総務課長
 1点、先ほど行政側の出席者のときに欠席しておりました福田次長でございます。

次長
 福田でございます。

総務課長
 それから、引き続きまして、国税庁のホームページで公表されている事前照会に対する文書回答から二つの事例について、さらに本年8月1日に施行され、15年3月期決算法人から適用されることとなっております連結納税制度につきまして、2点、課税部長から説明をいたします。

課税部長
 資料の1−2でございます。事前照会に対する文書回答。この手続は、昨年に整備しておりまして、昨年の国税審査分科会の席でも御説明をいたしました。したがいまして、1年間たってその結果報告みたいなものでありますが、ペーパーに書いていないのでちょっと申し上げますが、まず、国税庁といたしましては、法令解釈通達はすべて公開いたしております。ホームページで大半がアクセスできます。そういうふうになっておりますし、それ以外に個別の取引について、税務上の取扱について納税者からお問い合わせが来ます。申告前にという意味ですけれども、事前の相談と言っていますが、そういった対応を従来からやっております。特に再建支援、これは今はよくマスコミなんかでも報道がありますが、銀行などが建設会社に対する債権を放棄するというようなケースですね。放棄というと、単純にやりますと法人税法37条の規定により、寄附金に当たるかどうかという問題があるのです。要するに経済的な利益を供与しますから。このような問い合わせは、平成4年に国税局と庁にこういう窓口をつくったのですが、たくさん寄せられております。
 それ以外にもたくさんあるのですが、ここでいう文書回答というのをなぜ作ったかというと、昨年も御説明したかと思いますが、ノーアクションレターというのが経済産業省なり、金融庁で作られたのです。これは行政機関による法令適用事前確認手続といいますが、これは法令に違反するかどうかという、そういったことでちょっと我々のいう事前照会とは違います。国税は申告納税制度ですから、事前照会というのは、申告をされるときの援助手続に過ぎないのですが、彼らの場合は法律に違反するかどうか、そういった話なのですけれども、それと軌を一にして文書回答の手続を整備したわけです。従来も文書回答はゼロではありませんが、そういうのを整備したということであります。
 先ほど申しました文書回答以外の、口頭での回答は従来から無数にございます。また、別途国税庁は相談室というのを持っておりますから、それはもう猛烈な感じで相談が寄せられております。文書回答を求める事前照会というのは、ほんの一部でありますが、一応1年間に40件ぐらいあったのですが、そのうち文書回答は15件やっております。そのうち二つの事例を掲げてあります。あくまで文書回答は公表いたします。公表する手前上、個々の納税者のみにかかわる相談は対象としておりません。その場合には守秘義務がございますから我々は公表できませんし、納税者もお困りでしょうから、そういうことはやっていないんです。ここの文書照会に載るのはもう一般的なものであります。
 照会の1は、「私的整理に関するガイドライン」ということなのですが、これはちょっと分かりにくいかもしれません。次のページの具体例を見ていただいたほうがいいんですが、照会内容のところを見ていただくと、平成13年4月、政府の緊急経済対策というのをやっております。その中に不良債権問題が一番大きくテーマとして取り上げられたのでありますが、それの対策の一つとして、私的整理に関するガイドラインというのが取りまとめられております。これは実際には政府という意味ではなくて、主として全銀協―事務局は全銀協なのですが、金融業界、経済界それから学識経験者、そういった方々からなる私的整理に関するガイドライン研究会というのが、再建計画の策定手続の一つのガイドラインを作られたわけです。それを当方に対してこういったガイドラインに沿って作られた再建計画により行った債権放棄等が寄附金に当たらないかどうかと、そういう照会なのです。したがって、個々の、例えばどの銀行がどこどこの建設会社にという意味ではありません、その場合には守秘義務がありますから。非常に抽象的な仕組みそのものの照会であります。それについては特に問題ないという回答をいたしております。そういうことが私的整理に関するガイドラインということであります。その内容がずっと書いてあります。
