1 富裕層に対する調査状況
〜1件当たり申告漏れ所得金額及び1件当たり追徴税額が過去2番目〜

● 有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。

  • 令和3事務年度においては、59件(前事務年度70件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、過去2番目の1,215万円(同1,980万円)となっており、申告漏れ所得金額の総額は7億1千7百万円(同13億8千6百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は過去2番目の388万円(同443万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の285万円(同205万円)に比べ1.4倍となっています。また、追徴税額の総額は2億2千9百万円(同3億1千万円)に上ります。
  • 特に、海外投資等を行っている「富裕層」に対しては、1件当たりの追徴税額は672万円(同1,541万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の285万円に比べ2.4倍となっています。

〇 富裕層に対する調査の状況

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実地調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 70 59 84.3% 877
申告漏れ等の非違件数 63 55 87.3% 795
申告漏れ所得金額 百万円 1,386 717 51.7% 10,948
追徴税額 百万円 310 229 73.9% 2,499
一件当たり 申告漏れ所得金額 万円 1,980 1,215 61.4% 1,248
追徴税額 万円 443 388 87.6% 285

〇 海外投資等をした「富裕層」に対する調査の状況

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実施調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 5 6 120.0% 877
申告漏れ等の非違件数 5 6 120.0% 795
申告漏れ所得金額 百万円 154 183 118.8% 10,948
追徴税額 百万円 77 40 51.9% 2,499
一件当たり 申告漏れ所得金額 万円 3,080 3,048 99.0% 1,248
追徴税額 万円 1,541 672 43.6% 285

2 海外投資等を行っている個人に対する調査状況

〜1件当たり申告漏れ所得金額は4,204万円、1件当たり追徴税額は1,641万円で過去最高〜

●  経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施しています。

  • 令和3事務年度においては、32件(前事務年度33件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、過去最高の4,204万円(同1,396万円)となっており、所得税の実地調査(特別・一般)全体の1,248万円(同1,204万円)に比べ3.4倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は13億4千5百万円(同4億6千1百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は過去最高の1,641万円(同425万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の285万円(同205万円)に比べ5.8倍となっています。また、追徴税額の総額は5億2千5百万円(同1億4千万円)に上ります。

〇 海外投資等を行っている個人に対する調査の状況

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実地調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 33 32 97.0% 877
申告漏れ等の非違件数 32 30 93.8% 795
申告漏れ所得金額 百万円 461 1,345 291.8% 10,948
追徴税額 百万円 140 525 375.0% 2,499
一件当たり 申告漏れ所得金額 万円 1,396 4,204 301.1% 1,248
追徴税額 万円 425 1,641 386.1% 285

〇 取引区分別の調査状況

令和元事務年度の海外取引を行っている個人の取引区分別の調査状況を表したグラフ

(注)()の数値は構成比

  1. 1「輸 出 入」:事業に係る売上及び原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引をいう。
  2. 2「役務提供」:工事請負、プログラム設計など海外において行う、労力、技術等の第三者に対するサービスの提供をいう。
  3. 3「海外投資」:海外の不動産、証券などに対する投資(預貯金等の海外での蓄財を含む。)をいう。
  4. 4「その他」:海外で支払を受ける給与など、1〜3に該当しない取引等をいう。

【1件当たりの申告漏れ所得金額】

令和元事務年度の海外取引を行っている個人の実地調査(特別・一般)の全体の申告漏れ所得金額、一件当たりの申告漏れ所得金額及び取引区分ごとの申告漏れ所得金額を表したグラフ

3 インターネット取引を行っている個人に対する調査状況

〜暗号資産等取引を行っている個人に対する調査に係る1件当たり申告漏れ所得金額及び1件当たり追徴税額は高水準〜

● インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(注)に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

<シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査状況>

  • 令和3事務年度においては、21件(前事務年度21件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、1,628万円(同1,052万円)となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は3億4千2百万円(同2億2千1百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は307万円(同232万円)となっています。また、追徴税額の総額は6千5百万円(同4千9百万円)に上ります。

(注)
シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは、シェアリングビジネス・サービス、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を総称した経済活動のことをいいます。
 なお、令和2事務年度においては、この経済活動に暗号資産(仮想通貨)等取引を含めて集計していましたが、令和3事務年度においては、これを区別して集計しています。

<暗号資産(仮想通貨)等取引を行っている個人に対する調査状況>

  • 令和3事務年度においては、15件(前事務年度19件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、6,962万円(同2,294万円)となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は10億4千4百万円(同4億3千6百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は3,268万円(同512万円)となっています。また、追徴税額の総額は4億9千万円(同9千7百万円)に上ります。

〇 シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引(調査状況)

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実地調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 21 21 100.0% 877
申告漏れ等の非違件数 17 20 117.6% 795
申告漏れ所得金額 百万円 221 342 154.8% 10,948
追徴税額 百万円 49 65 132.7% 2,499
一件当たり 申告漏れ所得金額 万円 1,052 1,628 154.8% 1,248
追徴税額 万円 232 307 132.3% 285

〇 取引区分別の調査状況

令和元事務年度の海外取引を行っている個人の取引区分別の調査状況を表したグラフ

〇 暗号資産(仮想通貨)等取引(調査状況)

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実地調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 19 15 78.9% 877
申告漏れ等の非違件数 18 15 83.3% 795
申告漏れ所得金額 百万円 436 1,044 239.4% 10,948
追徴税額 百万円 97 490 505.2% 2,499
一件当たり 申告漏れ所得金額 万円 2,294 6,962 303.5% 1,248
追徴税額 万円 512 3,268 638.3% 285

4 無申告者に対する調査状況

〜所得税及び消費税ともに1件当たり追徴税額は過去最高〜

● 無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。

<所得税無申告者に対する調査状況>

  • 令和3事務年度においては、140件(前事務年度96件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの申告漏れ所得金額は、2,464万円(同2,168万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の1,248万円(同1,204万円)に比べ2倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は34億4千9百万円(同20億8千2百万円)に上ります。
  • 1件当たりの追徴税額は過去最高の517万円(同322万円)で、所得税の実地調査(特別・一般)全体の285万円(同205万円)に比べ1.8倍となっています。また、追徴税額の総額は7億2千4百万円(同3億9百万円)に上ります。

<消費税無申告者に対する調査状況>

  • 令和3事務年度においては、219件(同129件)実地調査(特別・一般)を実施しました。
  • 1件当たりの追徴税額は過去最高の202万円(同158万円)で、消費税の実地調査(特別・一般)全体の150万円(同92万円)の1.3倍となっています。また、追徴税額の総額は4億4千2百万円(同2億4百万円)に上ります。

〇 無申告者に対する調査状況

<所得税>

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実地調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 96 140 145.8% 877
申告漏れ所得金額 百万円 2,082 3,449 165.7% 10,948
追徴税額 百万円 309 724 234.3% 2,499
一件当たり 申告漏れ所得金額 万円 2,168 2,464 113.7% 1,248
追徴税額 万円 322 517 160.6% 285

<消費税>

事務年度等 2事務年度 3事務年度     3事務年度 実地調査
(特別・一般)全体
項目 対前年比
調査件数 129 219 169.8% 536
追徴税額 百万円 204 442 216.7% 801
1件当たり追徴税額 万円 158 202 127.8% 150