T 法人税等の調査事績の状況

1 法人税の実地調査の状況

申告漏れのあった件数1,414件、対前年比約11%増加

平成28事務年度において、申告漏れが想定される法人2,052件(対前年比112.3%)について実地調査を実施した。
 このうち、申告漏れのあった法人は1,414件(同111.1%)で、その申告漏れ所得金額は146億64百万円(同119.1%)となっている。

不正計算があった件数362件、対前年比約7%減少

申告漏れのあった法人のうち、仮装又は隠蔽により所得を脱漏していた、いわゆる不正計算のあった法人は362件(同93.5%)で、その不正所得金額は32億53百万円(同94.5%)となっている。

表1 法人税の実地調査の状況
27事務年度 28事務年度  
対前年比
実地調査件数1 1,828件 2,052件 112.3%
申告漏れのあった件数 1,273件 1,414件 111.1%
同上のうち不正計算のあった件数2 387件 362件 93.5%
申告漏れ所得金額3 12,314百万円 14,664百万円 119.1%
同上のうち不正所得金額4 3,443百万円 3,253百万円 94.5%
調査1件当たりの申告漏れ所得金額(3/1 6,736千円 7,146千円 106.1%
不正申告1件当たりの不正所得金額(4/2 8,897千円 8,987千円 101.0%
追徴税額 本税額 2,289百万円 2,565百万円 112.1%
加算税額 386百万円 434百万円 112.4%
追徴税額合計 2,675百万円 2,999百万円 112.1%

2 不正発見割合及び不正計算の手口の状況

○ 不正発見割合の状況

不正発見割合の高い業種、料理・旅館・飲食業がトップ

平成28事務年度において実地調査した法人のうち、不正計算により所得を脱漏していた法人の割合は17.6%で、これを業種別でみると、料理・旅館・飲食業が30.4%と最も高く、次いで運送業23.7%、建設業22.7%の順となっている。
 また、不正計算のあった法人のうち1件当たりの不正所得金額をみると、最も多いものは製造業の1,220万9千円となっている。

表2 業種別の不正発見の状況
不正発見割合 1件当たり不正所得金額
  順位 前年順位   順位 前年順位
      千円    
料理・旅館・飲食業 30.4 1 1 6,138 6 8
運送業 23.7 2 3 3,948 7 4
建設業 22.7 3 2 8,706 5 6
製造業 16.6 4 5 12,209 1 1
サービス業 15.2 5 4 9,830 4 3
その他の業 12.4 6 7 10,743 3 5
卸売業 12.4 7 6 10,988 2 2
小売業 11.5 8 8 3,345 8 7
全業種計 17.6     8,987    

○ 不正計算の手口の状況

架空外注費の計上による不正計算がトップ

平成28事務年度において、不正所得金額が1千万円以上あった74法人について、不正所得金額を不正計算の形態別で見ると、架空外注費を計上していたものが7億92百万円(33.6%)と最も多く、次いで売上げ(収入金額)を除外していたものが5億53百万円(23.5%)、架空仕入れを計上していたものが2億74百万円(11.6%)の順となっている。
 件数別に見ると、架空経費を計上していたものが53件(29.4%)と最も多く、次いで雑収入を除外していたものが40件(22.2%)、売上げ(収入金額)を除外していたものが26件(14.4%)の順となっている。

表3 不正計算の形態
不正所得金額 延法人数
  構成割合   構成割合
  百万円
架空外注費 792 33.6 23 12.8
売上(収入金額)除外 553 23.5 26 14.4
架空仕入 274 11.6 13 7.2
雑収入除外 187 7.9 40 22.2
棚卸除外 134 5.7 8 4.4
架空経費 45 1.9 53 29.4
その他 372 15.8 17 9.4
2,357 100.0 180 100.0
(実法人数は74件)

