国税庁は、内国税の賦課・徴収を担当する行政機関であり、昭和24年に大蔵省(現、財務省)の外局として設置されました。
 国税庁の下には、全国に12の国税局(沖縄国税事務所を含む。以下同じ。)、524の税務署が設置されており、国税庁本庁は、税務行政の執行に関する企画・立案等を行い、国税局と税務署の事務を指導・監督しています。国税局は、国税庁の指導・監督を受け、管轄区域内の税務署の賦課徴収事務について指導・監督を行うとともに、大規模納税者等について、自らも賦課徴収を行っています。税務署は、国税庁や国税局の指導・監督の下に、国税の賦課徴収を行う第一線の執行機関であり、納税者と密接なつながりを持つ行政機関です。
 以上のほか、税務職員の教育機関である税務大学校、また、特別の機関として、納税者の不服申立ての審査に当たる国税不服審判所があります。

1 国税庁の任務と使命

(1) 国税庁の任務

 国税庁の任務は、財務省設置法第19条により「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現」を図ることと定められており、この任務を果たすために、広報活動や租税教育など納税者が納税義務を理解し実行することを支援する活動(納税者サービス)や、善良な納税者が課税の不公平感を持つことがないよう、納税義務が適正に果たされていないと認められる納税者に対し、的確な指導や調査を実施することによって誤りを確実に是正する活動(適正・公平な税務行政の推進)を行っています。
 これに加えて、同条により定められている任務である「酒類業の健全な発達」及び「税理士業務の適正な運営の確保」に努めています。

(2) 国税庁の使命

 国税庁は、これらの任務を遂行するに当たっては、納税者である国民の理解と信頼を得ることが何より重要であると考えています。
 このため、国税庁の任務を遂行するに当たっての実施基準や行動規範などを取りまとめ、「国税庁の使命」として職員に示すとともに、国民に対して公表しています。

国税庁の使命

使命:納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する。

任務

 上記使命を達成するため国税庁は、財務省設置法第19条に定められた任務を、透明性と効率性に配意しつつ、遂行する。

 1 内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現
(1) 納税環境の整備
  1. 1 申告・納税に関する法令解釈や事務手続などについて、分かりやすく的確に周知・広報を行う。
  2. 2 納税者からの問い合わせや相談に対して、迅速かつ的確に対応する。
  3. 3 租税の役割や税務行政について幅広い理解や協力を得るため、関係省庁等及び国民各層からの幅広い協力や参加の確保に努める。
(2) 適正・公平な税務行政の推進
  1. 1 適正・公平な課税を実現するため、
    1. イ 関係法令を適正に適用する。
    2. ロ 適正申告の実現に努めるとともに、申告が適正でないと認められる納税者に対しては的確な調査・指導を実施することにより誤りを確実に是正する。
    3. ハ 期限内収納の実現に努めるとともに、期限内に納付を行わない納税者に対して滞納処分を執行するなどにより確実に徴収する。
  2. 2 納税者の正当な権利利益の救済を図るため、不服申立て等に適正・迅速に対応する。
 2 酒類業の健全な発達
  1. 1 酒類業の経営基盤の安定を図るとともに、醸造技術の研究・開発や酒類の品質・安全性の確保を図る。
  2. 2 酒類に係る資源の有効な利用の確保を図る。
 3 税理士業務の適正な運営の確保

税理士がその使命を踏まえ、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に重要な役割を果たすよう、その業務の適正な運営の確保に努める。

行動規範

 上記任務は以下の行動規範に則って遂行する。

(1) 任務遂行に当たっての行動規範
  1. 1 納税者が申告・納税に関する法令解釈や事務手続などについて知ることができるよう、税務行政の透明性の確保に努める。
  2. 2 納税者が申告・納税する際の利便性の向上に努める。
  3. 3 税務行政の効率性を向上するため事務運営の改善に努める。
  4. 4 調査・滞納処分事務を的確に実施するため、資料・情報の積極的な収集・活用に努める。
  5. 5 悪質な脱税・滞納を行っている納税者には厳正に対応する。
(2) 職員の行動規範
  1. 1 納税者に対して誠実に対応する。
  2. 2 職務上知り得た秘密を守るとともに、綱紀を厳正に保持する。
  3. 3 職務の遂行に必要とされる専門知識の習得に努める。
今後の取組

