令和6年8月
仙台国税局

T 租税滞納の状況

国税庁では、適正かつ公平な徴収を実現するため、期限内収納の確保に努めるとともに、滞納となったものについては、納税者個々の実情を踏まえながら、法令等に基づき、納税緩和措置の適用や滞納処分を実施するなどして確実な徴収に努めています。

(注)滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいいます。

1 令和5年度租税滞納状況の概要

令和5年度においても、期限内に納税した納税者との公平性を確保する観点から、納税に対する誠実な意思が認められない滞納者に対しては、財産の差押え等の滞納処分を厳正かつ的確に実施することにより滞納国税を徴収する一方、納税の猶予等の法令の要件に該当する滞納者に対しては、納税緩和措置を適用するなど、適切に滞納整理に取り組みました。

【令和5年度租税滞納状況】

(単位:百万円)
D(A+B−C)
令和4年度末滞納整理中のものの額(前期繰越額) 新規発生
滞納額
整理済額 令和5年度末滞納整理中のものの額(次期繰越額)
(97.5%) (116.5%) (104.3%) (107.6%)
37,379 37,056 34,202 40,233

(注)

  1. 1 括弧内の数値は、対前年度比です。
  2. 2 地方消費税を除いています。
  3. 3 令和6年4月及び5月に督促状を発付した滞納のうち、その国税の所属年度(納税義務が成立した日の属する年度)が令和5年度所属となるものを含んでいます。
  4. 4 各々の計数で四捨五入をしているため、合計が一致しない場合があります(次頁以降も同様。)。

2 新規発生滞納額

−新規発生滞納額は37,056百万円で、前年度より増加−

令和5年度における新規発生滞納額は、37,056百万円となっており、令和4年度と比較すると、5,245百万円(+16.5%)増加しました。

○ 新規発生滞納額の推移

平成26年度から令和5年度の新規発生滞納額の推移のグラフ

(注) 地方消費税を除いています。

3 滞納発生割合

−滞納発生割合は1.6%で、引き続き、低水準で推移−

令和5年度における滞納発生割合は、1.6%となりました。

(注)滞納発生割合とは、徴収決定済額(申告などにより課税されたものの額)に占める新規発生滞納額の割合をいいます。

○ 滞納発生割合の推移

平成26年度から令和5年度の滞納発生割合の推移のグラフ

(注) 地方消費税を除いています。

4 整理済額

−整理済額は34,202百万円で、前年度より増加−

令和5年度における整理済額は、34,202百万円となっており、令和4年度と比較すると、1,425百万円(+4.3%)増加しました。

○ 整理済額の推移

平成26年度から令和5年度の滞納整理済額の推移のグラフ

(注) 地方消費税を除いています。

5 滞納整理中のものの額(滞納残高)

−滞納整理中のものの額は40,233百万円で、前年度より増加−

令和5年度における滞納整理中のものの額は、40,233百万円となっており、令和4年度と比較すると、2,854百万円(+7.6%)増加しました。

○ 滞納整理中のものの額の推移

平成26年度から令和5年度の滞納整理済額の推移のグラフ

(注) 地方消費税を除いています。

6 (参考)主要税目別の租税滞納状況

(単位:百万円)
区分 A 前年度末     D(A+B-C)当年度末
税目 滞納整理中のものの額 新規発生滞納額 整理済額 滞納整理中のものの額
全税目
合計
令4 外 5,599 外 6,139 外 6,356 外 5,382
(125.9%)   (83.5%)   (108.4%)   (97.5%)  
  38,345   31,811   32,777   37,379
令5 外 5,382 外 7,198 外 6,949 外 5,631
(97.5%)   (116.5%)   (104.3%)   (107.6%)  
  37,379   37,056   34,202   40,233
主要税目別の内訳 所得税
4 (118.7%)   (77.2%)   (93.5%)   (103.2%)  
  12,829   7,035   6,625   13,239
5 (103.2%)   (106.7%)   (95.8%)   (108.8%)  
  13,239   7,508   6,345   14,402
  源泉所得税
4 (116.1%)   (75.8%)   (77.0%)   (110.0%)  
  3,451   1,397   1,052   3,796
5 (110.0%)   (105.2%)   (112.5%)   (107.5%)  
  3,796   1,470   1,184   4,082
  申告所得税
4 (119.7%)   (77.6%)   (97.4%)   (100.7%)  
  9,378   5,638   5,573   9,443
5 (100.7%)   (107.1%)   (92.6%)   (109.3%)  
  9,443   6,038   5,161   10,320
法人税
4 (112.5%)   (78.4%)   (117.0%)   (89.3%)  
  4,060   1,955   2,391   3,624
5 (89.3%)   (150.2%)   (90.7%)   (121.2%)  
  3,624   2,936   2,168   4,392
相続税
4 (84.4%)   (124.4%)   (111.8%)   (89.0%)  
  911   877   977   811
5 (89.0%)   (93.0%)   (78.9%)   (105.5%)  
  811   816   771   856
消費税
4 外 5,599 外 6,139 外 6,356 外 5,382
(137.4%)   (85.2%)   (113.0%)   (95.9%)  
  20,347   21,794   22,631   19,510
5 外 5,382 外 7,198 外 6,949 外 5,631
(95.9%)   (117.3%)   (109.2%)   (104.3%)  
  19,510   25,554   24,723   20,341
その他税目
4 (129.4%)   (65.5%)   (83.2%)   (98.5%)  
  198   150   153   195
5 (98.5%)   (161.3%)   (127.5%)   (124.1%)  
  195   242   195   242

