(別紙)

平成17年4月19日

国税庁課税部長
竹田 正樹 殿

私的整理に関するガイドライン研究会  

座長 高木 新二郎

 当研究会が平成13年9月19日に取りまとめた別添(PDFファイル/203KB) の「私的整理に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)に関しては、本ガイドラインに基づき策定された再建計画により債権放棄等(債権放棄、無償又は低利による貸付け等をいう。以下同じ。)が行われた場合、その債権者側の法人税基本通達9−4−2に定める取扱い及び債務者側の法人税基本通達12−3−1(3)に定める税務上の取扱いについては、同日付での文書照会に対して、同月26日付で当研究会の考え方で差し支えない旨の回答をいただいております。
 ところで、平成17年度の税制改正において、一定の要件を満たす私的整理に係る再建計画により債務免除を受ける場合には、債務者の有する一定の資産についての評価損及び評価益の計上とともに、青色欠損金等以外の欠損金を優先して控除する税制措置が新たに講じられています。
  当研究会といたしましては、本ガイドラインが新たに講じられた税制措置の下においても円滑に運用されるため、準則である本ガイドラインと一体的に定められている「私的整理に関するガイドラインQ&A」につきまして、別添(PDFファイル/203KB) のとおりの修正を加えて公表したところであります。
  つきましては、本ガイドライン及び「私的整理に関するガイドラインQ&A」(以下「本ガイドライン等」という。)に従って策定される再建計画により2以上の金融機関等から債務免除を受ける場合においては、次の点につきそれぞれ次のとおり解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

1 本ガイドライン等に従って再建計画が策定され、対象債権者全員の同意によって再建計画が成立した場合において、法人税法施行令第24条の2第1項第2号《再生計画認可の決定に準ずる事実等》のイからニまでに掲げる要件を満たすときには、当該再建計画の成立は、同号に規定する「再生計画認可等に準ずる事実」に該当する(次葉参照)。
 したがって、当該再建計画において債務者の有する資産の価額につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》又は第33条第3項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用することができる。

2 上記1により法人税法第25条第3項又は第33条第3項の規定の適用を受ける場合には、法人税法第59条第2項《会社更生等による債務免除があった場合の欠損金の損金算入》の規定により損金の額に算入する金額は、同項第3号に掲げる場合に該当するものとして計算することができる。


(次葉)

1 民事再生法の規定による再生計画認可の決定等に準ずる事実に該当すること

 本ガイドライン等に従って策定される再建計画は、次の過程を経て成立します。
 対象債務者が通常複数の主要債権者に本ガイドライン等の手続の申出を行い、主要債権者は対象債権者の同意見込、再建計画実行可能性について検討した上で、相当と判断した場合に手続が開始されます。
 また、対象債務者となる企業の適格性や再建計画案の内容等については、債権者会議及び債権者委員会で検討されることになりますが、第2回債権者会議に先立ち、主要債権者又は債権者委員会は、再建計画全般の相当性と実行可能性を対象債権者に書面にて報告し、再建計画は、対象債権者全員の同意により成立します。
 このように本ガイドライン等に基づく再建計画の成立は、債務者等による手続開始の申立て、債権者集会、再建計画の合意など民事再生法の規定による再建計画策定の一連の手続に準じて成立するものであることから、民事再生法の規定による再生計画認可の決定等に準ずる事実に該当するものと考えられます。

2 再建計画が所定の要件(法令24の21二かっこ書)に該当すること

(1) 「債務処理を行うための手続についての準則」の要件(次の1から3までの要件のすべてを満たすもの)

