ITの活用により、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化、高度化、透明性の向上を図ります。

 行政分野へのITの活用と業務や制度の見直しにより、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化、信頼性、透明性の向上を図るため、平成15年7月に「電子政府構築計画」が決定され、政府全体として、国民の利便性・サービスの向上のための取組、ITを活用した業務改革を行うための取組を行ってきています。
 また、これらの取組を踏まえつつ、平成18年1月に「世界一便利で効率的な電子政府」の実現を掲げる「IT新改革戦略」が策定され、さらに平成18年8月には「電子政府推進計画」(平成19年8月改定)が策定され、利用者視点に立ったオンライン利用促進、全体最適化を目指した業務・システムの最適化に取り組んでいくこととしています。
 国税庁においても、これらに掲げられている施策を着実に実施しており、IT 化時代に対応した税務行政の推進に取り組んでいます。
 今後の情報ネットワーク社会の重要な基盤となる国民のインターネットの利用人口は、平成18年末でおよそ8,754万人と推定され、国民生活の中でインターネットの普及が着実に進んでいます。
 IT新改革戦略においては、「いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」のために、いつでも、どこでも利用できるネットワーク社会の形成と、世界一便利で効率的な電子行政の実現を目指しています。国税庁では、インターネットを利用してオンラインで申告・納税を行えるようにしたe-Taxを今後の税務手続の中心を担うシステムと位置づけ、その利便性の一層の向上と普及の推進を図っています。

(1) 業務・システムの最適化

 国税庁では、納税者利便性の充実のためのITの活用と併せ、ITの高度利用を前提とした事務の見直しを進めており、平成15年7月に決定された「電子政府構築計画」に基づき、丸1業務を的確に実施するための事務処理の簡素化・効率化、丸2IT活用による納税者利便性の向上等、丸3IT活用による調査・滞納整理に関するシステムの高度化、丸4システムの安定性・信頼性及び情報セキュリティの確保、丸5システム関係経費の削減及び調達の透明性の確保を図ることを基本理念として、平成18年3月に「国税関係業務の業務・システム最適化計画」(平成20年5月改定)を策定・公表し、国税関係業務・システムの最適化に取り組んでいます。
 基本理念のうち、事務処理の簡素化・効率化の観点では、内部事務の一元化の実施に向けた試行や税務相談の電話相談センターへの集中化を実施するとともに、システムの高度化の観点から、調査・滞納整理の一層の充実を図るため、経済社会の国際化・高度情報化に対応するシステム改善を実施するなど情報セキュリティに配意しつつ、国税関係システムの高度化に取り組んでいます。
 また、納税者の利便性の向上などの観点では、e-Taxを利用した所得税の確定申告手続における「源泉徴収票」や「医療費の領収書」などの第三者作成書類の添付省略、利用者識別番号のオンライン発行などe-Taxの機能・運用の改善やコンビニでの納税を可能とする国税の納付手段の多様化を図りました。
 さらに、経費削減などの観点では、KSKシステムを互換性の高いシステムに移行するオープンシステム化、採用するソフトウェアの汎用製品化、機器更新を行う際の機器の統合などを推進しています。
 このような業務・システムの最適化に取り組むことにより、行政運営の簡素化、業務効率や納税者利便性の向上を図るとともに、適正かつ公平な課税の実現という国税庁の任務を的確に果たすため、税務調査や滞納整理の一層の充実を図り、納税者のコンプライアンス(法令遵守)の向上を目指しています。

(2) オープンシステム化

 国税庁では、KSKシステムについて、経費節減と調達における透明性の確保の観点から、広く複数メーカーの製品を取り込めるようなシステム(オープンシステム)への移行に取り組んでいます。
 具体的には、KSKシステムは、納税者情報管理、債権管理、所得税、法人税、資料調査など24業務システムから構成されていますが、このうち平成15年度に実施した「KSKシステム刷新可能性調査」において、オープンシステム化が適しており、かつオープンシステム化を行うことによって一定のコスト削減が見込まれるとされた15業務システムについて、段階的にオープンシステム化に取り組んでいます。
 平成18年度までに6業務システムをオープンシステム化し、さらに平成22年度までに6業務システムのオープンシステム化を行うこととしています。

[システムの安定性・信頼性と情報セキュリティの確保]

 国税関係業務は、国民の権利義務と密接にかかわっているため、そのシステムに障害が発生した場合には、国民に多大な影響を与え、税務行政に対する信頼を損なうことにもなりかねません。このため、システム機器の定期的な更新を実施するなど、国税関係システムの安定的な運用を図っています。
 また、国税関係システムは、大量の納税者情報を保有・蓄積することから、不正利用や漏えいの防止には細心の注意を払っています。このため、職員は職務上必要な情報しか利用できない仕組みにするほか、情報セキュリティ訓令を定めてその徹底を図り、さらには、外部専門家によるセキュリティ監査を定期的に実施し必要な対策を講ずるなど、セキュリティの確保に努めています。

国税総合管理(KSK)システムの図

[KSKシステム]

 KSKシステムは、全国の国税局・沖縄国税事務所と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力することにより、国税債権などを一元的に管理するとともに、これらを分析して税務調査や滞納整理に活用するなど、地域や税目を越えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムです。
 平成2年から本格的な開発を開始し、平成7年以降、順次導入を進め、平成13年からは全国での運用を開始しています。