(注)

  1. 1 括弧内の数値は、対前年度比です。
  2. 2 国税の滞納状況を示したものであるため、地方消費税を除いています。ただし、地方税法附則第9条の4の規定により、当分の間、国が消費税の賦課徴収と併せて地方消費税の賦課徴収を行うものとされていることから、「全税目合計」欄及び「消費税」欄の外書として、地方消費税の滞納状況を示しています。

U 滞納の未然防止及び整理促進に関する取組

1 滞納の未然防止に関する取組

国税庁では、適正かつ公平な徴収を実現するため、納税者の方に期限内に納付していただけるよう、以下のような滞納の未然防止策に取り組んでいます。

国税庁ホームページ、SNS等による広報・周知

  • 国税庁ホームページ「納税に関する総合案内」では、納付手続、計画的な納税(資金の積立て)の方法、納付が困難な方への猶予制度のご案内など、納税者の方のニーズに応じて、様々な情報を提供しています。
  • また、SNSを活用した納期限や振替期日などの周知のほか、地方公共団体、税理士会、関係民間団体、業界団体等の協力を得て、各種広報媒体や説明会等の機会を活用し、期限内納付のための広報・周知を実施しています。
<国税庁ホームページ「納税に関する総合案内」>
<X(旧Twitter)による周知>

キャッシュレス納付の推進

  • 国税庁では、納税者利便の向上と現金管理等に伴う社会全体のコストを縮減する観点から、キャッシュレス納付(振替納税、ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)、インターネットバンキング等による電子納税、クレジットカード納付、スマホアプリ納付)の利用拡大に取り組んでいます。
  • 令和6年5月30日(木)に、キャッシュレス納付の更なる推進に向けた機運を高めるため、関係する23団体共同で「国税・地方税キャッシュレス納付推進全国宣言式」を開催しました。
<キャッシュレス納付の概要>
<「国税・地方税キャッシュレス納付推進全国宣言式」>

行政機関等 国税庁、総務省、地方税共同機構、金融庁、全国知事会、全国市長会、全国町村会
金融業界団体等 日本銀行、全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会、農林中央金庫
関係団体等 日本税理士会連合会、全国青色申告会総連合、全国法人会総連合、全国間税会総連合会、全国納税貯蓄組合連合会、納税協会連合会
その他 日本マルチペイメントネットワーク推進協議会、日本マルチペイメントネットワーク運営機構

「予納ダイレクト」による納税資金の準備の呼び掛け

  • 国税庁では、スマートフォンなどから簡単な操作で手続が完了する「予納ダイレクト」による納税資金の準備をお勧めしており、税理士会、関係民間団体、業界団体及び各種説明会を通じた広報・周知を行っています。
  • 予納ダイレクトは、①将来に納付することが見込まれる国税を、②e-Taxに登録した預貯金口座からの引き落としにより、指定した期日にあらかじめ納付できる制度で、消費税などの計画的な納税に大変便利です。

個々の納税者に対する納付指導

  • 国税庁では、滞納の未然防止を図るため、納期限の前後に納税コールセンター等において、個々の納税者の方に対する納付指導を実施しています。

2 滞納の整理促進に関する取組

滞納となった国税については、期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間の公平性を確保する観点から、早期徴収に努めています。

徴収決定後、翌年度末までの整理状況

例えば、令和4年度の徴収決定済額(申告等により課税されたものの額)については、99.0%が滞納になることなく納付されており、滞納となったものについても、そのほとんどが比較的短期間で徴収され、令和5年度末時点では99.8%が徴収されています。

【令和4年度徴収決定済額】

納税コールセンターにおける滞納整理状況

  • 新規に発生した滞納事案は、納税コールセンターで幅広く所掌して、システムを活用した電話催告等を実施することにより、効果的・効率的な滞納整理を行っています。
  • 令和5年7月から令和6年6月末までに仙台国税局の納税コールセンターで催告対象となった52千者のうち、完納に至ったのは33千者(63.1%)、納付誓約中の者が8千者(15.7%)となっています。

3 悪質・処理困難事案への取組

(1) 原告訴訟の積極的な提起  

  • 通常の滞納整理の手法では処理進展が図られない事案については、詐害行為取消訴訟等を提起するなど、訴訟手法を活用した滞納整理にも取り組んでおり、令和5年度においては、全国で139件の原告訴訟を提起しました。
【事例】

