「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

60−2 法第60条第1項第1号に規定する贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」という。)により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、当該贈与等に係る受贈者等が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときには、当該費用のうち当該資産に対応する金額については、37−5及び49−3の定めにより各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、当該資産の取得費に算入できることに留意する。

(注) 当該贈与等以外の事由により非業務用の固定資産を取得した場合の登録免許税等については、38−9参照

《説明》

1 所得税法第60条第1項第1号に規定する贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」という。)により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合には、同項の規定により受贈者等が引き続き所有していたものとみなされることから、受贈者等が贈与等により取得する際に支出した費用については譲渡所得の金額の計算上、取得費を構成しないものと取り扱ってきた。

2 しかしながら、ゴルフ会員権を贈与により取得した際に受贈者が支出した名義書換手数料の取得費性を争点とする訴訟において、平成17年2月1日の最高裁判決は『・・・法60条1項の規定の本旨は、増加益に対する課税の繰延べにあるから、この規定は、受贈者の譲渡所得の金額の計算において、受贈者の資産の保有期間に係る増加益に贈与者の資産の保有期間に係る増加益を合わせたものを超えて所得として把握することを予定していないというべきである。そして、受贈者が贈与者から資産を取得するための付随費用の額は、受贈者の資産の保有期間に係る増加益の計算において、「資産の取得に要した金額」(法38条1項)として収入金額から控除されるべき性質のものである。そうすると上記付随費用の額は、法第60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において「資産の取得に要した金額」に当たると解すべきである。・・・』とし、取得費性を認める判断がなされた。

3 本項は、当該最高裁判決を受けた取扱いの変更内容を留意的に明らかにしたものである。
 なお、本項の取扱いにおいては、次のような点に留意する必要があると考えられる。

1 当該最高裁判決においては、ゴルフ会員権を贈与により取得した際に受贈者が支出した名義書換手数料についての判断がなされたものではあるが、ゴルフ会員権の名義書換手数料以外の費用であっても、例えば、不動産登記費用・不動産取得税、株券の名義書換手数料など、贈与等の際に通常支出される費用については、当該資産の取得費に算入できることとなる。
 なお、本項はあくまでも、譲渡所得計算上の取得費の範囲について、贈与等の際に支出される「資産を取得するための付随費用」が当該取得費を構成する旨を明らかにしたものであるから、例えば、遺産分割の際に訴訟費用・弁護士費用などを支出したとしても、これらは一般には相続人間の紛争を解決するための費用であることから、相続の際に通常支出される費用とはいえず、当該取得費を構成するものではないと考えられる。

2 譲渡所得の金額の計算上、取得費について概算取得費控除(措法31の4)を適用する場合には、当然のことながら、本項の適用はない。

3 例えば、複数の土地等を相続した場合で、それぞれの土地等に対応する不動産登記費用を計算する際には、原則として、それぞれの土地等の登記時における時価を基として計算するのであるが、他の価額を用いて計算している場合であっても、その方法が合理的である場合には特段問題は生じないものと考えられる。

4 非業務用の建物等について、本項の取扱いにより取得費に算入される金額については、所得税法第38条第2項第2号に規定する減価償却費相当額の計算を要するのであるが、その計算は費用を支出した時点から行うこととなる。

5 業務用資産に係る必要経費算入の取扱いについては、37−5及び49−3の取扱いによることとなる。


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