法人税等の調査事績の状況

1 法人税等の実地調査の状況

申告漏れ件数 過去6年で最多、申告漏れ所得金額147億63百万円

平成29事務年度において、申告漏れが想定される法人2,171件(対前年比105.8%)について実地調査を実施した。
 このうち、申告漏れのあった法人は1,505件(同106.4%)で、その申告漏れ所得金額は147億63百万円(同100.7%)となっている。

不正計算のあった法人11%増、不正所得金額38億77百万円

申告漏れのあった法人のうち、仮装又は隠蔽により所得を脱漏していた、いわゆる不正計算のあった法人は402件(対前年比111.0%)で、その不正所得金額は38億77百万円(同119.2%)となっている。

表1 法人税等の実地調査の状況
事務年度 28 29  
項目 対前年比
実地調査件数1 2,052 2,171 105.8%
申告漏れのあった件数 1,414 1,505 106.4%
同上のうち不正計算のあった件数2 362 402 111.0%
申告漏れ所得金額3 14,664 百万円 14,763 百万円 100.7%
同上のうち不正所得金額4 3,253 百万円 3,877 百万円 119.2%
調査1件当たりの申告漏れ所得金額(3/1 7,146 千円 6,800 千円 95.2%
不正申告1件当たりの不正所得金額(4/2 8,987 千円 9,645 千円 107.3%
追徴税額 本税額 2,565 百万円 2,292 百万円 89.3%
加算税額 434 百万円 421 百万円 97.1%
追徴税額合計 2,999 百万円 2,713 百万円 90.5%

(注)追徴税額には地方法人税を含む。

2 不正発見割合及び不正計算の手口の状況

○ 不正発見割合の状況

不正発見割合の高い業種、サービス業がトップ

平成29事務年度において法人税等の実地調査をした法人のうち、不正計算により所得を脱漏していた法人の割合は18.5%で、これを業種別でみると、サービス業が23.5%と最も高く、次いで料理・旅館・飲食業23.2%、建設業22.1%の順となっている。
 また、不正計算のあった法人のうち1件当たりの不正所得金額をみると、最も多いものは卸売業の2,182万4千円となっている。

表2 業種別の不正発見の状況
項目 不正発見割合 1件当たり不正所得金額
業種別   順位 前年順位   順位 前年順位
      千円    
サービス業 23.5 1 5 10,867 4 4
料理・旅館・飲食業 23.2 2 1 5,931 7 6
建設業 22.1 3 3 8,123 5 5
小売業 18.4 4 8 4,285 8 8
運送業 17.7 5 2 16,026 2 7
その他の業 15.3 6 6 12,447 3 3
製造業 14.6 7 4 7,600 6 1
卸売業 9.8 8 7 21,824 1 2
全業種計 18.5     9,645    

○ 不正計算の手口の状況

売上げ(収入金額)を除外した不正計算がトップ

平成29事務年度において法人税等の実地調査をした法人のうち、不正所得金額が1千万円以上あった89法人について、不正所得金額を不正計算の形態別で見ると、売上げ(収入金額)を除外していたものが7億28百万円(23.3%)と最も多く、次いで架空外注費を計上していたものが5億60百万円(17.9%)、架空仕入れ5億58百万円(17.9%)の順となっている。
 件数別に見ると、雑収入を除外していたものが45件(26.9%)と最も多く、次いで売上げ(収入金額)を除外していたものが35件(21.0%)、架空経費を計上していたものが31件(18.6%)の順となっている。

表3 不正計算の形態
項目 不正所得金額 延法人数
不正計算の形態   構成割合   構成割合
  百万円
売上(収入金額)除外 728 23.3 35 21.0
架空外注費 560 17.9 21 12.6
架空仕入 558 17.9 15 9.0
雑収入除外 548 17.5 45 26.9
架空経費 309 9.9 31 18.6
棚卸除外 243 7.8 7 4.2
架空人件費 158 5.1 8 4.8
その他 20 0.6 5 3.0
3,124 100.0 167 100.0
(実法人数は89件)

