居波 邦泰
税務大学校
研究部教育官


要約

1.研究の目的(問題の所在)

BEPSとは「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字による略語であり、「税源浸食と利益移転」の訳語があてがわれているものである。

その概念や射程としては、国際的にも国内的にも明確な定義が置かれているわけではないものの、一般的に、「多国籍企業等が、グループ関連者間における国際取引により、その所得を高課税の法的管轄から無税又は低課税の法的管轄に移転させることで、国際的二重非課税を生じさせるもの」と言えるのではないかと考える。

もともとBEPSは、2012年6月のOECD租税委員会本会合において、米国から「税源浸食と利益移転」が法人税収を著しく喪失させている点を憂慮しているとの問題提起がなされたことから、OECDにおいてワーキング・パーティとは別に、「BEPSプロジェクト」として開始されたものであると聞く。

BEPSプロジェクトは、経済実態と課税実態の乖離を防止する方策を、戦略的かつ分野横断的に検討し、国際的に協調された対応を促すものとして発足したものであり、わずか半年後の2013年2月には、税源浸食に対する対応の方向性を示したOECD報告書「税源浸食と利益移転への対応(Addressing Base Erosion and Profit Shifting)」(以下「BEPS報告書」という。)が公表されたところである。

このBEPS報告書で、OECDは「BEPSの多くは、軽課税国への無形資産の移転、ハイブリッド・ミスマッチの利用等を組み合わせ、税率の低い国・地域に利益を移転することで生じている」と分析し、「多くのBEPSの手法は合法であり、国際課税原則を見直す必要性がある」としている。多国籍企業の具体的な税源浸食(BEPS)スキームとしては、米国や英国の議会公聴会で聴取されたものとして、Googleの「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドウイッチ」等が挙げられている。

この多国籍企業のBEPSに対して、効果的な歯止めをかけるために、2013年6月のOECD租税委員会本会合において、「税源浸食と利益移転に係る行動計画(Action Plan on Base Erosion and Profit Shifting)」(以下「BEPS行動計画」という。)が承認され、このなかで15のアクションプランが提言されたところである。

我が国においても、多国籍企業による所得の創出活動の行われる法的管轄との不整合を生じさせる税源浸食と利益移転については、現行の国際課税原則に変更を加えることも視野に入れての検討が進められていくものと思慮され、以下に、今後のBEPSの検討に関して必要と思われる事項についての考察を行うものである。

2.研究の概要

(1)「BEPS行動計画」の15のアクションプラン

イ BEPS行動計画における基本的スタンス

・ 数多くの状況において、国境を越える利益への課税を規律している既存の国内法及び条約ルールは、適切な結果を生じさせておりBEPSを引き起こしてはいない。これらのアクションは、直接的には、国境を越える所得の課税権の配分に関して、既存の国際基準を変更することを目的としない。

・ このアクションプランは、税源浸食と利益移転を防止し対処することを意図した濫用防止規定を含め、最近のメカニズムの根本的な変更と新しいコンセンサスベースのアプローチの採用を要請する。

・ 新しい国際基準が、法人所得税制の一貫性を国際レベルで確保するよう立案されなくてはならない。

・ 政府の間には、利益に係る「定式配分方式システム」への移行は、実行可能な方法ではないとのコンセンサスがある。

ロ  BEPS行動計画の承認・公表

上記のとおり、2013年6月にOECDの租税委員会の本会合でBEPS行動計画が承認され、7月のG20蔵相会合で公表された。これにより、15に及ぶBEPSのアクションプランが打ち出された。

(2)BEPSに係る検討の前提として必要とされるべき事項

最初に、OECDのBEPSのアクションプランに対しての検討を行う前に、以下のような、その「前提としての認識」並びに「あることが望ましいコンセンサス」の必要性を考える。

イ BEPSに係る検討の「前提として認識しておくべき事項」

(イ) 国際的課税権の確保に対する諸外国の非対称性

課税権の確保に対する諸外国のスタンスは、その国の置かれたポジション等(国の規模や経済的、政治的、社会的な立場等)によって大きく異なるものである。

無形資産による所得の国外流出の取扱いがその一例になるが、先進国、新興国(BRICs)、途上国、そしてタックス・ヘイブンの国・地域で、そのスタンスは大きく異なるわけであり、パテントボックス制度の存否等をみても、先進国の間でも米国・ドイツと英国・フランス・オランダなどで大きく異なっている。

加えて、国際的に影響力の大きい先進国の行動を認識する際には、その国の中においても、政党や経済主体等により方向が全く異なることに留意しなければならない(ex. 米国の共和党と民主党など)。したがって、一つの国が必ずしも一つの方向に向かっているわけではないことを十分に認識すべきである。

(ロ) タックス・ヘイブンの国・地域への認識

タックス・ヘイブンの国・地域については、形式的にタックス・ヘイブンであることが明確であるピュア・タックス・ヘイブンよりも、OECDやEUの加盟国でタックス・ヘイブンの特徴を有している国々により注意すべきである。これらの国は、BEPSへの対応策への強い協力を宣言しながら、実態として自身はBEPSとなる行動を取り続けることが想定される。

(ハ) 国際協調性の必要性

BEPS報告書では、「一部の国が協調せずに、基準を満たさない場合、負の外部効果や底辺への競争を生じさせる」と述べており、BEPSの効果的な対応のためには国際的な協調が一部の抜け駆けを認めることなく必要であるとしている。

