【照会要旨】

 当社は9月末決算の法人です。
 この度、所有する甲土地(固定資産として使用しています。)を、○○事業(土地収用法等の規定に基づくもの)の用地としてA市に譲渡することになり、X1年4月1日に、A市との間で甲土地に係る売買契約を締結した上でX1年10月1日に引渡し(A市において甲土地の使用開始)を行いました。なお、甲土地の代替資産は、X3年6月30日までに取得する見込みです。
 当社は、甲土地の譲渡に係る収益の額について、会計上その契約締結日において収益計上するとともに、X1年9月期の益金の額に算入した上で法人税の申告を行う予定です。
 租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第64条の2第1項(以下「本制度」といいます。)の適用に当たっては、所定の期間内に代替資産を取得する見込みであることが要件とされていますが、その期間の起算日となる「収用等のあった日」は売買契約の締結日(X1年4月1日)ではなく、甲土地を実際に引き渡した日(X1年10月1日)であると解して差し支えありませんか。
 なお、A市に対する甲土地の譲渡は、措置法第64条第1項第2号に掲げる場合に該当するとともに、上記以外のその他本制度の適用に必要な要件は全て満たすことを照会の前提とします。

【回答要旨】

 本件においては、甲土地の「収用等のあった日」は売買契約の効力発生日となります。

(理由)

 法人の有する資産(棚卸資産を除きます。)が収用等され、代替資産をその収用等のあった日を含む事業年度に取得できなかった場合において、指定期間内に代替資産を取得する見込みであるときに、その収用等に係る差益相当額を特別勘定として経理して当該事業年度の損金の額に算入し、代替資産を取得した事業年度において当該代替資産の圧縮記帳ができることとされており(措法64の217)、この「収用等」には、資産について買取りの申出を拒むときは土地収用法等の規定に基づいて収用されることとなる場合において、当該資産が買い取られ、対価を取得するとき(収用権を背景とした資産の買取り)が含まれます(措法641二)。
 この代替資産の取得期限は、「収用等のあった日」以後2年を経過する日までとされているところ、本件においては、A市が甲土地の使用を開始するのがX1年10月1日(引渡日)であるため、この「収用等のあった日」もその引渡日となるのではないかとも考えられます。
 この点、措置法第64条第1項第2号の場合における「収用等のあった日」とは、収用等による資産の譲渡があった日、すなわち法人税法上の資産の譲渡に係る収益の益金算入時期と同一となりますので、固定資産である土地の譲渡においては、原則としてその引渡しがあった日となります(法法22の21)。
 しかしながら、法人が一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って当該土地の譲渡に関する契約の効力発生の日(一般には、特約のない限り契約締結日)において収益計上を行っている場合は、当該効力発生の日は、その引渡しの日に近接する日に該当するものとして、法人税法第22条の2第2項が適用され(法基通2−1−14)、その場合には「収用等のあった日」も当該効力発生の日となると解されます。
 貴社が、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、甲土地の譲渡に係る収益の額を収用等の効力が生じた日、すなわち、売買契約の効力が生じた契約締結日に認識する以上は、「収用等のあった日」はその売買契約の効力発生日となりますので、本件において、措置法第64条の2第1項の適用を受けるためには、同日を基準とした指定期間の末日(X3年3月31日)までに甲土地の代替資産を取得する見込みである必要があります。

【参考法令等】

 租税特別措置法第64条第1項、第64条の2第1項、法人税法第22条の2第1項、第2項、法人税基本通達2−1−14

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。