税務署長などが課税処分や滞納処分を行った場合に、納税者がその処分に不服があるときは、その処分の取消しなどを求めて不服申立てをすることができます。この不服申立制度は納税者の正当な権利や利益を簡易かつ迅速に救済するための手続であり、処分に対して不服がある納税者は、裁判所に訴訟を提起する前に、まずこの不服申立てを行うことを原則としています。
 不服申立てには税務署長などに対して行う異議申立てと国税不服審判所長に対して行う審査請求があり、審査請求は、原則として異議申立てを経た上で行うことができることとされています。
 なお、この不服申立制度については、平成26年6月に関係法律の改正が行われています。

国税に関する不服申立制度の概要

(1) 異議申立て

簡易・迅速かつ適正な権利救済

 異議申立ては、税務署長などが更正・決定や差押えなどの処分をした場合に、その処分に不服がある納税者が、行政庁である税務署長などに対して、その処分の取消しや変更を求める手続であり、国税に関する処分の行政争訟の第一段階です。
 経済取引の広域化、国際化などにより異議申立事案が複雑化しており、事実関係の把握や法令の解釈・適用に困難を伴うものが増加しています。このような状況の下において、各国税局に設置された審理課・審理官を中心に、税法の正確な解釈に基づく全国統一的な執行に取り組むとともに、各種研修を通じて審理に精通した職員を養成し、納税者からの異議申立てを適正かつ迅速に処理できるよう努めています。

(2) 審査請求

公正な第三者的機関による権利救済

 上記の異議申立てに対する税務署長などの決定に、なお不服がある納税者は、国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができます。国税不服審判所は、納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資することを使命とし、審査請求人と税務署長などとの間に立つ公正な第三者的立場で、審査請求に対する裁決を行う機関であり、国税不服審判所長をはじめ東京及び大阪支部の所長など主要な役職に、裁判官や検察官の職にあった者を任用しています。
 また、国税審判官に、税理士や弁護士などの職にあった民間の専門家を任期付職員として採用しています。
 審査請求の処理に当たっては、審査請求人や税務署長などと早期に接触し、主張を十分把握した上で、争点の確認表を作成するなどして争点を整理し、明確化します。その上で、双方から提出された証拠書類等の内容を十分に検討し、自ら調査を行って、納税者からの審査請求を適正かつ迅速に処理できるよう努めています。
 なお、国税不服審判所長の裁決は、税務署長などの行った処分よりも納税者に不利益になることはありません。また、裁決は、行政部内での最終判断であるため、税務署長などは、仮にこれに不服があったとしても訴訟を提起することはできません。

(3) 訴訟

司法による救済

 納税者は、国税不服審判所長の裁決を経た後、なお不服があるときは、裁判所に対して訴訟を提起して司法による救済を求めることができます。

(4) 権利救済の状況

異議申立ては原則3か月以内、審査請求は原則1年以内に処理

イ 異議申立て

(イ) 目標

 異議申立てについては、原則3か月以内にその処理を終えるよう努めています。

(ロ) 実績

 平成25年度における異議申立ての3か月以内の処理件数割合は97.0%となっています。
 なお、同年度における異議申立処理件数は2,534件(課税関係2,183件、徴収関係351件)で、このうち新たな事実が把握されたことなどにより納税者の主張の全部又は一部が認められた割合は10.0%です。

ロ 審査請求

(イ) 目標

 審査請求については、原則1年以内にその処理を終えるよう努めています。

(ロ) 実績

 平成25年度における審査請求の1年以内の処理件数割合は96.2%となっています。
 なお、同年度における審査請求処理件数は3,073件(課税関係2,907件、徴収関係166件)で、このうち請求の全部又は一部が認められた割合は7.7%です。

ハ 訴訟

 訴訟については、平成25年度における終結件数は328件(課税関係267件、徴収関係57件、審判所関係4件)であり、このうち納税者の請求の全部又は一部が認められた割合は7.3%となっています。

※  権利救済制度に関する納税者の理解をより深めていただくため、異議申立て、審査請求及び訴訟の概要や裁決事例などの情報を、国税庁ホームページや国税不服審判所ホームページhttp://www.kfs.go.jpなどを通じて提供しています。

異議申立ての3か月以内の処理件数割合と異議申立処理件数 審査請求の1年以内の処理件数割合と審査請求処理件数

納税者からの苦情などへの対応

 国税庁に対しては、処分に対する不服申立てだけではなく、職員の応対や調査の仕方など税務行政全般について、納税者から不平や不満、困りごとの相談などが寄せられることがあります。国税庁は、このような納税者の様々な苦情などに正面から対応することが、納税者の理解と信頼を得るためには不可欠であると考え、納税者の視点に立って迅速かつ的確な対応に努めています。また、平成13年7月からは納税者支援調整官を置き、納税者の権利、利益に影響を及ぼす処分に係る苦情について、権利救済手続を説明するなど適切に対応しています。