【照会要旨】

 当社は、製造した商品をA社(小売業を行う法人)に販売する事業(製造卸売業)を行っており、過去からA社とのみ取引を行っています。両社の間に資本関係はありません。
 この度、当社は、製造から販売までの一貫した体制とするべく、当社を合併法人とし、A社を被合併法人とする合併(以下「本件合併」といいます。)を行うこととしています。
 このように資本関係のない法人間で行う合併が適格合併となる共同事業要件(法令4の3丸4)の1つとして事業関連性要件(法令4の3丸4一)があるところ、本件合併前の当社の売上先はA社のみですが、このような場合でも事業関連性要件に該当すると解してよいでしょうか。
 なお、両社は事業所を設けて従業員を雇用してそれぞれの事業を行っています。

【回答要旨】

1 支配関係がない法人間で合併が行われる場合に、その合併が適格合併となる共同事業要件のうち事業関連性要件は、合併に係る被合併法人の被合併事業(その被合併法人のその合併前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業をいいます。以下同じです。)とその合併に係る合併法人の合併事業(その合併法人のその合併前に行う事業のうちのいずれかの事業をいいます。以下同じです。)とが「相互に関連するものであること」が求められます。

2 この事業が「相互に関連するものであること」とは、例えば、「○×小売業と○×小売業というように同種の事業が行われているもの」、「製薬業における製造と販売のように、その業態が異なっても薬という同一の製品の製造と販売を行うなど、それぞれの事業が関連するもの」、「それぞれの事業が合併後において、合併法人において一体として行われている現状にあるもの」などがこれに該当すると考えられています(国税庁HP質疑応答事例「事業関係性要件における相互に関連するものについて」参照)。

3 上記1のとおり、この事業関連性要件は、被合併事業と合併事業とが相互に関連するものであることが求められていますので、被合併事業及び合併事業が「事業」として実態を備えていることが必要となります。
 このため、例えば、事業関連性要件に該当させるために、事業を行っていなかった法人を合併法人として、合併法人が被合併法人の合併前に行う事業の一部を被合併法人から一時的に受託し、合併法人はその受託の対価を被合併法人から受領して被合併法人への売上げのみ計上するような場合も考えられるところ、そのような場合は、合併法人に「事業」の実態があることとはならないと考えられます。
 ご照会のように、本件合併前の貴社(合併法人)の売上先がA社(被合併法人)のみであった場合、貴社の製造卸売業に実態がないとして事業関連性要件に該当しないこととなるのではないか、という疑問も生ずるところです。
 この点、「事業」の実態があることとはならないと考えられるのは、事業を行っていなかった合併法人が事業関連性要件に該当させるために合併前に一時的に被合併法人の事業の一部を行うような場合であり、合併前の合併法人の売上先が被合併法人のみであるということだけで合併法人の「事業」の実態がないとされるものではありません。
 このため、売上先が被合併法人のみであったとしても、合併法人が事業関連性要件に該当させるために合併前に一時的に被合併法人の事業の一部を行うようなものではなく、その合併の成否に関わらず商品の製造行為等を行っているのであれば、その商品の製造行為等は「事業」としての実態がないとはいえないと考えられます。

4 ご照会の場合、貴社は、本件合併の一方の当事者であるA社にのみ製造販売を行っていますが、その製造販売は、合併前に一時的にA社の事業の一部を行うようなものではなく、本件合併の成否に関わらず、過去から本件合併直前まで継続して行われてきたものであり、貴社がその製造販売に係る事業所及び従業員を有していることも踏まえれば、「事業」としての実態を備えているものと認められます。そして、本件合併後、合併法人である貴社において製造とA社の販売とが一体として行われることが見込まれていますので、A社の小売業と貴社の製造卸売業とは事業関連性を有することとなります。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第12号の8ハ
 法人税法施行令第4条の3第4項
 法人税法施行規則第3条

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。