説明事項

課税漏れが想定されるなど調査必要度の高い法人、33,351件について実地調査
調査した法人の約7割に誤り、そのうち27%に悪質な不正計算

○ 実地調査の状況

(1) 実地調査の事績(法人税)(表1参照)
 平成22事務年度においては、大口・悪質な不正計算が想定されるもの、広域的に事業展開する納税者、消費税について虚偽の申告による不正還付が想定されるものなど調査必要度の高い法人を厳選し実地調査を行った。
 その結果は次のとおりである。

イ 実地調査の件数は東日本大震災の影響で前年対比79.7%となっている。
申告漏れの所得があったため、更正・決定等(修正申告があったものを含む。以下同じ。)を行った件数は23,581件である。このうち、仮装・隠蔽による不正計算のあったものは6,291件で、これは更正・決定等を行った件数の26.7%に当たる。

ロ 更正・決定等により増加した申告漏れ所得金額は6,341億円で、増加した税額は1,185億円である。
 なお、不正脱漏所得金額は1,184億円である。

ハ 更正・決定等1件当たりの申告漏れ所得金額は2,689万円、不正1件当たりの不正脱漏所得金額は1,881万円である。

参考

実地調査の状況
実地調査の状況 グラフ

表1 実地調査(法人税)の事績(税務署所管法人及び調査部所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比 (参考)全国に占める割合
件数 実地調査件数 1 41,862 33,351 79.7% 26.7%
更正・決定等の件数 2 29,271 23,581 80.6% 26.2%
不正のあった件数 3 7,839 6,291 80.3% 24.5%
増加所得等 増加所得金額 百万円 4 1,239,259 634,137 51.2% 50.5%
不正所得金額 百万円 5 133,306 118,355 88.8% 34.1%
増加税額(加算税を含む) 百万円 6 220,411 118,539 53.8% 47.0%
分析 更正・決定等の割合(2/1) 7 69.9 70.7 +0.8
2のうち、不正のあった割合(3/2) 8 26.8 26.7 −0.1
更正等1件当たり増加所得(4/2) 千円 9 42,337 26,892 63.5%
不正1件当たり不正所得(5/3) 千円 10 17,005 18,813 110.6%

消費税の調査で266億円を追徴
調査した還付申告法人の5割以上に誤り 31億円追徴

(2) 実地調査の事績(消費税)(表23参照)
 消費税について、虚偽の申告により不正に還付金を得るケースも見受けられるため、還付申告法人に対しても重点的に調査に取り組んでいる。

イ 消費税の調査件数は31,644件で、そのうち非違があったものは17,778件(56.2%)である。
 また、これによって増加した税額は266億円である。

ロ 上記のうち、還付申告法人の調査件数は3,154件で、非違があったものは1,738件(55.1%)である。
 これにより増加した税額は31億円である。
 また、調査の結果、当初還付から納税に転換した法人は269件であり、調査した法人の8.5%が実際は納税すべき法人であった。

参考

表2 実地調査(消費税)の事績(税務署所管法人及び調査部所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比 (参考)全国に占める割合
実地調査件数 1 39,580 31,644 79.9% 27.1%
非違件数 2 21,359 17,778 83.2% 27.3%
増加税額(加算税を含む) 百万円 3 28,098 26,648 94.8% 47.8%
調査1件当たりの増加税額(3/1) 千円 4 710 842 118.6%
表3 還付申告法人(消費税)の実地調査の事績(税務署所管法人及び調査部所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
実地調査件数 1 3,650 3,154 86.4%
非違件数 2 2,035 1,738 85.4%
増加税額(加算税を含む) 百万円 3 11,100 3,066 27.6%
調査1件当たりの増加税額(3/1) 千円 4 3,041 972 32.0%
納税転換法人数 5 342 269 78.7%

消費税の還付申告に対する取組み(図)


