(別紙)

平成23年9月15日

国税庁 課税部 審理室長
住倉 毅宏 殿

株式会社 整理回収機構
代表取締役社長 上田廣一

1 過去の照会について

(1) 平成16年照会
 当社が平成16年2月16日に制定した「RCC企業再生スキーム」(以下「本スキーム」という。)に関しては、本スキームに基づき策定された再生計画により債権放棄等(債権放棄、無償又は低利による貸付け等をいう。以下同じ。)が行われた場合、その債権者側の法人税基本通達9-4-2に定める税務上の取扱い及び債務者側の同通達12-3-1(3)に定める税務上の取扱いについては、同年3月1日付の照会(以下「平成16年照会」という。)に対して、同月24日付で当社の考え方で差し支えない旨の文書回答をいただいております。

(2) 平成17年照会
 また、本スキームに従って策定される再生計画のうち、当社が有する債権(信託の 受託者として有する債権を含む。以下同じ。)につき債務免除を行う場合、次のイ及びロに掲げる事項については、平成17年8月2日付の照会(以下「平成17年照会」という。)に対して、同月26日付でそれぞれ次に掲げるとおり解して差し支えない旨の文書回答をいただいております。

イ 本スキームに従って再生計画が策定され、対象債権者全員の同意によって再生計画が成立した場合において、法人税法施行令第24条の2第1項第2号《再生計画認可の決定に準ずる事実等》のイからハまで及びホ(現行:同条第1項第1号から第3号及び第5号)に掲げる要件を満たすときには、当該再生計画の成立は、同号(現行:同項)に規定する「再生計画認可等に準ずる事実(現行:再生計画認可の決定があったことに準ずる事実)」に該当する。
 また、当該再生計画における資産評定は、本スキームに従って行われることから、債務者の有する資産の価額につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》及び第33条第3項(現行:第4項)《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用することができる。

ロ 上記1(2)イにより法人税法第25条第3項又は第33条第3項(現行:第4項)の規定の適用を受ける場合には、法人税法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》の規定により損金の額に算入する金額は、同項第3号に掲げる場合に該当するものとして計算することができる。

  • (注1)平成18年度の税制改正等により、改正前の法人税法施行令第24条の2第1項第2号のイからハまで及びホは、同条第1項第1号から第3号及び第5号となっています。
  • (注2)平成21年度の税制改正により、改正前の法人税法第33条第3項は同条第4項となっています。

2 事実関係(本スキームの改定内容)

 本スキームについては、RCCが関与する私的再生における対象債務者等の実情や法的手続や私的整理手続における資産評定基準との整合性等を踏まえ、平成23年9月12日付で次の改定を行っています。
 本スキームの改定内容のうち、本件照会に関するものは、以下のとおりです。

(1) 債権者集会の開催方法
 本スキームでは、第1回債権者集会は、「一堂に会してあるいは持ち回りで行う」こととされていましたが、これまで持ち回りで行うという実態がないことから、「一堂に会して行う」としました(別添1:本スキーム新旧対照表【本文】(以下「本スキーム新旧対照表」という。)No.6.(4)参照)。

(2) 債務の株式化(DES)による債務消滅の取扱いの追加
 いわゆる債務の株式化(DES)においてその債務の消滅に係る利益が生じる場合には、対象債務者にとって債務免除を受けた場合と同様の効果をもたらすことから、本スキームにおける「債務免除」を「債務免除等」とし、当該債務免除等にはDESにより債務の消滅に係る利益が生じる場合が含まれることを明らかにしました(本スキーム新旧対照表No.7.(5)及び(6)参照)。

(3) 対象債務者が債務免除等を受ける場合の支配株主の支配権の消滅の原則化
 本スキームでは、対象債務者が債務免除等を受けるときは、支配株主の支配権を消滅させるとしていましたが、本スキームの適用対象債務者の実情に応じた株主責任の追及を行うとの観点から、支配株主の支配権については「原則として消滅させる」としました(本スキーム新旧対照表No.7.(5)参照)。

(4) RCCに調整を委託できる者等の拡大
 本スキームにおいては、金融債権者がRCCに他の金融債権者の同意を得るための調整を委託する場合の手続及び基準が定められているところ、従来、RCCに調整を委託できる金融債権者は主要債権者の一人である金融機関に限定していたところですが、例えば、主要債権者が地方公共団体である場合などRCCに調整を委託しようとする主要債権者が必ずしも金融機関とは限らない実情を踏まえ、RCCに調整を委託できる者を「金融機関等」としました(本スキーム新旧対照表【注】5.(1)参照)。

(5) 『再生計画における「資産・負債の評定基準」(別紙5)』の改定
 RCCの関与する私的再生では、債務免除を含む財務状況の将来の見直しは、本スキームの『再生計画における「資産・負債の評定基準」(別紙5)』(以下「評定基準」という。)に基づくものであるとされていますが、法的手続や私的整理手続における資産評定基準との整合性の観点から見直しを行った結果、当該評定基準の改定を行いました(改定後の評価基準を「新評定基準」という。)。
 なお、主な改定内容は、以下のとおりです。

イ 目的
 RCCの公的機関としての役割に鑑み、債務者の再生可能性の判断と債権者の経済合理性の判断とを公正かつ適正な資産・負債評定のもとで行うために新評定基準を定めたことを明らかにしました(別添2:本スキーム新旧対照表【再生計画における「資産・負債の評定基準」(別紙5)】(以下「評定基準新旧対照表」という。)No.1参照)。

ロ 評定の原則
 各項目に共通する基本的な原則を記載することにより、個別に規定のない資産項目について、改定前の評定基準でやや不明確であった部分を見直すというように、改定前の評定基準をさらに発展させ、資産評定が公正な価額によって行われるための基準とすることを主眼としています(評定基準新旧対照表No.2参照)。