 それからもう一つは、これもよくあるのですが、各地でイベントがございます。これはたまたまNHKテレビでやっています「利家とまつ」に合わせて開催されている「加賀百万石博」というのがあります。こういうのは日本国中、いっぱいあります。そういうところに企業が出展されたり、切符を買われたり、いろいろするわけですね。そういったものの課税上の取り扱いについて照会されているわけです。基本的には余り問題はないということなのですが、例えば広告宣伝費に当たるかどうかについては、いろいろパンフレット等に企業名を使って広告宣伝しているような場合には広告宣伝費になるよとかですね。それから、建物みたいなものがあります。これは一応資産ですから、資産に計上しますとその企業の減価償却費として、例えば60年かけて償却すると大変ですから、大体そういうのは取り壊しますから、資産というよりはもう、期間に応じて必要経費で落としていい、あるいは損金に算入していいとか、そういったことなのです。そういう問い合わせが来ております。こういうケースは非常にたくさんあります。これが事前照会に対する文書回答の事例であります。
 次に連結納税でありますが、御案内のとおり、連結納税制度は本年からスタートいたしております。実際、法律が通りまして政省令の施行は本年8月1日からになっております。実際には14年4月1日に開始する事業年度から連結納税が適用になるのでありますが、とりあえず今何をやっているかと申し上げますと、まずはもちろんこの連結納税制度の職員に対する周知、すなわち、法人税法がほとんど改正になっておりますから、我々職員を研修しなければいけません。そういったことをやっております。
 それからもう一つは、納税者の方々にPRをしていく。これはパンフレットを作ったり、いろいろ各種Q&Aを作っております。国税庁のホームページにも全部そういうのは掲載しております。アクセス可能であります。
 それからもう一つは、国税局・税務署に窓口を設けております。これはいろいろお問い合わせがありますし、特に連結納税の場合は、それを適用される方は申請をしていただくという手続があります。そういうことの御相談、どういう書類を出せばいいのですか、いつまでに出せばいいのですかという問題がありますから、そういう窓口を設けております。それを8月1日から動かしているのでありますが、さらに加えまして、今、法律・政省令はもちろんできているので、法令解釈通達も出していく必要があります。それにつきましてはいろいろ各界の方々の意見を聞きながら出したいと思っております。特にパブリックコメントということではありません、これはただの法令解釈通達ですから。うちの通達というのは、長官が職員を拘束するだけのものでありますので対外的な効力はありませんから、パブリックコメントにはなりませんが、一応、税理士会であるとか、それから監査法人、監査法人は税理士法人を作っておられますが、それから租研((社)日本租税研究協会)とか、そういう学識経験者にいろいろヒアリングを行って、実務家の皆様方の声を聞きながら連結納税制度に関する通達を作りたいと思っております。
 なお、連結納税を選択される場合には申請をしていただく必要があります。その承認手続というのは所轄税務署を経由して国税庁長官に提出していただきますが、第1回目、14年4月1日開始事業年度ということは来年の15年3月31日に終了する14年度ということですが、それに対する申請を9月30日をもって締め切っております。先月ですね。本日、まず第1回目のケースについての申請件数を発表いたしたいと思っております。
 ちょっと、申し上げますと、第1回目に承認申請を出されたのは、全国で親法人の数が164件です。子会社を入れますと2,896社になっております。申請が出ておりますものにつきまして、手続上問題がないかどうか、例えばこれは100%子会社という要件がありますから、それを満たしているかどうかを審査をしましてOKならその通知を出していきたいと思っております。現在はそういった事務を行っているところでございます。
 以上、税務行政に関するトピックスの説明を終わらせていただきます。

