1. (4) 地価税
     土地という有限で公共的性格を有する資産に対する税負担の適正・公平の確保を図りつつ、土地の資産としての有利性を縮減する観点から、土地の資産価値に応じた負担を求めるものとして、地価税法が平成4年(1992年)1月1日から施行された。

    ○ 地価税の概要
     地価税は、個人又は法人が課税時期(その年の1月1日午前零時)において保有している国内にある土地等を対象として年々課税される税金である。ただし、平成10年(1998年)以後の各年の課税時期に係る地価税については、臨時的措置として、当分の間、課税されないこととなり、申告書の提出も必要ないこととなっている。

  2. (5) 酒税
    1. イ 酒類の課税方法

       酒税の納税義務者は、国産酒類については酒類の製造者であり、酒税は酒類を製造場から移出した時に課税される。また、輸入酒類については酒類の引取者であり、酒税は酒類を保税地域から引き取る時に課税される。

       酒税については、従量課税制度が採られており、具体的には、酒類を10種類11品目に区分し、それぞれの区分に応じた税率が定められている(主要な酒類の負担している酒税額等と、その代表的な希望小売価格に占める負担率は表19のとおり)。また、ビールや果実酒等一部の酒類を除き、アルコール度数により税率の加減算が行われている。

       酒類製造者はその製造場ごとに、毎月移出した酒類について納税申告書をその翌月末日までに提出し、翌々月末日までに酒税を納付することになっている。また、酒類の引取者は、あらかじめ納税申告書を提出し、酒類を保税地域から引き取る時までに酒税を納付することになっている。

       なお、酒類製造者は、販売代金の回収に相当期間を要することなどにより、納期限内に酒税を納付することが困難な場合には、税務署長に納期限の延長の申請をし、担保を提供した上で納期限を1か月延長することができることになっている。また、酒類の引取者に対しても、税関長に担保を提供の上、納期限の延長が認められることになっている。

    2. ロ 免許制度

       酒類の製造又は販売業を行おうとする者は、税務署長に申請し免許を受けなければならない。税務署長は、申請内容が酒税法10条各号に列挙する拒否要件の一に該当するときには免許を拒否することができるが、これらの要件は以下の5つに大別できる。

      1. 1 人的要件:例えば、申請者が免許を取り消されたことがある者であること、申請者に一定の犯罪歴があること、等である。
      2. 2 場所的要件:例えば、申請販売場が料飲店と同一の場所にあること、等である。
      3. 3 経営基礎要件:経営の基礎が薄弱であること、等である。
      4. 4 需給調整要件:新たに免許を付与することで、需給の均衡を破り、酒税の保全に悪影響を及ぼすことである。
      5. 5 技術・設備要件(製造免許のみ):製造設備が不十分であること、等である。
      1. (イ) 酒類の製造免許

         前述のとおり、酒類製造者は酒税の納税義務者となる者であるが、酒税は特に高率であり、その税額においても、国家財政上重要な地位にあることから、この酒税収入を安定的に確保する必要がある。

         このため、酒類製造者として適格性を有しないと認められる者を排除し、また、濫立を防止して、消費税としての酒税の転嫁を容易にし、課税上の検査取締りを十分に行うことができるよう措置する必要があることから免許制度を採用している。更には、酒類の品質についても、高率な課税に適する品質を保持し、あるいは、国民の保健衛生上も不安のない品質を維持する役目も免許制度は持っているといえる。

         酒類製造免許は、酒類の種類別、品目別に、製造場ごとに受けなければならない。平成15年(2003年)3月31日現在における、その製造場数(免許場数)は3,216場となっている。なお、ビールについては、平成6年(1994年)4月酒税法改正により、最低製造数量が引き下げられたことに伴い、小口生産のビール醸造(いわゆる「地ビール」の製造)が可能となり、平成15年(2003年)3月31日現在、その製造場数(免許場数)は232場となっている。

         また、平成15年(2003年)10月構造改革特別区域法の改正により酒税法の特例措置が創設されたことに伴い、構造改革特別区域内において、「農業」と農家民宿・農園レストランなど「酒類を自己の営業場において飲用に供する業」を併せて営んでいる者が、同区域内に所在する自己の酒類製造場において、自ら生産した米を原料として「濁酒」を製造しようとして酒類製造免許を申請した場合には、最低製造数量基準を適用しないこととされた。

      2. (ロ) 酒類の販売業免許

         酒類の販売業免許は、納税義務者である酒類製造者に酒類の販売代金を確実に回収させ、最終的な担税者である消費者に対する税負担の円滑な転嫁を目的とし、これを阻害するおそれのある不適格者の酒類の流通過程への参入を抑制し、また、濫立を防止して、取引の混乱を防ぎ、酒税の徴収について、不安のないようにするため採用されている。

