別紙1

平成26年6月23日

 国税庁 課税部 審理室長
 岸 英彦 殿

株式会社地域経済活性化支援機構
代表取締役社長 瀬谷 俊雄

 株式会社地域経済活性化支援機構(以下「機構」といいます。)は、株式会社地域経済活性化支援機構法(平成21年6月26日法律第63号。以下「機構法」といいます。)に基づき、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中小企業者等の事業再生の支援及び地域経済の活性化に資する資金供給を行う投資事業有限責任組合の無限責任社員としてその業務を執行する株式会社の経営管理その他の業務を通じた地域経済の活性化に資する事業活動の支援を行うことを目的とする法人です。
 今回、平成26年度税制改正で、機構が関与する事業再生に関し税制上の措置が拡充されたことに伴い、機構が策定する「地域経済活性化支援機構の実務運用標準」(以下「実務運用標準」といいます。)の改定を行い公表したところです。

1 前回照会について

 機構の関与の下、改定前の「実務運用標準」(以下「旧実務運用標準」といいます。)に従い、地域経済活性化支援委員会(以下「委員会」といいます。)が再生支援決定を行った事業再生計画により債権放棄等が行われた場合(機構が関係金融機関等に対し、機構法第26条第1項第1号に掲げる申込みをする旨の回答をするように求める方法又は当該申込み若しくは同項第2号に掲げる同意のいずれかをする旨の回答をするように求める方法のいずれかにより買取申込み等の求めを行う場合に限ります。)の債務者又は債権者における税務上の取扱い及び代表者等の個人から私財提供等が行われた場合の当該個人の所得税の取扱いについて、平成25年6月14日付で国税庁に照会を行い、同月25日付でそれぞれ次に掲げるとおり解して差し支えない旨の文書回答をいただいております。

(1) 支援対象者の税務上の取扱い

イ 資産の評価益又は評価損の益金算入又は損金算入(法人税法25、33)
 機構の関与の下、旧実務運用標準に従って事業再生計画が策定され、これが成立した場合においては、法人税法施行令第24条の2第1項各号《再生計画認可の決定に準ずる事実等》に掲げる要件を満たすことから、当該事業再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定に準ずる事実」に該当する。
 したがって、当該事業再生計画において債務者の有する資産につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》又は第33条第4項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用することができる。

ロ その他これに準ずる一定の事実がある場合の欠損金の損金算入(法人税法59)
 上記イにより、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受ける場合には、同法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》の規定の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金(注1)を青色欠損金等(注2)に優先して同項の損金算入額を計算することができる。

(注)
1 期限切れ欠損金とは、法人税法第59条第2項の規定の適用対象となる欠損金額をいう。
2 青色欠損金等とは、法人税法第57条第1項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定及び第58条第1項《青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し》の規定の適用対象となる欠損金額をいう。

(2) 債権者の税務上の取扱い
 機構の関与の下、旧実務運用標準に従って支援対象者及び支援者となる者の合意により策定された事業再生計画については、法人税基本通達9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)にいう合理的な再建計画に該当する。

(3) 支援対象者の代表者等に係る税務上の取扱い
 上記(1)及び(2)において、機構が関与して策定された合理的な事業再生計画に基づき債権放棄等が行われる際の支援対象者の代表者等に係る税務上の取扱いは、次のとおりとなる。

[保証債務の特例]
 合理的な事業再生計画が策定される際には、当該事業再生計画において支援対象者の代表者等の個人に私財提供を求めることがある。
 この場合、機構が関与して策定された合理的な事業再生計画に基づき、再生支援が行われることを前提とすれば、支援対象者の代表者等が保証債務の履行により取得した求償権を書面によって放棄した場合であっても、当該支援対象者が求償権の放棄を受けた後においてもなお債務超過の状況にあるときは、原則として求償権の行使は不能であり、代表者等の課税関係においては所得税法第64条第2項《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》の規定による保証債務の特例の適用がある。

[担保権の消滅等]
 合理的な事業再生計画に基づき、機構法上の金融機関等及び債権を買い取った機構が主たる債務者である当該支援対象者から残債務を回収できる見込みである場合には、原則として、担保権の消滅や個人保証の解除による代表者等に対する利益供与はないことから、所得税法第36条《収入金額》に規定する収入の実現はなく、原則として代表者等に所得税の課税関係は生じない。また、このように代表者等に対する利益供与がないことからすれば、原則として機構法上の金融機関等、債権を買い取った機構及び当該支援対象者において寄附金課税(法人税法37)の対象となることはない。

