【改正】 (株式会社における同族会社の判定)

1-3-1 株式会社が同族会社であるかどうかを判定する場合において、法第2条第10号《同族会社の意義》の株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当しないときであっても、例えば、議決権制限株式を発行しているとき又は令第4条第5項《同族関係者の範囲》に規定する「当該議決権を行使することができない株主等」がいるときなどは、同項の議決権による判定を行う必要があることに留意する。
(注) 法第2条第10号に規定する「株式」及び「発行済株式」には、議決権制限株式が含まれる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年改正前の法人税法第2条第10号では、同族会社の意義について「株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の3人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式の総数又は出資金額(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の100分の50を超える数の株式又は出資の金額を有する場合におけるその会社」をいうとしていた。
 この規定を受け、改正前の本通達では、同族会社の判定における「株式の総数」及び「発行済株式」には、いわゆる議決権のない株式が含まれることを明らかにしていた。
 議決権のない株式は、会社法第115条《議決権制限株式の発行数》において、議決権制限株式(株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式)と規定されていることから、今回の通達改正において用語整理を行った上で同様の取扱いを(注)に置いている。

2  平成18年度税制改正により、同族会社の判定基準に、株式又は出資の数又は金額による判定のほか、議決権の数による判定及び持分会社の社員の数による判定が追加された(法2十、法令45)。すなわち、会社の株主等の3人以下並びにこれらと特殊の関係のある個人及び法人が、1その会社の一定の議決権のいずれかにつきその総数(その議決権を行使することができない株主等が有するその議決権の数を除く。)の50%を超える数を有する場合又は2持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社)の社員(その会社が業務を執行する社員を定めた場合にあっては、業務を執行する社員)の総数の半数を超える数を占める場合には、その会社は同族会社に該当することとされた。
 したがって、株式会社が同族会社であるかどうかを判定する場合において、株式の数又は出資の金額の所有割合による判定により同族会社に該当しないときであっても、例えば次のイ又はロに該当するときなどには、議決権の数による判定を行う必要がある。

イ 議決権制限株式を発行しているとき

ロ 子会社の有する親会社株式など、議決権を行使することができない株主等がいるとき(議決権を行使することができない株主等が有する議決権の意義については、法人税基本通達1−3−6を参照)
特に、上記ロのような場合には、同族会社であるかどうかを判定しようとする会社がいわゆる普通株式しか発行していない場合であっても、議決権の数による判定を行う必要があることから、注意を要する。
 なお、議決権制限株式の取扱いと同様、議決権を行使することができない株主等が有する株式についても、法人税法第2条第10号に規定する「株式の総数」及び「発行済株式」に含まれることとなる。

3  連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-5-1)を定めており、同様の改正を行っている。

【新設】 (議決権を行使することができない株主等が有する議決権の意義

1-3-6 令第4条第3項第2号《同族関係者の範囲》に規定する「議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権」には、例えば、子会社の有する親会社株式など、その株式の設定としては議決権があるものの、その株主等が有することを理由に会社法第308条第1項《議決権の数》の規定その他の法令等の制限により議決権がない場合におけるその議決権がこれに該当する。 令第4条第5項に規定する「議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権」についても、同様とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正により、同族会社の判定基準に議決権の数による判定が追加された。
 議決権の数による判定を行う場合は、会社の株主等の3人以下並びにこれらと特殊の関係のある個人及び法人が、その会社の一定の議決権のいずれかにつきその総数(その議決権を行使することができない株主等が有するその議決権の数を除く。)の50%を超える数を有する場合には、その会社は同族会社に該当することとなる(法2十、法令45)。
 また、同族会社の判定に当たり、一の株主グループとされる「特殊の関係のある法人」には、株主等の1人が他の会社を支配している場合のその他の会社も含まれることとされているが、この「他の会社を支配している場合」についても、議決権の数による判定が追加されている。具体的には、他の会社の一定の議決権のいずれかにつき、その総数(その議決権を行使することができない株主等が有するその議決権の数を除く。)の50%を超える数を有する場合は、「他の会社を支配している場合」に該当することとなる(法令43)。
 議決権の数による判定を行うに当たり、議決権を行使することができない株主がいるときは、議決権の総数からその株主等が有する議決権の数を除いた総数を分母として議決権の所有割合を計算するのであるが、本通達では、分母から除かれる「当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権」の意義について明らかにしている。

