平成23年6月
国税庁

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、各国税局に配置されている国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。
 今般、平成22年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

主要ポイント

  • ○ 平成22年度に査察に着手した件数は196件です。
  • ○ 平成22年度以前に着手した査察事案について、平成22年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は216件、そのうち検察庁に告発した件数は156件であり、その結果、告発率は72.2%となっています。
  • ○ 平成22年度においては、従来どおり所得税、法人税事案に取り組むとともに、相続税、消費税事案についても積極的に取り組みました。過去5年間で比較すると、相続税事案は最も告発件数が多い結果となりました。
年度
項目
平成
18
19 20 21 22
着手件数
231

220

211

213

196
処理件数(A) 221 218 208 210 216
告発件数(B) 166 158 153 149 156
告発率(B/A)
75.1

72.5

73.6

71.0

72.2
着手・処理・告発件数、告発率の状況のグラフ

(参考1)税目別の告発件数
年度
平成18 19 20 21 22
区分
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
59

35

57

36

40

26

36

24

36

23
法人税 78 47 62 39 97 63 84 57 90 57
相続税 5 3 4 3 4 3 6 4 9 6
消費税 23 14 30 19 12 8 18 12 19 12
源泉所得税 1 1 5 3 - - 5 3 1 1
贈与税 - - - - - - - - 1 1
合計 166 100 158 100 153 100 149 100 156 100

税目別の告発件数のグラフ


2 脱税額の状況

主要ポイント

  • ○ 平成22年度に処理した事案に係る脱税額は、総額で248億円、そのうち告発分は213億円
    です。
  • ○ 告発した事案1件当たりの脱税額は、平均で1億3,700万円となっています。
年度
項目
平成
18
19 20 21 22
脱税額 総額 百万円
30,398
百万円
35,340
百万円
35,070
百万円
29,026
百万円
24,819
同上1件当たり 138 162 169 138 115
告発分 27,755 30,888 24,942 25,475 21,315
同上1件当たり 167 195 163 171 137

(注)脱税額には、加算税額を含む。

○脱税額 ○1件当たりの脱税額
脱税額のグラフ 1件当たりの脱税額のグラフ
(参考2)大口事案の推移
年度
項目
平成18 19 20 21 22
告発件数
166

158

153

149

156
  うち脱税額が3億円以上 17 20 14 17 15
うち脱税額が5億円以上 8 7 7 6 6

(注)脱税額には、加算税額を含む。

(参考3)税目別の脱税額
年度
平成18 19 20 21 22
区分
脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円
10,842

39
百万円
9,353

30
百万円
3,983

16
百万円
5,375

21
百万円
3,637

17
法人税 11,849 43 8,054 26 18,628 75 15,205 60 10,113 47
相続税 2,849 10 8,217 27 1,054 4 1,915 7 5,483 26
消費税 2,088 7 4,369 14 1,277 5 1,953 8 1,553 7
源泉所得税 127 1 895 3 - - 1,027 4 144 1
贈与税 - - - - - - - - 385 2
合計 27,755 100 30,888 100 24,942 100 25,475 100 21,315 100

(注)脱税額には、加算税額を含む。

税目別の脱税額のグラフ

3 告発の多かった業種・取引など

主要ポイント

  • ○ 平成22年度に告発の多かった業種・取引は、昨年度に引き続き、都市部における地価高騰の影響を受けた「不動産業」のほか、「建設業」、「運送業」の告発も多く見受けられました。
  • ○ 平成22年度の特色として、技能習得を目的とした外国人研修生を日本企業へ斡旋する「外国人研修生受入事業」や過払金返還請求等の債務整理業務を行う「認定司法書士」の告発がありました。
(参考4)告発の多かった業種・取引(5者以上)
平成20 21 22
業種 者数 業種 者数 業種 者数
鉱物・金属材料卸 14 不動産業 15 不動産業 13
不動産業 14 鉱物・金属材料卸 11 建設業 11
人材派遣業 11 建設業 9 運送業 11
商品・株式取引 11 商品・株式取引 8 商品・株式取引 10
パチンコ 8 クラブ 7 人材派遣業 5
建設業 6 人材派遣業 7 - -
電気機械器具製造 6 不動産譲渡 5 - -
コンサルタント 5 - - - -

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている

4 脱税の手段・方法

主要ポイント

  • ○ 脱税の手段・方法について、平成22年度に告発の多かった不動産業では、架空の経費を計上するものなどが見受けられました。
  • ○ その他の手段・方法としては、消費税の申告において、課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装するもの、国際取引を利用した事案として、タックスヘイブンに関係法人を設立し、架空の外注費を計上していたものなどがありました。

(参考5)脱税の手段・方法

 平成22年度に告発の多かった業種・取引における脱税の手段・方法としては、不動産業、建設業及び運送業では、架空の経費を計上するものが多く見受けられました。
 また、その他の手段・方法としては、

  • ○ 人材派遣業では、消費税の申告において、課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装するもの
  • ○ 税理士としての専門的知識を利用して、複数の関与先に脱税を指南していたもの

などや、国際取引を利用した事案として、

  • ○ 架空外注費を、タックスヘイブンに設立した関係法人に対して計上するとともに、海外に開設したその関係法人名義の預金に送金し、留保していたもの
  • ○ 海外で受領した仲介手数料収入を申告から除外するとともに、当該収入を国内に持ち込むことなく、海外に開設した預金で留保していたもの
  • ○ 被相続人が所有していた海外の預金やコンドミニアムを、相続税の申告から除外していたもの
などがありました。

5 不正資金の留保状況及び隠匿場所

主要ポイント

  • ○ 脱税によって得た不正資金の多くは、現金、預貯金又は有価証券として留保されていました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、現金の入ったスーツケースを、地中に隠匿していたものなどがありました。
  1. (1) 脱税によって得た不正資金の多くは、現金、預貯金又は有価証券として留保されていたほか、不動産、金地金、高級外車及び競走馬などを購入していた事例もありました。
     また、遊興費として、競馬や渡航先のカジノで費消していた事例がありました。
  2. (2) 脱税によって得た不正資金等の隠匿場所は様々でしたが、
    • ○ 本社事務所の残土置場地中約2メートルに埋められたスーツケース内(現金)
    • ○ 居宅の収納庫床下に設置された金庫内(現金)
    • ○ 居宅のウォークインクローゼットに設置されたキャビネット内(現金)
    • ○ 居宅のクローゼットに収納された衣服のポケット内(通帳)
    • ○ トランクルームに保管されたダンボール内の金庫や『空茶箱』と表示のある茶箱内(現金、金地金)

    に隠していた事例などがありました。

6 査察事件の一審判決の状況

主要ポイント

  • ○ 平成22年度中に一審判決が言い渡された件数は152件であり、すべてについて有罪判決が出され、実刑判決が6人に出されました。

項目


年度

1
判決件数
2
有罪件数

有罪率
(21)

実刑判決
人数
3
1件当たり犯則税額
4
1人当たり懲役月数
5
1人(社)当たり罰金額
平成
20

154

154

100.0

9
百万円
79

16.1
百万円
22
21 141 141 100.0 7 86 14.6 17
22 152 152 100.0 6 80 13.8 20

(注) 実刑判決人数及び35は、他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。