【照会要旨】

 一般社団法人甲協会は、公益法人制度改革3法(注)が平成20年12月1日に施行される前の民法第34条の規定により設立された社団法人であったため、同日以後は特例民法法人に該当した後、整備法の規定に基づく移行の登記をし、一般社団法人へ移行しました。甲協会は、一般社団法人のうち一定の要件に該当する「非営利型法人」であり、法人税法上の公益法人等に該当していましたが、理事の交代により非営利型法人の要件を満たさなくなることから、X年4月1日以後は普通法人として全所得課税される一般社団法人になる見込みです(法法2六、九の二、法令3)。
 ところで、公益法人等である内国法人が普通法人に該当することとなった場合には、過去の収益事業以外の事業から生じた所得の累積額(以下「累積所得金額」といいます。)を次の算式により益金の額に算入しなければならないと聞きました。

[累積所得金額の計算]
  累積所得金額 = 資産の帳簿価額 - (負債の帳簿価額 + 資本金等の額 + 利益積立金額)

 甲協会の会計上の貸借対照表には、例えば退職給付引当金といった税務上損金算入が認められていない引当金が計上されていますが、この累積所得金額の計算における「負債の帳簿価額」には、このような税務上損金算入が認められていない引当金は含まれないと考えて差し支えないでしょうか。

(注) 公益法人制度改革3法とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」及び「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(この質疑応答事例において「整備法」といいます。)」をいいます。

【回答要旨】

 貴見のとおり、取り扱われることとなります。

(理由)

1 公益法人等が普通法人に該当することとなった場合には、その該当することとなった日(以下「移行日」といいます。)前の収益事業以外の事業から生じた所得の金額の累積額として計算した金額(累積所得金額)又は移行日前の収益事業以外の事業から生じた欠損金額の累積額として計算した金額(累積欠損金額)に相当する金額は、移行日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています(法法64の4)。

2 この「累積所得金額」は、移行日における資産の帳簿価額が負債帳簿価額等(負債の帳簿価額、資本金等の額及び利益積立金額の合計額)を超える場合におけるその超える部分の金額とされ、「累積欠損金額」は、移行日における負債帳簿価額等が資産の帳簿価額を超える場合におけるその超える部分の金額とされ(法令131の4)、資産及び負債のいずれも「税務上の帳簿価額」に基づいて計算することとなります。

3 したがって、累積所得金額の計算上、負債の帳簿価額には、甲協会のように会計上の貸借対照表に計上されている退職給付引当金などの税務上引当てが認められていない引当金は含まれないこととなります。

※ 累積所得金額の計算に当たり、甲協会が公益目的支出計画(移行時の純資産額を基礎として算定した公益目的財産額に相当する金額を公益の目的のために消費していく計画)の実施が完了したことの確認を受けていない法人(整備法第123条第1項に規定する移行法人)である場合には、移行日以後に公益の目的のために支出される修正公益目的財産残額を累積所得金額から控除することとなります(法法64の4、法令131の51三)。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第6号、第9号の2、第64条の4第1項、第3項
 法人税法施行令第3条、第131条の4、第131条の5第1項第1号、第2項、第3項、第131条の6
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第123条第1項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。