会長
 それでは次の議題といいますか、最近の税務行政の動きにつきまして、事務局から御説明をお願いします。まず、最初に課税部長から。

課税部長
 課税部長の西江でございます。
 今週から平成15年分の所得税の確定申告期が始まっております。私からは、15年分の確定申告に対する取組を中心にポイントを絞って説明させていただきたいと思います。お手もと、資料3がございますので、そこを御覧いただきたいと思います。
 1ページ目は、ちょっと字が小さくて恐縮でございますけれども、これまでの取り組みを時系列で並べてございます。近年、還付申告を中心に申告件数が急増しております。昨年、平成14年分で申告件数2,087万件、うち還付申告が、括弧書きしてございますけれども、1,063万件、実に国民の皆様の6人に1人が確定申告を行っているという状況でございます。
 10年前の平成4年分と比較いたしますと、申告件数が当時1,811万件、比較しますとほぼ15%増、還付申告が当時735万件で45%増、約5割弱の増加となっております。
 こういう中で、当庁では、申告納税制度の趣旨にのっとり、自主的に適正申告をしていただくという観点から、自書申告の定着と納税者利便の向上のための納税環境の整備に力点を置いて取り組んできたところでございます。
 これまでにもタックスアンサーの充実、サラリーマンを対象とした広域還付センターを駅や町の中心部に開設する等、取り組んできたところであります。
 近年の主な取組を御紹介させていただきますと、10年分、タッチパネルの導入ということで、簡単に申告書を作成できるよう銀行のATM機のようなものを各署、各納税相談会場に設置をしております。13年分につきましては、分かりやすい申告書ということで、38年ぶりに申告書を全面改訂いたしました。昨年14年分につきましては、国税庁ホームページに、所得税の確定申告書作成コーナーを開設いたしました。本年試行的にでございますけれども、日曜日の対応、先ほど申しました確定申告書作成コーナーの機能充実、あるいは電子申告の開始等を行っているところであります。
 資料の2、3ページを御覧いただきたいと思いますけれども、還付申告センターの全国の会場を掲載してございます。3ページの一番最後に合計がございますけれども、全国55カ所で、公共施設等を中心に開設をいたしております。
 それから、4ページが、先ほどのタッチパネルの資料です。5ページ、現在、全体の台数が4,700台ほどございまして、昨年これを使って申告書を作成したのが360万枚という状況でございます。
 それから6ページが、確定申告のポスターで、ポスターの下の方に閉庁日の対応記事がございます。通常、税務署は、平日以外は受付、相談を行っていないわけでございますけれども、確定申告の期間中における対応、ニーズが、これまで国税庁等にも寄せられてきたこともございまして、本年初めて試行的に実施をするものでございます。3大都市圏に含まれる都府県内の全税務署、その他の県・道については、県・道庁所在地、政令都市の北九州市でございますけれども、そこにある税務署は、合計248署、全国に524署ありますので約半数になります。申告書の件数でいきますと約7割をカバーすることとなります。その全国248署におきまして、2月22日、29日に、確定申告の相談、申告書の受付を行うことといたしております。
 それから7ページは、国税庁ホームページの所得税の確定申告書作成コーナーでございますけれども、お手持ちのパソコンで申告書の作成ができるということでございます。インターネットで国税庁ホームページにアクセスをしていただいて、ソフトの指示に従い申告書を作成する。プリンターで印刷して、添付書類とともに郵送をしていただくというものでございます。
 昨年、約330万件のアクセスがございまして、本年も1月13日よりスタートさせておりますけれども、昨年を上回る利用率でございます。
 ただ、今回システムトラブルのためサービスを一時停止し、利用者の皆様に御迷惑をおかけいたしましたけれども、今後はこのようなことがないように、プログラムの修正及びシステムの検証を行った上で再開をしたわけでございます。