ロ BEPSに係る検討の前提として「コンセンサスがあることが望ましい事項」

(イ) 低課税国の数%の実効税率との差と国際的二重非課税

BEPSに係る国際的二重非課税として、国外流出した所得についてその流出先の国・地域の税率がゼロであり事実上課税がなされない場合が該当することには、一般に異論はないであろうが、これに対し、低課税国の実効税率が例えば1〜2%である場合にはBEPSにおける対応策の対象にしないということであれば、BEPSへの対応策の実効性はほとんど失われてしまうことが十分に予想される。

低課税国における優遇税制の適用後の数%の実効税率との差に対して、これも国際的二重非課税として、BEPSの取扱いを適用するかについては、今後、先進諸国間においても大きく意見が分かれるのではないかと思慮される。

(ロ) 法的管轄への所得帰属の在り方1 − 法的所有権と経済的所有権

BEPSにおける法的管轄への所得帰属の基本的な考え方としては、BEPS行動計画のなかで、以下のような指摘が数度なされており、所得の帰属については、「所得を生み出す経済的な活動に対し、より緊密な関係を有すること」が必要と考える。

・既存の国内的及び国際的な課税ルールは、所得を生み出す経済的な活動と所得の配分とがより緊密な関係に調整されるために修正されるべきである

:Existing domestic and international tax rules should be modified in order to more closely align the allocation of income with the economic activity that generates that income:

(ハ) 法的管轄への所得帰属の在り方2 − リスク及び機能への所得の帰属

このことについては、後述の無形資産修正ドラフトにおいても、「リスク及び機能」を「独立企業の第三者が提供した場合に収受する対価又は補償の額を限度として、所得の移転を認めることとすべきである」とする見直しが示されているところである。

(ニ) ベネフィシャル・オーナーの概念及び究極的オーナーの概念

ベネフィシャル・オーナーの概念について、BEPSへの取組みに関して、一定の国際的コンセンサスが得られるのであれば、所得の本来帰属すべき法的管轄の判定において有効に活用できるものと考えられる。

加えて、ベネフィシャル・オーナーの概念と重なるものと思われるが、帰属の明確化を図る観点で、多国籍企業においてグループ全体を最終的に統括している企業を、多国籍企業グループの「究極的オーナー」として、この真のグループ統括企業に対してグループの超過利益を帰属させることも、所得の本来帰属すべき法的管轄の判定における一つの考え方であると思われる。

(3)BEPS行動計画に係るOECDのディスカッション・ドラフトへの考察

OECDは、BEPS行動計画に関して2014年9月が期限のものについて、以下のディスカッション・ドラフトを公表した。これらについては、コメントを収集してパブリック・コンサルテーションを開催し、そこで修正されたものを正式案として、同6月の租税委員会本会合の承認を得て、これらについて同9月にBEPSへの取組みの関係各国へ勧告等を行うこととしている。

〔公表日〕 〔No〕 〔ディスカッション・ドラフトのタイトル〕
2013.7.30 AP 8 「無形資産の移転価格に関する修正ディスカッション・ドラフト」
2014.1.30 AP13 「移転価格文書化とCbC Reportingに関するディスカッション・ドラフト」
2014.3.14 AP 6 「不適切な状況における租税条約の特典付与の防止」
2014.3.19 AP 2 「ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の無効化」
2014.3.24 AP 1 「デジタル経済に係る課税上の課題への対応」

イ AP 8〔移転価格−無形資産の取扱い〕

(イ) 「無形資産の移転価格に関する修正ディスカッション・ドラフト」の内容

「無形資産の移転価格に関する修正ディスカッション・ドラフト」(以下「無形資産修正ドラフト」という。)では、OECD移転価格ガイドライン第6章の全面改訂を予定しており、そのなかでは、1無形資産の特定については、その概念を示すに留め、2「無形資産に関連するリターン」の関連者間での配分については、その法的所有ではなく、経済的実質に重点を置いて、無形資産の開発、改良、維持及び保護が、最終的なリターンの配分への重要な要因になることとし、3無形資産に係る移転価格算定方法としては、会計上の評価方法であるDCF法の利用に十分な配慮をした上で道を開くものとされた。

無形資産修正ドラフトでは、その取扱いを明確化するための27事例が用意されているが、これらはタイトルも図もなく文書だけであるので、これらにタイトルを付けて図解したものの作成を行った。

(ロ) 無形資産修正ドラフトへの考察

本ドラフトは、BEPSの取組み以前の2012年6月6日に公表された「OECD移転価格ガイドライン第6章に関するディスカッション・ドラフト」を踏まえて、1年以上の検討を重ねて発出されたものであり、上記13の取扱いが正式にガイドライン第6章に採用されるものと思慮され、個人的にもこれは妥当な取扱いであると強く認識をするところである。

今後、9月の勧告による制度改正(新文書化及びCbC Reportingを含む)を踏まえて、国際的事業再編等に移転価格税制を的確に適用するための執行体制や通達(ガイドライン)等を検討することが必要になるものと考える。

ロ AP13〔移転価格−文書化とCbC Reporting〕

(イ) 「移転価格文書化とCbC Reportingに関するディスカッション・ドラフト」の内容

「移転価格文書化とCbC Reportingに関するディスカッション・ドラフト」(以下「文書化とCbC Reportingドラフト」という。)では、OECD移転価格ガイドライン第5章の全面改訂を予定しており、移転価格文書化で税務当局に開示する文書について、「マスターファイル」を「究極の親会社(ultimate parent)」が提出し、「ローカルファイル」を各国の関連事業体が提出することとされた。

また、「CbC Reporting」については、マスターファイルの一部として究極の親会社が代表して提出することとされた。

(ロ) 文書化とCbC Reportingドラフトへの考察

我が国は移転価格文書化について間接的にしか法的義務を課していない。上記のマスターファイルやローカルファイルは、そのようなこれまでの文書化の延長線上での対応も考えられるが、CbC Reportingについては直接的な法的義務を新設しなければ多国籍企業から提出させることは困難であると思慮する。

