平成23年7月26日

国税庁課税部審理室長
住倉 毅宏 殿

日本証券業協会
副会長 増井喜一郎

1 照会の趣旨

 国内の金融商品取引所に上場されている国外株式(以下「国外株式」という。)の配当等については、これまで(株)証券保管振替機構(以下「機構」という。)が国内における支払の取扱者として源泉徴収(住民税の特別徴収を含む。以下同じ。)を行い(措法9の22、旧措令4の51一)、顧客に配当金を交付していた。
 平成22年1月1日以後、金融商品取引業者等(以下「金商業者」という。)を通じて支払われる上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座(特定口座)へ受け入れ、源泉徴収選択口座において損益通算を行うことが可能となったことに伴い、平成22年度税制改正において、国外株式の配当等に係る源泉徴収義務者(支払の取扱者)は、「国外株式の配当等の支払を受ける者の当該国外株式の配当等の受領の媒介、取次ぎ又は代理(業務として又は業務に関連して国内においてするものに限る。)をする者」とされたところである(措令4の51)(注1)。
 機構では、当該税制改正に合わせ、金商業者がその取引口座を通じて顧客に国外株式の配当金を交付する仕組みを構築し、顧客は、その意思表示により、機構と金商業者のいずれかから国外株式の配当等を受領することが可能となった(注2)。
 租税特別措置法(源泉所得税関係)通達(以下「措通」という。)9の2−3《外国通貨で支払を受けた配当等を本邦通貨で交付する場合の配当等の金額》は、支払の取扱者が支払代理機関等から外貨で国外株式の配当等の支払を受け、当該国外株式等の配当等を顧客に本邦通貨で交付する場合には、当該交付する金額を配当等の金額とその他の金額(為替差損益)とに区分し、配当等の金額についてのみ源泉徴収の対象となることを明らかにしている。
 支払の取扱者である金商業者を通じて国外株式の配当等を顧客に交付する場合、当該金商業者は機構から円貨で国外株式の配当等の支払を受ける(支払代理機関等から外貨で国外株式の配当等の支払を受ける場合に該当しない)こととなるが、当該通達と同様に、次のとおり取り扱って差し支えないか。

(1) 顧客が金商業者から国外株式の配当等の交付を受ける場合、当該金商業者は、外国所得税控除後の国外株式の配当等を機構が実際に円転した邦貨換算レートに基づく円貨で受領するが(注3)、源泉徴収の対象となる外国所得税控除後の国外株式の配当等の額は、支払開始日と定められている日又は現地保管機関等が受領した日(以下「支払開始日等」という。)における邦貨換算レートに基づく円貨の額とする。

(2) 金商業者が顧客に交付し、又は所轄税務署に提出する「特定口座年間取引報告書」、「上場株式配当等の支払通知書」及び「国外投資信託又は国外株式の配当等の支払調書」における「配当等の額」欄及び「外国所得税の額」欄に記載する金額は、支払開始日等における邦貨換算レートに基づき計算した額とする。

(注1) 平成22年4月1日以後に支払を受けるべき国外株式の配当等について適用し、平成22年3月31日以前に支払を受けるべき国外株式の配当等の源泉徴収義務者については、従前どおり機構とされている(平22改正措令附則6)。

(注2) 平成22年3月31日以前は、機構は、外貨で受領した外国所得税控除後の配当金を円貨に交換し、源泉徴収後の配当金(円貨)を顧客に交付していたが、平成22年4月1日以後は、上記に加え、外貨で受領した外国所得税控除後の配当金を円貨に交換して金商業者に交付し、当該金商業者が源泉徴収をした上で顧客に配当金を交付することとなる。
 なお、外貨から円貨への交換、機構による源泉徴収及び顧客への配当金の交付並びに金融商品取引業者等への配当金(源泉徴収前の金額)の交付事務は、機構が事務委託している配当金支払取扱銀行が行っている。

