国際化が進み、個人や企業が海外へ進出すると、日本と進出先国の双方から課税される「二重課税」が生じる場合があります。また、前述の移転価格により二重課税が生じる場合もあります。国税庁は、租税条約に基づく税務当局間の相互協議1を活用して、こうした国際的な二重課税の問題に対応しています。
 相互協議の発生件数は近年増加傾向にあり、その9割以上が移転価格に関するものです。また、その中でも、移転価格問題についての予測可能性を確保するため、事前確認に係る協議が増加傾向にあります。平成20事務年度においては、174件の相互協議事案が発生し、うち移転価格に関するものは160件、そのうち事前確認に係るものは130件でした。これを10年前と比較しますと、相互協議件数で約4倍、事前確認に係る相互協議件数で10倍になっています。
 相互協議件数にあわせて相互協議相手国数も増加してきており、10年前には15か国でしたが、平成21年6月末では22か国に増加しています。
 国税庁では、これら相互協議事案の適切で迅速な解決に向け、担当者を増員して事前確認に重点を置いた体制の充実を図ってきているとともに、各国税務当局間の協力関係を一層深め、より効率的な協議の実施に努めています。

注釈

  1. 1 「相互協議」とは、納税者が租税条約の規定に適合しない課税を受け、又は受けるに至ると認められる場合において、その条約に適合しない課税を排除 するため、条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続です。
相互協議事案発生件数の推移のグラフ
我が国の租税条約ネットワークの図