所得税及び個人事業者の消費税について、平成30事務年度(平成30年7月から令和元年6月までの間)に実施した調査等の状況をまとめましたのでお知らせします。

1 所得税

(1) 調査等件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

所得税の調査については、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に、深度ある実地による調査(特別調査・一般調査)を優先して実施する一方、特定の事項などに申告漏れ等が見込まれる事案には、短期間で行う実地による着眼調査を実施しています(以下、実地により行う調査を総称して「実地調査」といいます。)。

このほか、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により、申告漏れ、計算誤り又は所得(税額)控除の適用誤りがある申告を是正するなどの接触(以下「簡易な接触」といいます。)を実施しています。

このように、事案に応じた的確な調査等(「実地調査」及び「簡易な接触」をいいます。以下同じです。)を実施し、適正・公平な課税に努めています。

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が1,211件(前事務年度1,322件)、着眼調査が785件(前事務年度850件)、合計は、1,996件(前事務年度2,172件)であり、簡易な接触の件数については、12,356件(前事務年度10,553件)となっています。

これらの調査等の合計件数は14,352件(前事務年度12,725件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は9,695件(前事務年度9,319件)となっています。

(2) 申告漏れ所得(調査等の対象となった全ての年分の合計)金額の状況

実地調査による申告漏れ所得金額は、140億81百万円(前事務年度149億37百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは116億6百万円(前事務年度126億15百万円)、着眼調査によるものは24億76百万円(前事務年度23億22百万円)となっています。

また、簡易な接触によるものは115億55百万円(前事務年度123億5百万円)となっており、調査等合計では256億36百万円(前事務年度272億42百万円)となっています。  

(3) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含みます。)の状況

実地調査による追徴税額は、20億3百万円(前事務年度23億66百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは17億95百万円(前事務年度21億68百万円)、着眼調査によるものは2億9百万円(前事務年度1億97百万円)となっています。

また、簡易な接触による追徴税額は5億4百万円(前事務年度6億38百万円)となっており、調査等合計では25億8百万円(前事務年度30億4百万円)となっています。

(4) 譲渡所得

所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数は、553件(前事務年度375件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は、439件(前事務年度285件)となっています。申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、31億62百万円(前事務年度18億52百万円)となっています。

2 消費税(個人事業者)

(1) 調査等件数及び申告漏れ等の非違があった件数の状況

消費税(個人事業者)の調査等については、課税事業者又は課税事業者と認められる個人を対象に、原則として所得税の調査等と同時に実施することとしておりますが、消費税のみが無申告である納税者に対しても、適正な課税に努めています。

実地調査の件数は、特別調査・一般調査が859件(前事務年度898件)、着眼調査が404件(前事務年度432件)、合計は、1,263件(前事務年度1,330件)であり、簡易な接触の件数は、774件(前事務年度863件)となっています。

これらの調査等の合計件数は2,073件(前事務年度2,193件)であり、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は1,503件(前事務年度1,643件)となっています。

(2) 追徴税額(調査等の対象となった全ての年分の合計で加算税を含みます。)の状況

実地調査による追徴税額は、12億86百万円(前事務年度11億75百万円)であり、そのうち特別調査・一般調査によるものは11億83百万円(前事務年度10億74百万円)、着眼調査によるものは1億2百万円(前事務年度1億1百万円)となっています。

また、簡易な接触による追徴税額は72百万円(前事務年度1億8百万円)となっており、調査等合計では、13億57百万円(前事務年度12億83百万円)となっています。

(参考1)平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(局計)