 本年の利用状況でありますけれども、確定申告期間前、2月15日の日曜日の時点でありますけれども、アクセス件数が188万件、昨年比121%、出力件数が53万件、昨年比で約131%になっています。中でもB様式の出力件数が急増しておりまして、昨年の7万件から15万件に増えておりますけれども、これは株式の譲渡所得者の利用が、機能充実ということで可能となりましたので増加したものだと認識をしております。
 それから、御利用いただいた方からアンケートをいただいておりますけれども、会社員の方と無職の方、無職の方は年金の方だと思うのですけれども、その合計の利用者が全体の約8割を占めております。年齢層で見ますと、60歳以上が全体の3割となっております。また、3分の1の方が郵送で提出すると回答されておられます。このコーナーがサラリーマンの還付申告や公的年金受給者についての自書申告に役立っているものと考えております。
 次に9ページでございます。国税の電子申告・納税システム、e−Taxと呼んでおりますけれども、先ほどの作成コーナーを更に一歩推し進めたものとして、税金の申告、届出、申請、納税についても、インターネット等を通じて行うことができるようにするものでございます。
 e−Taxの運営に当たりましては、安定的な稼動を確認しつつ、段階的に利用者や業務を拡大することとしておりまして、本年2月2日から、名古屋国税局管内の納税者の皆様を対象として運用を開始しております。今後は、6月1日に全国に運用を拡大することとしており、4月1日より全国で開始届出書の受付を開始する予定でございます。
 e−Taxを利用する納税者や税理士の皆様方にとっては、税務署に赴くことなく、自宅や事務所等にいながらにして申告や納税等を行うことができるわけでございます。
 また、e−Taxに対応した会計ソフトの普及により、電子化された経理データを活用して会計処理と申告データの作成、送信といった一連の作業を電子的に処理できることとなります。電子署名や電子証明書の添付が必要になりますけれども、事務の省力化やペーパーレス化が納税者にとっても国税サイドにとっても期待できますので、多くの方にe−Taxを利用していただけるよう、積極的に普及に取り組んでいきたいと考えています。
 先ほどから申し上げておりますけれども、簡単に作成する、あるいは税務署に行かなくても作成できる、それから電子化によってペーパーレス化する、そういう発展を遂げつつありまして、そういう意味では確定申告というのは大きく変わりつつあるところでございます。
 最後に12ページでございますけれども、昨年度の税制改正、15年度税制改正によりまして、消費税に対する国民の信頼性、制度の透明性を高める観点から、主として3点の大きな改正が行われております。1点目が、事業者免税点の引き下げです。免税点制度の適用上限が、現行3,000万円から1,000万円に引き下げられています。2点目が、簡易課税制度適用上限の引き下げです。それから3点目が、総額表示の義務付けでございます。
 今回の改正は、多くの事業者に影響を及ぼす改正でありますことから、法改正以降、国税庁としても改正内容が十分に周知されるよう、地方団体、商工会議所、関係団体等と連携・協力を図りながら、積極的な広報、説明会の開催、相談体制の整備に力点を置いて取り組んでいるところでございます。
 個人事業者の方にとりましては、平成15年分の課税売上高が1,000万円を超える場合には、平成17年分から消費税の申告が必要になります。平成15年分が、消費税の納税義務を判定する基準期間に相当するということでございまして、今回の確定申告はそういう意味で、非常に重要な意味を持っています。そのため各税務署には、署の実情に応じて消費税コーナーを設置するなどして、消費税に関する相談・指導を、記帳指導を含めて行うよう指示をしているところでございます。
 確定申告期は多数の納税者の方々と接する時期でもあり、この時期の事務運営の適否が、納税者の方々の税務行政に対する信頼に及ぼす影響が極めて大きいことから、私どもも確定申告事務全体が的確かつ円滑に実施されるよう、精力的に取り組んでいるところでございます。
 以上です。

会長
 続いて、最近の国際会議における主な議論。

審議官
 審議官の鹿戸でございます。
 大変申し訳ございません。資料を用意しておりませんので、口頭で御報告をさせていただきたいと思います。