なお、我が国のビジネス界は、現状においてCbC Reportingに対して、経団連からOECDに提出された意見書をみるに、拒絶的な反応を極めて強く示している。最終的にどのようなCbC Reportingの様式になり、我が国でどのように導入されるのかについて十分に留意する必要がある。

ハ AP 6〔租税条約濫用の防止〕

(イ) 「不適切な状況における租税条約の特典付与の防止」の内容

「不適切な状況における租税条約の特典付与の防止」(以下「租税条約濫用防止ドラフト」という。)では、トリーティ・ショッピング(条約漁り)に関して、租税条約自体の対応として、「特典制限条項(Limitation-on-benefit Provision)」及び「主要目的テスト(Main Purpose Test)」をOECDモデル租税条約に導入し、前者には、「能動的事業活動基準」及び「権限ある当局による認定」を盛り込むことが提案された。

また、国内税法に関する対応としては、OECDモデル租税条約1条3項で「セービング・クローズ」を導入することが提案された。

(ロ) 租税条約濫用防止ドラフトへの考察

トリーティ・ショッピング等の租税条約濫用に対するBEPSの取組みとして、本ドラフトは、既に米国モデル租税条約等で導入がなされている「LOB条項」、「主要目的テスト」、「セービング・クローズ」等をOECDモデル租税条約に導入することを提案したものであり、BEPSへのより具体的かつ効果的な対応は、その他のBEPS行動計画〔AP2、AP3、AP7、AP8、AP9、AP10等〕で行うことがより妥当であるとの認識が覗われるものであると思慮する(租税条約でのBEPSの防止は大枠の取扱いかと考えられ、これで率先して防止を図るものとの認識は薄いのではないかと思慮する。)。ただし、BEPSにより効果的なLOB条項としては「制限的LOB条項」ではなく、軽減税率も対象となる「包括的LOB条項」がより望ましいものと考える。

また、経済的実質の捉え方としては、「取引」ではなく「事業体」自体にその収益を得る実体がなければ租税特典を認めないことが、BEPSへのより効果的な対応ではないかと考える。

ニ AP 2〔ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の無効化〕

(イ) 「不適切な状況における租税条約の特典付与の防止」の内容

「ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の無効化」(以下「ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフト」という。)では、その勧告案をで示した一覧表にまとめている。

これによれば、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントは、1ハイブリッド金融商品及び譲渡、2ハイブリッド事業体支払、3リバース・ハイブリッド及びインポーテッド・ミスマッチに類型化され、これらの分類ごとに、「国内法の改正に係る勧告」と「リンキング・ルールに係る勧告」が提案された。

リンキング・ルールでは、「第一義的対応」と「防御的対応」により、国際的二重課税が排除されるよう配慮がなされた。

(ロ) ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトへの考察

ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトでは、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントを上記のように類型化し、その分類ごとに取扱いを勧告するというものになっている。

これについて、1すべてのハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントが上記に分類されるものであるか、2解釈で分類が国によって異なることは生じないのか等の疑問を感じるところである。AP8の移転価格における無形資産に関しては、そのようなことが生じないよう無形資産の定義を置くことを避けたのであるが、これについては将来的な見直しの必要性を感じるところである。

個人的には、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントについて、経済的実体から判定して所得の帰属について以下の取扱いが望ましいのではないかと思慮する。

  • 低課税国の数%の実効税率との差についても国際的二重非課税と認識すること
  • 居住地国及び源泉地国への所得の帰属を経済実質的に判定して、源泉地国への帰属が明確な所得については、タイブレイク・ルールにおいて「源泉地国」に課税の優先権を与えること

ホ AP 1〔電子商取引課税〕

(イ) 「デジタル経済に係る課税上の課題への対応」の内容

「デジタル経済に係る課税上の課題への対応」(以下「電子商取引課税ドラフト」という。)については、2014年9月に「勧告」ではなく「報告書」が公表されることが予定されているものである。本ドラフトでは、課税国境を越えるデジタル経済の背景並びに法人税及び消費税の在り方についての研究・分析がなされ、現状での潜在的結論(オプション)が提示されているものである。

本ドラフトでは、実物経済とデジタル経済で、同様の状態の取引については、同レベルでの課税がなされるべきであるとして、そのために「仮想PEの創設」、「デジタル経済対象の源泉税の創設」、「VATにおける外国事業者の登録制度」を実施すること等が選択肢として述べられている。

(ロ) 電子商取引課税ドラフトへの考察

我が国の消費税法では、デジタル財の販売を行う国内事業者と国外事業者との競争条件の歪みを是正するため、登録制度を導入した上で国外事業者に我が国の消費税の納税義務を課すなどの制度改正がなされるところであり、一定の方向性が示されたところである。

法人税法では、タックス・ヘイブン等の低課税国を含む国・地域にサーバ等を設置するだけで容易にBEPSを構築できるわけであり、このような経済的実体のない所得の帰属に対して、本ドラフトのいう「同様の状態の取引については、同レベルでの課税がなされるべき」との考えに基づき、将来的には、仮想PE課税の議論や新たな源泉税の創設等が必要であるほか、「定式配分コンセプトによる所得配分」の理論も必要になるのではないかと思慮する。

へ AP 3〔外国子会社合算税制(CFC税制)の強化〕への考察

外国子会社合算税制の強化については、2015年9月が期限の取組みであり、まだディスカッション・ドラフトの公表等はなされていないが、これをBEPSの観点から強化をするのであれば、以下のことを検討する必要があるのではないかと思慮する。