滞納法人から代表者への不動産売却が、債権者を害する行為に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起した事例

《事案の概要》 《概要図》
①滞納法人の代表者であるAは、滞納法人に対して貸付金を有していた。
②滞納法人は、所有する唯一の財産である不動産をAに売却し、その売却代金とAからの借入金とを相殺した。
③国は、当該不動産売却が、債権者(国)を害する行為(不動産の金銭への換価により隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせる行為)であるとして、詐害行為取消訴訟を提起した。その後、国の主張を認容する判決がなされた結果、滞納法人から滞納国税全額の自主納付があった。

(2) 第二次納税義務の賦課

  • 第二次納税義務制度は、形式的には第三者に財産が帰属している場合であっても、実質的には、納税者にその財産が帰属していると認めても公平を失しないような場合に、その第三者に対して補充的に納税義務を負担させることにより、徴税手続の合理化を図るために認められている制度です。
  • 法令の要件に該当する事実を把握したときは、適切に第二次納税義務を賦課することにより、租税の徴収確保を図っています。
【事例】

滞納法人の資金を私的流用していた代表者に対して第二次納税義務を賦課し、滞納国税の全額を徴収した事例

《事案の概要》 《概要図》
①滞納国税を累積させたまま廃業した滞納法人は、既に解散登記を済ませており、差押可能財産は見当たらなかった。
②しかし、財産調査により、廃業直前に滞納法人の預金口座から多額の現金が出金されている事実を把握した。
③調査を進めた結果、代表者が、上記の現金を原資として、自己の住宅ローンの返済を行っていた事実が判明した。
④当該行為は、滞納法人から代表者に対する金銭の贈与に該当すると判断し、代表者に対して第二次納税義務を賦課したところ、代表者から滞納国税全額の納付があった。

(3) 国際徴収への取組  

  • 国税庁では、海外への財産の移転などによる国際的な滞納事案に対して、租税条約に基づく徴収共助の要請を確実に行うなど、国際徴収に積極的に取り組んでいます。
  • 令和5事務年度に日本から徴収共助を要請した件数は、全国で11件(累計109件)となっています。
  • また、令和5事務年度に外国の税務当局から徴収共助の要請を受けた件数は、全国で3件(累計24件)となっています。

※ 「徴収共助」とは、執行管轄権という制約がある中で、各国の税務当局が、相互主義の下、条約相手国の租税債権を徴収する枠組みです。

【事例】

海外に居住する邦人滞納者について、租税条約に基づき徴収共助の要請を行い、滞納国税の全額を徴収した事例

《事案の概要》 《概要図》
①滞納者(日本国籍)は、現在X国に居住しており、日本国内の不動産を譲渡したことによる譲渡所得について確定申告を行ったが、その国税を納付しなかった。
②日本国内の財産に滞納処分を行ったが、なお滞納額に不足する状況にあった。そのため、国税当局は、租税条約に基づき、滞納者の居住地国(X国)の税務当局に徴収共助の要請を行った。
③X国の税務当局が滞納者に督促を行ったところ、滞納者から納付の意思が示され、X国の税務当局に滞納国税全額の納付があった。
④その後、X国の税務当局から滞納者の納付額に相当する証券の送付を受け、滞納国税の全額を徴収することができた。
◆Web-TAX-TV「国外財産を追いかけろ!」

国税庁ホームページにおいて、海外に財産を移転させ納税を免れようとする悪質な滞納事案に対し、徴収共助制度を活用した徴収に取り組む徴収官の仕事をドラマ仕立てで紹介しています。

(4) 滞納処分免脱罪による告発    

  • 財産の隠蔽等により国税の徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行うなど、特に厳正に対処しており、令和5年度においては、全国で8件(16人(社))の事案を告発しました。
【事例】

滞納処分の執行を免れるため、取引先に対し、工事代金等を代表者の息子等名義の預金口座に振込入金させて財産を隠蔽した行為について、国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)により告発した事例

《事案の概要》 《概要図》
①滞納法人の取締役(代表者の妻)は、国税当局(徴収職員)に対し、滞納法人は廃業したと虚偽の説明を行った。
②代表者と取締役は、共謀し、滞納法人の取引先に依頼して、滞納法人の工事代金等を両者の息子等の名義の預金口座に振り込ませた。
③国税当局は、上記Aの行為が滞納法人に対する滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠蔽に該当すると判断し、滞納法人、代表者及び取締役を国税徴収法違反(滞納処分免脱罪)で告発した。

4 公売の実施状況

  • 国税庁では、滞納処分により差し押さえた財産について、入札や競り売りの方法により公売を実施し、売却した代金を滞納国税に充てています。
<公売による売却事例>
<公売におけるデジタル化への取組>
  • 公売手続については、インターネットを利用する方法による期間競り売り(インターネット公売)に加え、インターネットを利用する方法による入札(電子入札)も行っています。
  • また、公売公告を公売情報ホームページに掲載するなど、公売のデジタル化に取り組んでいます。
◆公売情報ホームページ◆