         酒類の販売業免許には、大きく分けて卸売業免許・小売業免許の区分がある。平成15年(2003年)3月31日現在における、その販売場数(免許場数)は、合計で200,412場となっている。

         なお、酒類小売業免許に係る需給調整要件については、規制緩和推進3か年計画(平成10年3月閣議決定)等に基づき、平成13年(2001年)1月に距離基準を廃止するとともに人口基準も段階的な引下げを経て平成15年(2003年)9月をもって廃止した。他方、こうした規制緩和の進展に伴い多数の酒類小売業者の経営の維持が困難となる等の急激な社会経済状況の変化が生じている現状にかんがみ、緊急の措置として、緊急調整地域における酒類小売業免許の付与制限等により規制緩和の円滑な推進に資することを目的とする「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」が議員立法により成立した。同法に基づき平成15年(2003年)9月から一年間全国3,383の小売販売地域のうち922地域を緊急調整地域に指定した。(表2021参照)

    3. ハ 酒税の調査
      1. (イ) 酒類製造者に対する調査

         酒類製造者に対する調査は、製造者が法に規定された原料及び製造方法に従って酒類を製造しているかどうか、また、製造場等から移出された酒類について、適正申告及び納税が行われているかどうかを確認する必要があるために実施している。

         調査の結果、申告額が正しくないことが判明した場合又は申告書が提出されていなかった場合には、税務署長は更正又は決定することになっている。

         なお、悪質な脱税をした者に対しては、後述のように犯則調査を行うほか、免許を取り消すことができることになっている。

      2. (ロ) 酒類販売業者に対する調査

         酒類販売業者に対する調査は、酒類製造者の調査を補う必要がある場合に実施している。

    4. ニ 酒類業の健全な発達のための措置

       国税庁は、酒税の賦課徴収のほか、酒類業の健全な発達という任務も担っている。

       酒類行政関係事務は、経済社会情勢の変化に対応して、総合的視点から酒類業界に必要な施策を行うとともに、酒類取引の安定を図ることにより酒類業の健全な発達と酒税の確保を図ることを目的としている。

       酒類業界は、国際化の進展や酒類の消費構造の変化、規制緩和を含む経済社会システムの改革の進展など、生産・流通・消費のあらゆる面における大きな環境変化と未成年者の飲酒防止、環境問題への対応などの社会的要請の高まりに直面している。

       このような状況下において、次の施策を講じることにより、酒類業の健全な発達を図ることとしている。

      1. (イ) 酒類小売販売場における酒類の適正な販売管理の確保を図るため、平成15年(2003年)9月から、
        1. 1 販売場ごとに酒類販売管理者を選任すること
        2. 2 選任した酒類販売管理者に、小売酒販組合等の財務大臣が指定した研修実施団体が行う酒類販売管理研修を受講させるよう努めること

        が酒類小売業者に義務付けられた。

         酒類販売管理者は、その選任された酒類小売販売場において、酒類小売業者又は酒類の販売業務に従事する者に対し、酒類の販売業務に関する法令の規定を遵守して業務を実施するために必要な助言又は指導を行うことをその役割としている。

      2. (ロ)  未成年者の飲酒防止対策については、致酔性、依存性を有する酒類の特性に鑑み、よりよい飲酒環境を形成して消費者利益と酒類産業の健全な発展を期する観点から、従来から、酒類業者に対し、未成年者の飲酒防止に配意した販売や広告宣伝を行うよう要請してきている。

         平成12年(2000年)8月には、酒類に係る社会的規制等関係省庁等連絡協議会において、「未成年者の飲酒防止等対策及び酒類販売の公正な取引環境の整備に関する施策大綱」(以下「施策大綱」という。)が決定されたことを受け、関係省庁と緊密な連携を図り、その徹底に努めている。

         また、平成13年(2001年)12月に未成年者飲酒禁止法が改正されたことを受け、関係省庁と共同して、酒類業界に対し、未成年者飲酒防止に資するため年齢の確認その他の必要な措置を強力に推進するよう指導している。

         さらに、平成15年(2003年)6月に「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」を改正し、平成15年(2003年)9月から、酒類の小売販売場においては、酒類を他の商品と分離し、あるいは明確に区分して陳列した上で、当該陳列場所の見やすい箇所に「酒類の売場である」旨及び「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示するよう義務付けている。