1 所得税

区分 実地調査 簡易な接触   調査等合計   譲渡所得
調査等
 
項目 特別・一般 対前年比 着眼 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比
1 調査等件数 1,322   850   2,172 10,553   12,725 5年ぶり増 375 11年ぶり増
1,211 91.6% 785 92.4% 1,996 91.9% 12,356 117.1% 14,352 112.8% 553 147.5%
2 申告漏れ等の非違件数 1,190   628   1,818 4年連続減 7,501   9,319 5年ぶり増 285 4年ぶり増
1,099 92.4% 562 89.5% 1,661 91.4% 8,034 107.1% 9,695 104.0% 439 154.0%
3 申告漏れ所得金額 百万円 12,615   2,322   14,937 3年ぶり減 12,305   27,242 3年連続減 1,852 3年ぶり増
11,606 92.0% 2,476 106.6% 14,081 94.3% 11,555 93.9% 25,636 94.1% 3,162 170.7%
4 追徴税額 本税 百万円 1,856   176   2,032   589   2,621  
1,532 82.5% 185 105.1% 1,717 84.5% 498 84.6% 2,215 84.5%
5 加算税 百万円 312   21   334   48   382  
263 84.3% 24 114.3% 286 85.6% 7 14.6% 293 76.7%
6 百万円 2,168   197   2,366 3年ぶり減 638   3,004 2年連続減
1,795 82.8% 209 106.1% 2,003 84.7% 504 79.0% 2,508 83.5%
7 一件当たり 申告漏れ所得金額 千円 9,542   2,732   6,877 5年連続増 1,166   2,141 4,939
9,583 100.4% 3,154 115.4% 7,055 102.6% 935 80.2% 1,786 83.4% 5,719 115.8%
8 追徴税額 本税 千円 1,404   207   935   56   206  
1,265 90.1% 236 114.0% 860 92.0% 40 71.7% 154 74.8%
9 加算税 千円 236   25   154   5   30  
217 91.9% 30 120.0% 144 93.5% 1 22.0% 20 66.6%
10 千円 1,640   232   1,089 5年ぶり減 60   236 2年連続減
1,482 90.4% 266 114.7% 1,004 92.2% 41 67.8% 175 74.1%

(注)

  1. 1 平成30年7月から令和元年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 上段は、前事務年度の計数である(上段・下段どちらも、資産課税部門職員の行った調査等の計数を含む。)。
  3. 3 「簡易な接触」の件数には、添付書類の未提出に対する提出依頼を行った件数等を含む。
  4. 4 追徴税額(本税)には、復興特別所得税額を含む。
  5. 5 単位未満を四捨五入しているため、合計及び対前年比に符合しない箇所がある。
  6. 6 実地調査の件数は、所得税と消費税の実地調査件数である。

2 消費税(個人事業者)

区分 実地調査 簡易な接触   調査等合計  
項目 特別・一般 対前年比 着眼 対前年比 対前年比 対前年比 対前年比
11 調査等件数 898   432   1,330 863   2,193 2年連続減
859 95.7% 404 93.5% 1,263 95.0% 774 89.7% 2,037 92.9%
12 申告漏れ等の非違件数 798   331   1,129 514   1,643 2年連続減
762 95.5% 282 85.2% 1,044 92.5% 459 89.3% 1,503 91.5%
13 追徴税額 本税 百万円 907   87   994   94   1,088  
997 109.9% 88 101.1% 1,085 109.2% 70 74.5% 1,154 106.1%
14 加算税 百万円 167   14   181   14   195  
186 111.4% 15 107.1% 201 111.0% 2 14.3% 203 104.1%
15 百万円 1,074   101   1,175 6年連続増 108   1,283 6年連続増
1,183 110.1% 102 101.0% 1,286 109.4% 72 66.7% 1,357 105.8%
16 一件当たり 追徴税額 本税 千円 1,010   201   747   109   496  
1,161 115.0% 217 108.0% 859 115.0% 90 82.6% 567 114.3%
17 加算税 千円 186   32   136   16   89  
217 116.7% 36 112.5% 159 116.9% 3 18.5% 100 112.5%
18 千円 1,196   233   883 5年連続増 125   585 5年連続増
1,378 115.2% 253 108.6% 1,018 115.3% 92 73.5% 666 113.8%

(注)

  1. 1 平成30年7月から令和元年6月までの間の実績で、いずれも調査等の対象となった全ての年分の合計の計数である。
  2. 2 消費税の追徴税額には、地方消費税(譲渡割額)を含む。
  3. 3 上段は、前事務年度の計数である。
  4. 4 単位未満を四捨五入しているため、合計及び対前年比に符号しない箇所がある。
  • 【参考1】特別調査・一般調査とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うものであり、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人等を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものである。
  • 【参考2】着眼調査とは、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査である。
  • 【参考3】簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものである。

