平22全金調第72号
平成22年12月9日
国税庁課税部審理室長
飯島 信幸 殿
全国銀行協会
副会長・専務理事 和田 耕志
非居住者又は外国法人が、民間国外債(国外において発行された債券で、その利子の支払が国外において行われるものをいい、一定のものを除きます。)の利子の支払を受ける場合において、一定の事項を記載した非課税適用申告書を、その利子の支払をする者(又は支払の取扱者)を通じて所轄税務署長に提出することにより、その支払を受ける利子については、所得税を課さないこととされています(措法6)。
平成22年度税制改正において、この民間国外債等の利子の課税の特例(措法6)について改正が行われ、利子の額が民間国外債の発行者又はその特殊関係者に関する一定の指標を基礎として算定されるもの(以下「利益連動債」といいます。)は、その利子について所得税を課さないこととする民間国外債から除かれることとなりました。
ところで、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成18年金融庁告示第19号)(以下「本件基準」といいます。)第6条第1項第4号に該当するものとして発行する債券(以下「永久劣後債」といいます。)については、契約において利払いの義務の延期が認められるものであることとされており、かかる利払いの義務の延期は、永久劣後債の発行体における分配可能額の有無・債務超過・自己資本により決定されるものですが、下記2(2)に記載の市場金利を基礎とした利率で利払いがされるもの(以下「本件永久劣後債」といいます。)については、上記の利益連動債には該当しないと考えてよろしいか伺います。
(1) 永久劣後債について
上記1の永久劣後債とは、負債性資本調達手段で、次に掲げる性質のすべてを有するものをいいます(本件基準第6条第1項第4号)。
(注)
(2) 本照会の対象とする永久劣後債
本件永久劣後債の金利は、市場金利を基礎として、発行体である各銀行の信用リスク(事前に定められた定率)を加味して算定した変動利率又は固定利率となっており、利益の額を基礎として算定されるものではありません。
本照会は、この市場金利を基礎とする変動利率又は固定利率により金利が設定される本件永久劣後債の取扱いについて確認するものです。
(3) 利益連動債に関する法令の定め
上記1のその利子について所得税を課さないこととする民間国外債から除かれる「利益連動債」とは、利子の額が次に掲げる指標を基礎として算定されるものとされています(措法6、措令3の2の2
)。
上記2(1)のとおり、永久劣後債に係る利払いの義務の延期は、発行体に分配可能額がない場合や発行体が債務超過になった場合、さらに自己資本比率が一定の水準を下回る場合に認められるものであることから、発行体における分配可能額の有無・債務超過・自己資本により決定されるという点において、その利子の額が「利益の額」「保有する資産の価額」「剰余金の配当、利益の配当」等の指標を基礎として算定される利益連動債に該当するのではないかとの疑義が生じます。
しかしながら、本件永久劣後債については、次の理由から利益連動債に該当しないものと考えます。
本件永久劣後債の利子の額は、市場金利を基礎として発行体である各銀行の信用リスク(事前に定められた定率)を加味し算定される利率によるものであり、市場金利は「民間国外債の発行者又はその特殊関係者に関する一定の指標」には該当しないこと。
利払いの義務の延期は、たとえ発行体の分配可能額枯渇や債務超過、自己資本比率の必要水準未達の場合に認められるものであるとしても、それは契約により発行体に利払いの延期が認められるだけであって、その停止期間中の利払いの義務を消滅させるものではなく、対応する利子がそのまま累積するにすぎず、債務者である発行体では延期した期の費用として未払計上し、債権者側では延期した期の収入として未収計上されることになり、このような利払いの義務の延期は、利払いを停止する条件を示すものであって、利子の額の算定の基礎とされる指標には該当しないものであること。
なお、平成22年度税制改正により創設された振替社債等の利子の課税の特例(措法5の3)においても、その利子について所得税を課さないこととする振替社債等から利益連動債が除かれていますが(措法5の3一、措令3の2
)、これについても民間国外債と同様に本件永久劣後債は利益連動債に該当しないと解されます。