不正計算の多い業種は、バー・クラブ、外国料理、貴金属製品が上位

(参考)
 不正発見割合の高い業種(調査件数が50件以上)は、バー・クラブ、外国料理が前年に引き続き上位に位置しており、3位には貴金属製品が新たに入った。
 4位以下にはその他の飲食及びパチンコのほか、一般土木建築工事及び土木工事が10位以内に入った。

(参考)不正発見割合の高い業種(小分類)(税務署所管法人及び調査部所管法人)

(単位:%、千円)
順位 前年順位 22事務年度 不正発見割合 不正申告1件当たりの不正脱漏所得金額
1 2 料飲 バー・クラブ 56.3 11,296
2 3 料飲 外国料理 48.8 7,318
3 7 その他の製造 貴金属製品 44.4 3,462
4 5 料飲 その他の飲食 44.0 7,831
5 6 サービス パチンコ 41.1 107,902
6 8 サービス 廃棄物処理 40.3 14,067
7 建設 一般土木建築工事 29.8 20,751
8 建設 土木工事 29.3 6,028
9 4 料飲 大衆酒場、小料理 28.9 5,153
10 サービス 自動車修理 28.6 4,983

(注)調査件数が50件以上の業種を対象としている。

(参考)上位2業種の不正発見割合の推移
(参考)上位2業種の不正発見割合の推移 グラフ


赤字申告法人の調査の結果、224億円を追徴
10件に1件が黒字に

(3) 赤字申告法人に対する実地調査の事績(表4参照)
 全体の約76%を占める赤字申告法人の中には、税負担を逃れるために故意に赤字に仮装している法人もあることから、赤字申告法人に対しても積極的に調査を行っている。
 平成22事務年度における赤字申告法人に対する調査事績は、次のとおりである。

イ 調査件数は14,055件で、このうち仮装・隠蔽による不正計算のあったものは3,237件である。これは更正・決定等の件数の34.1%に当たる。

ロ 更正・決定等により増加した法人税の申告漏れ所得金額は3,518億円で、増加した税額は224億円である。
 なお、不正脱漏所得金額は562億円である。

ハ 更正・決定等1件当たりの申告漏れ所得金額は3,701万円、不正1件当たりの不正脱漏所得金額は1,737万円である。

ニ 調査の結果、赤字から黒字に転換した件数は1,421件で、調査した法人の10.1%の法人が、実際は黒字であるにもかかわらず赤字申告をしていた。

ホ 消費税の調査件数は13,284件で、そのうち非違があったものは、7,539件である(表5参照)。
 また、これによって増加した税額は96億円である。

参考

表4 赤字申告法人に対する実地調査(法人税)の事績(税務署所管法人及び調査部所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比 (参考)全国に占める割合
件数 実地調査件数 1 17,178 14,055 81.8% 26.9%
更正・決定等の件数 2 11,556 9,506 82.3% 26.2%
不正のあった件数 3 3,689 3,237 87.7% 25.8%
黒字に転換した件数 4 1,746 1,421 81.4% 24.8%
増加所得等 増加所得金額 百万円 5 740,090 351,796 47.5% 53.4%
不正所得金額 百万円 6 55,262 56,234 101.8% 35.0%
増加税額(加算税を含む) 百万円 7 25,732 22,357 86.9% 45.8%
分析 更正・決定等の割合(2/1) 8 67.3 67.6 +0.3
2のうち、不正のあった割合(3/2) 9 31.9 34.1 +2.2
黒字に転換した割合(4/1) 10 10.2 10.1 -0.1
更正等1件当たり増加所得(5/2) 千円 11 64,044 37,008 57.8%
不正1件当たり不正所得(6/3) 千円 12 14,980 17,372 116.0%

(参考)赤字申告法人に対する実地調査(法人税)の事績
(参考)赤字申告法人に対する実地調査(法人税)の事績(図)

表5 赤字申告法人に対する実地調査(消費税)の事績(税務署所管法人及び調査部所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
実地調査件数 1 16,131 13,284 82.4%
非違件数 2 8,781 7,539 85.9%
増加税額(加算税を含む) 百万円 3 12,486 9,551 76.5%
調査1件当たりの増加税額(3/1) 千円 4 774 719 92.9%

