調査査察部長
 恐らく基本的に、さっきバルクセールスという表現もありましたけれども、1件1件手間暇かけて破綻処理をしていってというよりも、まさにバルクでロットをまとめて、そのロットをまとめるという根拠は恐らく均質性もあるのかも分かりませんけれども、ある程度似通ったもの、中にはいいものもあるかもわからない。というようなものをまとめて受けるといったところで、極めて簡便に短い期間で流動化できる。しかもそれは完全なオフバラですから、というところがあるのではないでしょうか。ただ、それはどこにはめ込むかというのが一番問題であると。

長官
 恐らく水野先生がおっしゃっている疑問はそんなに売れるなら銀行は自分で売って回収すればいいではないかと、こういうことだと思うのですね。そこがどうもやはり、今、金融機関のほうで不良債権を早く処理しなきゃいかん、早く処理しなきゃいかんということで私は銀行の中のことはよく知りませんけれども、ものすごい号令が出ているんだと思います。
 したがって、金融機関としては、とにかく早く処理してしまえということで、一番手っ取り早くオフバランス化する方法はとにかく売ってしまうということではないでしょうか。

分科会長
 私は金融審議会のほうでも委員をしているのですけれど、日本の金融界というのは、平たく言えばこの種のビジネスに関しては非常に出遅れている。だから、ノウハウは余りないと言えばないのですね。だから、そこのところはうまくやられているというところもあって、それからやっぱりマーケットがもう一回売るマーケットがちゃんとあればいいんですけれどね。それがなかなかうまくいっていないのではないのかなと。私は余り正確ではないのですけれども、そういう感じで言われるようなことになっていると。
 何かほかに、もしほかのことで御質問があればどうぞ、御自由に。何かございませんでしょうか。
 国際的な租税回避というのは結構難しい問題ですが、すごくうまい方法、かなり各国の国税当局が相当協調してうまくやらないと、元々税金がかからない国もあるわけですから。

課税部長
 PATAなどでやることだと思いますが、その下に次席会合というのがございます。そんなところでいろいろノウハウの交換とか、もちろん個別の名前はなかなか、それは守秘義務があってできませんが、行ってはおります。

水野臨時委員
 よろしいでしょうか。

分科会長
 ちょっと手短にひとつ。

水野臨時委員
 いわゆる国際的な調査の場合、当然、日本の調査権限というのは、これはもうよその国には及びませんので、そういう場合は情報交換という形でも何か有益な情報というのは入るのでしょうか。大体、今、金融取引ぐらいでないと情報交換はうまく働かないというような話を聞いておりますけれども、こういう個別ケースで証拠を捕まえるために何か情報を仕入れるということなのですか。

課税部長
 難しいところですね。租税条約における情報交換はいろいろ種類があります。自動的に来るのもございますし、配当とかですね。こちらから別途依頼するものもございます。こういうことを調べていただきたいと。主としてアメリカになります。ただ、それも若干時間がかかります。というのは、自分のところの仕事をみんな抱えていますから。これ以外にいろいろ調査の手法みたいなノウハウの話がありますが、それは別に守秘義務とかかかりませんので自由にやっております。

調査査察部長
 具体的に情報交換というのは、確かに幾つか現に行っております。もちろん、それは条約に基づいて有意義にやっているわけでありますけれども、ただ、若干幾つか問題点がございますのは、条約に基づいてもちろんレシプロでこうやるわけですけれども、国によっては条約の国内適用として、条約上の相互の情報交換を目的とする何がしかの国内での資料徴求、あるいは調査というのが可能な国と、そういう条約の目的ではなくて、国内的なそういう権限を行使するためには国内での特定の納税者を前提とするまさに国内での執行目的が優先する、それがないとできないという二つの体系がございます。日本はどちらかというと後者。どちらかではなくて、そういう法体系になっております。その辺をどうするかという問題はございます。まさにレシプロですから。おっしゃるとおり、基本的にこれだけクロスボーダーで取引が盛んになっておりますと一国だけではとても限界がございますから、それをどうやってやるかというのは非常に大きなポイントだと思います。そういったいろんな制度上の調整をどうするかということも含めて、今後検討すべき問題だと認識しております。