(注3) 国外株式の配当等については、その支払開始日等と配当金支払取扱銀行が実際に円貨への交換を行う日は、時差の関係等から異なっているのが通常である。

2 照会に係る取引の概要

(1) 平成22年4月以後、国外株式の配当等については、顧客の選択により、機構又は金商業者のいずれから支払を受けるのか選択することができる(別添参照)。

(2) 顧客が国外株式の配当等を機構又は金商業者のいずれから支払を受けるかにかかわらず、機構は、外国所得税控除後の国外株式の配当等(外貨)を受領する。

(3) 顧客が機構から国外株式の配当等の交付を受ける場合、機構は、外国所得税控除後の国外株式の配当等の額を基に源泉徴収を行うが、この場合の国外株式の配当等の額は、措通9の2−3に基づき、機構が実際に円転した邦貨換算レートによる金額ではなく、支払開始日等における邦貨換算レートに基づいて算出された金額によることとなる。
 また、機構は、当該金額により作成した「上場株式配当等の支払通知書」を顧客に交付し、「国外投資信託又は国外株式の配当等の支払調書」を所轄税務署に提出する。

(4) 顧客が金商業者から国外株式の配当等の交付を受ける場合、当該金商業者は、機構から外国所得税控除後の国外株式の配当等を円貨(機構が実際に円転した邦貨換算レートに基づくもの)で受領し、金商業者が源泉徴収を行うこととなる。
 この場合、金商業者には、機構から支払開始日等における邦貨換算レートに係る情報(注)が提供されるので、当該情報により上記(3)と同じく源泉徴収を行うことが可能である。
 また、金商業者が作成の上、顧客に交付し、又は所轄税務署に提出することとなる「特定口座年間取引報告書」、「上場株式配当等の支払通知書」及び「国外投資信託又は国外株式の配当等の支払調書」についても同様である。

(注) 機構から金商業者に対し提供される情報には、国外株式の配当等に係る支払開始日等及び機構により円貨への交換が行われた日における外国通貨に係る東京外国為替市場の対顧客直物電信買相場(TTB)並びに配当単価(外貨)が含まれる。

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 機構及び金商業者は、措令第4条の5第1項に規定する支払の取扱者、すなわち、国外株式の配当等の支払を受ける者の当該国外株式の配当等の受領の媒介、取次ぎ又は代理(業務として又は業務に関連して国内においてするものに限る。)をする者に該当する。

(2) 措通9の2−3は、「支払の取扱者が支払代理機関等から外国通貨によって国外株式の配当等の支払を受け、当該国外株式の配当等を居住者又は内国法人に本邦通貨で交付する場合」について定めているところ、支払の取扱者である金商業者を通じて国外株式の配当等を顧客に交付する場合、当該金商業者は機構から国外株式の配当等を円貨で受領することとなるため、当該通達の「支払代理機関等から外国通貨によって国外株式の配当等の支払を受け」る場合に該当しないことになる。

(3) 措通9の2−2は、外国通貨で支払を受けた配当等を外国通貨で交付する場合、記名の国外株式の配当等については支払開始日と定められている日、無記名の国外株式の配当等については現地保管機関等が受領した日を邦貨換算日とすることを定めているが、これは国外株式の配当等の支払が確定した日がその収入すべき時期と解されることから、これらの日における為替レートにより邦貨換算した金額を国外株式の配当等に係る収入金額とすることを明らかにしている(外国通貨で支払を受けた配当等を本邦通貨で交付する場合も邦貨換算日は同じ(措通9の2−3))。

(4) したがって、同一の国外株式の配当等であれば、その配当等の支払が確定した日(注)が異なることはないのであるから、支払の取扱者が機構又は金商業者のいずれの場合であっても、その支払が確定した日(支払開始日等)の為替レートにより邦貨換算する必要がある。

(注) 平成22年1月1日以後に金融業者から交付を受ける源泉徴収選択口座内配当等については、源泉徴収選択口座における損益通算等の関係上、金商業者から交付を受けた日が収入すべき時期とされているが(措法37の11の68、措通37の11の6-2)、国外株式の配当等で国内における支払の取扱者である金商業者を通じて交付を受ける源泉徴収選択口座内配当等に係る邦貨換算についても、その支払が確定した日(支払開始日等)の為替レートにより行っている。

(5) この点については、機構から金商業者に対し、支払開始日等における邦貨換算レートに係る情報を外国所得税控除後の国外株式の配当等(円貨)が交付される際に提供することとされているので、金商業者が支払の取扱者となる場合であっても、機構と同一の金額で源泉徴収を行うことが可能である。
 また、「特定口座年間取引報告書」、「上場株式配当等の支払通知書」及び「国外投資信託又は国外株式の配当等の支払調書」についても、当該情報に基づいて作成することが可能である。