 御案内のとおり、最近は、税務行政分野の国際化が非常に進んでまいりまして、国際会議の数も大変増えてきております。特に長官レベルの会議が非常に増えておりまして、中国、韓国とは二国間の長官会合がありますし、またアジア太平洋地域ではSGATAR(スガタ)、あるいはPATA(パタ)と呼ばれております、それぞれの地域の長官が集まる会議がございます。
 また、ヨーロッパ等も含めました先進国の間では、OECDに租税委員会というのがありまして、その租税委員会自身は長官レベルの会議ではございませんけれども、先月、第1回の税務行政フォーラムという会議がございまして、OECD加盟30カ国プラス主要な非加盟国の税務長官が参加する会議が、初めてでございますけれども、スペインで開催されました。私も寺澤長官とともに参加いたしました。そうした国際会議での議論を踏まえまして、幾つか印象に残る点を御報告させていただきたいと思います。
 具体的には、第一に納税道義、コンプライアンスの問題、それから第二に税務行政の効率的、効果的な運営、第三に納税者とのコミュニケーションという三つの観点から御報告をさせていただきたいと思います。
 最初にコンプライアンスといいますか、納税道義の問題でございます。我が国では御案内のとおり、申告納税制度が昭和22年に導入されまして、既に56、7年になるわけであります。しかし、世界じゅうを見ておりますと、例えばイギリスは賦課課税制度から申告納税制度に変わりましたのが1996年、極めて最近でございます。また、オーストラリアも90年代の初めということでございまして、英連邦の国では比較的最近、申告納税制度へ移行した国が少なくないようでございます。もちろん賦課課税制度でもそうではないというわけではないのですけれども、申告納税制度におきましては、納税者が自主的に適正に申告納付をしていただくということが制度の根幹を成すわけでございまして、納税道義、コンプライアンスの維持あるいは向上ということが大変重要になってくるわけでございます。
 しかしながら、一連の会議を通じまして、アメリカにおきましても、それからヨーロッパ諸国におきましても、近年こうしたコンプライアンスといいますか、納税道義の低下が大変深刻になってきているという発言が非常に多かったというのが、印象に残っているところでございます。
 具体的に申しますと、アメリカではタックス・シェルターと呼ばれております租税回避、あるいは脱税スキームが非常にはびこってきておりまして、とりわけタックス・ヘイブンと呼ばれております軽課税国、税金の安い国、あるいは税金がほとんどないような国または地域を利用して、国際的な租税回避、あるいは脱税を行う企業や個人が増えてきているという状況にあるようでございます。
 こうしたスキームは、節税商品などという名目で、税法なり、税務会計の専門家が開発をして、納税者に販売しているという状況にあるようでございまして、アメリカでは、こうしたスキームを利用した租税回避や脱税が既に相当規模にのぼっていて、税収面にも大きな影響が出ているようでございます。一体どのくらいの規模になっているかというのは、なかなかつかみにくいわけでございますが、そういった税収面での影響も、発言の中で触れられているケースが多うございました。
 また、ヨーロッパの場合は、御案内のとおり、付加価値税(VAT)が税収面で従来から大きく貢献をしてきているわけであります。付加価値税は、各取引段階ごとに付加価値額だとか、税額が明らかになるという税金でございますし、取引業者間で一種のけんせいが働くので、所得税や法人税に比べますと、従来租税回避や脱税などの不正が行われにくいのではないかと思われてきたわけでありますけれども、実際には、輸出取引を仮装して、付加価値税の還付を受けるといったような不正事例が、欧州諸国ではかなり広がってきているようでございます。
 実際に貨物が動くかどうかは別でございますけれども、契約上そうした国境を越える取引が繰り返されるということで、そういった形での多額の不正還付や脱税が行われることから、一部の国ではカルーセル取引、あるいはメリーゴーランド取引というような形で呼ばれているわけでございまして、ヨーロッパの国では付加価値税の不正、あるいは不正還付の問題が非常に大きな問題になっているとのことでした。
 こうした租税回避や脱税が深刻化している背景として、日本流にいえば、「税金はばれもと」といったような納税者の意識が潜んでいるようにも思われるわけでありまして、フランスの税務総局長は、「脱税を一種スポーツのように心得る、そういう社会的な風潮が問題だ。」と言っておりました。
