国海総 第107号
平成19年6月13日

国税庁課税部審理室長  岡南 啓司 殿

国土交通省海事局 総務課長 室谷 正裕 

 (社)日本パイロット協会(以下「パイロット協会」という。)では、定款等に基づき、水先人会(人格なき社団)を通じて会員たる水先人から普通会費のほか 前年の水先料収入に基づく特別会費を徴収し、当該特別会費を原資として海事に関する公益目的のための補助金を関係財団に交付していました。
 この特別会費については、一定の条件の下、水先人が個人の事業として水先業務を行っている場合には、その事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、法人の役員又は従業員として水先業務を行っている場合には、その法人の損金の額に算入することとされています(昭和39年12月22日付直審(所)100ほか 「水先人が社団法人日本パイロット協会に納付する特別会費の所得税及び法人税の取扱いについて」(以下「個別通達」という。))。
 今般、平成19年4月1日に改正水先法が施行されたことに伴い、人格なき社団である各水先人会は、それぞれ同法に基づく公益法人となり、また、パイロット協会は解散し、各水先人会を会員とする日本水先人会連合会(以下「連合会」という。)が設立されました(改正水先法483、553)。
 このため、平成19年4月1日以後は、新たに策定された各水先人会及び連合会の会則に基づき、水先人は所属する水先人会に特別会費を納入し、各水先人会 は納入された特別会費をそのまま連合会に納入することとしています。そして、連合会では、納入された特別会費のうち水先人会標準会則第48条第1項第二号 及び連合会会則第43条第1項第二号の定めに基づくもの(注)については、これを原資として引き続き海事に関する公益目的のための補助金を関係財団に交付 することとしています。
 上記のとおり、特別会費の徴収主体は変更されるものの、当該特別会費を原資として海事に関する公益目的のための補助金を関係財団に交付することとしてい るものについては、その実態に何ら変更がありませんので、従前の個別通達の取扱いと同様に、水先人等が納入する特別会費について、事業所得の必要経費又は 法人の損金の額に算入することとして差し支えないか伺います。

(注) 平成19年4月1日以後の特別会費については、1連合会の目的を達成し、併せて海事の振興に特に必要があると認められる事業に拠出するためのもの(水先人会標準会則481二及び連合会会則431二に基づくもので、従前と同様のもの)と、2水先業務の効率化及び水先人会の業務運営の確保に関し、連合会が行う事業に充当するためのもの(水先人会標準会則481三及び連合会会則431三に基づくもので、新たに設けたもの)の二種類があります。これらの特別会費については、水先人会及び連合会の会則等において区分経理することとしており、2の特別会費については、前払費用とし、連合会がこれを現実に支出した日にその使途に応じて経理することとしています。したがって、本照会は1の特別会費についてのものです。

〔理由〕

  1.  水先人等が納入する特別会費を事業所得の必要経費又は法人の損金の額に算入することとするためには、従前の個別通達の取扱いと同様に、特別会費の徴収及び使途等について、次の条件を引き続き満たすことが前提になると解される。
    (1) 特別会費の徴収は、各水先人間に差別なく、かつ、強制的に行うものであること
    (2) 徴収した特別会費は、遅滞なく海事に関する公益目的のために支出し、水先人会、連合会及び連合会から資金を受け入れた財団において、特別会費又は資金につき留保金が生じるものではないこと
    (3) 水先人会、連合会及び財団において、特別会費又は資金の収支及び使途を明確に記録すること
  2.  水先人は、その免許に係る水先区に設立された水先人会への入会が義務付けられ(改正水先法52)、会則により所属する水先人会に一般会費と特別会費を納入 しなければならない。この特別会費は、連合会が海事に関する公益目的事業に拠出するためのものとして連合会から水先人会に要請のあった金額を水先人から徴 収するものであり、会員に返還されることはなく、その金額は、水先人の前年の水先料収入に比例配分したものとなっている(水先人会標準会則481、49、連合会会則431、44)。
     このように、特別会費については、法令等の規定に基づく賦課金ではないものの、水先法及び会則により水先人会への加入及び前年の水先料収入に応じた会費 額の支払が義務付けられているとともに、当該特別会費を原資として公益目的事業に拠出する点において、賦課金と同様の性格を有している。
  3.  また、水先人会及び連合会では、特別会費について、それぞれの会則等に基づき特別会計により区分経理し(水先人会標準会則412、連合会会則372)、 連合会では、各水先人会を通じて納入された特別会費について、水先人の養成支援、船舶交通の安全確保等引き続き海事に関する公益目的のための資金として関 係財団へ交付し、当該財団においては、当該資金を留保することなく目的に則して海事に関する事業に費消することとしている。
     国土交通省としても、関係財団に対する監査を通じ、特別会費の徴収及び使途等について適正な運用がなされるよう、所管官庁として引き続き指導・監督していく。
  4.  以上のことからすると、本件の特別会費については、その徴収及び使途等について上記1(1)から(3)に掲げる条件を引き続き満たすものであるとともに、 専ら水先業務という水先人の事業遂行上必然的に生じるものであり、事業と直接関係なく、かつ、対価性のない任意の寄附金とも異なるものと考えられることか ら、従前の取扱いと同様に、水先人が個人の事業として水先業務を行っている場合にはその事業所得の金額の計算上必要経費に算入し、法人の役員又は従業員と して水先業務を行っている場合にはその法人の損金の額に算入することとして差し支えないものと考えられる。