酒税企画官
 次の参考資料の3には、酒類業あるいは酒類業界に関する資料をまとめてあります。
 まず、3−1の表は、経済産業省で発表しています、商業統計による飲食料品の業種別の小売店舗数の推移でございます。業種区分は、品目別の売上金額が最も多いもので区分されています。各種小売業からコンビニエンスストアに業態を変えた場合には、通常、一番下にありますその他の飲食料品小売業のうちの料理品小売業に分類されることが多いものと思われます。この表によりますと、専門的な各種小売業がこの30年間の間にほぼ半減し、これに代わってその他の飲食料品小売業、すなわちコンビニエンスストアなどが大幅に増加していることがおわかりいただけるかと思います。なお、酒類小売業につきましては、酒販免許制度などもあって、この変化のスピードが遅いということ、かつて許可制がとられておりました米穀類の小売業についても、同様のことが言えるのではないかと思います。
 その次の資料を見ていただきますと、これは酒の流通上の商慣行をまとめたものです。一般的な商慣行のうち、酒類業界におきまして顕著に見られるものということで掲げております。特にビール業界で顕著な事例ですけれども、特約店制による卸売業の系列化、あるいは統制価格のなごりでもある建値制、新製品投入の激化などによる返品制が、酒類業界でも顕著に見られる商慣行と言えます。それぞれの商慣行のメリット・デメリットにつきましては、この表にまとめたようなことが言われておりますが、公正かつ透明性のある商慣行、及び合理的かつ効率的な流通システムの構築のための検討が求められているところでございます。
 次のページで、酒類業界の情報ネットワーク化の状況をまとめてあります。これからは、やはり情報をいかに速く正確にキャッチして、これを生かしていくかと、効率化を図っていくかということが企業にとって大事になってきています。酒類業界におきましては、中央酒類審議会の報告を踏まえまして、中小企業が大多数を占める酒類業界の情報化の推進に努めてきています。
 一番上にあります酒類・加工食品データベースセンターは、本懇談会のメンバーである井岸さんが専務理事を務めています社団法人日本加工食品卸協会と、私どもの任意団体であります酒類業中央団体連絡協議会とが国の補助を受けて立ち上げたものですが、残念ながらいまだ十分に活用されている状況にあるとは言えません。その下にある酒類流通情報サービスセンターは、酒類卸売業界と酒類小売業界が共同でつくった会社でありまして、各種システムを開発しまして、現在、その普及のための啓発活動に取り組んでいるところでございます。
 次の資料でございます。中心市街地の活性化対策をまとめたものでございます。この法律は、平成10年に、空洞化している中心市街地の活性化を図るために新しく制定された法律でございます。具体的な支援の内容は、空き店舗を新規開業者向けのチャレンジショップや、あるいはイベント会場等に活用する事業に対しての補助金による支援だとか、中心市街地への出店または店舗改装に対する低利融資等になっております。
 次のページでございます。清酒を中心とした酒づくり及び飲酒の文化史の概要をまとめたものでございます。お米は、縄文時代末期に伝来したという説が有力のようでございますが、酒の歴史は大変古く、また、米を主食とする日本人の生活に密接にかかわってきたことが窺えるかと思います。右端の方にあります飛鳥時代の魚酒禁止令というのは、農民に対して酒を飲むのを禁止したものです。鎌倉時代の沽酒禁制というのは、値段をつけて酒を売る、売買することを禁止した制度のようでございます。また後でじっくり見ていただければと思います。
 それから、次のページですが、これは総務省の家計調査年報からまとめた1世帯当たりの年間の品目別支出金額の推移でございます。昭和55年から平成12年までの20年間の流れを見てみますと、グラフにはなっていませんけれども、食料費は平成2年の103万円をピークにその後減少傾向にありますが、昭和55年と比較すると12%増となっています。酒類は、この△ですが、食料費と同様の動きを示しています。しかし、日本人の主食であります、この□で示されている米の支出額は、これらより5年早い昭和60年にピークを迎えまして、その後、急激に支出額が減少し、昭和55年には酒類の6割以上も多く支出されていたものが、平成7年には酒類と肩を並べまして、平成12年には逆に酒類よりも2割近く支出額が減少しているという状況になっています。こうしたらことから見ても、酒類は消費生活において大きなウエイトを占めていると言えると思います。