2 実務運用標準の改定内容

 本件照会に関するものは次のとおりです。

(1) 確認者の規定
 平成26年度税制改正により、機構が債権買取り等をせず、準則に従って策定した債務処理に関する計画に従って債権者間の調整等を行い、2以上の金融機関等により債務免除等が行われた場合についてもいわゆる企業再生税制(注)の適用対象とされ、その計画が準則に従っていることの確認をする者(以下「確認者」といいます。)についての規定が追加されました(法規8の6まる1二)。
 そのため、実務運用標準において、機構が再生支援につき債権買取り等をしない旨の決定を行う場合の確認者について、債務処理に関する3人(一定の場合には2人)の専門家を選任することなどを追加しました(新旧対照表14.参照)。

(注) 企業再生税制とは、再生計画認可の決定があったことその他これに準ずる一定の事実が生じた場合において、法人がその有する資産の価額につき所定の評定を行っているときは、その資産の評価益又は評価損を益金の額又は損金の額に算入することができ(法人税法第25条第3項又は第33条第4項)、これらの適用を受ける場合には期限切れ欠損金を損金算入できる措置(同法第59条第2項第3号)をいいます。

(2) 中小企業者等の事業再生に伴い特定の組合財産に係る債務免除等がある場合の評価損益等の特例(租税特別措置法第67条の5の2及び第68条の102の3)
 青色申告書を提出する中小企業者等(租税特別措置法第67条の5の2に規定する中小企業者又は同法第68条の102の3第1項に規定する中小連結親法人又は中小連結子法人をいいます。以下同じです。)について平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に、再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じ、かつ2以上の金融機関等が有するその中小企業者等に対する債権が債務処理に関する計画の定めるところにより特定の投資事業有限責任組合の財産となる場合において、その中小企業者等が、その有する資産の価額につき一定の評定を行い、又は債務処理に関する計画に従って債務の免除を受けたときは、その債務者である中小企業者等は、いわゆる企業再生税制を適用することができるとされています。今般、この投資事業有限責任組合の財産となる債権の債務者についての債務処理に関する計画を策定する場合に従うべき準則として、機構の定める実務運用標準(準則)が追加されました(平成25年内閣府・経済産業省告示第2号)。
 このことを踏まえ、実務運用標準において、本特例を適用する場合における確認手続等について定めました(新旧対照表14.(3)、15.(2))。

3 今回の照会事項

  上記2に記載のとおり、旧実務運用標準の一部が改定されましたが、改定した実務運用標準(以下「新実務運用標準」といいます。)に基づき策定された事業再生計画に従って債権放棄等が行われた場合においては、下記の4(1)のとおり、新実務運用標準における確認者は、法人税法施行規則第8条の6第1項第2号に掲げる者であることから、引き続き、上記1(1)から(3)までのとおりと解して差し支えないかご照会申し上げます。
 また、中小企業者等の事業再生に伴い特定の組合財産に係る債務免除等がある場合の評価損益等の特例において、下記の4(2)のとおり、機構の関与の下、新実務運用標準に従って、2以上の金融機関等の有するその中小企業者等に対する債権が特定の組合財産となることを定めた事業再生計画が策定され、これが成立した場合には、本特例の適用があるものと解して差し支えないかご照会申し上げます。

4 理由(照会者の求める見解となる理由)

(1) 準則における確認者の規定
 再生計画認可の決定があったことに準ずる事実による資産の評価益又は評価損の計上要件の1つとして、確認者が「一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則」に定められている必要があります。
 この確認者について、平成26年度税制改正前は、機構(一定の要件を満たす場合に限ります。)とされていましたが、平成26年度税制改正に伴い、法人税法施行規則第8条の6第1項が改正され、委員会が再生支援の決定を行うもののうち、まる1機構がその再生支援につき債権買取り等をする旨の決定を行う場合には機構が確認者とされ、まる2機構がその再生支援につき債権買取り等をしない旨の決定を行う場合には、その債務処理について利害関係を有しない者のうち債務処理に関する専門的な知識経験を有すると認められる者として選任された3人以上の者が確認者とされました(法規8の6まる1二)。なお、この3人以上という要件については、債務者企業の借入金その他債務で利子の支払の基因となるものの額が10億円に満たない場合には2人以上とされています(法規8の6まる1一、二)。
 この点、新実務運用標準14.において、委員会により再生支援決定が行われるとともに(新実務運用標準2(1))、再生支援を行う場合に事業再生計画が新実務運用標準に従って策定されたものであること等を確認する手続が定められており、その確認者は機構が債権買取り等をする旨の決定(機構法第28条)を行った場合には機構を確認者とし、機構が債権買取り等をしない旨の決定(機構法第31条)を行った場合には、その再生支援をするかどうかの決定の決議について特別の利害関係を有する委員及び監査役を除いた委員会の委員及び監査役の互選により選任された債務処理に関する専門的な知識と経験を有し、かつ、弁護士及び公認会計士を含む者3人(再生支援対象事業者の借入金その他の債務で利子の支払の基因となるものの額が10億円に満たない場合には2人。以下「専門家3人」といいます。)を確認者としています(新実務運用標準14.(1)(2))。
 したがって、この場合の機構又は専門家3人は法人税法施行規則第8条の6第1項第2号に掲げる者に該当します。

