別紙

平成27年3月24日

国税庁 課税部
審理室長 山寺 尚雄 殿

中小企業庁事業環境部
金融課長 菊川 人吾

T 照会の趣旨

中小企業再生支援全国本部(以下「全国本部」といいます。)は、47都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会(以下「協議会」といいます。)の活動を支援する機関として、平成19年6月に独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」といいます。)内の一部署として設置されました。全国本部では、各地の協議会の能力向上に対するサポート、外部専門家の派遣及び協議会の手続マニュアルの作成等を主な業務としており、これにより各地の協議会の機能強化に取り組んでまいりました。

今般、平成26年1月20日に施行された産業競争力強化法により、全国本部においても、過剰債務、過剰設備等により財務内容の悪化、生産性の低下等が生じ、本業の経営に支障が生じている中小企業者を対象に、再生計画の策定及び実行に係る支援等を行うことになったことから、中小企業庁としては、これまで中小企業者の債務免除等を含む再生計画の策定及び実行に係る支援等(以下「支援」といいます。)を協議会が行う場合に利用していた「中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)」(以下「旧策定手順」といいます。)の内容に、全国本部が支援を行う場合の手順を追加するとともに、名称を「中小企業再生支援スキーム」(以下「本スキーム」といいます。)に変更し、平成27年3月23日に公表したところです。

つきましては、全国本部の支援により本スキームに従って策定された再生計画に基づき債務者が2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等から債務免除等を受ける場合における税務上の取扱いについて、Vの「照会の内容」の1から3までに掲げる見解のとおりで差し支えないか、ご照会申し上げます。

なお、協議会の支援により旧策定手順に従って策定された再生計画に基づき債務免除等を受けた場合の税務上の取扱いについては、平成17年6月30日付文書回答「『中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)』に従って策定された再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて」により、Vの「照会の内容」の1から3までに掲げる見解と同様の照会を行い、国税庁から当該見解のとおりで差し支えない旨の文書回答をいただいております。

(注) 本件照会における債務免除等とは、債務の免除又は債権のその債務者に対する現物出資による移転(当該債務者においてその債務の消滅に係る利益の額が生ずることが見込まれる場合の当該現物出資による移転に限る。)をいいます。

U 全国本部が支援を行う場合の本スキームの特徴

全国本部は、複数の債権者が県域をまたがって存在しているなどの事情により、一地域の協議会による迅速な債権者間の調整が困難な案件などを対象として、債務者への支援を行うことを予定しています。

本スキームは、旧策定手順の内容に、全国本部が支援を行う場合の手順を追加し、名称を変更したものです。本スキームにおいて、全国本部が支援を行う場合の手順は協議会が支援を行う場合の手順と基本的に同一ですが、次のとおり若干異なる部分があります。

1 個別支援チームの編成

本スキームにおいて、全国本部が支援を行う場合、協議会が支援を行う場合と同様に、再生計画の策定支援を行うため、統括責任者や統括責任者補佐のほか、中小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家等から構成される「個別支援チーム」が編成されます(本スキーム2.(4))。また、個別支援チームの専門家は債務者及び対象債権者(再生計画が成立した場合に権利を変更されることが予定されている債権者をいいます。以下同じです。)との間に利害関係を有しないなど中立性に配慮して選定されます(本スキーム2.(5))。

なお、本スキームにおいて、協議会が支援を行う場合にあっては、協議会の統括責任者が個別チームを編成することとなっていますが、全国本部が支援を行う場合にあっては、全国本部の統括責任者が個別支援チームを編成することとなっています(本スキーム2.(4))。

2 再生計画検討委員会の設置

本スキームにおいて、全国本部が支援を行う場合、協議会が支援を行う場合と同様に、資産負債や損益の状況及び再生計画案の正確性、相当性、実行可能性などを調査検証するために、対象債権者から構成された債権者会議の要請に基づき再生計画検討委員会(以下「検討委員会」といいます。)が設置されます。検討委員会は、対象債権者と全国本部の承諾を得た上で機構により委嘱された公認会計士及び弁護士を含む3名以上(債務者の借入金その他の債務で利子の支払の基因となるものの額が10億円に満たない場合には、2名以上)の委員をもって構成され、この委員は債務者及び対象債権者との間に利害関係を有しない者であり、債務処理に関する専門的な知識と経験を有する者です(本スキーム7.(2)12)。また、委員は、各人が独立して公正かつ公平な立場で調査・報告及び確認を行い、当該調査等に関する決議は、委員の全会一致により決することが定められています(本スキーム7.(2)、(3))。