 次のページは、やはり総務省の家計調査年報からまとめた、1世帯当たりの年間の酒類の支出額の推移を種類別に見たものでございます。昭和55年から平成12年までの20年間で、多くの酒類は支出金額が増加しております。しかし、ウイスキーは70%、清酒は35%も減少しております。また、種類別の構成比を見てみますと、清酒は15ポイント、ウイスキーは12ポイントも減少しており、逆にビール・発泡酒は、このグラフの真ん中の2つのところですけれども、ここは16ポイント増加して、構成比も60%に届こうとしています。清酒は多数の中小企業が市場を形成しておりまして、このような状況を業界は大変深刻に受けとめております。
 駆け足になりましたが、以上で参考資料の説明を終わらせていただきます。

奥村座長
 私どもが非常に多くのことをお尋ねして、範囲が広いところをよくお調べいただいてありがとうございました。
 今、ご報告いただいたことについてのご議論もあろうかと思いますが、引き続いて、私たちが中心課題にしようとしている酒類の小売業にかかわる説明をいただいて、その後、2つのご報告をあわせてご議論・ご検討をいただくことにしたいと思います。

大柳課長補佐
 説明資料の1ページの方から説明させていただきます。まず、1ページ目は、酒類小売業免許に係る規制緩和の経緯を示したものです。今現在進行中の規制緩和は10年3月の「規制緩和3か年計画」という閣議決定に基づくものなのですが、それ以前の段階から、いろいろ政府部内で酒類小売免許についての指摘がなされてきておりました。政府の過去の規制緩和計画におきましては、酒類の小売免許の需給調整規制について、まず、消費者利便を阻害し、業界の近代化、構造改革の遅れなどの弊害を招いていると指摘されてきておりました。同時に、酒税が蔵出税としての性格を有することから、小売段階までは免許制は不要ではないか、とか、社会規制目的実現のために需給調整規制を存置する必要性は疑わしいなどといったことも指摘されておりました。これらの指摘を踏まえて、中央酒類審議会の方から平成9年6月に報告が出され、距離規制については早期に廃止し、かつ、人口基準についても段階的に緩和すべきであるとされました。同報告では、社会的規制についても、教育や業界の自主取組を積極的に推進すべきであり、販売に対して新たな規制を導入することについては、飲酒問題の実態、事業者等関係者の自主的な取組状況を踏まえつつ、規制の必要性、その効果、費用について総合的な検討を行うべきということも指摘されています。この報告を受けまして、平成9年の行革委員会最終意見が出され、平成10年3月に「規制緩和3か年計画」の閣議決定がなされたわけでございます。
 この「規制緩和3カ年計画」においては、人口基準は平成10年9月から段階的に緩和して、平成15年9月に廃止し、距離基準については、平成12年9月に廃止することとされました。その後、平成12年8月に追加的な閣議決定がなされまして、平成12年9月1日に実施すべきこととされていた距離基準の廃止、それから人口基準の12年度の1段階の緩和については、4カ月遅れで平成13年1月1日から実施することとされました。この間におきましては、未成年者飲酒禁止法の改正ですとか、酒税法の免許取消要件の追加、それから行政としてのさまざまな取組がなされたところです。