ハ 用語の定義
 基本的な用語についての定義を集約して記載しました(評定基準新旧対照表No.3参照)。

ニ 売上債権
 新評定基準においては、金融商品会計基準に準じて、原則として各債権金額から貸倒見積額を控除した金額をもって本評定における時価としました。すなわち、債権を「一般債権」「貸倒懸念債権」「破産更生債権等」に区分し、その区分に応じた貸倒見積額を算定する方法です (評定基準新旧対照表No.4参照)。

ホ 棚卸資産
 新評定基準においては、品質低下、陳腐化等により収益の低下している棚卸資産について、一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法を追加するなど、棚卸資産の評価に関する会計基準の考え方も採用できるよう明らかにしました(評定基準新旧対照表No.5参照)。

ヘ 事業用不動産
 旧評定基準においては、不動産鑑定士による不動産鑑定評価等を時価とする記載でしたが、新評定基準においては、不動産鑑定士による不動産鑑定評価等を基本としつつ、重要性が乏しく不動産鑑定評価等に依拠しない場合に適切な評定が行われるべく、その評定方法についても記載しました(評定基準新旧対照表No.10参照)。

ト 投資不動産
 旧評定基準においては、投資不動産に関する記載はありませんでしたが、新評定基準においては評定方法をより明確化するために独立した記載にしました(評定基準新旧対照表No.11参照)。

チ その他
 包括的な条項として、記載のない科目や評定方法に網羅的に対応できるよう記載しました。目的に照らした判断、評定の原則に従った合理的な評定を求めています(評定基準新旧対照表No.27参照)。

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3 今回の照会事項

 上記2に記載のとおり、本スキームの一部が改定されていますが、改定後の本スキームに基づき策定される再生計画により債権放棄等を行われる場合においても、引き続き平成16年照会及び平成17年照会に対する回答のとおりと解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

4 理由(照会者の求める見解となることの理由)

(1) 第1回債権者集会の開催方法
 第1回債権者集会の開催方法に係る改定は、持ち回りによる開催が行われていない実情を踏まえて改定が行われたものです。
 当該改定は、単に債権者集会の開催方法の形式的な変更に過ぎず、その債権者集会における合意内容等の変更を伴うものではありませんので、本スキームに基づき策定される再生計画の適正性が損なわれるものではありません。

(2) 債務の株式化(DES)による債務消滅の取扱いの追加
いわゆる債務の株式化(DES)により債務の消滅に係る利益が生じる場合は、対象債務者にとって債務免除を受けた場合と同様の効果をもたらすこととなります。
  そこで、本スキームにおいては、DESにより債務の消滅に係る利益が生じる場合も、債務免除を受けた場合と同様に取り扱うとする改定を行ったところです。
   この改定により、債務免除と同様の効果が生じるDESが行われた場合の取扱いの明確化を図ったに過ぎず、本スキームに基づき策定される再生計画の適正性が損なわれるものではありません。

(3) 対象債務者が債務免除等を受ける場合の支配株主の支配権の消滅の原則化
 私的再生において、既存の支配株主がその株主責任を負う方法として、支配権の消滅という方法があげられますが、支配権を継続させて自ら再生に当たらせることが必要なケースも想定されます。
 そこで、本スキームにおいては、私的再生を行うに当たり止むを得ない場合に限って、支配権の継続を認めることが出来るようにするための改定を行ったところです。
 この改定により、支配株主の支配権を消滅しないケースも生じることとなりますが、これにより株主責任を追及しないことを容認しているのではなく、その支配株主の実情に応じた対象債務者に係る債権者の理解(責任追及の程度に対する理解)が得られるような株主責任の追及を行うことを前提としています。
 このことからすれば、支配株主の支配権の消滅要件が例外的に緩和されたとしても、個々の実情に応じた株主責任の追及が行われることより、本スキームに基づき策定される再生計画の適正性が損なわれるものではありません。

(4) RCCに調整を委託できる者等の拡大
 RCCに調整を委託できる金融債権者を「主要債権者の一人である金融機関等」とすることにより、例えば、主要債権者に地方公共団体が含まれている場合には、その地方公共団体が当該調整を委託できる者に含まれることになりますが、本スキームに基づく再生計画の策定に当たっては、調整を委託する者が地方公共団体であることにより、新たな手続や特別の評価基準等が認められるというものではなく、調整を委託できる者が主要債権者の一人である金融機関のみであった場合と同様の手続及び評定基準等が用いられることとなります。
 このことからすれば、RCCに調整を委託できる者の範囲を拡大する改定が行われたことにより、本スキームに基づき策定される再生計画の適正性が損なわれるものではありません。

(5) 『再生計画における「資産・負債の評定基準」(別紙5)』の改定
 新評定基準への見直しは、法的手続や私的整理手続における資産評定基準との整合性の観点から行われたものですが、その制定に当っては、企業再生に関する専門的知識を有する外部の弁護士・公認会計士・税理士・不動産鑑定士・企業再生コンサルタント等からなる「企業再生検討委員会」の委員への諮問を経ており、新評定基準が公正な価額によって行われるための基準である点において、改定前の評定基準と何ら変わるところはありません。
 また、新評定基準への改定は、その内容において改定前の評定基準をさらに発展させ、資産評価が公正な価額によって行われるための基準とすることを主眼としています。
 さらに、新評定基準と同様の資産評定基準の改定を行った特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについては、既に平成21年7月9日付で国税庁から経済産業省に対し、改定後においても引き続き過去の照会(上記1(1)及び(2)と同様の照会内容)に対する回答のとおり解して差し支えない旨の文書回答が行われていますので、本スキームの新評定基準の改定についても同様の取扱いが認められると考えられます。