  1. 1 我が国の外国子会社合算税制の適用除外基準は実際にBEPSの防止に関してどのように機能しているか。
  2. 2 「外国子会社配当益金不算入制度」の導入時に新たに規定した「統括会社」や「資産性所得」は、BEPSに対してどのような効果を与えているか。
  3. 3 「外国子会社配当益金不算入制度」についてBEPSの観点から制度改正をする必要はないか。

(4)将来的なBEPSへの検討 − 定式配分方式の利用可能性

最後に、将来的なBEPSへの検討として、定式配分方式の利用可能性について検討しておきたい。世界的な定式配分方式の導入の可否については、今後とも困難と考えるが、定式配分方式に係るコンセプト、つまり、法的管轄の「資産」・「人件費」・「売上」等の多国籍企業グループ全体に対する比率から、少なく見積もってもこれだけの所得はこの法的管轄に存在するというコンセプトを、BEPSの観点から有効利用できないかについては、多国間APA、相互協議、仲裁制度への活用という点から、以下のように考える。

1 定式配分コンセプトを取り込んだ多国間APAの導入

多国籍企業のAPAにおいて、定式配分コンセプトに基づいた多国間APAはどうであろうか。すべての多国籍企業を対象とした一様な「世界的な定式配分方式」の導入は困難を極めるかと思われるが、一つの多国籍企業において、そのなかのある取引について関係する国・地域に限定して、多国籍企業の要望により行う多国間APAであれば、世界的な定式配分方式が成立する可能性はあるのではないかと思慮する。

2 定式配分コンセプトを取り込んだ相互協議

相互協議では、二国間の権限ある当局(Competent Authority:CA)による国際租税調整がなされるわけであるが、その調整がうまく機能しないことも多いと聞くところであり、その場合に、最終的な手段として、定式配分コンセプトに基づいた国際租税調整の可能性がないであろうかと考えるところである。

3 定式配分コンセプトを取り込んだ相互協議の仲裁制度

さらに、相互協議が長期化したことで仲裁制度が利用されるに至った場合には、その手続で組織される3人の仲裁パネルが、OECDモデル条約コメンタリーや移転価格事案の場合にはOECD移転価格ガイドラインに配意して判断を行うこととされているが、この判断の段階で、定式配分コンセプトに基づいた判断を取り入れることができないかと考える。

具体的には、仲裁手続において利用できる複数の「定式配分コンセプト・モデル」をOECDが用意しておき、それらから作成される複数の配分パターンを、3人の仲裁人の検討の対象に含めることができることにしてはどうかと考えるものである。

3.結論

OECDのBEPSの取組みについては、この6月の租税委員会本会合で、前述の5つの取組み(AP1〔電子商取引課税〕、AP2〔ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の無効化〕、AP 6〔租税条約濫用の防止〕、AP 8〔移転価格−無形資産の取扱い〕及びAP13〔移転価格−文書化とCbC Reporting〕)について承認を受け、9月には勧告等が発出されるわけである。

この勧告を受けて、我が国を含む関係各国の具体的な制度改正及び執行体制等の見直しが始まるわけであり、BEPSの国別での取組みはいま正に緒に着くところである。加えて、来年の9月には、残りの行動計画から次の勧告が発出されることが予定されており、そのための新たなドラフトの作成が進められることにもなるわけである。

したがって、BEPSの取組みについては引き続き検討が必要な分野であり、そのための研究を継続していきたいと考えている。

〔訂正〕

以下について訂正をしますので、本論文を読まれるときにはご留意ください。

1 「第4章 租税条約濫用の防止」の「第1節 租税条約濫用防止ドラフトの概要」の「第X条 特典資格条項(Entitlement to Benefits)2項及び3項」(314頁)の仮訳については、以下に差し替える。

2.一方の締約国の居住者が以下に該当する者である場合は、その課税年度において当該居住者は適格者である。

  • a) 個人
  • b) 締約国若しくはその地方政府又は地方公共団体、若しくはその国の政府団体、政府機関又は政府機構、地方政府若しくは地方公共団体
  • c) 法人のうち、以下のいずれかに該当するもの
    • @) その主たる種類の株式(及び不均一分配株式)が1又は2以上の公認有価証券取引所で通常の取引がなされており、かつ、以下のA又はBのいずれかを満たしていること
      • A) その主たる種類の株式について、当該法人が居住者である締約国に設立された1又は2以上の公認有価証券取引所で主たる取引がなされていること
      • B) 当該法人の管理及びコントロールの主たる場所が、当該法人が居住者である締約国内にあること
    • A) 当該法人の総議決権及び株式価額の総額の50%以上(及び不均一分配株式の50%以上)が、直接又は間接に、間接所有に関しては、それぞれの中間所有者がどちらかの締約国の居住者であるならば、このサブパラグラフの@)の規定の下で特典資格がある5社以下の法人に所有されていること
  • d) 以下の要件を満たす個人以外の者
    • @) 宗教、慈善、科学、芸術又は教育の目的で設立された者で、その目的のためだけに運営されている者
    • A) 年金又はその他の同様な利益の運用又は支払のために設立された者で、どちらかの締約国の個人居住者によって所有されて、その受益権の50%超が分配される者
    • B) この項のA)に該当する者の利益運用のためにファンド投資するために設立され運用されている者で、その者のすべての所得が、実質的にこれらの者の利益のためになされる投資からのものであること
  • e) 以下の要件を満たす個人以外の者
    • @) その課税年度の半分以上の期間において、一方の締約国の居住者であり、かつ、この項のa) 、b)、c) の@)又はd)の下でこの条約の特典を享受する資格を有する者が、その者の株式又は総議決権及び株式価額の総額の50%以上(及び不均一分配株式の50%以上)を、直接又は間接に所有していること(間接所有に関しては、それぞれの中間所有者が一方の締約国の居住者であること)
    • A) その者の居住地国である締約国において判定された、その者の課税年度の総所得について、直接又は間接に、いずれの締約国の居住者でない者で、この項のa) 、b)、c) の@)又はd)の下でこの条約の特典を享受する資格を有する者に、その者の居住地国である締約国において、この条約の対象となる租税目的で所得控除がなされる支払の形で、支払われて又は稼得されているのが、その50%未満であること(ただし、役務提供又は有形資産のための通常の事業での独立企業原則に基づく支払は含まない)