 続きまして、2ページの小売業免許場の推移・退出入の状況に移ります。これは、法令上酒類小売業が行えるということになっている免許者の場数を示したものです。△の折れ線グラフは、現在人口基準の段階的緩和を進めている一般免許場数の推移で、下の◆の折れ線グラフは特殊免許、これは駅の構内の売店ですとか、観光地の売店に対して付与する免許ですが、そういったものの場数の推移を示しています。そして一般免許場数と特殊免許場数を加えたものが、一番上の●の折れ線グラフです。毎年の参入数は棒グラフで示してありますが、このトレンドについて若干具体的に説明しますと、下にも注を付けておりますが、昭和62年には駅構内免許を新設いたしました関係で特殊免許が増加し、平成元年度には、現在の人口基準を初めて導入した関係で一般免許場数が増加しています。平成8年、9年におきましては、みりん小売業免許というものを導入した関係で特殊免許場数が増加しております。平成10年度、11年度は、規制緩和3カ年計画がスタートしており、それに基づいて一般場数が増加しているということですね。ただ、平成12年度について参入数が少なく表示されております。これはそもそも、こちらの資料が会計年度ベースのものであって13年3月現在の計数を持ってきているわけですが、我々ども、免許付与は免許年度という9月から翌8月までの単位で行っており、かつ平成12免許年度の開始時期が平成12年8月の追加閣議決定で4カ月間開始時期が遅れましたので、ここの計数には平成12免許年度の参入数が部分的にしか反映されていないということによるものでございます。
 次の3ページの資料は、東京都における平成13免許年度の免許枠(新規参入枠)の状況を模式図的に表したものです。現在の人口基準を適用した結果、どの程度の参入可能件数があり、どの程度の余剰免許枠数、我々はこれを「空枠」と呼んでいますが、が発生しているかを示しています。白抜きの部分は全く免許枠が出ていないという地域でして、東京都におきましては、まず、都心部では免許枠が発生していないということがいえます。これは、都心部におきましては、もともと夜間人口が少ないという状況がありますので、人口基準をそのまま使うと免許の枠が出ないということになるということです。また、現在、小売販売地域というものがございますが、小売販売地域は税務署の中の市・区・郡としておりまして、地域の設定が比較的小さくなっているということもあろうかと思います。更に、免許の基準が、先程説明しましたように過去何度か変更されてきていることもありますので、そのような地域においては店舗数が既に多いというような状況もあると思います。
 他方、免許の枠が発生しているけれども、参入がないというようなところもございます。例えば、空枠発生状況の2の印がついているところが図表中にありますが、これは多摩市でございます。多摩市につきましては、かなり免許枠が余っておりまして、35の新規免許枠のうち、実際には31が空枠となっております。そのほか空枠が発生している地域としましては、2の印がついております東久留米市があり、こちらについては、空枠が6枠生じています。そのほか小金井市、稲城市においても、空枠が発生しているという状況でございます。これら空枠が出ているという地域は、既に供給過剰になっているということもあろうかと思いますが、逆に新たに出店する者につきましては魅力が薄く、ある意味では市場原理がワークしているというようなことも言えるのではなかろうかと思います。
 次の4ページは、千葉県における状況をみたものですが、千葉市周辺では、職住接近ということ、東京のベッドタウンになっていること等から夜間人口も多く、免許枠が発生しているということが伺えます。千葉市は、実際には、区が個別の小売販売地域とされているわけですけれども、それらの中には、逆に免許枠が余っているところも存在しています。また、逆に今度は東京都心から離れた房総半島の下の方にまいりますと、免許枠が全く発生しておりません。人口の増減がほとんどなく、かつ、人口がそもそも少ない状況にあるということです。
 現行では、小売販売地域を税務署管轄区域内の市・区・郡としており、その中で免許枠を算定し、かつその地域の中での移転を認めるという取扱いをしております。隣の酒屋との距離が何メートル離れていなければならないとする距離基準については既に平成13年1月に廃止しておるわけですが、まだ実際には、この比較的小さな小売販売地域を単位として新規免許枠を算定し、かつ、その小売販売地域内内部でのみ免許場の移転を可能としていますので、現在においてもまだある程度距離規制らしきものが存在しているというのが実情でございます。ただ、モータリゼーションの進展と、消費傾向の多様化によりまして、小売販売地域の拡大の圧力もかなり高まってきており、我々といたしましても、平成元年、平成10年、平成11年と小売販売地域を拡大してきているわけなのですが、小売販売地域の設定について今後どうしていくべきかという問題は残ります。現在の規制緩和3カ年計画によりますと、平成15年の9月で人口基準が撤廃されることから、こうした人口基準を前提とした小売販売地域というものは全く撤廃され、すべての地域で免許取得が原則的に自由になり、かつ、移転も自由ということになります。こうしたことについて今後どのようにしていくかということも、これからの課題の一つになりうると考えられます。