 また、アメリカなどの大企業の中にも、タックス・プランニングという名のもとに、税金を一種のコストとして捕らえて、違法な手段を講じてでも税負担を減らすことを良しとすると、そういうような風潮が広がってきているという指摘もございました。
 適正な申告と納税が企業の社会的責任の基本だという意識が、どうも企業経営者に十分ではないのではないかと、こういうような発言もございまして、同時にまた、企業のガバナンスがまず問われるべきではないかと、こういうような議論もございました。企業経営者が租税回避や脱税スキームの採用を拒まずに、結果的に脱税企業といったイメージを持たれて、企業の社会的な信用を失墜するようでは、やはり経営者として失格ではないかと、そういう議論もあったところでございます。
 しかしながら、多国籍化した企業にとりましては、本社や親会社の所在地国も含めまして、特定の国とのつながりや、あるいは社会的責任の意識が次第に希薄になってきているのではないかというような懸念も、各国の幹部から指摘があったところでございます。
 また、ヨーロッパの国の場合には、コンプライアンスの問題について、やや複雑な背景もあるようでございまして、例えば東欧諸国などのように、長年社会主義の制度の下で暮らしてきた中高年層の間には、国に対する一種の不信感が根強く存在していて、納税に対する意識が極めて低いというような問題もあるようでございます。また、ヨーロッパの場合、特に若年層、若者の失業率が非常に高いということで、一時的な仕事で収入を得ているケースが多いために、若い人たちの納税意識がなかなか高まらないといった事情もあるようでございます。
 こうした事情のもとで、納税道義の向上が各国とも共通の課題になっているわけでございます。アメリカなどでは、租税回避などの不正に厳しく対処するということで、納税者間に不公平感を高めないということが非常に重要だということを強く言っておりました。脱税などに対する取り締まりの強化が、最大の納税者サービスだと、こういう考え方でございます。
 また、納税者や国民一般に納税の意義とか税務行政の主旨について理解を深めるということも、もちろん多くの国で重要だというふうに考えられております。特に世論に対するメディアの影響力に注目しまして、メディアとの関係に留意をしているという税務当局が少なくないようでございます。
 しかしながら、もちろんメディアが当局の期待するとおりに報道をしてくれるわけではございません。イギリスの関係者が言っておりましたけれども、「90%の納税者が適正に納税してくれている。」という調査結果を提供しても、記事になりますと「10%もの納税者が不正を行っている。」と、そういう見出しになることもあるようでございます。
 しかしながら、各国とも税務当局の幹部が率先してメディアとの関係を重視して、守秘義務との関係で許される範囲におきまして、報道関係者との協力関係の改善に努めているようでございます。
 それからまた、将来の納税者の納税道義を改善するという趣旨から、最近、租税教育について関心が高まってきているようでございます。
 日本では御案内のとおり、従来から高校生あるいは中学生を対象としまして、租税教育の機会をつくってございます。具体的には税務関係の教材とか資料を学校へ提供したり、あるいは社会科の先生を中心に毎年夏にセミナーを開催したりしております。こうした日本の取組についても、かなりの国から関心が示されたところでございます。
 ただ、日本の場合も、学校教育の中でどの程度租税教育に時間やあるいは手間を割いてくれるかというのは、学校やあるいは先生方の理解にかかっている部分もございまして、今後の課題もまだまだ少なくないと思われるところでございます。
 次に、税務行政の効果的、効率的運営について触れたいと思います。多くの国で、やはり税務行政についても、その運営の効率性、実行性につきまして、説明責任が問われているわけでございます。
 我が国でも、平成13年度から実績評価制度、政策評価制度を導入しまして、政策目標を明確にして、その目標に対してどの程度実現ができたのか、事務年度ごとに評価をされているわけでございますが、我が国以外の主要国におきましても、同様な制度が存在して、納税者や国民一般に対して税務行政の効果的な運営について説明責任を全うするという努力がなされているようでございます。
