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- 平成22年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要
平成23年11月
国税庁
- 経済のグローバル化に伴い、企業や個人の海外取引や資産の保有・運用が増加する中、国税庁では、租税条約の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施することにより、適正・公平な課税の実現に努めています。
- 今般、平成22年度(22年4月〜23年3月)における情報交換の実施状況がまとまりましたので報告します。
1. 租税条約等に基づく情報交換の実施状況
租税条約等に基づく情報交換には、主に、「要請に基づく情報交換」、「自発的情報交換」、及び「自動的情報交換」の3つの類型があり、我が国では、いずれについても、積極的な実施に努めています。
(1) 「要請に基づく情報交換」
【ポイント】
情報交換ネットワーク拡大の流れを受け、平成22年度の我が国からの「要請に基づく情報交換」の件数は、前年度から倍増。
- ○ 平成22年度に国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の要請件数は646件となり、前年度(315件)の2倍超に増加しました。また、地域別に見ると、アジア・大洋州の国・地域向けの要請が443件となり、全体の約7割を占めています。
- ○ また、国税庁では、外国税務当局から寄せられた「要請に基づく情報交換」についても、適切な対応に努めています。平成22年度に外国税務当局から国税庁に寄せられた「要請に基づく情報交換」の要請件数は84件(前年度113件)となっています。
グラフ1 「要請に基づく情報交換」の推移(平成18〜22年度、単位:件)
グラフ2 国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の地域別推移(平成18〜22年度、単位:件)
- ○ 「要請に基づく情報交換」は、個別の納税者に対する調査等において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等相手国・地域の税務当局(外国税務当局)に必要な情報の収集・提供を要請するものです。
- ○ 「要請に基づく情報交換」は、外国法人との取引の内容や、海外金融機関との取引の内容など、国際的な取引の実態や海外資産の保有・運用の状況を解明する有効な手段となっています。
「要請に基づく情報交換」の実施例
- 国内法人が、原材料の輸入価格(仕入額)を著しく高額に計上しており、不審であったことから、輸出元である外国法人の売上金額について、外国税務当局に情報交換要請を行った。
- 国内居住者について、海外金融資産の運用益発生が見込まれるものの、利子所得等の申告が無かったことから、外国税務当局に情報交換要請を行い、海外金融口座の情報を入手した。
(2) 「自発的情報交換」
【ポイント】
我が国からの「要請に基づく情報交換」の増加も踏まえ、外国税務当局に対する自発的な情報提供も積極的に実施。
- ○ 平成22年度における国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」の件数は1,260件となっています。また、1,260件の地域別の内訳は、アジア・大洋州向けが644件と全体の5割超を占めています。他方、外国税務当局から国税庁に提供された「自発的情報交換」の件数は35件となっています。
グラフ3 「自発的情報交換」の推移(平成18〜22年度、単位:件)
- ○ 「自発的情報交換」は、例えば、自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で外国税務当局にとって有益と認められる情報を自発的に提供するものです。
- ○ 我が国から外国税務当局への情報交換要請件数が大幅に増加する中、国税庁では、相互主義の観点も踏まえ、外国税務当局に対する「自発的情報交換」の積極的な実施に努めています。
「自発的情報交換」の実施例
- 国内法人が、海外取引先に対する販売手数料の一部を、取引先代表者の個人預金口座に送金しており、海外取引先における申告漏れが想定されたことから、この事実を取引先の所在地国・地域の外国税務当局に自発的に情報提供した。
(3) 「自動的情報交換」
【ポイント】
特定の納税者に関する情報交換のほか、非居住者への利子・配当等の支払に関する数十万件単位の情報を、外国税務当局との間で毎年交換。海外投資所得の申告漏れの把握等に活用。
- ○ 平成22年度における国税庁から外国税務当局に提供した「自動的情報交換」の件数は、約16万6千件となっています。他方、外国税務当局から国税庁に提供された「自動的情報交換」の件数は、約12万3千件となっています。
グラフ4 「自動的情報交換」の推移(平成18〜22年度、単位:千件)
- ○ 「自動的情報交換」は、法定調書等から把握した非居住者への利子・配当・使用料等の支払等に関する情報を、利子・配当等の支払国の税務当局から受領国の税務当局へ定期的に送付するものです。
- ○ 国税庁では、外国税務当局から「自動的情報交換」により提供を受けた資料を申告内容と照合し、海外投資所得等について内容を確認する必要があると認められた者に対して税務調査を行うなど、効果的に活用しています。
2. 効果的な情報交換の実施に向けた取組み
【ポイント】
外国税務当局との「情報交換ミーティング」等を通じ、情報交換を効果的かつ効率的に実施。
(1) 外国税務当局との「情報交換ミーティング」の実施
- ○ 租税条約等に基づく情報交換は、通常、関係当局間での文書やデータの送交付により実施することとなりますが、複雑な取引に係る情報提供要請で文書等のやり取りのみでは外国税務当局の正確な理解を得ることが困難と見込まれる事案や、特に迅速な情報入手が必要な事案については、国税庁や国税局・税務署の職員が相手当局の担当者と直接面談し、事案の詳細や解明すべきポイント等について説明・意見交換を行なう「情報交換ミーティング」を開催すること等により、情報交換の効果的かつ効率的な実施に努めています。
(2) 「国際タックスシェルター情報センター」の活用
- ○ 国際タックスシェルター情報センター(Joint International Tax Shelter Information Center:JITSIC)は、日、米、英、加、豪、韓、中、仏、独の9カ国の税務当局により設置されている組織で、ロンドン、ワシントンの両事務所に派遣された各国職員が、国際的租税回避スキーム及び富裕層に関連した情報交換要請への対応や調査手法等の知見の共有に取り組んでいます。
- ○ 国税庁では、JITSICのロンドン事務所・ワシントン事務所に派遣している職員を通じて、効果的・効率的な情報交換の実施や、課税上有益と認められる情報の収集に努めています。
(参考)租税条約等に基づく情報交換ネットワークの現状
【ポイント】
租税情報交換の重要性に関する世界的認識が高まる中、我が国の情報交換ネットワークも、53条約(64カ国・地域に適用)まで増加。
国際基準に則った情報交換を実施。
- ○ 経済の国際化が進展する中、国際的租税回避行為に対する対応を強化するため、各国では、租税条約等に基づく情報交換の枠組みの拡大・強化が図られています。我が国においても、新たな租税条約の締結を進めたり、既存の租税条約を改正して、情報交換規定を国際的な基準(注)に則ったものに改めるなど、情報交換に関する枠組みの整備を図っています。
- (注) 情報交換に関する国際基準(主なポイント)
- ・ 金融機関が保有する情報についても情報交換を行う。
- ・ 自国に課税利益がない場合でも情報を収集し提供する。
- ○ 最近では、バミューダ(22年8月)、香港(23年8月)、バハマ(23年8月)、サウジアラビア(23年9月)、マン島(23年9月)、及びケイマン諸島(23年11月)との租税条約や租税協定等、シンガポール(22年7月)、及びマレーシア(22年12月)との租税協定の改正議定書が発効したほか、今後、情報交換規定の新設を内容とするスイスとの租税条約の改正議定書の発効も予定されています。
- ○ 23年11月17日現在で見ると、我が国では、53の租税条約等(適用対象は64カ国・地域)が発効しています。今後、スイスとの改正租税条約の発効により、これらの租税条約等のすべてに情報交換規定が設けられることとなります。
- ○ 我が国の租税条約ネットワーク(PDF/183KB)

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