 次の5ページは、平成13年12月の与党3党の平成14年度税制改正大綱の中に「酒販免許制度についてはこれを堅持し、距離基準、人口基準が廃止された段階における免許の付与基準について基本的な検討を進める」という記述が盛り込まれましたが、その部分の抜粋でございます。
 6ページの資料は、他の業界における需給調整規制にはどういったものがあるのか、その内容と最近の動向を示したものでございます。各項目は、規制緩和推進3カ年計画におきまして、行政分野横断的な検討が必要、とされた事項ですが、これらの中にも、その後廃止されたもの、まだ自由競争を導入すべき時期にはなっていないので今後継続的に検討していくべきとされているもの、いろいろございます。内容をご覧頂きたいと思います。

酒税企画官
 それでは、次の主な個別間接税の課税物品との比較についてご説明します。現在、個別に税が課されている主な物品としては、酒類のほか、たばこ及びガソリンがあります。これらの物品に課される税は、それぞれ財政上重要な地位を占めておりまして、平成12年度決算額で、酒税は約1兆8,000億円、それからたばこ税が、地方たばこ消費税を加えて約2兆3,000億円、それから揮発油税・地方道路税は約3兆円に昇っています。一番上のところでございます。これらの物資につきましては、それぞれの目的に従い、製造あるいは販売につきまして規制が行われています。酒類につきましては、酒税保全の観点から、酒税法により製造から小売業まで免許制がしかれ、たばこにつきましては、たばこ事業法により、製造については、国産葉たばこ耕作者の保護の観点からJTの製造独占等、卸につきましては、流通秩序の維持の観点から登録制。小売につきましては、零細小売業者に対する激変緩和及び未成年者の喫煙防止という社会的管理目的から許可制が、ガソリンにつきましては、石油の安定的かつ低廉な供給の確保の観点から、石油業法により、メーカーに許可制、卸に届け出制。それから、適正な品質なものを安定的に供給するというために、揮発油等の品質の確保等に関する法律により、ガソリンスタンドに登録制がとられています。これら3つの物品は、いずれも日常的に消費される物品であることに加えまして、酒やたばこのように嗜好品で健康上も配慮が必要だと、あるいはガソリンのように危険物だというふうな商品特性を有しております。また、毎年多量に生産され、流通・消費されるものですから、国民の生活に非常にかかわりの深い物品であると言えます。このため、そこに書いてありますように、酒・たばこについては社会的な影響も大きく、特に酒類は致酔性を有するということから、交通の取り締まりだとか、警察目的からの社会的な管理も求められているところであります。一番下に、これらの業界に深く関連する主な法令を幾つか掲げましたが、酒税法も加えた方がより適切だったかもしれません。
 次の8ページを開いてください。酒類の取引の概要でございます。酒税は、間接税で蔵出課税方式というのをとっております。酒税法が最終的な担税者として予定している消費者への酒類の販売代金、これは酒税相当額が含まれているわけですけれども、これがメーカーに還流するシステムが機能しなければ、小売、卸売り、メーカーのいずれかの段階の企業が酒税相当額を負担しなければならなく、法の期待しているところと異なることになります。また、特に製造期間が限られる中小の清酒だとかしょうちゅう乙類、果実酒などのメーカーは、一時期に、米やイモ、ブドウなどの原料の調達資金も必要となり、大変資金繰りが苦しいところでございます。それに加えて、ここにありますように、一般的な酒類業界の取引慣行として、業者間の酒類の取引に当たっては掛け売りが一般的でございます。そのため、卸、小売業者への販売代金がメーカーに還流するシステムが円滑に機能しない場合には、メーカーはたちまち納税資金に窮するというふうなことが考えられます。