 ヨーロッパ諸国などでは、毎年年次報告書を作成しまして、その中で実績目標とその達成度を客観的に示している国もあるようでございます。
 中身を見ますと、国によってかなり違いますけれども、表やグラフを中心にしまして、大変カラフルで分かりやすいものが増えてきているようでございます。
 また、税務行政の効果的、効率的運営という意味では、システム化が各国共通の課題となってきているようでございまして、特にシンガポールは、行政のシステム化に大変力を入れておりまして、とりわけ税務分野では電子申告の普及に力を入れているようでございます。
 シンガポールでは、電子申告は1998年に導入されまして、2003年度では既に6割前後の納税者が電子的に申告を行っているということでございました。
 シンガポールでは、電子申告を普及させるために、いろいろ広報活動をもちろん行っているわけでありますが、同時にラッキードローと呼ばれます一種の抽選券制度といいますか、そういう当たりくじ制度を導入しまして、電子申告を選択すると抽選券がもらえる、更に申告期間中に早期に申告を済ませますと、抽選券がたくさんもらえる、そういうようなインセンティブを与えまして、電子申告により早期申告を促進しているようでございます。ちなみに1等は2万シンガポールドルということでございまして、大体150万円ぐらいです。1本でございますけれども、更に、2等、3等、4等ということになっておりまして、最近伺いしましたら、2万ドルが5万ドルに引き上げられたということで、かなりそういう抽選券の効果が高いようであります。
 それから、シンガポールでは、企業の給与所得の支払データ等のシステムと国税のシステムとがリンクしておりまして、例えば給与所得者が電子申告を行う場合に、自分でデータを入力しなくても、納税者番号を入れますと自分の給与所得や税額が画面に自動的に、システム的に出てくると、こういう形になっております。
 また、金融機関の支払う利子所得などについても、システム的に入力されておりますので、非常に効率的に活用されております。反面、システム問題、データ処理等の問題が出ますと大きなトラブルになりますので、システム管理をかなり厳しくやっているようなことでございました。
 我が国でも、先ほど課税部長から話がありましたように、本年の確定申告につきまして名古屋国税局から電子申告が開始されました。また本年半ばから全国で可能になると思います。
 最後に、納税者とのコミュニケーションに関する議論を紹介しておきたいと思います。税務行政を円滑に実施していく上で、納税者、あるいは国民一般の理解と支援が不可欠なわけでございます。
 そのために各国とも民間の専門家のいろいろな御助言をいただいている。具体的にはパンフレットの説明の文書を分かりやすくしているとか、あるいはレイアウトやデザインを工夫したりとか、あるいはビデオなどの視覚媒体を使って、いろいろな層に幅広く分かりやすい形で情報を提供していくということが、各国で行われているところでございます。
 また、納税者ごとにそれぞれニーズが異なりますし、それからバックグラウンドの知識も違いますので、納税者のニーズをきちっと把握して、それに合った情報提供の仕方、あるいは内容を工夫するということも、各国共通の課題になっているようでございます。そのために日本の国税モニターのような制度を有している国もございますし、あるいは専門家にお願いして、一種のアンケート調査を行って、一般の方のニーズを把握をするということもやっているようでございます。
 また、日本の各種税務協力団体の役割というのは、かなり国際的にもユニークなようでございまして、税理士さんや弁護士さん、あるいは会計士さんといったような専門家の方と税務当局とが意見交換を行うということは、かなりの国でやられているようでございますけれども、納税者自らの組織が税務当局といろいろ話をしたり、あるいは確定申告の時期に協力を行うということは、余りほかの国では見られていないようでございます。
 また、個人を含めまして一般の納税者に対しましては、やはりインターネットの活用が大きな課題になっているようでございまして、納税者の個別のニーズに応じたいろいろな情報提供、コミュニケーションを図っているというものでございます。