3.a) 一方の締約国の居住者が、当該締約国において能動的な営業又は事業の活動に従事しており、かつ、他の締約国からの所得が、当該営業又は事業に関連している又は付随している場合には、その居住者が適格者であるかどうかに拘わらず、他方の締約国で稼得された所得に関して、この条約の特典を享受する資格を有する。ただし、当該営業又は事業の活動が、居住者の自己勘定のための投資又はその運用に係る活動(商業銀行、保険会社及び証券会社が、各々行う銀行業務、保険業務又は証券業務を除く。)である場合は、この限りでない。

  • b) 一方の締約国の居住者が、他方の締約国でその居住者によりなされた営業又は事業活動から所得を稼得する場合、又は、他方の締約国で関連企業から生じた所得を稼得する場合に、上記a)の要件は、一方の締約国の居住者によりなされた営業又は事業活動に、他方の締約国で当該居住者又は関連者によってなされた営業又は事業活動との関連で実質性が存在する場合のみに、当該所得について満たされるものとする。事業活動にこの項の目的で実質性があるかどうかは、すべての事実及び状況に基づいて判断される。
  • c) この項の適用のために、ある者の関連者によりなされた活動は、その者によりなされた活動とみなされるべきである。ある者が、相手方の受益権の50%以上(又は、法人の場合にはその法人の総議決権及び株式価額の総額又はその法人の株式受益権の50%以上)を所有する場合、若しくは、第三者が、両者の受益権の50%以上(又は、法人の場合にはその法人の総議決権及び株式価額の総額又はその法人の株式受益権の50%以上)を所有する場合には、ある者は相手方と関連するものとする。どのような場合においても、関連するすべての事実と状況の下で、ある者が、相手方を支配している又は両者が同一の者から支配を受けている場合には、当該相手方と関連しているものとして扱われる。

2. 322頁の「(2) 条約特典を利用した国内税法の濫用に係る対応」のボックス内について、以下のように訂正する(下線部分)。

  • (誤)● 過少資本税制の適用の妨げ(第24条第4項及び第25条第5項)
  • (正)● 過少資本税制の適用の妨げ(第24条第4項及び第5項)
  • (誤)● 配当キャピタルゲイン外国税額控除への変換取引への配当ストリッピング・ルールの適用の妨げ〔第13条第5項〕
  • (正)● 配当をキャピタルゲインに転換して非課税にする取引への配当ストリッピング・ルールの適用の妨げ〔第13条第5項〕

