【照会要旨】

 一般社団法人である当法人は、資本又は出資を有しない普通法人であり、その活動の原資として、定款に基づき拠出を受けた資金を貸借対照表上の純資産の部に「基金」として計上しています。
 この「基金」は、租税特別措置法施行令第37条の4《資本金の額又は出資金の額に準ずるものの範囲》第1項第1号における資本金の額又は出資金の額(以下「資本金の額等」といいます。)に準ずるものの計算に当たっては、「総負債の帳簿価額」に算入されると解して差し支えないでしょうか。
 また、「基金」を返還する際に、その返還する基金に相当する金額を「代替基金」として計上しますが、この「代替基金」についても同様に解して差し支えないでしょうか。
 なお、本件の「基金」及び「代替基金」は、それぞれ一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団・財団法人法」といいます。)第131条《基金を引き受ける者の募集等に関する定款の定め》に規定する「基金」及び第144条《代替基金》第1項の規定により計上された「代替基金」に該当することを照会の前提とします。

【回答要旨】

 「基金」に計上された金額は、「総負債の帳簿価額」に算入されます。
 また、「代替基金」に計上された金額については、「総負債の帳簿価額」に算入されません。

(理由)

1 交際費等の課税の特例において、資本又は出資を有しない法人(公益法人等、人格のない社団等又は外国法人に該当するものを除きます。)にあっては、当該事業年度終了の日における貸借対照表(確定した決算に基づくものに限ります。以下同じです。)に計上されている総資産の帳簿価額から当該貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(当該貸借対照表に、当該事業年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、当該事業年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とします。)の60パーセントに相当する金額をもって資本金の額等に準ずるものとし、各規定を適用することとされています(措法61の41、措令37の41一)。

2 一般社団法人における基金制度は、剰余金の分配を目的としないという一般社団法人の基本的性格を維持しつつ、その活動の原資となる資金を調達し、その財産的基礎の維持を図るための制度として、一般社団・財団法人法第2章第5節《基金》に規定が設けられています。
 そして、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第31条《基金等》第1項により、拠出者から拠出を受けた「基金」は、その総額を貸借対照表の純資産の部に計上しなければならず、同条第2項により、基金の返還に係る債務の額は、貸借対照表の負債の部に計上することができないこととされています。
 そうすると、一般社団法人においては、資本金の額等に準ずるものの計算に際して、「基金」を総負債の帳簿価額に含めることができないのではないかと疑問が生ずるところです。

3 上記2のとおり、一般社団法人における「基金」は、一般社団法人に拠出された金銭その他の財産であって、当該一般社団法人が拠出者に対して一般社団・財団法人法及び当該一般社団法人と当該拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務を負うものとされており(一般社団・財団法人法131括弧書)、一種の外部負債(拠出者は社員資格と無関係)であることなどからすれば、その性質は「負債」に該当するものと考えられます。
 したがって、租税特別措置法施行令第37条の4第1項第1号の資本金の額等に準ずるものの計算に当たっては、一般社団法人の貸借対照表に計上されている「基金」の額は、総負債の帳簿価額に算入されることとなります。
 なお、代替基金は、一般社団・財団法人法第144条第1項の規定により、基金の返還時にその返還額と同額を計上するものであり、財産的基礎の維持・充実を図るための内部留保としての性質を有するものですので、「総負債の帳簿価額」に算入されません。

【参考】

 一般社団法人における「基金」の税務上の取扱いについては、本質疑応答事例のほか、次の事例についても公表していますので、参考にしてください。
○平成26年5月27日回答「一般社団法人の基金について放棄を受けた場合の取扱い」

【関係法令通達】

 租税特別措置法第61条の4
 租税特別措置法施行令第37条の4
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第131条、第144条第1項
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第31条

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。