事業を行っているにもかかわらず申告していない法人の調査の結果、法人税18億円、消費税21億円を課税

(4) 稼働無申告法人に対する実地調査の事績(表6参照)
 事業を行っているにもかかわらず申告していない法人は、申告の義務を履行しておらず、国民の公平感を著しく損なうものであることから、様々な角度から資料を収集し、調査に取り組んでいる。
 平成22事務年度における無申告法人に対する調査事績は、次のとおりである。

イ 平成22事務年度末の無申告法人(休業法人を含む)は全体の11.6%を占めている。

ロ 調査の結果、法人税18億円、消費税21億円を課税した。そのうち意図的な無申告法人から、法人税11億円、消費税3億円を課税した。

参考

表6 事業を行っているにもかかわらず申告していない法人に対する実地調査の事績(税務署所管法人)(図)

表6 事業を行っているにもかかわらず申告していない法人に対する実地調査の事績(税務署所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
実地調査件数 1 912 1,744 191.2%
  うち意図的な無申告法人を把握した件数 2 104 158 151.9%
法人税追徴税額 百万円 3 1,791 1,807 100.9%
  うち意図的な無申告法人に係る追徴税額 4 885 1,102 124.5%
消費税追徴税額 百万円 5 1,050 2,111 201.0%
  うち意図的な無申告法人に係る追徴税額 6 286 316 110.5%

広域展開する企業グループへの調査の結果、全調査事案1件当たりの2.1倍の申告漏れ所得、2.5倍の不正所得を把握!

(5) 広域展開している企業グループに対する実地調査(法人税)の事績(表7参照)
 国税局や税務署の管轄をまたがって広域的に事業展開している企業グループに対しては、各国税局や税務署はそれぞれ緊密な情報交換を行い、一斉調査を実施するなど企業グループ全体を捉えた効率的・効果的な調査を実施している。
 平成22事務年度における、これら企業グループに対する調査事績は、次のとおりである。

イ 東京国税局の管轄地域に基幹法人を有する51の企業グループ412社に対して調査を実施した結果、更正・決定等により増加した法人税の申告漏れ所得金額は92億円で、不正脱漏所得金額は77億円である。

ロ 調査を実施した412社中、358社から申告漏れを把握し、このうち仮装・隠蔽による不正計算のあったものは211社である。これは更正・決定等の件数の58.9%にあたる。

ハ 更正・決定等1件当たりの法人税の申告漏れ所得金額は2,567万円で、これは調査を行った全法人の1件当たりの申告漏れ所得金額の2.1倍に当たる。

ニ 不正1件当たりの法人税の不正脱漏所得金額は3,657万円で、これは調査を行った全法人の1件当たりの不正脱漏所得金額の2.5倍に当たる。

参考

表7 広域展開する企業グループに対する実地調査(法人税)の事績(税務署所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比 (参考)全法人
件数 調査グループ数 1 57 51 89.5%
実地調査件数 2 489 412 84.3% 31,936
更正・決定等の件数 3 399 358 89.7% 22,366
不正のあった件数 4 244 211 86.5% 5,998
増加所得等 増加所得金額 百万円 5 12,044 9,191 76.3% 279,393
不正所得金額 百万円 6 9,924 7,717 77.8% 88,063
分析 更正・決定等の割合(3/2) 7 81.6% 86.9% +5.3 70.0%
2のうち、不正のあった割合(4/3) 8 61.2% 58.9% -2.3 26.8%
更正等1件当たり増加所得(5/3) 千円 9 30,185 25,673 85.1% 12,492
不正1件当たり不正所得(6/4) 千円 10 40,672 36,573 89.9% 14,682