 高度情報化・国際化等の経済社会の変化に的確かつ柔軟に対応し、また、納税者のニーズに応えるため、税務行政組織及び税務行政運営につき、不断に見直し・改善を行っていく。

2 税務行政の運営の考え方

 国税庁の使命は、「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことです。
 国民の皆様からの理解と信頼の下、この使命を果たすため、国税庁は、税務行政の運営に当たり、

  1. 1 納税者が、申告・納税を「簡単・便利・スムーズ」に行うことができるように、サービスの充実に努める
  2. 2 納税者の権利利益の保護を図りつつ、適正な調査・徴収を行う
  3. 3 国税庁の様々な取組を分かりやすくお知らせするとともに、各種施策の実施結果の評価・検証を踏まえ、税務行政を改善する

ことなどを基本的な考え方として、以下のような取組を行います。

国税庁の取組

(1) 納税者サービスの充実

  • ・ 納税者が自ら正しい申告と納税が行えるよう、申告等のために必要な税務情報及び法令解釈を明確にするための情報提供を、ホームページなどを通じて提供します。
  • ・ e-Taxや国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」など、ICTを活用した納税者にとって利便性の高い申告・納税手段の充実を推進します。
  • ・ 納税者が自己の経済活動についての税法上の取扱いを事前に予測することが可能となるよう、事前照会や移転価格課税に関する事前確認に対応します。
  • ・ 源泉徴収制度についても、源泉徴収義務者に対する更なる周知・広報を通じ、その適正な運営が図られるよう努め、必要に応じ、文書や電話照会などにより納付指導を行います。
  • ・ 納税者が適正な申告納税を行う上で、税理士の果たす役割は重要であることから、e-Taxの普及、書面添付制度の活用など税理士会との連携・協調に努めます。
  • ・ 租税教育については、社会全体で取り組むべきとの考え方の下、充実に向けた支援に取り組み、関係省庁、教育関係者、税理士会等民間団体と連携します。

(2) 適正な調査・徴収

  • ・ 納税者の権利利益の保護を図りつつ、悪質な納税者には厳正な態度で臨むなど、適正な調査・徴収を行います。
  • ・ 課税・滞納処分は、納税者の権利利益に対する強制的な処分であることを十分に認識し、調査段階において、納税者の主張を正確に理解し、その内容を客観的に吟味した上、的確な事実認定と法令の適用を行います。
  • ・ 複雑化する経済取引等に対応するため情報収集体制の充実を図るとともに、資産運用の多様化や消費税の不正還付申告への対応など、的確な重点課題を設定し、組織的に取り組みます。
  • ・ 国際的な取引についても租税条約に基づく外国税務当局との情報交換を行い、課税上問題があると認められる租税回避行為などには厳正に対応します。
  • ・ 大企業の税務コンプライアンスの維持・向上には、コーポレートガバナンスが重要であるため、経営責任者等と意見交換を行い、効果的な取組事例を紹介するなどの取組を進めます。

(3) 酒税行政の適正な運営

  • ・ 食の安心・安全に対する消費者の関心は引き続き高いことから、消費者に安全で良質な酒類が提供できるよう、酒類総合研究所と連携して、酒類の安全性の確保と品質水準の向上に取り組みます。
  • ・ 未成年者の飲酒防止などの社会的な要請に応えるため、酒類販売管理者の選任義務や酒類の陳列場所における表示が適切に遵守されるよう、酒類の適正な販売管理の確保に努めます。
  • ・ 酒類の公正な取引環境の整備に向けた酒類業者の自主的な取組が推進されるよう、「酒類に関する公正な取引のための指針」を踏まえて取引状況等実態調査を実施し、合理的な価格の設定が行われていないなどの取引が認められた場合には改善を指導し、必要に応じて公正取引委員会と連携して対応します。

(4) 事務の効率化の推進と組織基盤の充実

  • ・ 厳しい行財政事情の下で国税庁の任務を適切に遂行するため、必要な機構・定員・予算の確保を図り、適切に配分するとともに、納税者の視点に立って行政の効率化・経費の節減に努めます。
  • ・ 事務処理の電子化など、事務の簡素・効率化に向けた不断の見直しを行い、特に、一時期に申告が集中する所得税の確定申告期においては、納税者利便の向上にも資するe-Taxの利用推進などに取り組みます。
  • ・ 女性職員の採用・登用にも配意しつつ、経験や能力に応じた的確な人事配置を行い、必要とされる専門知識の一層の向上が図られるよう、研修などの指導育成策の充実を図ります。
  • ・ 行政文書・情報の管理の徹底に取り組みます。