2  会社法上、株主は、原則として、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有することとされているが、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にある株主については、その議決権の行使が制限されている(会社法3081)。
 したがって、例えば、子会社が親会社株式を保有している場合にあっては、その子会社は「当該議決権を行使することができない株主等」に該当することとなる(下図参照)。
 本通達においては、このことを留意的に明らかにしている。


会社が議決権を行使することができない株主等に該当することを示した図

3  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-5-6)を定めている。

《参考》
○ 会社法(抄)
(議決権の数)

第三百八条 株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。

2  前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。

○ 会社法施行規則(抄)

(実質的に支配することが可能となる関係)

第六十七条 法第三百八条第一項に規定する法務省令で定める株主は、株式会社(当該株式会社の子会社を含む。)が、当該株式会社の株主である会社等の議決権(同項その他これに準ずる法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。)に係る議決権を除く。以下この条において「相互保有対象議決権」という。)の総数の四分の一以上を有する場合における当該株主であるもの(当該株主であるもの以外の者が当該株式会社の株主総会の議案につき議決権を行使することができない場合(当該議案を決議する場合に限る。)における当該株主を除く。)とする。

2〜4 省略

【新設】(同一の内容の議決権を行使することに同意している者の意義

1−3−7 令第4条第6項《同族関係者の範囲》に規定する「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」に当たるかどうかは、契約、合意等により、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるかどうかにより判定することに留意する。

(注) 単に過去の株主総会等において同一内容の議決権行使を行ってきた事実があることや、当該個人又は法人と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはならない。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  同族会社に該当するかどうかを議決権の数によって判定するに当たり、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、その同意している者が有する議決権は当該個人又は法人が有するものとみなし、かつ、当該個人又は法人(その議決権に係る会社の株主等であるものを除く。)はその議決権に係る会社の株主等であるものとみなすこととされている(法令46)。また、会社の株主等と特殊の関係のある法人に該当するかどうかの判定における「他の会社を支配している場合」の判定に当たっても同様に取り扱われる(法令43)。
この「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」かどうかは、契約、合意等により、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるかどうかにより判定されるのであるが、例えば、次のような場合は同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるものと考えられる。

1 株式の所有が組合形態で行われている場合で、特定の組合員の意思により議決権が行使される旨の組合契約等における合意があるとき

2 株式の所有が信託形態で行われている場合で、委託者、受託者又は他の受益者の意思又は指図により議決権を行使する旨の合意又は信託行為における定めがあるとき

3 株式を相互に持ち合っている場合で、議決権の行使についてお互いの意に沿うよう行使する旨の合意があるとき

4 当該個人又は法人に対して継続的に白紙委任状を提出しているとき
 なお、単に過去の株主総会等において同一内容の議決権行使を行ってきた事実があることや、当該個人又は法人と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはならない。

2  連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-5-7)を定めている。

【新設】(同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合の同族会社の判定

1-3-8 令第4条第6項《同族関係者の範囲》の規定により当該議決権に係る会社の株主等であるものとみなされる個人又は法人は、法第2条第10号《同族会社の意義》の株式又は出資の数又は金額による同族会社の判定の場合にあっては、株主等とみなされないことに留意する。
 令第4条第3項第1号《他の会社を支配している場合》の他の会社の判定に当たっても、同様とする。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  法人税法施行令第4条第6項《同族関係者の範囲》においては、同族会社に該当するかどうかを議決権の数によって判定するに当たり、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、当該者が有する議決権は当該個人又は法人が有するものとみなし、かつ、当該個人又は法人は当該議決権に係る会社の株主等であるものとみなすこととされている(法令46)。
したがって、例えば、その会社の株主である甲の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している株主乙がある場合には、乙が有する議決権は甲が有するものとみなして、議決権の数による同族会社の判定を行うこととなる(例1)。
 ただし、同項の「当該個人又は法人」からは、当該議決権に係る会社の株主等であるものは除かれているので(法令46かっこ書)、例えば、その会社の株主ではない丙の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している株主丁がある場合には、丁が有する議決権は丙が有するものとみなすとともに、丙をその会社の株主とみなした上で、議決権の数による同族会社の判定を行うこととなる(例2)。
同族会社の判定の例を示した図

2  また、上記例2のように丙を株主とみなすのは、同族会社の判定を議決権の数によって行う場合に限られるのであって、株式の数による同族会社の判定の場合にまで丙を株主とみなすわけではない。
 本通達において、このことを明らかにしている。

3  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通1-5-8)を定めている。


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