関係を調整するための負担金等(寄附金や交際費に該当する金額を含みます。)などは、調査等と直接関係がないため、本制度の対象となる新鉱床探鉱費の範囲には含まれないと考えられます。
記
以上