目次

項目 ページ
はじめに 208
〔ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチの特徴〕 209
〔ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチにおける取引内容〕 209
〔ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチのスキーム図〕 211
第1章 OECDのBEPS行動計画及びEUの取組み 213
第1節 OECDの「BEPS報告書」の認識とその方向性 213
1.BEPS報告書の構成 214
2.第4章及び第5章の内容 214
(1)第4章 キーとなる租税原則及び税源浸食と利益移転の機会 214
(2)第5章 税源浸食と利益移転に係る懸念への対応 225
〔鍵となる重要エリア〕 226
〔BEPSへの対応のポイント〕 227
【BEPSを取り扱うためのグローバルなアクションプランの 策定】 228
第2節 OECDの「BEPS行動計画」の15のアクションプラン 230
1.OECDの「BEPS行動計画」に係る基本的スタンス 230
2.「BEPS行動計画」の15のアクションプラン 231
AP 1 電子商取引課税 232
AP 2 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の否認 232
AP 3 外国子会社合算税制(CFC税制)の強化 233
AP 4 利子等の損金算入を通じた税源浸食の制限 233
AP 5 有害税制への対抗 233
AP 6 租税条約濫用の防止 233
AP 7 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止 234
AP 8 移転価格税制〔1無形資産〕 234
AP 9 移転価格税制〔2リスクと資本〕 234
AP 10 移転価格税制〔3他の租税回避の可能性が高い取引〕 234
AP 11 BEPS の規模や経済的効果の指標の集約・分析 235
AP 12 タックス・プランニングの報告義務 235
AP 13 移転価格関連の文書化の再検討 235
AP 14 相互協議の効果的実施 235
AP 15 多国間協定の開発 235
第3節 IFAコペンハーゲン大会でのBEPS行動計画の説明・見解等 237
1.議長及び討論者等 238
2.BEPSに関する経緯等の説明 238
〈英国〉 238
〈米国〉 239
〈オーストラリア〉 239
3.G20に承認されたOECDのBEPS行動計画の説明及び意見 239
(1)デジタル経済に係る検討課題への取組み 240
(2)(BEPSへの課税に係る)国際的な統一性の確立 240
(3)国際的課税基準の見直し 243
(4)透明性と実施手法 245
4.まとめ 247
第4節 EUの租税不正及び脱税に対する34のアクションプラン 248
〔EUの租税不正と脱税に対する34のアクションプラン一覧〕 249
1.BEPSへの対応に有効と思われるアクションプラン 251
(1)「U- 7. 第3国にグッド・ガバナンスの最小基準を適用する奨励措置の勧告」 251
(2)「U- 10. 有害な企業課税と関連領域の改善」 252
(3)「V1- 14. 親会社・子会社指令(2011/96/ EU)の修正」 253
(4)「V1- 15. EU法令の濫用防止規定の見直し」 253
(5)「V1- 20. VATの執行協力の第3国との交渉の欧州評議会承認の取得」 254
(6)「V3- 34. すべての租税の執行協力のための単一の法的手段の策定」 254
2.アグレッシブな租税回避スキームへのアクションプラン 254
(1)「T- 2. 貯蓄税制ループホールの閉鎖」 254
(2)「T- 3. ドラフトの租税回避防止及び税務協力協定」 255
(3)「T- 4. VAT不正に対してのクイック・リサーチ・メカニズム」 255
(4)「T- 5. VATリバース・チャージ・メカニズムの選択適用」 255
(5)「U- 8. アグレッシブ・タックス・プランニングに係る勧告」 256
(6)「V1- 19. 税務調査のために同時管理の利用と外国職員の立合の推進」 257
(7)「V2- 24. マネーフローを追跡するガイドライン」 257
(8)「V3- 32. 熟練調査官の専門チームによる合同調査のための方法論」 257
3.加盟国間の情報交換や執行協力を向上させるためのアクションプラン 258
(1)「U- 12. 税制分野の情報交換のための標準様式」 258
(2)「V1- 16. 自動的情報交換の基準とEUのITツールの推進」 258
(3)「V2- 21. 自動的情報交換のためのフォーマットの策定」 259
(4)「V2- 26. 直接課税へのEUROFISCの拡張」 259
(5)「V3- 33. 国内データベースへの相互直接アクセスの開発」 259
4.執行の効率性を向上させるツール等の開発・改善に係るアクションプラン 259
(1)「U- 11.『欧州ポータル納税者番号』(TIN on EUROPA)」 259
(2)「V2- 22. EU納税者識別番号(TIN)の利用」 260
(3)「V2- 23. IT手段の合理化」 261
(4)「V2- 27. ワンストップショップ・アプローチの創設」 261
(5)「V2- 29. 租税ウェブポータルの開発」 261
5.納税者のタックスコンプライアンスを向上させるためのアクションプラン 262
(1)「V1- 17. 欧州納税者規約」 262
(2)「V2- 25. コンプライアンス・リスクマネージメントの強化」 262
(3)「V2- 28. 自発的ディスクロージャーのインセンティブの開発」 263
(4)「V2- 31. EU標準税務調査ファイルの開発」 263
6.その他のアクションプラン 263
(1)「U- 9. 租税グッド・ガバナンスためのプラットホームの創設」 263
(2)「V2- 30. 行政罰と刑事罰の調整の提言」 264
【EUの34のアクションプランに係る考察】 264
第2章 BEPSへの取組みに対する基本的認識及びコンセンサス 268
第1節 BEPSに対する課税権の確保に係る基本的な考え方 268
1.課税権の確保に対する諸外国の非対称性 268
(1)課税権の確保に対する諸外国のスタンスの相違 268
(2)タックス・ヘイブンへの認識 270
(3)BEPSへの取組みでの国際的協調の必要性 271
2.BEPSにより侵害を受けた課税権への居住地国と源泉地国の主張の在り方 272
3.BEPSに関わる法的管轄間における課税権の回復の在り方 272
4.現行の国際課税原則の見直しに対する実現可能性 274
5.現在進行中である執行ベースでの施策との整合性 274
第2節 BEPSへの取組みのための国際課税原則の見直しに係るコンセンサスの醸成 274
1.低課税国の実効税率との差に対する国際的二重非課税の認識 274
2.法的管轄への所得帰属1 − 法的所有権と経済的所有権 275