なお、本スキームにおいて、協議会が支援を行う場合にあっては、検討委員会は全国本部の下部組織として設置されますが、全国本部が支援を行う場合にあっては、検討委員会は機構の下部組織として、全国本部とは独立して設置されます(本スキーム7.(1))。

更に、再生計画案の策定の支援を行う個別支援チームと再生計画案の確認等を行う検討委員会はそれぞれ独立して作業を実施することになっており、全国本部が本スキームに従って支援を行う場合においても、検討委員会の独立性は担保されています。

V 照会の内容

<債務者に係る税務上の取扱い>

1 資産の評価益又は評価損の益金算入又は損金算入(法人税法253、334

(1) 制度の概要

民事再生法の規定による再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じた場合において、法人がその有する資産の価額につき、法人税法施行令第24条の2第3項第2号又は第68条の2第2項第2号に規定する資産評定を行っているときは、その資産(一定の資産を除く。)の評価益の額又は評価損の額は、その事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています(法人税法253、334)。

この場合の「再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実」とは、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実で、その債務処理に関する計画が法人税法施行令第24条の2第1項《再生計画認可の決定に準ずる事実等》第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件に該当するものに限るとされています。

(2) 照会者の見解

本スキームに従って全国本部が再生計画の策定支援を行い、対象債権者の全員の同意により再生計画が成立した場合には、当該再生計画は、法人税法施行令第24条の2第1項第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件を満たすものと考えられますので、当該再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」に該当すると考えます。

また、当該再生計画において、債務者の有する資産の価額につき、所定の資産評定が行われることから、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益の額又は評価損の額)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》又は第33条第4項《資産の評価損の損金不算入等》により益金の額又は損金の額に算入することとなります。

2 再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実がある場合の欠損金の損金算入(法人税法592

(1) 制度の概要

上記1(1)の「再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実」がある場合において、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受ける場合には、同法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等(注)に優先して同項の損金算入額を計算することとなります。

(注) 青色欠損金等とは、法人税法第57条第1項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定及び第58条第1項《青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し》の規定の適用対象となる欠損金額をいいます。

(2) 照会者の見解

上記1(2)のとおり、本件照会の場合には、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けることとなると考えられますので、同法第59条第2項の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して同項の損金算入額を計算することとなります。

<債権者に係る税務上の取扱い>

3 法人税基本通達9−4−2の適用

(1) 制度の概要(法人税基本通達9−4−2)

法人がその子会社等の再建に際し、その子会社等に対して経済的利益の供与をした場合において、その経済的利益の供与が合理的な再建計画に基づくものであると認められるときは、その経済的利益の供与額は、寄附金の額に該当しないこととされています。すなわち、合理的な再建計画に基づく経済的利益の供与による損失であれば、税務上損金の額に算入されることとなります。

(2) 照会者の見解

本スキームに従って全国本部が支援して策定された再生計画により、対象債権者が債権放棄等を行う場合は、原則として、法人税基本通達9−4−2にいう「合理的な再建計画」に基づく経済的利益の供与であり、その債権放棄等による損失は、対象債権者において、税務上損金の額に算入できると考えます。

W 理由(照会者の求める見解となる理由)

<債務者に係る税務上の取扱い>

1 資産の評価益又は評価損の益金算入又は損金算入

本スキームに従って全国本部が再生計画の策定支援を行い、対象債権者の全員の同意により再生計画が成立した場合には、次の(1)から(3)のとおり、法人税法施行令第24条の2第1項に規定する「内国法人について再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」が生じており、その再生計画は所定の要件(同項第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件)を満たすものであり、かつ、同条第3項第2号に規定する一定の資産評定を行うこととされていることから、法人税法第25条第3項に規定する資産の評価益の計上要件を満たしているものと考えます。

また、再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じた場合の資産の評価損の計上要件は、資産の評価益の計上要件と同一であることから、本件照会の場合は、法人税法第33条第4項に規定する資産の評価損の計上要件も満たしていると考えます。