(2) 中小企業者等の事業再生に伴い特定の組合財産に係る債務免除等がある場合の評価損益等の特例(租税特別措置法第67条の5の2及び第68条の102の3)
 機構の関与の下、新実務運用標準に従って、2以上の金融機関等の有するその中小企業者等に対する債権が、租税特別措置法第67条の5の2第2項第3号に規定する特定投資事業有限責任組合契約に係る組合財産となることを定めた事業再生計画が策定され、これが成立した場合には、次のイのとおり、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実に該当し、この場合、次のロのとおり一定の資産評定が行われることになりますので、本特例の適用があるものと考えます。
 したがって、当該中小企業者等において、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定により益金の額又は損金の額に算入することとなります。また、この場合、同法第59条第2項の規定の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して同項の損金算入額を計算することとなります。

イ 再生計画認可の決定があったことに準ずる事実に該当すること
 本特例において、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実とは、法人税法施行令第24条第1項各号に掲げる要件に加え、以下の要件に該当する必要がありますが、次のとおり追加された各要件を満たすものと考えられます。

 (イ) 2以上の金融機関等の有するその中小企業者等に対する債権が組合財産となることが定められていること
 この要件では、再生債権を有する2以上の金融機関等のその再生債権が特定投資事業有限責任組合契約に係る組合財産となることが求められています(措令39の28の2まる1及び39の124の2まる1による読替後の法令24の2まる1三)。
 この点、新実務運用標準5.まる5において、租税特別措置法第67条の5の2又は第68条の102の3の適用を受ける場合には、再生債権を有する2以上の金融機関等の当該再生債権が特定投資事業有限責任組合契約に係る組合財産となることが定められており、この定めに従って事業再生計画が策定されることから、この要件を満たします。

 (ロ) いわゆる実態貸借対照表、損益の見込み等に基づいて組合財産となる債権の譲渡額等が定められていること
 この要件では、準則に定められた公正な価額による資産評定が行われ、それを基礎とした債務者の貸借対照表における資産及び負債の価額、事業再生計画における損益の見込み等に基づいて債務免除等をする金額並びに再生債権がその組合財産となるときにおいて、その再生債権の対価として取得する金銭の額及び金銭以外の資産の価額が定められていることが求められています(措令39の28の2まる1及び39の124の2まる1による読替後の法令24の2まる1三)。
 この点、新実務運用標準5.まる5において、租税特別措置法第67条の5の2又は第68条の102の3の適用を受ける場合には、事業再生計画に、別紙1「再生計画における資産評定基準」に基づき債務者の有する資産及び負債の価額の評定を行い、それらの価額を基礎として作成された貸借対照表における資産及び負債の価額、再生計画における損益の見込み等に基づき、再生支援対象事業者に対して債務免除等をする金額並びに当該再生債権がその組合財産となる時において当該再生債権の対価として取得する金銭の額及び金銭以外の資産の価額が定められていなければならないとされており、この定めに従って事業再生計画が策定されることから、この要件を満たします。

 (ハ) 上記(イ)及び(ロ)の要件について確認をする手続並びにその確認を確認者が行うことが準則に定められていること
 新実務運用標準では、事業再生計画が新実務運用標準に従って策定されたものであること等に加え、上記(イ)及び(ロ)の要件についても確認手続を定めています(新実務運用標準14.(3))。
 また、上記4(1)の確認者の規定において述べたように、法人税法施行規則第8条の6第1項第2号において、機構が債権買取り等をしない旨の決定を行った場合の確認者について定められているところ、新実務運用標準14.(3)においても確認者が専門家3人と定められていることから、この要件を満たします。

ロ 一定の資産評定を行っていること
 租税特別措置法第67条の5の2第1項又は第68条の102の3第1項に規定する政令で定める評定は、債務処理に関する計画の策定に当たり従うこととされている法人税法施行令第24条の2第1項第1号に規定する準則に定められている同号イに規定する事項に従って行う同項第2号の資産評定とされています(措令39の28の2まる1、39の124の2まる1。)
 この点、債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)は、新実務運用標準の5.まる5において公正な価額により行うことが定められており、かつ、その資産評定に関する具体的な評定方法が新実務運用標準の別紙1の「再生計画における資産評定基準」に定められているとともに、これに基づき債務者の有する資産及び負債の価額の評定が行われていることから、この要件を満たします。