国際的な二重課税問題の解決のため、相互協議事案の適切・迅速な処理を実施

 国際化が進み、個人や企業が海外へ進出すると、日本と進出先の国の双方から課税される「二重課税」が生じる場合があります。例えば、前述の移転価格税制の適用により二重課税が生じる場合があります。国税庁は、租税条約に基づく税務当局間の相互協議1を実施し、こうした国際的な二重課税問題の解決に努めています。
 平成22事務年度における相互協議事案の発生件数は、昨年度に比して減少したものの、引き続き高水準で推移しており、その9割以上が移転価格に関するものです。その中でも、移転価格問題についての予測可能性を確保するための事前確認に係る事案の割合が増加傾向にあります。
 また、相互協議の相手国の数(10年前の15か国から、平成23年6月末には23か国に増加)やOECD非加盟国などの相互協議の経験が比較的少ない国との事案も増加傾向にあります。
 国税庁では、相互協議事案の適切・迅速な解決に向け、担当者を増員して体制の充実を図ってきているとともに、各国税務当局間の協力関係を一層深め、より効率的な協議の実施に努めています。

 注釈

  1. 1 「相互協議」とは、納税者が租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至ると認められる場合において、その条約に適合しない課税を排除するため、条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続です。

相互協議事案発生件数の推移のグラフ

相互協議の相手国(平成23年6月末現在)
  欧州 アジア・大洋州 北米
OECD加盟国 ベルギー ルクセンブルク オーストラリア カナダ
チェコ オランダ 韓国 アメリカ
デンマーク   スペイン          
フランス スウェーデン        
ドイツ スイス        
アイルランド イギリス        
イタリア            
OECD非加盟国   中国  
インド  
インドネシア  
マレーシア  
シンガポール
タイ
  13か国 8か国 2か国

(備考) 平成23年6月末現在で、相互協議を実施している相手国(計23か国)。国名の右の「※」は、事前確認に係る相互協議を実施している相手国(18か国)。