水野臨時委員
 ありがとうございました。

分科会長
 あるいは、ほかにご質問ある方はどうぞ。
 では、手短にお願いします。

分科会長代理
 会計の分野では今国際的な調和化というので、会計基準を各国大体同じような方向に持っていきましょうというような動きがありますが、私はかねてから不思議に思っているのが、税法の分野におきましてはある国では税金がかからなかったり、また、他の国では違った税の体系を持っていたりということで、世界中眺めてみても、だんだん近くはなってきているのかなというふうには思っておりますが、今現在違っている部分が非常にあると思うのですけれども、そういうものについてやはりある一国の国がたくさん税金が取れるとか、あるいは取らないで経済的な公益のほうを得るとかというようなことがないようにしようというような動きはあるのでしょうか。

課税部長
 OECDでの消費税の問題なんかが非常に端的ですね。アメリカは消費税がない―小売売上税はありますが、ヨーロッパは消費税がメインですね。そういった場合に消費税の賦課という問題。これは海外から購入するデジタルコンテンツみたいな話がありますね。いろいろソフトウエアであるとか音楽とかですね。こういうものには、消費税がかからないですね。国外取引として、不課税になります。注文はインターネットでやればそんなことどうでもいいのですけれども、物が来るのであれば、税関で消費税を徴収しますが、デジタルコンテンツは消費税がかからないのです。
 そういうのをどうするかとか、そもそも所得区分みたいなのもあるのです。それによって、今、東部長が説明しましたように、租税条約上、源泉徴収ができるとかできないとか、いろいろあるのです。さっきの例では、その国との租税条約上源泉徴収できないということなのですが、そういう所得の問題とか、そういう問題はOECDでいろいろ議論をされています。移転価格税制は基本的にはOECDにガイドラインがありますから。ただ、国際間の非常に顕著な税については、OECDの場でいろいろ議論をなされて、割と調和化の方向、ハーモニゼーションの方向には行っているんだとは思います。ただ各国には、歴史的な経緯がありますから。例えば消費税はアメリカはないのにヨーロッパはあるみたいな。相続税だってない国があります。日本はありますが。そういう根本的なものはなかなか、これはまさに国家主権そのもののようなもので、会計というのと、そこが違うのだと思うのですが。

分科会長代理
 違うのですね。

調査査察部長
 ちょっといいですか。OECDガイドラインという話がございましたし、先進国内ではまさにガイドラインという形で基本的な問題点をクリアにして、できるだけ一致する方向。ただ一つの実例を申し上げますと、この5月か6月に、イントラグループのサービス。その一つのグループ内で、親子間あるいは子同士でも、あるいは法務サービス、会計サービス、いろんなことをやっています。基本的にこれが独立の経済主体間であれば有償性があります。それを親子間で、これは基本的にそういう第三者間と同様に有償性を前提として何がしかの対価をとるのだと。これはOECDガイドラインの中に入っている。先進国の中ではだんだんそういう方向に向かっていくという一つの方向です。これはこの5月、6月、日本でも実はそういったものについて、職員に対する内部的な通達ですけれども、有償性ということを明確に―ガイドラインを受けて、出している。これはいわば我が方の一つの課税上の基準の明確性、あるいは予測可能性にも資するということで、一歩一歩、できるものから、いわば確立した統一的な方向に沿う方向でやっていっているということは御理解いただきたいと思います。

