問1
租税は、原則として金銭で納付することとしており、相続税についても同様に一時に金銭で納付することを原則とするのであるが、相続税は相続等によって取得した財産の価額自体を課税標準として課されるものであることから、金銭による一時の納付が困難となる事態が発生することもある。
このような場合に対応する制度として、相続税についての延納及び物納の制度が認められている。
すなわち、相続税について納付すべき相続税額が10万円を超え、かつ、納税義務者について納期限までに、又は納付すべき日に金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、税務署長の許可を得て延納することができることとされており、更に、延納の方法によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合においては、税務署長の許可を得てその課税価格計算の基礎となった財産(その財産により取得した財産を含み、相続時精算課税の適用を受ける財産を除く。)を、金銭納付に代えて納付することができることとされている。
本問は、実務上、重要な相続税の延納及び物納の制度について、その適用要件について説明を求めるものである。
なお、計画伐採に係る相続税の延納等の特例(租税特別措置法第70条の8の2)及び相続税の物納の特例(同法第70条の12)に関する規定についての説明は要しないこととした。
問2
非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度、いわゆる事業承継税制については、平成21年度に制度の創設が行われ、平成25年度の税制改正で経済産業大臣の事前確認制度が廃止されるとともに、平成27年分から雇用確保要件の緩和、親族間承継要件の廃止等の抜本的な見直しが行われ、平成27年度の税制改正で、納税猶予制度の適用を受ける者が後継者へ贈与したときの免除要件が拡大されるなど、その使い勝手を良くするための要件緩和等が行われてきたところである。
平成29年度の税制改正においても、早期の計画的な事業の承継を支援する観点から、生前贈与の促進として、非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度において、相続時精算課税制度の併用を可能とし、安心して制度が利用できるように、従業員の少ない小規模事業者に対する配慮の観点から、雇用確保要件の計算方法の見直しなどが行われたところである。
近年、中小企業経営者の高齢化が進んでおり、これから数年のうちに多くの中小企業が世代交代の時期を迎える中で、中小企業の事業承継の円滑化は重要な課題であり、非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度は、税制の面から支援を行うものであり重要な事項である。
本問は、非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例について、その適用に係る贈与者及び経営承継受贈者の要件について問うとともに、具体的事例を挙げ、納税猶予税額の計算方法を理解しているかについて説明を求めるものである。
相続税法全般に関する理解度を測定するため、個別の財産評価、課税価格の算定、相続税の総額及び各相続人等の納付すべき税額までの算出を求める総合問題である。主なポイントは次のとおりである。