T 法人税等の調査事績の状況

1 法人税の実地調査の状況

(1) 申告漏れ所得金額及び不正所得金額

申告漏れ所得金額は 138億円で前年並み
 不正所得金額は 38億円、27%減少

平成25事務年度において、申告漏れが想定されるなど調査必要度の高い法人1,605件について実地調査を行った結果、申告漏れのあったものは1,168件で、その申告漏れ所得金額は138億 48百万円と前事務年度の139億83百万円に比べて1億35百万円減少(対前年比1.0%減)している。
 申告漏れのあった法人のうち、仮装又は隠蔽により所得を脱漏していたいわゆる不正計算のあった法人は359件で、その不正所得金額は37億55百万円と前事務年度の51億88百万円に比べて14億33百万円減少(対前年比27.6%減)している。

(2) 調査1件当たりの申告漏れ所得金額

1件当たりの申告漏れ所得金額は863万円、20%増加

調査した法人1件当たりの申告漏れ所得金額は 862万8千円で、前事務年度の716万3千円に比べて146万5千円増加(対前年比20.5%増)している。

(3) 1件当たりの不正所得金額

1件当たりの不正所得金額は1,046万円、10%減少

不正計算のあった法人1件当たりの不正所得金額は1,046万円で、前事務年度の1,165万8千円に比べて119万8千円減少(対前年比10.3%減)している。

表1 法人税の実地調査の状況
事務年度 24 25  
項目 対前年比
実地調査件数丸1 1,952件 1,605件 82.2%
申告漏れのあった件数 1,395件 1,168件 83.7%
同上のうち不正計算のあった件数丸2 445件 359件 80.7%
申告漏れ所得金額丸3 13,983百万円 13,848百万円 99.0%
同上のうち不正所得金額丸4 5,188百万円 3,755百万円 72.4%
調査1件当たりの申告漏れ所得金額(丸3/丸1) 7,163千円 8,628千円 120.5%
不正申告1件当たりの不正所得金額(丸4/丸2) 11,658千円 10,460千円 89.7%
追徴税額 本税額 2,682百万円 2,499百万円 93.2%
加算税額 557百万円 440百万円 79.0%
追徴税額合計 3,239百万円 2,939百万円 90.7%

「仮装又は隠蔽」とは
 故意に帳簿の改ざんを行ったり、帳簿書類の作成をせずに売上げその他の収入を除外するなど、課税所得金額の計算の基礎となるべき真の事実や法律関係と異なる経理処理を意図的に行うことである。

2 法人事業者に対する消費税の調査状況

消費税調査1件当たりの追徴税額は37万円、約7%増加

平成25事務年度に行った法人事業者に対する消費税の調査件数は 1,557 件で、このうち896件に計算誤りがあり、その追徴税額は5億79百万円で、前事務年度の6億48百万円に比べて69百万円減少(対前年比10.6%減)している。
 調査した法人1件当たりの追徴税額は372千円で、前事務年度の348千円に比べて24千円増加(対前年比6.9%増)している。

表2 法人事業者に対する消費税の調査状況
事務年度 24 25  
項目 対前年比
調査件数1 1,863件 1,557件 83.6%
同上のうち誤りのあった件数 1,070件 896件 83.7%
調査による追徴税額2 648百万円 579百万円 89.4%
調査1件当たりの追徴税額(2/1 348千円 372千円 106.9%

(注) 調査による追徴税額には地方消費税額(譲渡割額)を含む。

U 不正発見割合及び不正計算の手口の状況

1 不正発見割合の状況

不正発見割合の高い業種、運送業がトップ

平成25事務年度において実地調査した法人のうち、仮装又は隠蔽により所得を脱漏していた法人の割合は22.4%で、これを業種別でみると、運送業が30.0%と最も高く、次いでサービス業 28.1%、建設業 26.9%の順となっている。
 また、不正計算のあった法人のうち1件当たりの不正所得金額をみると、最も多いものは製造業の 1,507万円で、次いで小売業の 1,246万5千円、卸売業の1,218万3千円の順となっている。

