別紙

1 事前照会の趣旨
当市は、近年、阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震など都市部での地震の発生により、多大な建物被害及び人的被害が生じているため、これを教訓として、市街化区域農地の防災的機能の役割に着目し、災害発生時における市民の安全確保と円滑な災害復旧を目的として、当市と農業協同組合(以下「組合」といいます。)との間で、災害対策基本法第2条第1項に規定する災害が発生した場合に、組合が当市に対して復旧用資材置場や市民の一時集合場所(以下「復旧用資材置場等」といいます。)として使用できる農地を斡旋すること等を内容とする防災協定を結ぶことを予定しています。
この防災協定により、組合は、あらかじめ協力者(農地所有者)を把握し、協力に応ずる農地(以下「防災協力農地」といいます。)を農地登録表に登録し、これを基に当市は、当該農地が防災協力農地である旨を表示し、災害が発生した場合には、当市が当該農地の所有者と使用貸借契約を締結後、当該農地を復旧用資材置場等として一時使用することになります。
防災協力農地には、贈与税の納税猶予の特例又は相続税の納税猶予の特例(これらの特例を以下「贈与税等の納税猶予の特例」といいます。)の適用を受けている農地等(以下「特例農地等」といいます。)が含まれていますが、当該特例農地等を当市が防災協力農地として災害時に復旧用資材置場等として一時使用した場合には、当該一時使用する直前において当該特例農地等がその所有者の農業の用に供されていることを前提として、租税特別措置法(相続税法の特例関係)通達(以下「措置法通達」といいます。)70の4−25及び70の6−26の定めにより、当該一時使用が贈与税等の納税猶予の特例に係る期限が確定する事由とされている「譲渡等」には該当しないものと取り扱って差し支えないか照会いたします。
2 事前照会に係る取引等の事実関係
制度の概要は次のとおりです。
  1. (1) 対象農地
    当市内の農地であって、空間として利用できない傾斜地等、復旧用資材置場等に適しない農地を除く。
  2. (2) 協力者等の登録
    農地使用の斡旋に当たって、組合は、あらかじめ協力者(農地所有者)を把握し、協力に応ずる農地を農地登録表に登録し、登録した農地には、当市が災害時における防災協力農地である旨の表示をする。
    災害が発生した場合、組合は当市に対して農地使用の斡旋を行い、当市は農地所有者との間で、別途、災害時における農地の使用に関する契約を結ぶ。
    なお、農地登録の期間は、農地所有者から別途申出がない限り継続する。
  3. (3) 登録農地の用途
    災害発生時における復旧用資材置場等に限定する。
  4. (4) 使用時の補償
    1. イ 農地の使用料は無料とする。
    2. ロ 目的物件に係る農産物の損失を補償する。
  5. (5) 原状回復
    農地の使用が満了した場合、当市はその満了の日に当市の負担により目的物件を原状に復し、所有者に返還する。
  6. (6) 使用期間
    おおむね1か月程度とする。
  7. (7) 当市の所轄税務署長に対する通知
    当市は、下記の場合において、その旨を遅滞なく贈与税等の納税猶予の特例適用者の所轄税務署長に対して通知することを予定している。
    1. 1 特例農地等が、防災協力農地として農地登録表に登録された場合
    2. 2 特例農地等が、防災協力農地として農地登録表に登録され、その後、防災協力農地に該当しなくなった場合
    3. 3 特例農地等を災害時に使用した場合
    4. 4 特例農地等の災害時の使用が満了した場合(当該特例農地等の原状回復について当市が証明を行う。)
3 事前照会者の求める見解となることの理由
贈与税等の納税猶予の特例は、特例の適用を受けた者が農業経営を継続することを前提として設けられているため、納税猶予期限前に、農業経営の廃止、特例農地等の譲渡又は農地以外への転用等がなされた場合には、その納税猶予に係る期限が確定し、納税が猶予されていた贈与税額又は相続税額の全部又は一部を利子税とともに納付しなければならないこととなります。
しかし、贈与税等の納税猶予の特例の適用を受けている期間中に特例農地等が農業の用に供されていないこととなった場合であっても、措置法通達70の4−12(3)に定める国又は地方公共団体等の行う事業のため特例農地等が一時的に農業の用に供されなくなったときは、納税猶予の期限が確定する事由とされている「譲渡等」に該当しないものとして取り扱われています(措置法通達70の4−25、70の6−26)。
当市が予定している防災協定は、災害時に当該特例農地等を当市が復旧用資材置場等として一時使用するものであり、その時期が災害発生時及びその災害中に限られることから、措置法通達70の4−12(3)で示されているところの「その時期がその土地の農業上の利用を害さないと認められるもの」に該当するとみることができること、及び次のことからすれば、措置法通達70の4−25及び70の6−26の定めにより、復旧用資材置場等として使用される直前において、その所有者が農業の用に供していた場合に限り、贈与税等の納税猶予の特例に係る期限が確定する事由とされている「譲渡等」に該当しないものと取り扱って差し支えないものと考えます。
  1. 1 災害が発生した場合に、被害の状況に応じて農地を指定し、復旧用資材置場等として提供するものであり、公共性、緊急性及び非代替性が認められること。
  2. 2 復旧用資材置場等として一時使用される農地は、災害復旧までの応急対策のための場所として使用され、その使用期間はおおむね1か月程度と一時的なものであり、必要最小限の期間であること。
  3. 3 災害時に復旧用資材置場等として使用した後は、当市の負担で農地に原状回復し、かつ、当市はその旨証明するとともに、遅滞なく贈与税等の納税猶予の特例対象者の所轄税務署長に対して通知する予定であること。

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