(1) 民事再生法の規定による再生計画認可の決定に準ずる事実に該当すること

本スキームに従って全国本部が支援して策定された再生計画は、次の過程を経て成立します。

まず、債務者及び全国本部が、債務者が全国本部の支援の下、再生計画を策定することについて、主要債権者(債務者に対する債権額が上位のシェアを占める金融機関をいいます。以下同じです。)に協力を要請し、その意向を確認します。その際、主要債権者から全国本部の支援の下、再生計画を策定することについて同意が得られた場合には、全国本部の統括責任者は全国本部が再生計画の策定を支援することを決定します(本スキーム2.)。

次に、債務者が全国本部(個別支援チーム)の支援を受けて再生計画案を策定し(本スキーム3.)、その後、主要債権者と全国本部の統括責任者が再生計画案に対する対象債権者の同意見込み及び再生計画案の実行可能性について検討し、相当であると判断した場合には、私的整理の手続が開始されます(本スキーム4.)。

債務者である企業の資産負債等の状況や再生計画案の内容等については、まず検討委員会の委員が調査、検討を行い(本スキーム7.)、第2回債権者会議に先立って、再生計画案全般の正確性、相当性及び実行可能性などを記載した調査結果を対象債権者に書面にて報告します。また、第2回債権者会議ではその報告を受け、再生計画案に係る意見交換を行い、対象債権者全員の同意により再生計画が成立します(本スキーム8.)。

このように本スキームに従って全国本部が支援して策定された再生計画は、債務者等による手続開始の申立てに始まり、債権者集会、再生計画の合意など民事再生法の規定による再生計画策定の一連の手続に準じて成立するものであることから、民事再生法の規定による再生計画認可の決定に準ずる事実に該当するものと考えます。

(2) 再生計画が所定の要件に該当すること
法人税法施行令第24条の2第1項括弧書では、「その債務処理に関する計画が第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件に該当するものに限る。」と規定されており、全国本部が関与して策定される再生計画は、次のとおり、各要件を満たすものと考えます。
イ 法人税法施行令第24条の2第1項第1号の要件に該当すること
同号の要件は、1再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること、2当該準則が公正かつ適正なものと認められるものであること、3当該準則が特定の者(政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構及び協定銀行を除く。)が専ら利用するためのものでないこと及び4当該準則に次の(@)から(B)に掲げる事項が定められていること((@)公正な価額による債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)に関する事項、(A)再生計画が準則に従って策定されたものであること並びに同項第2号(以下ロ)及び第3号(以下 ハ)の要件に該当することにつき確認をする手続に関する事項、(B)上記(A)の確認を税務上の要件を満たす者が行うことに関する事項)であり、これらの要件を満たすことについては次のとおりです。
1 再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること

本スキームは、全国本部の支援の下、再生計画の策定が適正かつ円滑に行われるよう、債務処理を行うための手続を行うための準則として、中小企業庁が旧策定手順を改訂し、平成27年3月23日に同庁のホームページで一般に公表したものであることから、「一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則」に該当すると考えます。

また、全国本部が債務免除等を含む再生計画の策定を支援する場合は、当該再生計画は本スキームに従って策定されますので、この要件を満たすと考えます。

2 当該準則が公正かつ適正なものと認められるものであること

本スキームは、当該スキームに従って策定された再生計画案が債務者の自助努力が十分に反映されたものであるとともに、当該計画案における権利関係の調整が債権者間で平等であることを旨とし(本スキーム6.(1)、(6))、債務者及び対象債権者との間に利害関係を有さず、かつ、債務処理に関する専門的な知識と経験を有する検討委員会の委員が、公正かつ公平な立場で再生計画案の正確性、相当性などについて調査・報告を行った上(本スキーム7. (2)、(3))、対象債権者全員が再生計画について同意した場合に成立する(本スキーム8.(4))ことを定めていることから、この要件を満たすと考えます。

3 当該準則が特定の者(政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構及び協定銀行を除く。)が専ら利用するためのものでないこと

本スキームは、複数の金融機関等が対象債権者として関わることを前提にするものであり、この要件を満たすと考えます。

4 当該準則に次の(@)から(B)に掲げる事項が定められていること
@) 公正な価額による債務者の有する資産及び負債の価額の評定に関する事項

本スキーム6.(1)には、債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下「資産評定」といいます。)は、公正な価額により行うと定められていることから、この要件を満たすと考えます。