 最後に、今後は当局から納税者に一方的に情報を流すということではなくて、コミュニケーションという形で双方向の関係を構築していくということが、各国の税務当局にとってますます重要になってくるのではないかと思います。広報その他につきましては、この後、総務課長から報告があると思いますが、いずれにしましても、こうしたコミュニケーションの重要性については各国税務当局共通の認識でございまして、日本の国税庁の場合も、広報広聴官という職名になっておりますけれど、いわばそういう双方向のコミュニケーションを意識した観点から、そういった名前になっているのだろうと思います。
 また、こうした国税審議会の場を通じまして、それぞれの分野の専門家の皆様方から大変貴重な御意見や御質問をいただくことも、今後の税務行政にとって大変重要なことではないかと思っている次第でございます。かなり雑駁な説明になりましたが、以上で国際会議における主な議論の説明を終わります。

会長
 それでは最後に広報について、総務課長から。

総務課長
 国税の広報について、私から御説明いたします。資料4の1ページ目を御覧いただければと思います。まず、この国税の広報、どういった目標を持って実施しておるかということでございますけれども、これにつきましては、資料の右側にございますけれども、国税庁における実績の評価、これは平成13年度からスタートしております評価の制度でございますけれども、この実績の評価の制度の中で、業績目標として明記されているわけでございます。
 御紹介いたしますと、ここにございますように、業績目標の1−1−1では、「法令解釈及び事務手続等について納税者に分かりやすく的確に周知、広報」するということになっておりまして、具体的にはここにございますようにホームページの充実でありますとか、法令解釈通達の掲載、タックスアンサーの充実などにつきまして、具体的に数値目標などを作りまして、実績評価をしておるということでございます。
 それから、業績目標の1−1−2を見ていただきますと、「納税者からの問い合わせ及び相談に対して迅速かつ的確に対応」するということが書かれておりまして、具体的には、税務相談室における面接相談、電話相談の充実でありますとか、法令適用に関する納税者利便の一層の向上、ここは何を言っているかといいますと、法令の適用に関する納税者からの照会に対しては迅速に対応するということとか、事前照会に対する文書回答制度というものがございますけれども、こういったものを充実するとか、こういったことをここで言っているわけでございますけれども、それから所得税等の申告相談の充実、こういったことを具体的に数値目標も掲げまして、実績評価をしておるということでございます。
 それから、業績目標1−1−3は、「租税の役割及び税務行政について幅広い理解及び協力を得るため、関係省庁等及び国民各層からの幅広い協力及び参加の確保」をするということでございまして、具体的には広聴事務の充実でありますとか、租税教育の充実、それから、税制改正、年末調整の説明会でございますけれども、こういったものを積極的に開催する。地方公共団体との協力体制の推進、公開講座の開設と、こういったことを具体的に進めるということになっております。
 次のページを御覧いただきたいと思いますが、こうした国税の広報につきましては、実際に税務署にお越しいただいた方にアンケートをとっておりまして、国税の広報に対する全体的な印象はどうでしょうかといったクエスチョネアに対して、お答えをお願いしておるわけでございます。1から5段階に分けて評価をいただきまして、上位二つの区分の数字を足しまして我々の実績評価の数字としております。御覧いただきますように、この3年間高い評価をいただいている割合は、約3割という状況で推移しております。
 次のページをお願いいたします。この表は非常に細かくて恐縮でございますが、これは広報の現状と今後の方向性といったものにつきまして、広報の対象、左から申し上げますと、どういった方を対象に広報を打つかと。それから広報の内容、媒体、一番右には施策評価と、これは広聴事務に関するものでございます。こういったくくりで整理したものでございます。全部は御説明いたしませんが、例えば個人向けの広報で申し上げますと、個人に対しましては、広報の内容のところに書いてございますけれども、所得税申告書作成方法でありますとか、申告期限、それから年末調整の手続などについての周知をするという広報をやっておりますし、また電子申告、電子納税、ホームページ申告書作成コーナーをお使いいただいたらどうでしょうかといった、こういう利用勧奨的な広報もやっております。