(5) 政策評価と税務行政の改善

  • ・ 国民の皆様からの理解と信頼を得られるように、国税当局が取り組むべき課題や取組方針、各種施策についての実効性ある計画の策定とその実施、実施結果の評価・検証について、分かりやすくお知らせします。各種施策の実施結果の評価・検証を踏まえ、税務行政の改善に取り組みます。

3 国税組織の概要

(1) 国の収入と税

 平成24年度の国の収入(一般会計歳入予算(当初))は年間90兆3,339億円です。そのうち42兆3,460億円が租税及び印紙収入で、そこから税関からの税収分や日本郵政株式会社からの印紙収入分を除くと、国税組織の税収分は36兆7,169億円(約87%)1となります。
 また、所得税、法人税、消費税で税収分の約8割を占めています。

注釈

  1. 1 国税組織の税収分は、平成22年4月1日から平成23年3月31日の租税及び印紙収入決算額に占める国税庁分歳入決算額の割合を基に算出しています。
国の収入(一般会計歳入予算)のグラフ
国の歳出のグラフ
  • ※ 公債金は、歳入の不足を埋め合わせるために発行された特例公債と公共事業費などを賄うために発行された建設公債による収入であり、すべてが将来返さなければならない借金です。
     各項目の合計金額と「合計」の金額は、端数処理のため一致していません。

(2) 国税庁の予算と定員

 平成24年度の国税庁関係予算額(当初)は7,093億円で、人件費を除く一般経費は1,350億円となっています。一般経費については、事務の効率化や納税者の利便性向上のため国税総合管理(KSK)システム(以下「KSKシステム」といいます。)やe-Taxなどに重点を置いています。
 国税庁の定員は、昭和40年代後半から昭和50年代は5万2,000人台で推移しました。その後、平成元年に消費税が導入されたことなどに伴い定員が増加しましたが、平成9年度にピークとなり、平成18年度までの9年間に1,000人を超える定員が減少しました。
 平成19年度から平成23年度までは、定員増加に転じましたが、平成24年度には6年ぶりに純減となり、平成24年度の国税庁定員は5万6,194人となっています。
 現在の厳しい財政状況の下で、国税庁では、国税庁の任務を遂行するために必要な予算・定員の確保を図るとともに、行政経費の節減や定員の合理化に取り組んでいます。

  昭和50年度 平成9年度 平成24年度 (参考)平成24年度/昭和50年度
予算(億円) 2,360 6,548 7,093 300.6%
定員(人) 52,440 57,202 56,194 107.2%
1所得税確定申告数(千人) 7,327 20,023 21,853 298.3%
2法人数(千件) 1,482 2,793 2,978 200.9%
3物品税課税場数(千件) 117 - - -
4消費税課税事業者数(千件) - 2,521 3,290 -
1234(千件) 8,926 25,337 28,121 315.0%
  • ※ 平成24年度の予算は東日本大震災復興特別会計に計上されている経費を含んでいます。
  •  平成24年度の1所得税確定申告数は、平成23年分の計数です。
  •  平成24年度の2法人数は、平成23年6月末の計数です。
  •  4消費税課税事業者数は、消費税課税事業者等届出書提出件数です。なお、平成24年度は、平成24年3月末の計数です。
     (参考)は、昭和50年度を100としたときの平成24年度の割合です。

(3) 国税組織の機構

 国税事務を行う組織として、国税庁の下に、全国11の国税局・沖縄国税事務所と全国524の税務署があります。(注1)

国税組織の機構の図

(注)

  1. 1 各部署の人数、%は、平成24年度の定員及び国税庁全体の定員に占める割合を示しています。
  2. 2 国税審議会では、1国税不服審判所長が国税庁長官通達と異なる法令解釈により裁決を行うなどの場合において、国税庁長官が意見を求めた事項の調査審議、2税理士試験の執行及び税理士の懲戒処分の審議、3酒類の表示基準の制定などを審議しています。