3.法的管轄への所得帰属2 − リスク及び機能への所得の帰属 277
4.ベネフィシャル・オーナーの概念の活用及び究極的オーナー概念 278
5.BEPSへの取組みと独立企業原則との関係 279
6.租税裁定を利用した人為的な国際的二重非課税の否定 280
7.タックス・ヘイブンの再定義による新たなブラックリストの策定 280
8.多国籍企業に対する国際課税における「連結会計方式」の利用 282
第3節 BEPSへの取組みを効果的かつ効率的に推進させるために必要な執行上の対応 283
1.BEPSに係る自動的情報交換の基準とIT化されたフォーマットの策定 283
2.国際的に共通利用できる納税者番号制度の創設 283
3.BEPSに係る多国籍企業と税務当局のウェブポータルの開発 284
4.将来的な国際的合同調査のための方法論の検討 284
〔2014年3月までに公表されたディスカッション・ドラフト一覧〕 284
第3章 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメ ントの無効化 286
第1節 ハイブリッド・ミスマッチ・ドラフトの概要 286
1.ハイブリッド・ミスマッチ・ルールの策定 286
2.ハイブリッド・ミスマッチ・ルールに対して策定される勧告案 287
(1)ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの類型 287
(a)ハイブリッド金融商品及び譲渡(Hybrid financial instruments & Transfers) 287
(b)ハイブリッド事業体支払(Hybrid entity payments) 287
(c)リバース・ハイブリッド及びインポーテッド・ミスマッチ 288
(2)類型ごとに策定された勧告案の概要(Summary of Recommendations) 288
〔Table 1. Summary of Recommendations(勧告の概要)〕 290
3.「ハイブリッド金融商品及び譲渡」の無効化に係る勧告案の概要 291
(1)「ハイブリッド金融商品及び譲渡」の定義 291
(2)ハイブリッド金融商品等に係るミスマッチ・ルールの勧告案の概要 292
(3)ハイブリッド金融商品等に係るミスマッチ・ルールの対象範囲 293
4.「ハイブリッド事業体支払」の無効化に係る勧告案 296
(1)ハイブリッド支払、無視される支払及び二重益金算入所得の意味 296
(2)二重所得控除を生じさせる支払への勧告案 297
(3)所得控除+益金不算入を生じさせる支払への勧告案 297
5.「リバース・ハイブリッド及びインポーテッド・ミスマッチ」の無効化に係る勧告案 298
第2節 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの無効化に係るパブリック・コメント 298
第3節 諸外国におけるハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントに係る取組状況 302
〔米国〕 302
〔英国〕 303
〔ドイツ〕 304
〔フランス〕 304
〔オランダ〕 304
〔アイルランド〕 304
〔EU〕 305
〔スイス〕 306
〔シンガポール〕 306
〔中国〕 307
〔インド〕 307
〔ブラジル〕 307
第4節 ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの無効化に係る取組みへの考察 307
第4章 租税条約濫用の防止 312
第1節 租税条約濫用防止ドラフトの概要 312
1.租税条約濫用防止ドラフトの構成 312
〔租税条約濫用防止ドラフトの目次〕 313
2.A. 不適切な状況における租税条約の特典の付与を防止するための対応 314
(1)租税条約自体により規定された制限の回避に係る対応 314
イ トリーティ・ショッピングに係る対策案 314
ロ その他の特典制限の回避を意図した状況への対策案 320
(2)条約特典を利用した国内税法の濫用に係る対応 322
3.B. 租税条約が国際的二重非課税を意図しないことの明確化 323
4.C. 一般的に租税条約の締結を決定する前に考慮すべきタックス・ポリシーの特定 325
第2節 租税条約濫用の防止に係るパブリック・コメント 325
1.BIACの「BEPSへの欧米ビジネス・コメント」で提出された意見 325
2.日本の経済団体からOECDに提出された意見 327
(1)経団連からの意見 327
(2)日本貿易会からの意見 328
第3節 諸外国における租税条約濫用の防止に係る取組状況 332
〔米国〕 332
〔英国〕 333
〔ドイツ〕 334
〔フランス〕 335
〔オランダ〕 337
〔アイルランド〕 337
〔スイス〕 337
〔シンガポール〕 338
〔中国〕 338
〔インド〕 339
〔ブラジル〕 339
第4節 租税条約濫用の防止に係る取組みへの考察 340
第5章 移転価格−無形資産の取扱い 343
第1節 無形資産修正ドラフトの概要 344
1 移転価格ガイドライン第1章から第3章に対する修正の提案 345
2 第6章 無形資産に対する特別の配慮 345
1.A. 無形資産の特定 345
2.B. 無形資産の所有及び無形資産の開発、改良、維持と保護に関する取引 347
(1)無形資産の法的所有と最終的なリターン配分の関係 348
(2)無形資産の開発、改良、維持及び保護と最終的なリターン配分の関係 348
3.D. 無形資産が関わる事例に係る独立企業間条件の決定における補足ガイダンス 349
(1)無形資産に係る移転価格算定方法 349
(2)評価テクニックの使用 350
(3)予測キャッシュフローの割引価値に基づく方法を適用する際の問題点 351
(4)納税者の非協力により予測が困難である場合 352
4.付属文書 無形資産に対する特別の配慮に関する指針を説明する事例(27事例) 352
(1)無形資産に対する特別の配慮に関する指針を説明する事例の図解 352
 〔事例1〕無形資産の法的所有 1 355
 〔事例2〕無形資産の法的所有 2 − 定期的なロイヤルティの支払 355
 〔事例3〕無形資産の法的所有 3 − 売却処分からのリターンの配分 356
 〔事例4〕無形資産に関連するリスク(パラ233〜236) 356
 〔事例5〕販売用無形資産 − マーケティング戦略 1 357
 〔事例6〕販売用無形資産 − マーケティング戦略 2 358
 〔事例7〕販売用無形資産 − マーケティング戦略 3 358
 〔事例8〕販売用無形資産 − マーケティング戦略 4 359
 〔事例9〕販売用無形資産 − 商標へのロイヤルティの支払 359
 〔事例10〕製造用無形資産 − 商標加工に係るロイヤルティ支払 360
 〔事例11〕研究開発 − 多国籍企業の研究開発の分担 1 361
 〔事例12〕研究開発 − 多国籍企業の研究開発の分担 2 362
 〔事例13〕研究開発 − 研究開発無形資産の一括譲渡 363
 〔事例14〕研究開発 − 製薬会社の研究開発無形資産の譲渡 364