表3 業種別の不正発見の状況
項目 不正発見割合 1件当たり不正所得金額
業種別   順位 前年順位   順位 前年順位
      千円    
運送業 30.0 1 5 3,416 8 4
サービス業 28.1 2 4 10,804 6 2
建設業 26.9 3 1 6,819 7 8
料理・旅館・飲食業 23.8 4 2 11,073 5 7
小売業 22.8 5 6 12,465 2 6
製造業 18.2 6 3 15,070 1 3
卸売業 16.8 7 7 12,183 3 1
その他の業 14.8 8 8 11,591 4 5
全業種計 22.4     10,460    

2 不正計算の手口の状況

売上(収入金額)除外による不正計算がトップ

平成25事務年度において、不正所得金額が1千万円以上あった82法人について、不正所得金額を不正計算の形態別で見ると、売上(収入金額)を除外していたものが8億76百万円(28.2%)と最も多く、 次いで架空経費を計上していたものが8億4百万円(25.9%)、雑収入除外をしていたものが4億66百万円(15.0%)の順となっている。

表4 不正の形態
項目 不正所得金額 延法人数
不正計算の形態   構成割合   構成割合
  百万円
売上(収入)除外 876 28.2 29 18.0
架空経費 804 25.9 50 31.1
雑収入除外 466 15.0 44 27.3
棚卸除外 372 12.0 13 8.1
架空外注費 368 11.8 12 7.5
架空仕入 122 3.9 7 4.3
その他 102 3.2 6 3.7
3,110 100.0 161 100.0
(実法人数は82件)

V 源泉所得税の調査事績の状況

源泉所得税調査の追徴税額 2億6千万円

平成25事務年度に行った源泉所得税の調査件数は 2,432件で、このうち560件に誤りがあり、その追徴税額は 2億 59百万円で、前事務年度の 3億20百万円に比べて61百万円減少(対前年比19.1%減)している。

表5 調査の状況
事務年度 24 25  
項目 対前年比
調査件数
3,439 2,432 70.7
誤りのあった件数 748 560 74.9
追徴税額 百万円 百万円  
320 259 80.9

(注)

  • 1 平成25年1月1日以後に生ずる所得に係る追徴税額から、復興特別所得税を含む。
  • 2 追徴税額には加算税額を含む。

W 調査の取組状況

消費税還付申告法人に対する取組
還付申告を行っていた法人から1億円を追徴

消費税は、主要な税目の一つであり、預り金的性格を有するため、一層の適正な税務執行が求められている。こうした中、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得るケースも見受けられることから、国税当局は還付申告を行う法人に対する指導や調査に重点的に取り組んでいる。
 平成25事務年度は、消費税還付申告法人154社に対する調査をした結果、88社から1億3百万円の消費税額を追徴した。また、そのうち18社は不正に還付金額の水増しなどを行っており、17百万円を追徴した。

平成23事務年度から平成25事務年度の消費税還付申告法人調査における非違件数の推移のグラフ

○ 消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査の状況
事務年度 23 24 25
項目
実地調査件数丸1 153 150 154
消費税 非違があった件数 92 77 88
  うち不正計算を行っていた件数2 14 14 18
追徴税額 百万円 139 47 103
  うち2に係る追徴税額 百万円 6 8 17

海外取引法人に対する取組
海外取引調査で16億86百万円の申告漏れを把握

経済の国際化の進展により、企業や個人の国境を越えた事業、投資活動が活発化している。こうした中、国税当局は海外取引を有する法人(以下「海外取引法人」という。)に対する指導や調査に重点的に取り組んでいる。
 平成25事務年度は、海外取引法人239社に対する調査をした結果、62社から海外取引に係る申告漏れ所得金額16億86百万円、うち不正所得金額1億56百万円を把握した。

平成23事務年度から平成25事務年度の海外取引法人に対する実地調査の状況の推移のグラフ

○ 海外取引法人に対する実地調査の状況
事務年度 23 24 25
項目
実地調査件数 260 232 239
法人税 海外取引に係る申告漏れのあった件数 78 72 62
  同上のうち、不正のあった件数 13 10 10
海外取引に係る申告漏れ所得金額 百万円 2,302 1,739 1,686
  同上のうち、不正所得金額 百万円 590 182 156