 それから、青色申告、消費税の滞納防止に関する啓発的な広報もやっておると。こういった広報を、次の「媒体」でございますけれど、これは当たり前のことが書いてあるのですが、上から税務相談でありますとか、電話、説明会、印刷物、ホームページ、新聞広告、記者発表等々、いろいろな媒体を使って、これを組み合わせてやっておるということです。
 それから、外部団体を通じて、例えば関係民間団体でありますとか、市町村等と協力して実施しているものもございます。それから、租税教育推進協議会、これは教育関係者、自治体、それから国税で組織しているものでございますけれども、こういったところを通じまして、教育関係者に対して租税教育の推進などをお願いしていると、こういった広報もやっております。
 それから、一番右は施策の評価と書いてございますけれど、これは逆方向に、要するに国税庁がやっている施策について、納税者の皆様方はどういうふうに評価しているのですかということを広く聴くという広聴事務でございまして、具体的には現在、約2,700人のモニターをお願いしておりまして、随時いろいろな意見を聴かせていただいております。
 それから、ホームページには、意見要望コーナーというのを設けておりまして、ここを通じまして、皆様の意見を聴くということをしております。
 それで今後の方向、我々が今、今後の方向として考えているものをこのページの下にちょっと書いてございますけれど、「納税者の態様に応じた必要な情報の提供」と書いてございますけれども、今後の方向としては、セグメンテーションということをよく言われますが、要するに広報の対象とする方を細分して、例えば個人の納税者ですと年金受給者、個人事業者、サラリーマン等と細分化して、それぞれの方に合った、的を絞った広報をやっていく、こういうことがあります。
 それから、「一元的広報」と書いてございますけれども、これは何を言っているかと申し上げますと、現在、例えば申告期限を周知するというポスターなどは、国税庁で全国一律のポスターを作っておりますけれど、それに加えまして、各局独自に局の実情に応じた格好でまた別のポスターをつくっているという状況にございますので、このあたりは一元化、集約化して、メリハリのついた広報をやっていく必要があるのではないか。
 それから、「わかりやすい広報」というのは、基本的に現在、広報は我々役人が企画して、書いておるわけでございますけれども、やはりその分野の専門家のエキスパティーズをもっと活用して、やっていく必要があるのではないか。もっと分かりやすい広報を考えていくべきではないかということでございます。
 それから、「ITの活用」ということでございますけれども、これは利用状況から見まして、ホームページの拡充、ホームページをもっと充実していくということがポイントであろうと思いますので、その方向でやっていきたいということでございます。
 最後に次のページでございますけれど、ホームページの利用状況を簡単に御覧いただきたいと思います。ホームページ、平成10年11月にスタートしておりますが、利用状況を見ていただきますと、5年前の平成11年には約80万件に過ぎなかったものが、平成15年では1,000万件を超えておるという状況でございます。
 特に利用が多い項目は、下にございますけれども、タックスアンサー、路線価図、税務手続きの案内、所得税の確定申告の手引き、法令解釈通達でございます。
 また昨年からは、先ほど課税部長からございましたけれども、このホームページを通じまして、申告書を実際作成することができるようになって、大変多くの方から御利用いただいている状況でございます。
 資料の最後には、実際のホームページのトップのところを抜き刷りしてございます。時間の関係で説明は省略させていただきますけれども、委員の先生方にもぜひ御利用いただきまして、お気付きの点等がございましたら、御意見、御指導等を賜ればと思います。
 以上でございます。

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