「担当官」
「担当官」
「鑑定官」
「鑑定官」

担当官:ビールの香りって何に由来するものなのでしょうか。

鑑定官:主として、麦芽とホップに由来していますが、原料・酵母由来のものもあります。
麦芽のメイラード反応によりできた60種類以上の成分がビールに移行して、麦芽香をもたらせます。
酵母由来の香りについては、使用する酵母の種類によって香りは異なります。下面発酵ビールは、上面発酵ビールと比べて低温で発酵させるため、高級アルコールやエステルといった華やかな香りが少ないため、穏やかな香味になりやすい傾向があります。
下面発酵ビール、上面発酵ビールについてどのようなものがあるかは「国税庁ホームページ お酒のいろは ビール・発泡酒に関するもの」を確認して下さいね。

ビールの香りを学ぼう!

【東京国税局 小野玄記鑑定官】

香りには、原料・麦芽由来等の様々な香りがありますが、主として、麦芽とホップに由来しています。
 最近では、フルーティな香りのビールも各メーカーから発売されております。ビールは苦味に注目されがちですが、香りもビールの大事な要素の1つです。具体的にビールの香りについて学んでいきましょう。

ビールの香り

1 香りの由来

お酒の色・味・香については、主に原料・発酵・貯蔵工程のいずれかに由来します。
 ビールの香りは、主として、麦芽とホップに由来していますが、原料・酵母由来のものもあります。

(1) 麦芽由来の香り

麦芽の焙燥時・麦汁の製造時・麦汁の煮沸時に起こるメイラード反応によりメラノイジン・ピリジン等の複素環式化合物を生成し、麦芽香になります。少なくとも60種類以上の成分がビールに移行して、麦芽香をもたらせます。

(2) ホップ由来の香り

ホップ由来の香りは、ビールの特性・品質に大きく影響します。また、ホップの種類、量、添加タイミングによりホップの香りは異なります。ホップ香ですが、ホップの貯蔵中やホップ添加後の麦汁の煮沸工程において、大部分が空気中に揮散します。そして、発酵中、酵母が別成分へ変換することにより、ビールに残存します。

(3) 副原料由来の香り

副原料を使用した場合、副原料に由来した香りを付加することができます。副原料として酒税法で定められた果実やシナモン、さんしょう等の香辛料の使用も認められています。

(4) 酵母由来の香り

酵母由来の香りですが、使用する酵母の種類によって香りは異なります。下面発酵ビールは、上面発酵ビールと比べて低温で発酵させるため、高級アルコールやエステルといった華やかな香りが少ないため、穏やかな香味になりやすい傾向があります。

2 香りの感覚

香りについては、嗅覚受容体で捉えます。動物によって、嗅覚受容体の数は異なります。人間が、捉えることができる匂い分子は、大部分が有機化合物で最大でも分子量300程度の小さな分子です。
 匂いのする分子は、40万種類程あると言われていますが、これらの匂いのする分子をとらえる嗅覚受容体は、いくつあるのでしょうか。
 味の受容体同様に、味分子と1対1で対応するのであれば、40万種類程の嗅覚受容体が必要となります。しかしながら、人間には400弱の嗅覚受容体しかありません。香りの識別については、約400の受容体を組み合わせることにより行っています。
 そのため、化学構造式は似ていなくても香りが似ていたり、逆に化学構造式は似ていても香りが似ていないこともあります。また、同一物質でも、濃度が異なると活性化される受容体が異なるため、別の香りとして感じることもあります。
 例えば、清酒が熟成すると、黒糖を嗅いだ時に感じる甘い香り(ソトロン)が生じることがあります。ソトロンは、濃度によって香りの感じ方が異なります。甘い香り・醤油っぽい香り、カレー(香辛料様)の香り等様々な香りとして感じます。この現象は、濃度の違い・人の閾値(いきち)の差・経験等によって、受容体の種類、状態・数に違いが出ることで起こると考えられます。

(令和5年5月1日現在施行の法令・通達等に基づいて作成しています。)