平成24年7月
名古屋国税局

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。
 今般、平成23年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

  • ○ 平成23年度において査察に着手した件数は、21件でした。
  • ○ 平成23年度以前に着手した査察事案について、平成23年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は18件、そのうち検察庁に告発した件数は6件であり、告発率は33.3%となりました。
年度 平成        
項目 19 20 21 22 23
着手件数
27 26 26 23 21
処理件数(A) 27 24 27 26 18
告発件数(B) 20 17 17 17 6
告発率(B/A)
74.1 70.8 63.0 65.4 33.3

平成19年度から平成23年度の査察の着手件数、処理件数、告発件数、告発率を表したグラフ

2 脱税額の状況

  • ○ 平成23年度に処理した査察事案に係る脱税額は、総額で12億7,800万円、そのうち告発分は10億2,600万円となりました。
  • ○ 告発した事案1件当たりの脱税額は、平均で1億7,100万円でした。
年度 平成        
項目 19 20 21 22 23
脱税額 総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
4,048 2,546 2,263 1,876 1,278
同上1件当たり 150 106 84 72 71
告発分 3,663 2,066 1,709 1,378 1,026
同上1件当たり 183 122 101 81 171

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

平成19年度から平成23年度の税目別の脱税額を表したグラフ、平成19年度から平成23年度に告発した事件1件当たりの脱税額を表したグラフ

(参考1)大口事案の推移
年度 平成        
項目 19 20 21 22 23
告発件数
20 17 17 17 6
  うち脱税額が3億円以上 2 1 - 1 -
うち脱税額が5億円以上 1 - - - -

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

  • ○ 平成23年度においては、所得税、法人税事案に取り組むとともに、相続税、消費税事案についても積極的に取り組みました。
(参考2)税目別の告発件数
年度 平成19 20 21 22 23
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
5 25 3 18 8 47 4 24 2 33
法人税 13 65 12 70 8 47 11 65 1 17
相続税 1 5 - - 1 6 - - 1 17
消費税 1 5 内1 12 - - 内1 11 内1 33
2 2 2
源泉所得税 - - - - - - - - - -
合計 20 100 17 100 17 100 17 100 6 100

(注) 消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の告発件数である。

(参考3)税目別の脱税額
年度 平成19 20 21 22 23
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
595 16 387 19 963 56 270 20 371 36
法人税 1,858 51 1,351 65 515 30 1,046 76 74 7
相続税 968 26 - - 231 14 - - 244 24
消費税 243 7 内 176 16 - - 内 4 4 内 150 33
328 62 337
源泉所得税 - - - - - - - - - -
合計 3,664 100 2,066 100 1,709 100 1,378 100 1,026 100
  1. (注1) 脱税額には、加算税額を含む。
  2. (注2) 消費税の内書は、消費税受還付犯(ほ脱犯との併合事案を含む)の脱税額である。

4 告発事件の概要

  • ○ 平成23年度に複数件告発した業種は、人材派遣業のみでした。
  • ○ 脱税により得た利益は、預貯金として留保されていたほか自己の遊興費に費消するなどの例も見られました。
  1. (1) 告発の多かった業種・取引(2者以上)
    平成21 22 23
    業種 者数 業種 者数 業種 者数
    建設業 4 運送業 2 人材派遣 2
    不動産業 2 不動産業 2

    (注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

  2. (2) 脱税の手段・方法
     脱税の手段・方法としては、架空の原価・経費の計上のほか、
    • ○ 投資等で得た利益をまったく申告しない「無申告者」
    • ○ 消費税事案では、課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装していたもの
    などがありました。
  3. (3) 不正資金の留保状況
     脱税によって得た不正資金については、預貯金で留保されたほか
    • ○ 海外で開設した預金
    • ○ 高級外車を購入
    • ○ ギャンブルで費消
    していた事例がありました。

5 査察調査の状況

  • ○ 平成23年度中に着手した査察事案では、1事件当たり、着手日に延152名を動員し、34箇所を調査しました。
  • ○ 平成23年度に告発した査察事案では、1事件当たり、着手から告発まで7か月の調査期間を要しました。
  • ○ 国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換に取り組みました。
  1. (1) 動員人数及び調査期間
     平成23年度に着手した査察事案では、1事件当たり、着手日に延152名を動員し、34箇所を調査しました。
     平成23年度に告発した査察事案では、1事件当たり、着手から告発まで7か月の調査期間を要しました。調査期間が最長のもので約1年でした。
  2. (2) 国際化への対応
     国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、平成23年度に処理した事案について、租税条約等の規定に基づく情報交換を外国税務当局に要請し金融機関取引等が判明したものがありました。

6 査察事件の一審判決の状況

  • ○ 平成23年度中に一審判決が言い渡された件数は12件であり、すべてについて有罪判決が出されました。
項目 判決件数(A) 有罪件数(B) 有罪率(B/A) 1件当り犯則税額(D) 1人当り懲役月数(E) 1人(社)当り罰金額(F)
年度
平成 16 16 100.0 44,280 13.7 12,465
21
22 17 17 100.0 57,954 12.1 13,559
23 12 12 100.0 25,391 12.0 5,933