広域展開する企業グループに対する実地調査(法人税)の事績(税務署所管法人)のグラフ


公益法人等への調査の結果、約7割に申告誤りあり。
法人税の申告漏れ所得金額は74億円

(6) 公益法人等に対する実地調査の事績(表8参照)
 公益法人等については、税の優遇措置が設けられており、社会的関心も高いことから、その事業実態を的確に把握し、適正・公平な課税に努める必要があることから、事業規模が大きいなど調査必要度が高い法人を中心に、調査の充実を図っている。
 平成22事務年度における、公益法人等に対する調査事績は次のとおりである。

イ 更正・決定等により増加した法人税の申告漏れ所得金額は74億円である。

ロ 法人税について更正・決定等を行った件数は272件で、これは、調査を行った件数の70.5%に当たる。

ハ 消費税については、調査の結果2億2千万円を追徴課税した。(表9を参照)

参考

表8 公益法人等に対する実地調査(法人税)の事績(税務署所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
件数 実地調査件数 1 365 386 105.8%
更正・決定等の件数 2 246 272 110.6%
不正のあった件数 3 21 20 95.2%
増加所得等 増加所得金額 百万円 4 4,804 7.372 153.5%
不正所得金額 百万円 5 105 207 197.1%
分析 更正・決定等の割合(2/1) 6 67.4% 70.5% +3.1
2のうち、不正のあった割合(3/2) 7 8.5% 7.4% -1.1
更正等1件当たり増加所得(4/2) 千円 8 19,528 27,103 138.8%
不正1件当たり不正所得(5/3) 千円 9 5,000 10,350 207.0%

(参考)公益法人に対する実地調査(法人税)の事績
公益法人に対する実地調査(法人税)の事績のグラフ

表9 公益法人に対する実地調査(消費税)の事績(税務署所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
実地調査件数 1 363 468 128.9%
非違件数 2 240 269 112.1%
増加本税額 百万円 3 405 216 53.3%
調査1件当たりの増加税額(3/1) 千円 4 1,116 462 41.4%


海外取引を行う法人の調査の結果、約76%の法人に申告誤りあり。
申告漏れ所得金額は537億円

(7) 海外取引法人に対する実地調査の事績(表10参照)
 海外取引法人や外資系法人及び国際的租税回避スキーム等の事案に対しては、国際税務専門官を中軸として、組織的に取り組んでいる。
 平成22事務年度における、海外取引を行う法人に対する調査事績は次のとおりである。

イ 更正・決定等により増加した法人税の申告漏れ所得金額は537億円で、うち仮装・隠蔽による不正所得金額は64億円である。

ロ 法人税について、更正・決定等を行った件数は2,731件で、これは調査を行った件数の76.4%に当たる。

ハ 消費税については、調査の結果13億円を追徴課税した。(表11を参照)

参考

表10 海外取引法人に対する実地調査(法人税)の事績(税務署所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
件数 実地調査件数 1 3,608 3,576 99.1%
更正・決定等の件数 2 2,769 2,731 98.6%
不正のあった件数 3 497 478 96.2%
増加所得等 増加所得金額 百万円 4 30,564 53,702 175.7%
不正所得金額 百万円 5 5,977 6,389 106.9%
分析 更正・決定等の割合(2/1) 6 76.7% 76.4% -0.3
2のうち、不正のあった割合(3/2) 7 17.9% 17.5% -0.4
更正等1件当たり増加所得(4/2) 千円 8 11,038 19,664 178.1%
不正1件当たり不正所得(5/3) 千円 9 12,026 13,366 111.1%

(参考)海外取引法人に対する実地調査(法人税)の事績
海外取引法人に対する実地調査(法人税)の事績のグラフ

表11 海外取引法人に対する実地調査(消費税)の事績(税務署所管法人)
事務年度
項目
21 22 前年対比
実地調査件数 1 3,498 3,482 99.5%
非違件数 2 1,810 1,837 101.5%
増加本税額 百万円 3 1,148 1,277 111.2%
調査1件当たりの増加税額(3/1) 千円 4 328 367 111.9%