(問)

当社は、事業用として航空機を所有しており、この航空機の燃料となる揮発油(以下「航空機燃料用揮発油」といいます。)を海外から輸入しています。
 この航空機燃料用揮発油の輸入に当たっては、当社名義で輸入し、揮発油税法第16条の5《引取りに係る航空機燃料用揮発油の免税》の規定に基づき、所定の手続きを行った上で、航空機燃料用揮発油を保税地域から揮発油税及び地方揮発油税(以下「揮発油税等」といいます。)を免税で引き取っています。
 今般、同じく航空機を所有するA社から、航空機の燃料用として当社が貯蔵している航空機燃料用揮発油を購入したいとの申し出があり、A社に対して航空機燃料用揮発油の販売を考えております。
 この場合、A社においても当該航空機燃料用揮発油を航空機の燃料に供しますが、揮発油税等の取扱いはどのようになるのでしょうか。

(答)

揮発油税法第16条の5の規定に基づき、揮発油税等を免税で引き取った航空機燃料用揮発油については、やむを得ない事情がある場合を除いて、譲渡してはならないこととされています。
 この場合、航空機燃料用揮発油を譲渡したときは、税務署長は、その者から譲渡した航空機燃料用揮発油に係る揮発油税等を徴収することとされています。
 ご質問の場合、譲渡先であるA社において、航空機の燃料用に供されるということですが、免税で引き取った航空機燃料用揮発油を単に販売することは、やむを得ない事情がある場合とは認められません。
 したがって、貴社がA社に免税で引き取った航空機燃料用揮発油を販売する場合には、揮発油税等は免税とはならず、貴社は、その譲渡した航空機燃料用揮発油に係る揮発油税等が徴収されることになります。

(解説)

  1. 1 揮発油税法第16条の5第1項では、航空機燃料に該当する揮発油を保税地域から航空機の燃料用に供される場所に引き取ろうとする場合において、当該引き取ろうとする者が所定の手続きにより、その保税地域の所在地の所轄税関長の承認を受けたときは、当該引取に係る揮発油税を免除することとされています(揮発油税法第16条の5第1項地方揮発油税法第6条)。
     ここでいう航空機の燃料用に供される場所とは航空機燃料の航空機への積込みの場所をいい、航空機燃料用揮発油を免税で引き取ることのできる者は、航空機燃料税法上の納税義務者(一般には、航空機の所有者となります。)に限ることとされています(揮発油税法基本通達第58条の2及び同通達第70条)。
     保税地域から免税で引き取られた航空機燃料用揮発油は、その後、航空機の燃料用に供されるため、航空機への積込場所へ移入されることになりますが、積込場所へ航空機燃料用揮発油を移入した者(一般的には、保税地域からの引取者となります。)は、やむを得ない事情がある場合を除き、当該航空機燃料用揮発油を譲り渡してはならないこととされています。
     この場合、当該航空機燃料用揮発油を譲り渡したときは、税務署長は、移入した者から譲り渡しをした航空機燃料用揮発油に係る揮発税等を直ちに徴収することとされています(揮発油税法第16条の5第4項同法第16条の3第5項及び同条第6項地方揮発油税法第6条)。
     なお、やむを得ない事情がある場合には、税務署長の承認を受け、所定の手続きを行うことにより、免税で航空機燃料用揮発油を移入した者が、航空機の燃料用に供するため、航空機燃料用揮発油を他に免税で譲渡することができます。
  2. 2 航空機燃料用揮発油を他に譲渡することにつき「やむを得ない事情」があるか否かについては、税務署長が個々の事情を踏まえて判断すべきものですが、例えば、
    1. 1 その航空機燃料用揮発油を移入した場所における事業の廃止又は長期にわたる休止のため譲り渡すものであること。
    2. 2 航空機の不時着陸その他緊急な事情により航空機の燃料として譲り渡すものであること。
    など、真にやむを得ない事情のため譲り渡すものであることが、これに該当します。
     このため、このような事情がなく、単に他に販売するために譲り渡す場合は、たとえ譲渡先において航空機の燃料の用に供する場合であっても、やむを得ない事情がある場合とは認められません。
  3. 3 以上のことから、貴社が保税地域から免税で引き取った航空機燃料用揮発油をA社に販売することは、やむを得ない事情がある場合とは認められませんので、A社に当該航空機燃料用揮発油を販売した時に、貴社は、その譲渡した航空機燃料用揮発油に係る揮発油税等が徴収されることになります(注1,2)。
     なお、他の者に販売する目的で、保税地域から航空機燃料用揮発油を引取る場合には、揮発油税法第16条の5第1項の規定は適用されないため、揮発油税等を免税で引き取ることはできません。
    (注1) 揮発油の販売業者が航空機燃料用揮発油を保税地域から蔵置場(航空機燃料の航空機への積込み場所を除く。)へ引き取ろうとする場合には、所轄税関長の承認を受けることによって未納税引取りができます(揮発油税法第14条の3第1項第2号)。
    (注2) 航空機燃料用揮発油のうち、揮発油税等が課されたことが明らかにされているものを航空機の燃料用に供する場合には、航空機燃料税は課されないこととされています(航空機燃料税法第8条第2項航空機燃料税法施行令第3条)。