長官
 先生がおっしゃるのもよくわかるのです。ただ、特に税の場合は難しいと思いますのは、国によって税収がたくさん欲しい国、税収は要らないけど企業に来てもらって人をいっぱい雇ってもらいたい国と、いろいろあるわけでございます。ですから、今タックス・ヘイヴンと言われている国、あるいは非常に低税率の国は、法人税収でもらうよりも企業に来てもらって、それで人を雇ってもらってと、そっちのほうを狙っている。いわば企業誘致税制みたいなことをやろうとしている国もあるわけです。そういうところで税率の差みたいなものが出てくる。ただ、余り差が出てくると、高い法人税率を持っていますと低い法人税率の国に逃げますので、余り高くもできない。そういう面ではある程度調和化が働くという問題があります。
 それからもう一つは、やはり税が経済政策に使われておりますので、例えば日本でも今投資が足らないから、投資、試験研究とかそういうものを大いにやれと、こう言われている。そうするとその国は試験研究費だとか投資とか、そういうものに対して非常に減税が行われてしまうということで、必ずしも本当は各国みんな同じような税率になればそのほうがみんな幸せだと私は思うのですけれども、それぞれの事情があるものですから必ずしも一致できない、課税権はみんなそれぞれの国が持っていると、こういうことではないかなと思いますが。

分科会長
 この問題はまたいろいろ、議論をし始めると、大分、やや面白い問題なのですが、非常に重要な問題ですが、ちょっと議事の進行上この辺であれしていただきます。
 今度は本来の国税の議論でいつもございますのが、資料2に関連しまして不服申立ての状況につきまして御説明いただければ。どうぞよろしくお願いいたします。

課税部長
 それでは、不服申立ての前提となります異議申立て、これは原処分庁に対して異議申立てを行いますから、まず国税のほうに来ます。それでまた不満があれば審判所に行くということなのです。
 まず件数の説明をしたいと思うのですが、年間5,000件ぐらい発生しています。処理も、若干のタイムラグはありますが5,000件ぐらい処理して、取消割合が10%ちょっとであると。
 その数字の評価なのですが、これは非常に難しくて、異議申立ての件数の数え方なのですが、これは課税部、調査部ともに数え方は一緒なのです。査察部はちょっと別にしまして、年間100万件ぐらい税務調査して処理しています。では、分母が100万かというとそうではなくて、これは年分が例えば3年分、一般の過少申告の場合で3年分処理ができますから、3年分としますとその場合には3倍になるのですね。それと本税のみならず重加算税の賦課を争っておられる場合は、掛ける2になるのです。実はそういうことで分母の統計がとれないのですが、異議申立てがされるのは何百分の1なのです。そういう数え方をするのです。消費税でも、消費税と地方消費税がございますから、2件と数えてしまうのです。したがって、5,000件というのは、争っておられる納税者の数では全然ないのです。その件数が毎年変化するので、正直言って分からないところがあります。
 この中には徴収部の件数も入っているのですが、徴収は実は差し押さえ件数、一つの事案で70件ぐらい差し押さえすることがあります。徴収事案で12年度分の件数が増えているのは、実は二つで150件ぐらい差し押さえをしているものが入っているからなんです。そういう数え方の問題がございます。したがって、アバウトな傾向だというふうに御理解いただきたいのです。これは法律的な側面からの数え方なものですから、経済分析的なアプローチはできないということを前提として御理解いただきたいと思います。そういう数え方で大体5,000件くらいあり、分母の件数はどうも何百万だというイメージを持っていただきたいと思います。正確に何百万になるのかは分からない、それはちょっと計数がありませんから。調査件数は100万件掛ける何倍かです、2倍とか3倍とか。
 それから、発生件数が若干減っておりますが、これはやや分かるのですが、推計課税事案というのが減っております。推計課税事案というのは白色申告などで、要するに帳簿がない人ですね。帳簿がない人に対してどうするかというと、同業者比率を使って所得を推計していく。そして課税するという、そういう方法が所得税法にも規定がありますが、法人税法でもいいのですけれども、そういった推計事案の異議申立てが減っているということです。これは近年マクロ的に見て、調査件数は国税全体で減っております。定員も減っておりますし、一件当たりの処理日数が増えたりした関係上、どうしてもやや高額のほうにシフトしていますが、推計課税事案というのは小規模なのがやや多いです。相対的なことを申し上げておりますが。そうすると、やや調査件数の中でトータルで占める推計事案は減っているのですが、したがって、また処理も少ないものですから異議申立ても減っている。そういう関係にあるかと思います。
 次に取消割合が若干増えているという数字が出てまいります。先ほど申しましたようにキャパが何百万のうちの何件なのです。したがって、なかなか正直なところ、すべて1件1件分析するわけにはいきませんので、件数しか正確に把握できないのです。言い方はそれしかできないのですが、この取消割合が増えている理由の一つには、推計事案の取消があるのです。推計は減っているのですが、取消割合は比較的高いのです。それは、推計事案というのは先ほど申し上げた同業者率、その地域における八百屋さんなら八百屋さんの例をいろいろ取るわけですね。5者なら5者取ってそれを分析して当てはめていくのですが、そこは考えると時間さえかければかけるほど精緻になるようなところがあるのです、同業者比率ですから。税法そのものを適用するというのではなくて、一種の算数みたいな話ですから。実際には、八百屋さん一つとりましても、八百屋さんはやっているけれども、今八百屋さんだけをやっているという人は非常に少ないわけですね。ほかの御商売もやっている。そうなってくると、この率が同業者として適当かどうかという場合があるのですね。全然違う他業種複合的に業種を持っておられる小売屋さんがたくさんありますから。そうなってくると、異議事務の段階できちんと見直してみると、ちょっとこの事例はおかしいのではないかと。そういう場合には、この同業者比率で取り上げた例示を外したり違うのを入れ替えたりします。そうやって計算し直して、いったん取り消す場合があるわけです。一部取消と言うのですけれども。そういうのが入っている数字であるということを御理解いただきたいと思います。
 ただ、全般的に今は定員も減っているのでありますが、調査件数も減っているのであります。やはり事案がいろいろ複雑になっているということは事実あると思います。我々もやはりそういったときには事実認定、あるいはその法令適用がいろいろデリケートな判断、評価が必要になるというケースが増えております。したがって、やはりそういう時代にありますから、従来以上にそういうものに事務量をかけております。そうすると、またほかの仕事を削らざるを得ないのでありますが、より正確な事実認定といいますか、適正な法令の適用というか、何せ非常に膨大な件数ですから、すべて原処分から全部完璧にやれればそれは理想ではありますが、異議申立てが出てきたときにはもう一度きちんと見直すということも重要だと思います。そうなってくるとやや従来よりも取消割合は増えてくるということもあるのかとは申し上げられるかと思います。
 以上、異議申立ての状況について、説明をしました。