1 法人税法施行令第24条の2第1項第2号イ柱書の要件
 本ガイドライン等は、企業の私的整理に関する基本的考え方を整理し、私的整理の進め方、対象となる企業、再建計画案の内容等についての関係者の共通認識を醸成するために平成13年6月に「私的整理に関するガイドライン研究会」が発足し【Q2】、平成13年9月19日の同研究会において、公表をもって直ちに適用されるものとして採択されたもの【はじめに】です。
 従って、本ガイドライン等に従って策定された再建計画は、一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていることとの要件を満たすと考えられます。
 また、本ガイドライン等は、金融界と産業界を代表する者が中立公平な学識経験者などとともに協議を重ねて策定したもの【2項(1)・Q7】で、公正衡平を旨【2項(5)】とすることを定めており、本ガイドライン等に基づく再建計画策定の実績も積みあがってきているところであります。こうした点から、本ガイドライン等は、公正かつ適正なものと認められるものであるとの要件を満たすと考えられます。
 また、多数の金融機関等が関わることを前提とするもの【1項(1)・Q4】であり、特定の者が専ら利用するためのものではないとの要件を満たすと考えられます。

2 法人税法施行令第24条の2第1項第2号イ(1)の要件
 債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下「資産評定」という。)については、公正な価額により行う【Q10-2】と定めています。
 また、この「公正な価額」については、2以上の金融機関等からの債務免除を伴う再建計画を策定する場合において、1本ガイドライン等に「実態貸借対照表作成に当たっての評価基準」【Q10-2】を定めているとともに、2この基準により作成される実態貸借対照表を含むその再建計画は多数の金融機関等が関わることを前提として成立すること【1項(1)・Q4】及び3公正な価額による資産評定であることについて第三者である専門家アドバイザーが確認を行うこと【Q10-2】を定めていることからすれば、「公正な価額」となるべきことを担保するための定めもあると解されることから、資産評定に関する事項が準則たる本ガイドライン等に定められており、かつ、公正な価額による旨の定めがあること、という要件は満たすと考えられます。

3 法人税法施行令第24条の2第1項第2号イ(2)の要件
 専門家アドバイザーは、本ガイドライン等に定められた手続に従って策定された再建計画であることと、下記(2)及び(3)に記載する事項を確認すること【Q10-2】を定めており、当該計画が当該準則に従って策定されたものであること並びに下記(2)及び(3)に掲げる要件に該当することにつき確認をする手続に関する事項が定められていることとの要件を満たすものと考えられます。
 また、弁護士及び公認会計士を含む3人以上の専門家アドバイザーが債権者会議において選任され、各人が独立して公正かつ公平な立場で調査・報告を行うとともに、実態的に合議体としての調査・報告を行うこと【Q10-2】とされています。
 この専門家アドバイザーは債務処理に関する専門的な知識経験を有する者と認められることから、当該確認をする者に関する事項が定められていることとの要件を満たすものと考えられます。

(2) 法人税法施行令第24条の2第1項第2号ロの要件
 専門家アドバイザーは、「実態貸借対照表作成に当たっての評価基準」に基づいて資産評定が行われていること、その資産評定に基づいて実態貸借対照表が作成されていること(ただし、資産評定は公正な価額により行う。)【Q10-2】の確認をすることが定められています。従って、その確認を受けた再建計画は、準則に定められた資産評定の規定に従って資産評定が行われ、それを基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていることとの要件を満たすと考えられます。

(3) 法人税法施行令第24条の2第1項第2号ハの要件
 専門家アドバイザーは、資産評定に基づいた実態貸借対照表や再建計画における損益の見込み等に基づいて債権放棄額が決定されていること【Q10-2】の確認をすることが定められています。従って、その確認を受けた再建計画は、上記(2)の貸借対照表における資産及び負債の価額、当該計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務の免除をする金額が定められていることとの要件を満たすと考えられます。

(参考)法人税法施行令第24条の2第1項第2号ニの要件
 本ガイドライン等は多数の金融機関等が関わることを前提とするもの【1項(1)・Q4】であり、本ガイドライン等に従って策定される再建計画により債権放棄が行われる場合には、2以上の金融機関等が債務の免除をすることが多いと考えられます。

(注) 【 】は参照すべき本ガイドライン本文及びQ&Aの該当部分を示す。

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