【照会要旨】

 業績不振である当社は、迅速な企業再生を行う観点から民事再生法の法的整理に準じた一定の要件に該当する私的整理に基づき再生計画を策定し、債権者から同意を得て債務免除を受けることとしています。
 具体的には、法人税法施行令第24条の2《再生計画認可の決定に準ずる事実等》第1項第1号から第4号までの要件に該当する債務処理に関する計画に基づき2以上の金融機関から債務免除を当期に受ける予定でいます。
 ところで、当社の債務処理に関する計画の策定に当たり、同項第1号イの資産評定が行われているものの、資産評定の結果、資産の評価益(法法25丸3、法令24の2丸5二)又は評価損(法法33丸4、法令68の2丸4二)を益金又は損金に算入する対象となる金額がなかったことから、資産の評価益又は評価損を益金又は損金に算入する規定(これらの規定を以下「資産の評価損益規定」といいます。)(法法25丸3、33丸4)の適用を受けていません。このため、いわゆる期限切れ欠損金を繰越欠損金に優先して損金算入する規定(以下「期限切れ欠損金の優先控除規定」といいます。)(法法59丸2)の適用を受けることができません。
 当社は、債務免除を受けることで所得の金額が生ずることとなり、当社の設立以来の欠損金額(期限切れ欠損金額と繰越欠損金額との合計額)は、その所得の金額を上回っていますが、繰越欠損金額だけでは、その所得の金額を下回っています。
 この場合、当社は繰越欠損金額の次に期限切れ欠損金額を損金算入することはできますか。

本照会の欠損金額の損金算入イメージ図

【回答要旨】

 貴社は、繰越欠損金の控除規定による欠損金額の損金算入後の所得の金額を上限として、期限切れ欠損金額を損金算入することができます。

(理由)

1 民事再生法の法的整理に加えて、これに準ずるものとして、一定の要件(注)に該当する私的整理において債務免除等が行われた場合、資産の評価損益規定の適用を受けるときは、期限切れ欠損金の優先控除規定を適用できることとなります。
 他方で、本照会のように一定の要件に該当する私的整理であるものの、資産の評価損益規定の適用を受けていない場合、期限切れ欠損金額がどのように扱われるかということになります。

(注)一定の要件とは、債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)に関する事項が定められ、その定められた事項に基づく資産評定が行われていることなど、法人税法施行令第24条の2第1項第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件とされています(国税庁HP質疑応答事例「民事再生法の法的整理に準じた私的整理とは」参照)。

2 この点、一定の要件に該当する私的整理であるものの、資産の評価損益規定の適用がなく、期限切れ欠損金の優先控除規定の適用ができない場合でも、期限切れ欠損金を損金算入できる規定(以下「期限切れ欠損金の控除規定」といいます。)(法法59丸3)が別途定められており、要件に該当する場合には、期限切れ欠損金額を損金算入することができることとされています。
 この期限切れ欠損金の控除規定は、丸1一定の要件に該当する私的整理などの事実が生じた場合で、丸2資産の評価損益規定の適用を受ける場合を除き、丸3債務免除等を受けたときは、期限切れ欠損金額を損金算入できることとされています(法法59丸3、法令117の3三)。この場合、損金算入の対象となる欠損金額は、前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額から繰越欠損金の控除規定(法法57丸1)により損金算入される欠損金額を控除した金額とされ(法令117の4)、繰越欠損金の控除規定による欠損金額の損金算入後の所得の金額を上限として、債務免除等の合計額に達するまでの金額について損金算入するとされているため(法法59丸3、法令117の3三、117の4)、期限切れ欠損金額を損金算入できることとなります。

3 本照会の場合、貴社は、資産の評価損益規定の適用を受けていないものの、一定の要件に該当する私的整理において債務免除を受けるため、繰越欠損金の控除規定による欠損金額の損金算入後の所得の金額を上限として、債務免除額に達するまでの金額について期限切れ欠損金額を損金算入できることとなります。
 なお、本照会では、債務免除を受けることで所得の金額が生じており、債務免除額が繰越欠損金の控除規定による欠損金額の損金算入後の所得の金額を上回っているところ、その上回る部分を超える期限切れ欠損金額があることから、期限切れ欠損金額を損金算入することで、その損金算入後に益金算入する一定の措置(措法66の13丸5丸11丸15、措令33の4丸6、39の24の2丸21)の適用がある場合を除き、課税所得は生じないこととなります。

【関係法令通達】

 法人税法第25条第3項、第33条第4項、第57条第1項、第59条第2項、第3項
 租税特別措置法第66条の13第5項〜第11項、第15項
 法人税法施行令第24条の2、第68条の2、第117条の3、第117条の4
 租税特別措置法施行令第33条の4第6項、第39条の24の2第21項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。