【照会要旨】

 NPO法人A会(3月決算、×2年3月期から青色申告法人。以下「A会」といいます。)は、特定非営利活動促進法により設立された特定非営利活動法人であり、法人税法上の公益法人等に該当し(法法2六、特定非営利活動促進法701)、×2年3月期から法人税法第2条第13号に規定する収益事業を開始しています。
 A会は、×2年3月期において、同法施行令第5条第1項第31号に掲げる駐車場業を行い、欠損金額30万円が生じたことから、×2年5月31日、所轄税務署長に対し欠損金額及び翌期へ繰り越す欠損金額を30万円と記載した法人税確定申告書を提出していますが、×3年3月期及び×4年3月期においては、収益事業を行っていないことから、確定申告を行いませんでした。
 当期(×5年3月期)において、A会は、同項第1号に掲げる物品販売業を行ったため、申告義務が生じますが、繰越欠損金控除前の所得金額は200万円となる見込みです。
 A会は×3年3月期及び×4年3月期の確定申告を行っていませんが、このような場合であっても、法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当し、A会は当期の確定申告において、×2年3月期に生じた欠損金額30万円を損金の額に算入できると解してよろしいでしょうか。

事業年度 ×1年3月期 ×2年3月期 ×3年3月期 ×4年3月期 ×5年3月期
申告の有無

【回答要旨】

 当期の確定申告において、×2年3月期に生じた欠損金額30万円を損金の額に算入することができます。

(理由)

 公益法人等は、収益事業を行う場合に納税義務があり(法法41)、各事業年度の収益事業から生じた所得について法人税を課されることとされています(法法6)。したがって、A会が収益事業を行わない場合には、各事業年度の所得に対する法人税の申告義務がないこととなります。
 法人税法第57条第10項では、内国法人が欠損金額(※)の生じた事業年度について確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り繰越欠損金の損金算入を適用する旨規定されています。これは、無申告の事業年度がある場合には、それ以降の事業年度において欠損金の繰越及び損金算入を認めないとするものであり、同項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」とは、各事業年度の所得に対する法人税の申告義務がある事業年度において内国法人が連続して確定申告書を提出している場合であると考えられます。
 したがって、A会が収益事業を行っておらず、各事業年度の所得に対する法人税の申告義務がない事業年度において確定申告書を提出していなくても、申告義務がある事業年度において確定申告書を提出している場合は、法人税法第57条第10項に規定する「その後において連続して確定申告書を提出している場合」に該当することとなります。

※ その欠損金額が青色申告書を提出する事業年度でない事業年度において生じたものである場合には、その欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産又は一定の繰延資産について震災等により生じた災害損失金額を超える部分の金額は、ないものとされます(法法581)。

【関係法令通達】

法人税法第2条第6号、第6条、第57条第1項、第10項、第58条第1項
法人税法施行令第5条第1項第1号、第31号
特定非営利活動促進法第70条第1項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。