審判所次長
 それでは、私のほうから審査請求の関係を御説明したいと思います。
 審査請求の件数はここ5年ぐらい約3,000件前後で推移しているというのが現状でございます。処理件数も約3,000件前後ということで、これは処理能力の関係でこの辺横ばいなのかなと。したがいまして、発生件数が多い少ないによって未済案件というか、繰越案件が減ったり増えたりする。それから、取消割合は13年度は13.9%ということで、これは結果の数字でございまして、審査請求の発生件数が減っているというか、やや横ばいなのですけれども、中身を見ますといわゆる先ほどの推計課税案件がかなり減っています。例えば平成元年、5年ごろは半分くらいが推計事案だったのでございますけれども、近年ですと、例えば平成9年は37.5%が平成13年では23.8%となっております。代わりに推計以外の案件である一般案件の割合が増えております。審査請求の場合、推計案件については判例等もたくさんあって、また、いろんな事例もあるということなので、事務処理は比較的定型的に行うことが可能となります。それに比べて一般案件は困難な傾向があると思っております。
 なお、取消割合ですけれども、異議申立てと違いまして審査請求になりますと、いわゆる推計案件よりもむしろ法人税とかあるいは相続税、こちらのほうが取消割合が多くなっているというのが印象でございます。
 以上でございます。

分科会長
 ただいま資料2の不服申立ての状況の現状につきまして御説明があったのですが、何か御質問、御意見ございませんでしょうか。この数字の読み方はかなりいろんな要因が絡んでいるのですが、よろしゅうございますか。
 それでは、次の件に移りたいと思います。最後ですが、資料3の審判所の概要及び裁決事例につきまして御説明願いたいと思います。

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