平成25年6月
大阪国税局

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。
 今般、平成24年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

平成24年度において査察に着手した件数は、45件でした。

平成24年度以前に着手した査察事案について、平成24年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は43件、そのうち検察庁に告発した件数は28件であり、告発率は65.1%となりました。


年度 平成        
項目 20 21 22 23 24
着手件数
46 45 47 45 45
処理件数(A) 47 47 46 45 43
告発件数(B) 34 34 33 32 28
告発率(B/A)
72.3 72.3 71.7 71.1 65.1

平成20年度から平成24年度の着手・処理・告発件数、告発率の状況を表した図

2 脱税額の状況

平成24年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で31億円、そのうち告発分は28億円となりました。

告発した事案1件当たりの脱税額は平均で9,900万円でした。

告発した事案のうち、脱税額が3億円以上のものは1件でした。


年度 平成        
項目 20 21 22 23 24
脱税額 総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
4,542 4,171 4,442 3,930 3,126
同上1件当たり 97 89 97 87 73
告発分 3,344 3,880 4,089 3,333 2,768
同上1件当たり 98 114 124 104 99

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

脱税額
平成20年度から平成24年度の脱税額を表した図

1件当たりの脱税額
平成20年度から平成24年度の1件当たりの脱税額を表した図

(参考1)大口事案の推移

年度 平成        
区分 20 21 22 23 24
告発件数
34 34 33 32 28
  うち脱税額が3億円以上 2 2 3 1 1

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

平成24年度においても、従来どおり、所得税、法人税事案に取り組むとともに、相続税、消費税、源泉所得税事案についても積極的に取り組みました。


(参考2)税目別の告発件数

年度 平成20 21 22 23 24
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
9 26 3 9 10 30 11 35 4 14
法人税 22 65 24 70 16 49 15 47 19 68
相続税 - - 1 3 3 9 3 9 1 4
消費税 3 9 5 15 3 9 - - 2 7
源泉所得税 - - 1 3 1 3 3 9 2 7
合計 34 100 34 100 33 100 32 100 28 100

(参考3)税目別の脱税額

年度 平成20 21 22 23 24
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
816 24 223 6 1,350 33 722 22 443 16
法人税 2,473 74 2,854 73 1,106 27 1,499 45 1,718 62
相続税 - - 84 2 982 24 862 26 114 4
消費税 55 2 624 16 507 12 - - 236 9
源泉所得税 - - 95 3 144 4 250 7 257 9
合計 3,344 100 3,880 100 4,089 100 3,333 100 2,768 100

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

4 告発事件の概要

平成24年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、「建設業」、「情報提供サービス」、「クラブ・バー」、「飲食業」でした。

脱税の手段・方法としては、これまでに引き続き、売上除外や架空の原価・経費の計上がありました。
また、納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ていた、いわゆる脱税請負人関与事案がありました。

脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金として留保されていたほか、不動産の購入に充てたり、自己の遊興費に費消するなどの例も見られました。

脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、現金の入った金庫をダンボールで隠していたものなどがありました。

(1) 告発の多かった業種・取引(2者以上)

平成 22 23 24
業種 者数 業種 者数 業種 者数
商品・株式取引 5 商品・株式取引 3 建設業 3
建設業 4 人材派遣業 3 情報提供サービス 2
機械器具製造 2 食料卸 2 クラブ・バー 2
飲食業 2 運送業 2 飲食業 2
協同組合 2 飲食業 2 - -
- - パチンコ 2 - -
- - 情報提供サービス 2 - -
- - 広告代理 2 - -

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(2) 脱税の手段・方法

 脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上が多く見られました。
 また、

 無申告事案では、国外に住むと課税対象にならないことに目を付け、国外に居住地を移すとの虚偽の転出届を提出し納税を免れていたもの
 源泉所得税事案では、従業員等から所得税を徴収していたにもかかわらず、一切納付することなく、事業資金や生活費に充てていたもの

 そのほか、

 脱税請負人が関与し、課税仕入れに該当しない人件費を課税仕入れとなる外注費に科目を仮装していた消費税事案

などがありました。

(3) 不正資金の留保状況及び隠匿場所

 脱税によって得た不正資金については、

  • 現金、預貯金
  • マンション等の不動産

などで留保されていた事例や、

  • 高級外車を購入
  • 海外に資金を持ち出し資産運用
  • 海外のカジノで遊興し費消

していた事例がありました。
 また、脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、

  • 居宅のクローゼット内のブランド品のカバン
  • 居宅の和室(押入れ)内のダンボールで隠した金庫

に現金を隠していた事例がありました。

5 査察調査の状況

平成24年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に延べ136名を動員し、35か所を調査しました。

平成24年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで8か月の調査期間を要しました。

検察庁との連携強化を図り、悪質な脱税者に対し厳正に対応しました。

国際取引を利用した事案に的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換制度を活用しました。

経済取引等のICT化に的確に対応するため、デジタルフォレンジック(電磁的記録の証拠保全・解析技術)用機材を活用し、電子機器等の電磁的記録の証拠保全及び解析を行いました。


(1) 動員人数及び調査期間

平成24年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に延べ136名を動員し、35か所を調査しました。
 平成24年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで8か月の調査期間を要しました。調査期間が1年を超えた事件は5件あり、このうち最も長いものは約2年1か月でした。

(2) 検察庁との連携

検察庁との間で、早期かつ綿密な連携を図り、悪質な脱税者に対して厳正に対応しました。また、合同で捜査・調査を実施し真相の解明に至った事案もありました。

(3) 国際化への対応

国際取引を利用した事案に的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく情報交換を活用しました。
 平成24年度に処理した事案では、情報交換による回答から、不正資金の一部を海外で留保していたことが判明したものがありました。

(4) ICT化への対応

経済取引等のICT化に的確に対応するため、デジタルフォレンジック用機材を活用し、電子機器等の電磁的記録の証拠保全及び解析を行いました。
 平成24年度に処理した事案では、膨大なメールデータを解析し、不正取引を解明したものがありました。