T 法人税等の調査事績の概要

1 法人税の実地調査の状況

不正所得金額は51億円、対前年比 約35%増加

平成26事務年度においては、申告漏れが想定される法人1,715件(対前年比106.9%)について実地調査を実施した。
 このうち、申告漏れのあったものは1,208件(同103.4%)で、その申告漏れ所得金額は127億 93百万円(同92.4%)となっている。
 申告漏れのあった法人のうち、仮装又は隠蔽により所得を脱漏していた、いわゆる不正計算のあった法人は350件(同97.5%)で、その不正所得金額は50億65百万円と、前事務年度の37億55百万円に比べて13億10百万円(34.9%)増加している。

○ 1件当たりの不正所得金額

1件当たりの不正所得金額は1,447万円、対前年比 約38%増加

不正計算のあった法人1件当たりの不正所得金額は1,447万1千円で、前事務年度の1,046万円に比べて401万1千円(38.4%)増加している。

表1 法人税の実地調査の状況
事務年度 25 26  
項目 対前年比
実地調査件数1 1,605件 1,715件 106.9%
申告漏れのあった件数 1,168件 1,208件 103.4%
同上のうち不正計算のあった件数2 359件 350件 97.5%
申告漏れ所得金額3 13,848百万円 12,793百万円 92.4%
同上のうち不正所得金額4 3,755百万円 5,065百万円 134.9%
調査1件当たりの申告漏れ所得金額(3/1 8,628千円 7,459千円 86.5%
不正申告1件当たりの不正所得金額(4/2 10,460千円 14,471千円 138.4%
追徴税額 本税額 2,499百万円 2,509百万円 100.4%
加算税額 440百万円 562百万円 127.7%
追徴税額合計 2,939百万円 3,071百万円 104.5%

「仮装又は隠蔽」とは…
故意に帳簿の改ざんを行ったり、帳簿書類の記録をせずに売上げその他の収入を除外するなど、課税所得金額の計算の基礎となるべき真の事実や法律関係と異なる経理処理を意図的に行うことである。

2 不正発見割合及び不正計算の手口の状況

○ 不正発見割合の状況

不正発見割合の高い業種、サービス業がトップ

平成26事務年度において実地調査した法人のうち、仮装又は隠蔽により所得を脱漏していた、いわゆる不正計算のあった法人の割合は20.4%で、これを業種別でみると、サービス業が26.4%と最も高く、次いで建設業 25.5%の順となっている。
 また、不正計算のあった法人のうち1件当たりの不正所得金額をみると、最も多いものはサービス業の 3,939万6千円となっている。

表2 業種別の不正発見の状況
項目 不正発見割合 1件当たり不正所得金額
業種別   順位 前年順位   順位 前年順位
      千円    
サービス業 26.4 1 2 39,396 1 6
建設業 25.5 2 3 7,399 6 7
卸売業 19.6 3 7 12,404 3 3
製造業 18.1 4 6 11,067 4 1
料理・旅館・飲食業 17.5 5 4 8,160 5 5
運送業 13.5 6 1 3,959 8 8
小売業 12.9 7 5 6,849 7 2
その他の業 12.8 8 8 14,405 2 4
全業種計 20.4     14,471    

○ 不正計算の手口の状況

売上(収入金額)除外による不正計算がトップ

平成26事務年度において、不正所得金額が1千万円以上あった81法人について、不正計算の形態を不正所得金額別で見ると、売上(収入金額)を除外していたものが7億53百万円(30.9%)と最も多く、次いで架空経費を計上していたものが6億6百万円(24.9%)、架空外注費を計上していたものが3億11百万円(12.8%)の順となっている。
 件数別に見ると、架空経費を計上していたものが57件(33.7%)と最も多く、次いで雑収入を除外していたものが38件(22.5%)、売上(収入金額)を除外していたものが35件(20.7%)の順となっている。

