「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

措置法37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

37の11の3−3 措置法令第25条の10の2第14項第13号に規定する当該貸付契約に基づき返還される上場株式等を、同号に規定する方法により特定口座に受け入れる際の当該上場株式等の取得価額及び取得日は、当該貸付契約に基づく貸付時に当該特定口座において管理されていた取得価額及び取得日によることに留意する。なお、貸付期間中に、当該特定口座において当該上場株式等と同一銘柄の特定口座内保管上場株式等が譲渡された場合には、貸付時に当該上場株式等が払い出されているものとして譲渡損益を計算するのであるが、特定口座外で当該上場株式等と同一銘柄の上場株式等が譲渡された場合には、措置法令第25条の10の2第22項の規定の適用はなく、当該同一銘柄の 上場株式等の取得価額の計算には影響しないことに留意する。

《説明》

1 平成17年度改正により、特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、特定口座内保管上場株式等をその特定口座を開設している証券会社に一定の貸付契約に基づいて貸し付けた場合におけるその貸付契約に基づき返還される上場株式等で、その上場株式等のその特定口座への受入れを、顧客口座簿に記載又は記録をする方法により行うものが追加された(措令25の10の214十三)。

2 ところで、今回の措置により、貸付契約に基づき返還された上場株式等が特定口座に受入れされる場合、当該上場株式等の取得価額及び取得日はどうなるのかという疑問が生ずる。
 この点については、法令上必ずしも明らかでないところであるが、次の理由から、貸付時に当該特定口座において管理されていた取得価額及び取得日によると解するのが相当といえる。

1 当該特定口座への受入れは、貸し付けた上場株式等と同種・同等の上場株式等の返還であるとの実態の下、当該貸付及び返還に際し特段の課税関係が生ずるものではないこと

2 返還された上場株式等が特定口座に受け入れられなかった場合は、返還されたときに一旦特定口座に受入れられたものと、その受入れ後直ちに特定口座からの払出しがあったものとそれぞれみなして、総平均法に準ずる方法による取得価額の付け替えを行うこととされていることから(措令25の10の219)、この場合、受け入れたものとみなされる場合の取得価額及び取得の日は当然に貸付時において当該特定口座において管理されていた取得価額及び取得日によると解されるものであり、これは返還された上場株式等が特定口座に受入れされる場合も同様と考えられること

3 一方、貸付期間中に貸し付けられた上場株式等と同一銘柄の上場株式等が譲渡された場合、貸付けによる特定口座からの払出しが特定口座・特定口座外のそれぞれの譲渡損益計算にどのように影響するかという問題がある。この点については、それぞれ次のとおり解するのが相当である。

イ 特定口座における譲渡損益計算
 今回の措置においては、返還される上場株式等の特定口座への受入れを顧客口座簿に記載又は記録する方法により行うもの(措令25の10の214十三)が適用対象とされており、特定口座においては貸付時に払出し処理を、返還時に受入れ処理をそれぞれ行う必要があるのは明らかであることから、貸付期間中に特定口座で同一銘柄の上場株式等が譲渡された場合には、貸し付けられている上場株式等は払い出されているものとして譲渡損益の計算を行うこととなる。
(注)貸し付けられている上場株式等の取得価額相当額は、上記2のとおり、返還時に再度計上することとなる。

ロ 特定口座外における譲渡損益計算
 特定口座内保管上場株式等が特定口座から払い出された場合には、払出し時に特定口座で管理されていた取得価額及び取得日に基づき「払出通知書」が交付され、払出し時以後の特定口座外での同一銘柄株式の譲渡損益計算は「払出通知書」に記載された取得価額及び取得日を加味して行うこととされている(措令25の10の29一)が、「払出通知書」の交付が必要となるのは、特定口座外で保管・譲渡等を行うために上場株式等を特定口座から払い出した場合には、特定口座外での譲渡損益計算の対象となることから、払出し後、特定口座外の同一銘柄株式との間で取得価額を総平均する必要があるからである。
 ところで、今回の措置により特定口座に受入れが可能となった上場株式等は、証券業者との貸付契約に基づき返還されるものであることが要件とされているところ、当該貸付契約においては、「貸付期間の終了後直ちに返還される当該貸し付けた特定口座内保管上場株式等と同一銘柄の上場株式等のすべてが当該証券業者の口座から当該方法により当該特定口座に振り替えられることを約する」こととされている(措令25の10の214十三)。
 このことからすれば、当該貸し付けた上場株式等は、特定口座外において譲渡されることは予定されていないということとなり、したがって、当該貸付けによる払出しは特定口座外での譲渡損益計算の対象となる払出しには該当しない、すなわち、当該貸付けによる払出しは「特定口座から特定口座内保管上場株式等の全部又は一部の払出しをした場合」(措令25の10の222)には該当せず、特定口座外での譲渡損益計算上当該貸付けによる払出しを考慮する必要はないと解するのが相当であり、「払出通知書」の交付は要しないものと考えられる。
 本項は、以上の内容を留意的に明らかにしたものである。