なお、この「公正な価額」については、本スキーム7.(3)に別紙として「実態貸借対照表作成に当たっての評価基準」(以下「評価基準」といいます。)を定めているとともに、この「評価基準」により作成される実態貸借対照表を含むその再生計画は複数の金融機関等が関わることを前提として対象債権者全員の同意により成立すること(本スキーム8.(4))及び「評価基準」に基づいた資産評定が行われていることを第三者である検討委員会の委員が確認すること(本スキーム7.(4))を定めていることからすれば、「公正な価額」となるべきことを担保するための定めもあると解されます。

A) 再生計画が準則に従って策定されたものであること並びに以下ロ及びハに該当することにつき確認をする手続に関する事項

本スキーム7.(4)において、再生計画案が本スキームに従って策定されたものであること並びに以下のロ及びハに掲げる要件に該当することにつき確認をする手続を定めていることから、この要件を満たすと考えます。

B) 上記(A)の確認を税務上の要件を満たす者が行うことに関する事項

本スキーム7.において、検討委員会の委員が上記(A)の確認を行うことが定められており、また、検討委員会は債務者及び対象債権者との間に利害関係を有さず、かつ、債務処理に関する専門的な知識経験を有する3名以上(一定の場合は2名以上)の委員で構成されることとされており、法人税法施行規則第8条の6第1項第1号の規定に適合することから、この要件を満たすと考えます。

ロ 法人税法施行令第24条の2第1項第2号の要件に該当すること

同号では、再生計画において、債務者の有する資産及び負債について準則に定められた公正な価額による資産評定に関する事項に従って資産評定が行われ、それを基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていることが求められています。

本スキームでは、再生計画案において、本スキームに定められた「評価基準」に従って債務者の有する資産及び負債の資産評定が行われ、それを基礎とした当該債務者の実態貸借対照表を作成することを予定しており、これらにつき、検討委員会の委員が確認をすることが定められていることから(本スキーム6.(1)、7.(4)2)、この要件を満たすと考えます。

ハ 法人税法施行令第24条の2第1項第3号の要件に該当すること

同号では、上記ロの貸借対照表における資産及び負債の価額、再生計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務免除等をする金額が定められていることが求められています。

本スキームでは、再生計画案には、公正な価額による資産評定に基づいた実態貸借対照表、財務状況の今後の見通し、債務免除額の算出根拠などを含むものとされ(本スキーム6.(1))、かつ、債務免除額が上記ロの実態貸借対照表や再生計画における損益の見込み等に基づいて決定されていることにつき、検討委員会の委員が確認をすることが定められていることから(本スキーム7.(4)4)、この要件を満たすと考えます。

ニ 法人税法施行令第24条の2第1項第4号又は第5号の要件に該当すること

同号では、再生計画において、2以上の金融機関等又は政府関係金融機関、株式会社地域経済活性化支援機構若しくは協定銀行が債務免除等を行うことが求められています。

本照会は、2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等が債務免除等を行う再生計画を前提としていますので、この要件を満たすと考えます。

(3) 一定の資産評定(法人税法施行令第24条の2第3項第2号)を行っていること

再生計画の策定において、上記(2)イ4@)及びロのとおり、公正な価額による旨の定めのある債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)に関する事項が定められた本スキームに基づき資産評定が行われていることから、この要件を満たすと考えます。

2 再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実がある場合の欠損金の損金算入

上記1のとおり、再生計画により債務者が債務免除等を受けた場合は、法人税法施行令第24条の2第1項に規定する再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実に該当すると考えており、本件照会の場合には、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定による評価益又は評価損の益金算入又は損金算入が認められると考えます。

また、上記1の適用を受ける場合は、法人税法第59条第2項の規定の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して同項の損金算入額を計算することができると考えます。

<債権者に係る税務上の取扱い>

3 法人税基本通達9−4−2の適用

本件照会の場合に対象債権者が行う債権放棄等は、次のとおり、損失負担の必要性があり、かつ、合理的な再生計画に基づき行われるものと認識しています。したがって、本スキームに従って全国本部が支援して策定された再生計画により対象債権者が行う債権放棄等は、原則として、法人税基本通達9−4−2にいう「合理的な再建計画」に基づく経済的利益の供与であり、その債権放棄等による損失は、税務上損金の額に算入することができると考えます。