 〔事例15〕製造特許等の使用許諾契約 365
 〔事例16〕国際的事業再編時における無形資産の再配分 366
 〔事例17〕販売統括会社への無形資産からの所得の帰属 367
 〔事例18〕研究開発会社を取得した場合の国際的事業再編 368
 〔事例19〕関連会社へのソフトウェア開発支援 369
 〔事例20〕関連会社への訴訟支援 369
 〔事例21〕企業買収により取得した無形資産の関連会社への 付与 370
 〔事例22〕国際的事業再編 − グループ間における特許の集約 371
 〔事例23〕国際的事業再編 − 委託製造業者への転換と無形資産の移転 372
 〔事例24〕国際的事業再編 − 具体的な設例による比較検討 373
 〔事例25〕「後知恵」の不適切な使用 378
 〔事例26〕予期せぬ事象による正当な移転価格の変更 379
 〔事例27〕価格調整条項 380
(2)無形資産に係る27事例に係るBEPSの観点からの考察 381
第2節 移転価格における無形資産の取扱いに係るパブリック・コメント 382
第3節 諸外国における移転価格における無形資産の取扱いに係る取組状況 384
〔米国〕 384
〔英国〕 385
〔ドイツ〕 386
〔フランス〕 387
〔オランダ〕 388
〔アイルランド〕 390
〔EU〕 390
〔スイス〕 390
〔シンガポール〕 391
〔中国〕 392
〔インド〕 392
〔ブラジル〕 393
第4節 BEPSに関する移転価格における無形資産に係る取組みへの考察 394
第6章 移転価格−文書化とCbC Reporting 398
第1節 文書化とCbC Reportingドラフトの概要 399
1.B. 移転価格文書化の目的とD.コンプライアンスに関する論点 400
(1)移転価格文書化の目的 400
(2)コンプライアンスに関する論点 401
2.C. 移転価格文書化の二層構造アプローチ 402
(1)マスターファイル(本体) 402
(2)ローカルファイル 404
(3)CbC Reporting 406
第2節 文書化とCbC Reportingに係るパブリック・コメント 408
1.BIACの「BEPSへの欧米ビジネス・コメント」で提出された意見 408
2.日本経済団体連合会から提出された意見 410
第3節 諸外国における文書化とCbC Reportingに係る取組状況 413
〔米国〕 413
〔英国〕 413
〔ドイツ〕 413
〔フランス〕 414
〔オランダ〕 415
〔アイルランド〕 416
〔EU〕 416
〔スイス〕 416
〔シンガポール〕 417
〔中国〕 417
〔インド〕 417
〔ブラジル〕 418
第4節 文書化とCbC Reportingに係る取組みへの考察 419
〔モデル・テンプレートで要請される情報について〕 419
第7章 電子商取引課税 422
第1節 電子商取引課税ドラフトの概要 422
1.電子商取引課税ドラフトの構成 422
○ 電子商取引課税ドラフトの目次 422
2.各章の概要 424
3.第7章 デジタル経済の広範な課税問題への対処のための可能性のあるオプション 425
(1)オプションを評価するためのフレームワーク 425
 1 中立性 426
 2 効率性 426
 3 確実性及び簡便性 426
 4 効果性及び公正性 426
 5 柔軟性 426
(2)タスク・フォースに提示されるオプション 426
 イ 「PE認定から除外される対象の見直し」 427
 ロ 「重要なデジタル・プレゼンスをベースとした新たなネクサスの創設」 427
 ハ 「仮想PEの創設」 428
 ニ 「電子商取引に対する源泉徴収税の創設」 429
 ホ 「消費税に係るオプション」 430
第2節 電子商取引課税に係るパブリック・コメント 430
1.BIACの「BEPSへの欧米ビジネス・コメント」で提出された意見 430
2.経団連からOECDに提出された意見 433
第3節 諸外国における電子商取引に係る取組状況 434
〔米国〕 434
〔英国〕 435
〔ドイツ〕 435
〔フランス〕 435
〔オランダ〕 436
〔アイルランド〕 436
〔EU〕 436
〔スイス〕 437
〔シンガポール〕 437
〔中国〕 438
〔インド〕 438
〔ブラジル〕 438
第4節 電子商取引に係る取組みへの考察 438
第8章 外国子会社合算税制(CFC税制) 443
第1節 「BEPS行動計画」の〔行動3 外国子会社合算税制(CFC税制)の強化〕の内容 444
1.〔行動3 外国子会社合算税制(CFC税制)の強化〕の指摘事項の仮訳 444
2.〔行動3 外国子会社合算税制(CFC税制)の強化〕の指摘事項への考察 446
第2節 CFC税制の強化に係るパブリック・コメント 446
第3節 諸外国におけるCFC税制の強化に係る取組状況 448
〔米国〕 449
〔英国〕 450
〔ドイツ〕 453
〔フランス〕 454
〔EU〕 455
〔中国〕 455
〔インド〕 455
〔ブラジル〕 456
第4節 CFC税制の強化に係る取組みへの考察 456
第9章 定式配分方式に係る考察 460
第1節 定式配分方式の国際的利用可能性への検討 461
1.世界的な定式配分方式の導入の可否 461
2.多国籍企業に対する「定式配分方式のコンセプト」の利用可能性 463
3.多国籍企業のみを対象とした「BEPS最低租税負担制度」の創設の検討 464
〔BEPS最低租税負担制度のコンセプト〕 466
〔BEPS最低租税負担制度のコンセプト図〕 466
4.定式配分コンセプトを取り込んだBEPSへのAPA・相互協議における対応策 468
1 定式配分コンセプトに基づいた多国間APAの活用 468
2 定式配分コンセプトを取り込んだ相互協議 469
3 定式配分コンセプトを取り込んだ相互協議の仲裁制度 469
第10章 今後のBEPSへの取組みの方向性 471
第1節 BEPSへの取組みに対する関係諸国の方向性 471
1.米国や英国等の税源浸食が生じているとされる大国である先進国 472
(1)米国の方向性 472
(2)英国の方向性 473
2.先進国だが小国でありタックス・ヘイブンの傾向がある国・地域 474
3.インドや中国等のBRICS等の新興国 476
4.ケイマン諸島やバージン諸島等の本来的なタックス・ヘイブンの国・地域 477
5.税源浸食がされていると主張する発展途上国 478
第2節 多国籍企業からのBEPSへの取組みに対する要望事項 478
第3節 BEPSへの取組みのポイントと我が国の対応に係る考察 479
1.BEPSへの取組みのポイント 479
1 「居住地国と源泉地国の国際的な課税権の配分」について 479
2 「実効税率が非常に低い法的管轄の課税でのBEPSの解消」について 480
3 「新興国等の源泉地国の課税権確保に係る強硬な主張」について 480
2.我が国のBEPSへの対応に係る考察 481
結びに代えて 482

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