(別紙1)

平成26年6月17日

 国税庁課税部
 審理室長 岸 英彦 殿

中小企業庁事業環境部金融課長 三浦 章豪

1 前回照会について

 産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(平成26年1月20日からは「産業競争力強化法」)に基づき、各都道府県において中小企業再生支援業務を行う者として認定を受けた者が実施する中小企業再生支援協議会事業(中小企業再生支援協議会(以下「協議会」という。)の設置及び運営並びに再生計画策定支援等の再生支援業務を実施する事業)では、各地で公正中立な第三者である協議会が中小企業からの相談を受け付け、助言や再生計画の策定支援を行うなど、中小企業の再生支援を行っているところです。
 「中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)」(以下「策定手順」という。)については、その策定後において実務を通じて把握した対象事業者等の実情のほか、法的手続や他の私的整理手続における資産評価基準との整合性等の反映を踏まえ、改定を行い、当該策定手順に従って策定される再生計画により債務者が2以上の金融機関等又は政府関係金融機関等から債務免除を受ける場合の次の(1)から(3)までに掲げる税務上の取扱いについて、平成24年3月21日付で国税庁に照会を行い、同月28日付でそれぞれ次に掲げるとおり解して差し支えない旨の文書回答をいただいております。

(1) 策定手順に従って再生計画が策定され、対象債権者全員の同意によって再生計画が成立した場合においては、当該再生計画は、法人税法施行令第24条の2第1項《再生計画認可の決定に準ずる事実等》第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件を満たすことから、当該再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」に該当する。
 また、当該再生計画における資産評定は、策定手順に従って行われることから、債務者の有する資産の価額につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》及び第33条第4項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用することができる。

(2) 上記(1)により法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受ける場合には、同法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》の規定により損金の額に算入する金額は、同項第3号に掲げる場合に該当するものとして計算することができる。

(3) 策定手順に従って策定された再生計画により債権者が債権放棄等(債権放棄、無償又は低利による貸付け等をいう。)を行う場合には、原則として、法人税基本通達9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)にいう「合理的な再建計画に基づく債権放棄等」であり、その債権放棄等による損失を損金算入することができる。

2 今回の照会事項

 青色申告書を提出する中小企業者(租税特別措置法第67条の5の2に規定する中小企業者をいう。以下同じ。)について平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に、再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じ、かつ、2以上の金融機関等が有するその中小企業者に対する債権が債務処理に関する計画によって特定の投資事業有限責任組合の財産となる場合において、その中小企業者が、その有する資産の価額につき一定の評定を行い、又は債務処理に関する計画に従って債務の免除を受けたときは、その債務者である中小企業者は、いわゆる企業再生税制を適用することができるとされています(措法67の5の2。以下「本特例」という。)。この組合の財産となる債権の債務者についての債務処理に関する計画を策定する場合に従うべき準則として、協議会の定める準則が規定されています(平成25年内閣府・経済産業省告示第2号)。
 このことを踏まえ、策定手順について、本特例に係る確認手続を追加する等の改定を、平成26年6月16日付で行っていますが、改定後の策定手順(以下「新策定手順」という。)に基づき策定された再生計画により債務免除等が行われる場合においては、本特例の適用があるものと解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

(注) 企業再生税制とは、再生計画認可の決定があったことその他これに準ずる一定の事実が生じた場合において、法人がその有する資産の価額につき所定の評定を行っているときは、その資産の評価益又は評価損を益金の額又は損金の額に算入することができ(法人税法第25条第3項又は第33条第4項)、これらの適用を受ける場合には期限切れ欠損金を損金算入できる措置(同法第59条第2項第3号)をいいます。

3 理由(照会者の求める見解となる理由)