(1) 損失負担の必要性
イ 債務者は事業関連性のある「子会社等」に該当するか
再生計画に基づき経済的利益の供与を行う者は、本スキーム柱書後段に規定される対象債権者(再生計画が成立した場合に権利を変更されることが予定されている債権者)であり、再生計画に記載された金融支援策を実行することを同意した者であることから(本スキーム8.(4))、債務者とは資金関係において事業関連性を有しております。したがって、対象債権者にとって債務者は、「子会社等」に該当します。
ロ 子会社等は経営危機に陥っているか
再生計画に基づき経済的利益の供与を受ける債務者は、「過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており、自力による再生が困難であること。」を要件としています(本スキーム1.(1))。したがって、債務者は、債権放棄等の金融支援を受けることなく自力での経営の再建が困難な状況にありますので経営危機に陥っていると考えます。
ハ 債権放棄等を行う者にとって損失負担を行う相当な理由はあるか
本スキーム1.(4)において、対象債権者となり得る事業者の要件として「法的整理の手続きによるよりも多い回収を得られる見込みがあるなど、債権者にとっても経済合理性があること。」が定められており、少なくとも債務者が清算した場合の回収額以上の回収が見込まれるときに経済的利益の供与が行われることが前提とされていますので、経済的利益の供与を行う者にとっても経済合理性のあるものであり、損失負担を行う相当な理由があると考えます。
(2) 再生計画の合理性
イ 損失負担額(支援額)の合理性

本スキームに基づき全国本部が支援して策定された再生計画案は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね5年以内を目処に実質的な債務超過を解消する内容とするなど一定の基準を満たす必要があり、その内容も債務者自身が再建のための自助努力をすることを前提としています。また、その再生計画案における損失負担額は、公正な価額により評定された資産及び負債、再生計画案における損益の見込み等に基づき、財務状況を適切に把握した上で決定されます(本スキーム6.)。

更に、再生計画案は、金融支援額の合理性に関して検討委員会の委員による調査報告を受けるとともに(本スキーム7.)、最終的には利害の対立する複数の債権者(対象債権者全員)の合意により成立すると定められていることから(本スキーム8.)、損失負担額の合理性は担保されていると考えます。

ロ 再建管理の有無

本スキームにおいて、対象債権者及び全国本部は、再生計画の成立後、定期的に開催される債権者会議などにおいて、債務者より再生計画の実施状況の報告を受けることとなっております。

また、債務者及び対象債権者は、債務者が対象債権者に対する債務弁済計画を履行できないときは、再生計画の見直し又は法的倒産処理手続開始の申立てについて協議を行い、適切な措置を講じるものとしていることから(本スキーム8.⑺)、再建管理は適切に行われると考えます。

更に、再生計画案に再建管理に関する内容が含まれていることについては、検討委員会の委員が確認することとなっております(本スキーム7.)。

ハ 支援者の範囲の相当性

本スキームにおいて、支援者となる対象債権者は、再生計画が成立した場合に権利が変更されることが予定されており、事業の再生のために協力を求める必要があると認められる者と定められていることから(本スキーム柱書)、支援者の範囲の相当性があると考えます。

更に、再生計画案は、支援者の範囲の相当性に関して検討委員会の委員による調査報告を受けるとともに(本スキーム7.)、最終的には利害の対立する複数の債権者(対象債権者全員)の合意により成立すると定められていることから(本スキーム8.)、支援者の範囲の相当性は担保されていると考えます。

ニ 負担割合(支援割合)の合理性

再生計画案における権利関係の調整は、対象債権者間で平等であることを旨とし、当該対象債権者間の負担割合については、債務者に対する関与度合、取引状況等を考慮し、実質的に衡平性が確保されなくてはならない旨定められていることから(本スキーム6.(6))、対象債権者の負担割合(支援割合)は合理性があると考えます。

更に、再生計画案は、支援割合の合理性に関して検討委員会の委員による調査報告を受けるとともに(本スキーム7.)、最終的には利害の対立する複数の債権者(対象債権者全員)の合意により成立すると定められていることから(本スキーム8.)、支援割合の合理性は担保されていると考えます。