(参考法令)

○ 措置法令第25条の10の2第9項第1号
 特定口座からの特定口座内保管上場株式等の全部又は一部の払出し(振替によるものを含むものとし、法第三十七条の十一の三第三項第二号に規定する方法により行われる譲渡に係るもの及び当該特定口座以外の特定口座への移管に係るものを除く。)があつた場合には、当該特定口座を開設する証券業者等は、当該特定口座を開設している居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者に対し、当該払出しをした特定口座内保管上場株式等の第十一項第二号イに定めるところにより計算した金額、同号ロに規定する取得日及び当該取得日に係る数その他参考となるべき事項を書面により通知(その書面による通知に代えて行う電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法による通知を含む。同項において同じ。)をすること

○ 措置法令第25条の10の2第14項第13号
 居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が開設する特定口座に係る特定口座内保管上場株式等を当該特定口座を開設している証券業者(法第三十七条の十一第一項第一号に規定する証券業者をいう。)に貸し付けた場合における当該貸付契約(当該貸し付けた特定口座内保管上場株式等が当該特定口座から株券等の保管及び振替に関する法律に規定する顧客口座簿に記載又は記録をする方法により当該証券業者の口座に振り替えられ、かつ、当該貸付期間の終了後直ちに返還される当該貸し付けた特定口座内保管上場株式等と同一銘柄の上場株式等のすべてが当該証券業者の口座から当該方法により当該特定口座に振り替えられることを約するものをいう。)に基づき返還される上場株式等で、当該上場株式等の当該特定口座への受入れを、同法に規定する顧客口座簿に記載又は記録をする方法により行うもの

○ 措置法令第25条の10の2第19項
 第十四項第五号から第八号までに規定する事由その他財務省令で定める事由により取得し、又は同項第十三号の規定により返還された上場株式等で特定口座に受け入れなかつたものがある場合には、当該上場株式等については、当該事由が生じた時又は当該返還された時に当該特定口座に受け入れたものと、その受入れ後直ちに当該特定口座からの払出しがあつたものとそれぞれみなして、所得税法施行令第二編第一章第四節第三款の規定(第一項後段の規定により適用される場合を含む。)並びに第九項第一号の規定及び第二十二項の規定を適用する。

○ 措置法令第25条の10の2第22項
 居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が、特定口座から特定口座内保管上場株式等の全部又は一部の払出し(振替によるものを含むものとし、法第三十七条の十一の三第三項第二号 に規定する方法により行われる譲渡に係るもの及び当該特定口座以外の特定口座への移管に係るものを除く。)をした場合には、当該払出し後の当該払出しをした上場株式等と同一銘柄の上場株式等(特定口座内保管上場株式等であるものを除く。)の譲渡による所得の金額の計算上総収入金額から控除すべき売上原価又は取得費の額の計算及び当該同一銘柄の上場株式等の所有期間の判定については、次に定めるところによる。

一 所得税法施行令第二編第一章第四節第三款の規定の適用については、当該払出しをした上場株式等は、当該払出しの時に、第十一項第二号イに規定する取得費等の額として計算される金額(同号イに規定する費用がある場合には、同号イに規定する合計額)により取得されたものとする。

二 法第三十七条の十三の三第一項に規定する政令で定める期間に係る同項の規定その他の財務省令で定める規定の適用については、当該払出しをした上場株式等は、第十一項第二号ロに規定する取得日に取得されたものとする。


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