 新策定手順に従って、2以上の金融機関等の有するその中小企業者に対する債権が、租税特別措置法第67条の5の2第2項第3号に規定する特定投資事業有限責任組合契約(以下「特定投資事業有限責任組合契約」という。)に係る組合財産となることを定めた再生計画が策定され、これが対象債権者全員の同意により成立した場合において、次の(1)のとおり、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実に該当し、次の(2)のとおり一定の資産評定が行われることになりますので、本特例の適用があるものと考えます。
 したがって、当該中小企業者において、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項及び第33条第4項の規定を適用することができます。また、この場合、同法第59条第2項の規定により損金の額に算入する金額は、同項第3号に掲げる場合に該当するものとして計算することができます。

(1) 再生計画認可の決定があったことに準ずる事実に該当すること
 本特例において、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実とは、法人税法施行令第24条の2第1項各号に掲げる要件に加え、以下の要件に該当する必要がありますが、次のとおり追加された各要件を満たすものと考えられます。

イ 2以上の金融機関等の有するその中小企業者に対する債権が組合財産となることが定められていること
 この要件では、再生債権を有する2以上の金融機関等のその再生債権が特定投資事業有限責任組合契約に係る組合財産となることが求められています(措令39の28の21による読替後の法令24の21三)。
 この点、新策定手順において、租税特別措置法第67条の5の2の適用を受ける場合には、再生債権を有する2以上の金融機関等の当該再生債権が特定投資事業有限責任組合契約に係る組合財産となることが定められており、この定めに従って再生計画が策定されることから、この要件を満たします(新策定手順10.(1))。

ロ いわゆる実態貸借対照表、損益の見込み等に基づいて組合財産となる債権の譲渡額等が定められていること
 この要件では、準則に定められた公正な価額による資産評定が行われ、それを基礎とした債務者の貸借対照表における資産及び負債の価額、再生計画における損益の見込み等に基づいて債務免除等をする金額並びに再生債権がその組合財産となるときにおいて、その再生債権の対価として取得する金銭の額及び金銭以外の資産の価額が定められていることが求められています(措令39の28の21による読替後の法令24の21三)。
 この点、新策定手順10.(1)において、租税特別措置法第67条の5の2の適用を受ける場合には、別紙「実態貸借対照表の作成に当たっての評定基準」に基づき債務者の有する資産及び負債の価額の評定を行い、その資産評定に基づいて実態貸借対照表が作成されます。また、当該実態貸借対照表及び再生計画における損益の見込み等に基づき、債務者に対して債務免除等をする金額並びに当該再生債権が、特定投資事業有限責任組合契約に係る組合財産となる時において当該再生債権の対価として取得する金銭の額及び金銭以外の資産の価額が定められることとされており、この定めに従って再生計画が策定されることから、この要件を満たします(新策定手順7.(3)、10.)。

ハ 上記イ及びロの要件について確認をする手続並びにその確認を確認者が行うことが準則に定められていること
 新策定手順では、再生計画が新策定手順に従って策定されたものであることに加え(新策定手順7.(4))、上記イ及びロの要件についても確認手続を定めています(新策定手順10.(1))。
 また、新策定手順において、これらの確認を再生計画検討委員会の委員が行うこととしていますが(新策定手順7.(3)、(4))、当該委員は法人税法施行令第24条の2第1項第1号ロに規定する確認をする者として法人税法施行規則第8条の6第1項第1号に定める者(確認者)に該当することから、この要件を満たします。

(2) 一定の資産評定を行っていること
 租税特別措置法第67条の5の2第1項に規定する政令で定める評定は、債務処理に関する計画の策定に当たり従うこととされている法人税法施行令第24条の2第1項第1号に規定する準則に定められている同号イに規定する事項に従って行う同項第2号の資産評定とされています(措令39の28の21)。
 この点、債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)は、新策定手順の7.(4)2において公正な価額により行うことが定められており、かつ、その資産評定に関する具体的な評定方法が新策定手順の別紙「実態貸借対照表の作成に当たっての評価基準」に定められているとともに、これに基づき債務者の有する資産及び負債の価額の評定が行われていることから、この要件を満たします。