(参考2)事業所得を有する者の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

順位 業種目 1件当たりの申告漏れ所得金額 1件当たりの追徴税額
(含加算税)
前年順位
      万円 万円  
1 一般海面漁業
主として海面において底引き網漁業、まき網漁業、刺網漁業、釣・はえ縄漁業、定置網漁業及び地びき網、船びき網漁業を行うもの
2,773 566
5
2 ダンプ運送
主としてダンプカーにより土砂などの積荷を運送するもの
1,462 206
3 美容
主としてパーマネントウェーブ、結髪、化粧などの美容サービスを提供するもの
1,072 199
4 果樹栽培農業
主として果樹の栽培、出荷を行うもの
966 119
5 板金工事
主としてとい(樋)、水切、雨押、スカイライト、ブリキ煙突などの工事を行うもの
964 108
6 畜産農業
(肉用牛)
主として肉用牛の飼養を行うもの
951 250
7 土木工事
主として道路工事、ダム工事、水路工事、上下水道工事等を行うことによって、土木施設を完成するもの
882 99
8 内装工事
主としてテックスその他繊維板のはり付け工事、壁紙工事、その他建築物及び船舶内部の装飾工事を行うもの
868 121
9 生命保険
外交員
保険会社に所属し、家庭や会社などを回って契約の募集・勧誘などに従事するもの
859 138
10 防水工事
主としてアスファルト防水工事、モルタル防水工事などを行うもの
814 129

(参考3)事業所得を有する者の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種

  21事務年度 22事務年度 23事務年度 24事務年度 25事務年度
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
    万円   万円   万円   万円   万円
1 一般海面漁業 1,983 柔道整復師 1,676 水産養殖業 3,004 野菜栽培農業 1,153 果樹栽培農業 1,195
2 水産養殖業 1,568 水産養殖業 1,644 一般海面漁業 1,571 果樹栽培農業 1,013 米作農業 1,049
3 税理士 1,370 機械部品受託加工 1,316 塗装工事 1,008 米作農業 783 野菜栽培農業 861
4 酒場 1,244 一般海面漁業 1,056 一般自動車整備 978 スタンドバー 764 大工工事 804
5 弁護士 1,102 野菜栽培農業 964 野菜栽培農業 965 税理士 739 塗装工事 750
 
  26事務年度 27事務年度 28事務年度 29事務年度 30事務年度
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
業種目 1件当たり
申告漏れ所得
    万円   万円   万円   万円   万円
1 一般海面漁業 1,050 土木工事 1,096 解体工事 1,879 焼肉 2,685 一般海面漁業 2,773
2 鉄骨、鉄筋工事 970 鉄骨、鉄筋工事 879 型枠工事 1,212 製図設計士 1,083 ダンプ運送 1,462
3 電気配線工事 953 水産養殖業 808 スタンドバー 1,061 酒場 1,072 美容 1,072
4 バー 744 板金工事 796 酒場 1,039 型枠工事 1,062 果樹栽培農業 966
5 学習塾経営 662 司法書士、行政書士 779 建設、設備工事労務者 991 一般海面漁業 1,022 板金工事 964

(注)1件当たりの申告漏れ所得は、調査全年分に係るものである。

(参考4)平成30事務年度 譲渡所得の調査等事績(局計)

事業年度 平成29務年度 平成30事務年度 対前事務年度
項目
1
調査等件数 375 553 147.5
  土地建物等 319 462 144.8
株式等 56 91 162.5
2
申告漏れ等の非違件数 285 439 154.0
  土地建物等 242 361 149.2
株式等 43 78 181.4
3 ポイント
申告漏れ割合(2/1 76.0 79.4 3.4
  土地建物等 75.9 78.1 2.2
株式等 76.8 85.7 8.9
4 百万円 百万円
申告漏れ所得金額 1,852 3,162 170.7
  土地建物等 1,500 2,447 163.1
株式等 352 716 203.4
5 千円 千円
1件当たり申告漏れ所得金額
4/1
4,939 5,719 115.8
  土地建物等 4,702 5,296 112.6
株式等 6,283 7,865 125.2

(注)

  1. 1 土地建物等は、土地建物(分離譲渡所得)及び金地金等(総合譲渡所得)である。
  2. 2 土地建物等は、課税年分ごとに1件としている。