U 法人消費税の実地調査の概要

追徴税額は9億94百万円、対前年比 約25%増加

平成28事務年度においては、法人消費税について、2,020件(対前年比112.0%)の実地調査を実施した。
 このうち、非違があったものは1,126件(同113.4%)で、その追徴税額は、9億94百万円と、前事務年度の7億96百万円に比べて1億98百万円(同24.9%)増加している。
 調査した法人1件当たりの追徴税額は492千円で、前事務年度の441千円に比べて51千円(同11.6%)増加している。

表4 法人事業者に対する消費税の調査状況
27事務年度 28事務年度  
対前年比
実地調査件数1 1,803件 2,020件 112.0%
非違のあった件数 993件 1,126件 113.4%
調査による追徴税額2 796百万円 994百万円 124.9%
調査1件当たりの追徴税額(2/1 441千円 492千円 111.6%

(注)調査による追徴税額には地方消費税額(譲渡割額)及び加算税額を含む。

V 源泉所得税等の調査事績の状況

追徴税額は3億89百万円(99.7%)と前年並み

平成28事務年度においては、2,802件(対前年比112.3%)の源泉徴収義務者について実地調査を実施した。
 このうち、非違があったものは670件(同102.4%)で、その追徴税額は 3億89百万円と、前事務年度(3億90百万円)と同程度である。

表5 源泉所得税の実地調査の状況
27事務年度 28事務年度  
対前年比
実地調査件数 2,494件 2,802件 112.3%
非違のあった件数 654件 670件 102.4%
調査による追徴税額 390百万円 389百万円 99.7%
(注) 1 平成25年1月1日以後に生じる所得に係る追徴税額から、復興特別所得税が含まれている。
2 追徴税額には加算税額を含む。

W 調査の取組状況

消費税還付申告法人に対する取組
〜還付申告を行っていた法人から1億24百万円を追徴〜

消費税は、国民の関心が極めて高く、適正な税務執行がより一層求められている。
 こうした中、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得るケースも見受けられることから、還付申告を行う法人に対する指導や調査に重点的に取り組んでいる。
 平成28事務年度は、消費税還付申告法人184社に対して実地調査をした結果、101社(対前年比84.2%)から1億24百万円(同97.5%)の消費税額を追徴した。また、そのうち10社は不正に還付金額の水増しなどを行っており、8百万円を追徴した。

○ 消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査の状況

平成26事務年度から平成28事務年度の消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査における実地調査件数、追徴税額、非違割合の推移のグラフ

26事務年度 27事務年度 28事務年度
実地調査件数 211 239 184
消費税 非違があった件数 108 120 101
  同上のうち、不正計算のあった件数 16 23 10
追徴税額 百万円 99 127 124
  同上のうち、不正計算に係る追徴本税額 百万円 6 14 8
海外取引法人に対する取組
〜海外取引調査で12億2百万円の申告漏れを把握〜

経済の国際化の進展により、企業や個人の国境を越えた事業、投資活動が活発化している。こうした中、国税当局は海外取引を有する法人(以下「海外取引法人」という。)に対する指導や調査に重点的に取り組んでいる。
 平成28事務年度は、海外取引法人228社に対して実地調査をした結果、66社(対前年対比85.7%)から海外取引に係る申告漏れ所得金額12億2百万円(同86.7%)、うち不正所得金額46百万円を把握した。

○ 海外取引法人に対する実地調査の状況

平成26事務年度から平成28事務年度の海外取引法人に対する実地調査の実地調査件数、海外取引に係る申告漏れ所得金額、申告漏れ割合の推移のグラフ

26事務年度 27事務年度 28事務年度
実地調査件数 246 272 228
法人税 海外取引に係る申告漏れのあった件数 60 77 66
  同上のうち、不正計算のあった件数 13 13 5
海外取引に係る申告漏れ所得金額 百万円 1,013 1,386 1,202
  同上のうち、不正計算に係る所得金額 百万円 134 445 46