表3 不正の形態
項目 不正所得金額 延法人数
不正計算の形態   構成割合   構成割合
  百万円
売上(収入金額)除外 753 30.9 35 20.7
架空経費 606 24.9 57 33.7
架空外注費 311 12.8 12 7.1
棚卸除外 301 12.4 11 6.5
雑収入除外 195 8.0 38 22.5
架空仕入 62 2.5 3 1.8
その他 206 8.5 13 7.7
2,434 100.0 169 100.0
(実法人数は81件)

U 法人消費税の実地調査の概要

追徴税額は7億2百万円、対前年比 約21%増加

平成26事務年度においては、法人消費税について、1,661 件(対前年比106.7%)の実地調査を実施した。
 このうち、非違があったものは928件(同103.6%)で、その追徴税額は7億2百万円と、前事務年度の5億79百万円に比べて1億23百万円(21.2%)増加している。
 調査した法人1件当たりの追徴税額は423千円で、前事務年度の372千円に比べて51千円(13.7%)増加している。

表4 法人消費税の実地調査の状況
事務年度 25 26  
項目 対前年比
実地調査件数1 1,557件 1,661件 106.7%
非違のあった件数 896件 928件 103.6%
調査による追徴税額2 579百万円 702百万円 121.2%
調査1件当たりの追徴税額(2/1 372千円 423千円 113.7%

(注) 調査による追徴税額は、地方消費税(譲渡割額)を含む。

V 源泉所得税等の調査事績の概要

追徴税額は3億円、対前年比 約18%増加

平成26事務年度においては、2,369件(対前年比97.4%)の源泉徴収義務者について実地調査を実施した。
 このうち、非違があったものは613件(同109.5%)で、その追徴税額は3億5百万円と、前事務年度の2億59百万円に比べて46百万円(17.8%)増加している。

表5 源泉所得税等の実地調査の状況
事務年度 25 26  
項目 対前年比
実地調査件数 2,432件 2,369件 97.4%
非違のあった件数 560件 613件 109.5%
調査による追徴税額 259百万円 305百万円 117.8%
(注) 1 平成25年1月1日以後に生ずる所得に係る追徴税額から、復興特別所得税が含まれている。
2 追徴税額には加算税額を含む。

W 調査の取組状況

消費税還付申告法人に対する取組
〜還付申告を行っていた法人から99百万円を追徴〜

消費税は、預り金的性格を有するため、適正な税務執行がより一層求められている。
 こうした中、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得るケースも見受けられることから、還付申告を行う法人に対する指導や実地調査に重点的に取り組んでいる。
 平成26事務年度は、消費税還付申告法人211社に対して実地調査をした結果、108社(51.2%)から99百万円の消費税額を追徴した。また、そのうち16社は不正に還付金額の水増しなどを行っており、6百万円を追徴した。

○ 消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査の状況

平成24事務年度から平成26事務年度の消費税還付申告法人調査における非違件数の推移のグラフ

事務年度 24 25 26
項目
実地調査件数 150 154 211
消費税 非違があった件数 77 88 108
  同上のうち、不正計算のあった件数 14 18 16
追徴本税額 百万円 47 103 99
  同上のうち、不正計算に係る追徴本税額 百万円 8 17 6

海外取引法人に対する取組
〜海外取引調査で10億13百万円の申告漏れを把握〜

企業等の事業、投資活動のグローバル化が進展する中で、海外取引を行っている法人の中には、海外の取引先からの売上を除外するなどの不正計算を行うものが見受けられる。このような海外取引法人等に対しては、租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある実地調査に取り組んでいる。
 平成26事務年度は、海外取引法人246社に対して実地調査をした結果、60社(24.4%)から海外取引に係る申告漏れ所得金額10億13百万円、うち不正所得金額1億34百万円を把握した。

○ 海外取引法人に対する実地調査の状況

平成24事務年度から平成26事務年度の海外取引法人に対する実地調査の状況の推移のグラフ

事務年度 24 25 26
項目
実地調査件数 232 239 246
法人税 海外取引に係る申告漏れのあった件数 72 62 60
  同上のうち、不正計算のあった件数 10 10 13
海外取引に係る申告漏れ所得金額 百万円 1,739 1,686 1,013
  同上のうち、不正計算に係る所得金額 百万円 182 156 134