分科会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの租税回避スキームの話、あるいは事前照会の文書回答の事例、それから連結納税制度について御説明がありましたが、もし御質問あるいは御意見がありましたら、どうぞご自由にお出しください。
 水野委員。

水野臨時委員
 非常に興味のある事案を御紹介いただいて、はっきり申しましてこれは外資系の投資銀行がやっていることですが、ちょうどこれは先週授業で使いまして、どうしても分からないのがこの債務者から債権を回収するということですが、これはやっぱり不良の度合いによってある程度は回収できるというものなのだとは思うのですが、あるいは外資系の会社ですから何か特別な手段を使って、それこそ代物弁済みたいな不動産は全部取り立ててしまうとか、かなり強行なことをされるのでしょうか。

調査査察部長
 ただいま水野委員の御指摘でありますけれども、あくまでも一般論として申し上げますけれども、少なくとも幾つかの、幾つかといいますか一般論として申し上げますと、この不良債権買取事業、匿名組合契約を利用したものは非常な収益率、収益は極めて巨額なものがあがっております。恐らく、率も非常にいいのだと思います。それはまず第一に簿価を大幅に下回ると申しましたけれども、だからいわばマーケットがないところで、そのセカンダリーのマーケットがないところでの適正価格というのは非常に立て方が難しいので、それは相当に、妙な表現をしますと買いたたく。買いたたいた上で、いわばある程度の経験・識見があれば、そこは見切れるようなものを下回って買いたたくことができるといったようなのが恐らく実態ではないでしょうか。
 アメリカあたりでは相当程度の不良債権のセカンダリーもあれば、そういったものの回収ビジネスというのも現にあるでしょうから、そういった蓄積があるところとの相違というのは、場合によってはあるかもわかりません。いずれにいたしましても、特段のそういうノウハウとか、もちろん蓄積があるとしても先ほど御指摘のあったような代物弁済とか、あるいは特殊な回収方法とかといったことよりも、そういういわば経験、蓄積に基づく何がしかのものが寄与して現に大幅な収益があがっているということだと思います。

課税部長
 担保不動産を処分されているのだと思いますね。バルクセールですから、優良な担保があればそれは非常にいい案件。中に非常にいい案件があれば非常にもうかるということです。キャピタルゲインをインカムゲインに変えているようなものかもしれません。

長官
 今、村上課税部長が説明したとおりだと思います。結局債権に担保物がついていますのでそれごと買い取っちゃうわけです。それを時価の1割とかそういう値段で買って、それでその担保物を束ねて銀行は売っているのですけれども、その中にいいものもあれば余り使いでのないものもあると。それをばらしまして、いいものをしっかり売ってしまう。それで、私がいろいろなところから雑多に聞いている話だと、大体年利2割ぐらいに回している。そういうことからハゲタカファンドと言われているわけですけれど、その利益を回していく。そういう形だと思います。ですから、債権そのものを何かうまく回収するというよりは担保物を売ってもうけるという、そういうことだと思いますが。

水野臨時委員
 ちょっと長くなって恐縮なのですが、最近聞いたところではアメリカではこういう不良債権というのは、今長官が言われたように、いわゆる何か福袋みたいな形にして全部まとめて売るというようなお話ですが、これは本邦の法人にとってなかなか進まないのは、自分たちで例えば滞納処分でやると、何となく責任問題がかかってくるかなというのがあるけれども、債権の形で譲渡すると、何かそこはクリアにできるとか、そういう違いというのはございますのでしょうか。日本ですと、やっぱりなかなか役員の方がOKしない。債権譲渡だと何となく……、それはいいのかなと、何かそこがよく分からないのですけれども。やはり滞納処分までやるということにはリスクを感じるというのか。

調査査察部長
 いわゆる法的な破綻整理に訴えるのか、あるいは流動化するか。

水野臨時委員
 はい。抵当権を実行する、と。

調査査察部長
 恐らく、これも直感的ですけれども、例えばいろんな債権整理法とか、簡易な、短期間でするとか簡便な方法もあるんでしょうけれども、基本的に言えば、やはり身軽に早く相当簡便に流動化できるということが一番大きいのではないでしょうか、それは。

課税部長
 税法上は、もちろん償却をするためにはそれが全部無価値にならないといけませんから、回収の可能性がある限りその部分を評価しなければいけませんですね。したがって、売ってしまえば実は1円とか、簿価とかで売ったりするのですけど、なかなか手間暇がかかる。国税当局というのは、基本的には利害の対立する第三者間で行われるような売買については、特段否認はいたしませんから、もし社長さんと会社との間で恣意的に行われるような取引だとちょっと問題がありますが、マーケットで成立した価格というのはマーケットで成立したわけですから、そのマーケット価格が、非常に安い値段であっても特段それが何か問題があるという指摘はいたしません。したがって、別に税法の問題ではないのですがやりやすいことはあるかもしれません。さらに加えて金融機関ですから、オフバランス化を図りたいわけです。そういった場合に、やはり取り立てはサービサーがもちろんやるわけですが、取り立てるより売ってしまったほうがそれは楽なのかもしれません。そういった事情があるかもしれませんが、日本のほとんどの金融機関はやっておられるのだと思いますが、オフバランス化を図っておられる。

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