 法人消費税の実地調査の概要

追徴税額は9億83百万円と前年並み

平成29事務年度においては、法人消費税について、2,123件(対前年比105.1%)の実地調査を実施した。
 このうち、非違があったものは1,128件(同100.2%)で、その追徴税額は、9億83百万円と、前事務年度(9億94百万円)と同程度である。
 調査した法人1件当たりの追徴税額は463千円で、前事務年度から29千円の減少となっている。

表4 法人事業者に対する消費税の調査状況
事務年度 28 29  
項目 対前年比
実地調査件数1 2,020 2,123 105.1%
非違のあった件数 1,126 1,128 100.2%
調査による追徴税額2 994 百万円 983 百万円 98.9%
調査1件当たりの追徴税額(2/1 492 千円 463 千円 94.1%

(注)調査による追徴税額には地方消費税額(譲渡割額)及び加算税額を含む。

 源泉所得税等の調査事績の状況

追徴税額は4億57百万円、過去6年で最多

平成29事務年度においては、2,930件(対前年比104.6%)の源泉徴収義務者について実地調査を実施した。
 このうち、非違があったものは723件(同107.9%)で、その追徴税額は4億57百万円(同117.5%)となっている。

表5 源泉所得税の実地調査の状況
事務年度 28 29  
項目 対前年比
実地調査件数 2,802 2,930 104.6%
非違のあった件数 670 723 107.9%
調査による追徴税額 389 百万円 457 百万円 117.5%

(注)

  1. 1 平成25年1月1日以後に生じる所得に係る追徴税額から、復興特別所得税が含まれている。
  2. 2 調査による追徴税額には加算税額を含む。

 調査の取組状況

海外取引法人に対する取組
〜海外取引調査で21億27百万円の申告漏れを把握〜

経済の国際化の進展により、企業や個人の国境を越えた事業、投資活動が活発化している。こうした中、国税当局は海外取引を有する法人(以下「海外取引法人」という。)に対する指導や調査に重点的に取り組んでいる。
 平成29事務年度は、海外取引法人350社に対して実地調査をした結果、161社(対前年比243.9%)から海外取引に係る申告漏れ所得金額21億27百万円(同176.9%)、うち不正所得金額5億29百万円を把握した。

○ 海外取引法人に対する実地調査の状況

平成27事務年度から平成29事務年度の海外取引法人に対する実地調査の状況の推移のグラフ

事務年度 27 28 29
項目
実地調査件数 272 228 350
法人税 海外取引に係る申告漏れのあった件数 77 66 161
  同上のうち、不正計算のあった件数 13 5 20
海外取引に係る申告漏れ所得金額 百万円 1,386 1,202 2,127
  同上のうち、不正計算に係る所得金額 百万円 445 46 529
消費税還付申告法人に対する取組
〜還付申告を行っていた法人から91百万円を追徴〜

消費税は、国民の関心が極めて高く、適正な税務執行がより一層求められている。
 こうした中、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得るケースも見受けられることから、還付申告を行う法人に対する指導や調査に重点的に取り組んでいる。
 平成29事務年度は、消費税還付申告法人169社に対して実地調査をした結果、77社(対前年比76.2%)から91百万円(同73.6%)の消費税額を追徴した。また、そのうち12社は不正に還付金額の水増しなどを行っており、5百万円を追徴した。

○ 消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査の状況

平成27事務年度から平成29事務年度の消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査の状況の推移のグラフ

事務年度 27 28 29
項目
実地調査件数 239 184 169
消費税 非違があった件数 120 101 77
  同上のうち、不正計算を行っていた件数 23 10 12
追徴税額 百万円 127 124 91
  同上のうち、不正計算に係る追徴本税額 百万円 14 8 5