      3. (ハ) 酒類の表示については、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」(昭和28年法律第7号。以下「酒類業組合法」という。)に基づき、酒税の保全の観点から酒類の種類等の表示が義務付けられているほか、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資する観点から酒類の製法、品質等又は未成年者の飲酒防止に関する事項について次の表示の基準が定められており、これらを遵守するよう酒類業界に対し適切な指導を行っている。
        1. 1 吟醸酒、純米酒等の清酒について、その特定名称の製法、品質に関する事項を定めた「清酒の製法品質表示基準」(平成元年国税庁告示第8号)
        2. 2 酒類の容器等、陳列場所、自動販売機及び通信販売における、未成年者の飲酒は法律で禁止されている旨等の表示事項を定めた「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」(平成元年国税庁告示第9号)
        3. 3 ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の保護に関する事項を定めた「地理的表示に関する表示基準」(平成6年国税庁告示第4号)
        4. 4 酒類の容器等に有機等及び遺伝子組換えの表示を行う際の基準を定めた「酒類における有機等の表示基準」(平成12年国税庁告示第7号)

         また、これらの酒類の表示基準を確実に遵守させる必要があることから、平成15年(2003年)5月に酒類業組合法が改正され、表示基準のうち特に表示の適正化を図る必要があると認められるものを「重要基準」として定め、これに違反していると認められる個別の業者に対しては、表示基準の遵守を「指示」し、その指示に従わない場合に遵守を「命令」することができることとされた。これを受けて、平成15年(2003年)12月に「重要基準」が「酒類の表示の基準における重要基準を定める件」(平成15年国税庁告示第15号)により定められた。

      4. (ニ) 公正な競争による酒類産業の健全な発展を確保するため、全ての酒類業者が尊重すべき公正なルールについて平成10年(1998年)4月に「公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針」(以下「指針」という。)を発出し、指針の内容等について、あらゆる機会を通じて酒類業者に対して積極的な周知・啓発を図るとともに、取引実態調査を積極的に実施し、指針に示された公正なルールに則しているとは言い難い取引等についてはその不合理さを指摘し、合理的な取引が確保されるよう積極的に指導してきている。

         平成12年(2000年)8月に決定された施策大綱に盛り込まれた酒類の公正な取引環境の整備に係る施策について関係省庁と緊密な連携を図り、その徹底に務めている。

         また、平成12年(2000年)12月に公正取引委員会から、酒類の流通における不当廉売、差別対価等の規制についての考え方を取りまとめた「酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」が発出されたことから、その周知・啓発に努めている。

         さらに、平成15年(2003年)7月に施行された「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」(平成15年法律第34号)に規定されている1公正取引委員会に対する措置請求、2酒類の取引条件の基準等の策定及び取引先等への提示義務について、その積極的な活用及び指導・啓発を図っている。

      5. (ホ) 酒類業界が健全に発達するためには、環境問題に適切に対処する必要があることから、循環型社会形成推進基本法などの環境関係法令について周知・啓発するなど積極的な取組を行っている。

         また、今後においても、環境関係法令への適切な対処など、環境問題に対して適切に対処されるよう引き続き取り組んでいくこととしている。

         なお、酒類業界に特に関係が深い酒類容器のリサイクル及び酒類の製造・販売段階において発生する廃棄物等の発生抑制や再生利用等については、酒類業界や消費者に対し、

        1. 1 中央酒類審議会の「酒類容器のリサイクリングに関する中間報告」(平成3年2月)を踏まえたビールびんや一升びんのように繰り返して使用されるリターナブル容器の使用促進に関する啓発
        2. 2 「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成3年法律第48号)に基づく、容器の材質識別マークの適正な表示に関する指導
        3. 3 「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(いわゆる「容器包装リサイクル法」)」(平成7年法律第112号)に基づく、特定容器の再商品化義務の適正な履行に関する指導
        4. 4 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」が平成13年(2001年)5月から施行されたことを踏まえた、同法の周知・啓発

        を行うなど積極的な取組を行っている。

         今後、酒類容器のリサイクルを一層促進していくため、酒類業界の実態を踏まえた検討を行い、着実にその促進を図ることとしている。

      6. (ヘ) 酒類業を取り巻く厳しい環境の中で、中小酒類業者が健全な企業経営を行っていくためには、社会経済の変化に適応した経営の活性化のための取組が不可欠であることから、平成11年(1999年)7月に施行された「中小企業経営革新支援法」(平成11年法律第18号)に基づく経営革新計画への策定への取組が円滑に行われるよう積極的な啓発・支援に努めているほか、各地の経営革新等の取組事例や中小企業施策などの情報の提供、中小企業診断士等の専門家の派遣による研修会の開催など、中小酒類業者の経営革新、経営の活性化に向けた取組への支援を積極的に行っている。

        なお、清酒製造業、酒類卸売業については、経済的環境の著しい変化による影響を受け、生産額又は取引額が相当程度減少しているとして、中小企業経営革新支援法の特定業種に政令指定された(清酒製造業・平成12年(2000年)12月、酒類卸売業:平成14年(2002年)3月)。清酒製造業については、平成13年(2001年)10月に、酒類卸売業については平成15年(2003年)3月に経営基盤強化計画が承認されており、業界の取組に対する積極的な支援に努めているところである。