平成28年6月
大阪国税局

適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持を目的として、国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

  • ○ 平成27年度において査察に着手した件数は、40件でした。
  • ○ 平成27年度以前に着手した査察事案について、平成27年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は40件、そのうち検察庁に告発した件数は24件であり、告発率は60.0%でした。
年度 平成        
項目 23 24 25 26 27
着手件数
45 45 45 43 40
処理件数(A) 45 43 45 43 40
告発件数(B) 32 28 32 26 24
告発率(B/A)
71.1 65.1 71.1 60.5 60.0

平成23年度から平成27年度の着手・処理・告発件数、告発率の状況を表した図

2 脱税額の状況

  • ○ 平成27年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で34億円、そのうち告発分は26億円でした。
  • ○ 告発した事案1件当たりの脱税額は1億700万円でした。
  • ○ 告発した事案のうち、脱税額が3億円以上のものは2件でした。
年度 平成        
項目 23 24 25 26 27
脱税額 総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
3,930 3,126 2,615 3,536 3,400
同上1件当たり 87 73 58 82 85
告発分 3,333 2,768 2,468 2,983 2,566
同上1件当たり 104 99 77 115 107

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

○ 脱税額
平成23年度から平成27年度の脱税額を表した図

○ 1件当たりの脱税額
平成23年度から平成27年度の1件当たりの脱税額を表した図

(参考) 大口事案の推移

年度 平成        
区分 23 24 25 26 27
告発件数
32 28 32 26 24
  うち脱税額が3億円以上 1 1 - 2 2

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

  • ○ 平成27年度においても、従来どおり、所得税、法人税事案に取り組むとともに、消費税事案等についても積極的に取り組みました。

(1) 税目別の告発件数

年度 平成23 24 25 26 27
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
11 35 4 14 6 19 4 15 1 4
法人税 15 47 19 68 19 60 18 69 14 59
相続税 3 9 1 4 2 6 1 4 1 4
消費税 内−   内−   内−   内1   内5  
2 7 3 9 3 12 6 25
源泉所得税 3 9 2 7 2 6 2 8
合計 32 100 28 100 32 100 26 100 24 100

(注) 消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の告発件数である。

(2) 税目別の脱税額

年度 平成23 24 25 26 27
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
722 22 443 16 527 21 565 19 198 8
法人税 1,499 45 1,718 62 1,265 51 1,969 66 986 39
相続税 862 26 114 4 377 15 332 11 491 19
消費税 内−   内−   内−   内24   内651  
236 9 140 6 117 4 703 27
源泉所得税 250 7 257 9 159 7 188 7
合計 3,333 100 2,768 100 2,468 100 2,983 100 2,566 100

(注) 

  • 1 脱税額には、加算税額を含む。
  • 2 消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の脱税額である。

4 告発事件の概要

  • ○ 平成27年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、「建設業」、「金属製品製造業」でした。
  • ○ 脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上が多くみられたほか、平成23年度に創設された消費税受還付未遂犯、源泉所得税不納付や複数の納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ることを業とする、いわゆる脱税請負人に依頼して不正を行っていた事例もありました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金として留保されていたほか、不動産、有価証券、遊興費などに充てられていた事例もみられました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、代表者の親族名義の貸金庫に現金やインゴット(金)を隠していたものなどがありました。

(1) 告発の多かった業種・取引(2者以上)

平成 25 26 27
業種 者数 業種 者数 業種 者数
建設業 3 不動産業 7 建設業 3
クラブ・バー 2 建設業 3 金属製品製造業 3
運送業 2 物品・貴金属小売 2 クラブ・バー 2
情報処理サービス 2 古物小売 2
電子機器小売 2
時計小売 2

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(2) 脱税の手段・方法

 脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上が多くみられました。
 また、

  • ○ 消費税事案では、輸出免税売上に対応する課税仕入の消費税が還付になることを奇貨として、輸出取引を装い、国内における架空の課税仕入とこれに見合う架空の輸出免税売上を計上する方法で不正に還付を受けていたもの、又は、還付を受けようとしていたことから、消費税受還付未遂犯(平成23年度創設)を適用したもの
  • ○ 源泉所得税事案では、従業員等から所得税を徴収していたにもかかわらず、納付していなかったもの
  • ○ 複数の納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ることを業とする、いわゆる脱税請負人に依頼して不正を行っていたもの

などがありました。

(3) 不正資金の留保状況及び隠匿場所

 脱税によって得た不正資金は、現金、預貯金などとして留保されていたほか、不動産や有価証券の購入、遊興費として費消していた事例もみられました。

 脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、代表者の親族名義の貸金庫に現金やインゴット(金)を隠していた事例などがありました。

5 査察調査の状況

(1) 動員人数及び調査期間

 平成27年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に25箇所を調査し、延100名を動員しました。
 平成27年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで9か月の調査期間を要しました。

(2) 検察庁との連携

 検察庁との間で、早期かつ綿密な連携を図り、悪質な脱税者に対して厳正に対応しました。また、検察官が強制捜査を行った上で、合同で捜査・調査を実施し真相の解明に至った事案もありました。

(3) 国際化への対応

 国際取引を利用した事案に的確に対応するため、査察国際課による調査支援及び租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換制度を積極的に活用しています。

(4) ICT化への対応

 経済取引等のICT化に的確に対応するため、査察開発課による調査支援及びデジタルフォレンジック用機材を活用した電子機器等の電磁的記録の証拠保全、解析を行っています。

6 査察事件の一審判決の状況

  • ○ 平成27年度中に一審判決が言い渡された件数は28件であり、全てについて有罪判決が出され、実刑判決が1人に出されました。
項目 1 2     3 4 5
年度 判決件数 有罪件数 有罪率(12 実刑判決人数 1件当たり犯則税額 1人当たり懲役月数 1人(社)当たり罰金額
平成
25
百万円 百万円
25 24 96.0 0 62 11.6 12
26 内2 内2
18 17 94.4 1 57 14.7 17
27 内2 内2 内1
28 28 100.0 1 70 14.4 18

(注1) 表中の内書は、他の犯罪との併合事件を示している。

(注2) 3から5は、他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。