こうしたことから、例えば一般に特約店に取引、保証金等を提供させているビールメーカーにおいても、最近は酒類市場において買い手側が大変、力をつけてきていることから、メーカー、卸売業者ともに、組織小売業や量販店等からの激しい値下げだとか、あるいはリベートの要請に厳しい体力勝負を強いられている、あるいは、みずから体力勝負を挑んでいるというのが現状とも言われています。消費不況、規制緩和の流れの中、メーカーのシェア競争とも相まって、酒類市場は激烈な販売競争の真っただ中にあるということが言えます。
 このような中、民間信用調査会社の帝国データバンクによりますと、酒類販売業者の倒産が、昨年ですと約165件ございまして、負債総額408億円ということで、一昨年に比べると大型化してきているというふうなことが出ております。こういう中で、流通業者の倒産が即メーカーの倒産や酒税の滞納につながったというような、顕著な事例は把握していませんけれども、料飲店や小売業者、卸売業者の倒産、経営不振が、じわじわとボディーブローのように、川上の小売業者、卸売業者、メーカーにダメージを与えていると言われておりまして、酒類の消費量の拡大が見込めない中で、供給側の酒販店数が急増することは、それに拍車をかけるのではないかというふうな見方もあるところでございます。
 最後になりますけれども、資料の9ページは、国別のアルコール関連問題の社会的費用の表でございます。この表は、1993年にまとめられました我が国のアルコール関連問題の現状をもとに、当方で表にしたものでございます。推計に当たっての資料や内訳品目の説明は、次のページにありますけれども、これによりますと、我が国における社会的費用は6兆7,000億円と試算されています。また、隣に米国がありますが、米国ですと9兆円というふうに試算されます。こうした試算があるのなら、逆にストレスの解消や明日への活力等、酒類のプラス面の、効用としての金額の試算があってもいいのではないかというふうに思うわけですけれども、我々の知るところでは、特別な試算はないようでございます。なお、アメリカ等諸外国の同費用の円換算は、最近の為替レートを用いて当方で換算したものですけれども、米国の人口が我が国の約2倍ですが、この社会的費用は約1.4倍ということになっていまして、数字的には、我が国の方が深刻な状況にあるのではないかということが言えるのではないかと思います。
 以上で説明を終わらせていただきます。

大柳課長補佐
 すみません、お手元に新聞記事を配付しておりますので、ちらの説明を若干させて頂きたいと思います。これらの新聞記事は、酒類販売に関連して発生した問題でして、酒類販売に対する社会的な要請を考える参考例として掲げさせていただいきました。
 まず、1番目の「ホームで酒販売自粛」という記事ですが、これは昨年の1月に発生した山手線の新大久保駅での転落事故の話です。この事故では、最初に線路に転落した方がホームで酒を購入して飲んでいたのではないかということで、ホームで酒を販売するというのは問題であるのではないか、という話でございます。我々どもは、乗降客とか旅客の便宜のためにキヨスク等に駅構内免許という特殊免許を出しているところです。しかし、ホーム等では事故の危険性があるから免許を付与すべきではないという必要性があるとしても、ホーム等で酒類販売を希望する者から仮に新規に免許、一般・特殊を含みますが、の申請があったときに、このような事故が発生する可能性があるからという理由だけで、免許を拒否するとすることは、現在の法制上は、なかなか困難な状況にございます。
 次の2つは交通犯罪抑止に向けた動きを示す記事です。1つ目は、「危険運転致死傷罪」という新たな犯罪類型が昨年の刑法改正で新設され、その罰則が従来の業務上過失致死に比べてかなり引き上げられているというものでございます。次は、飲酒による交通事故を減少させるため、酒気帯び運転に該当するかどうかの血中・呼気中アルコール濃度の基準をかなり引き下げることを内容とした道交法施行令の改正案が警察庁から示されているという記事でございます。
 次のページは、飲酒運転による交通事故の話で、フェリー内で購入した酒を飲んだ利用客、トラックの運転手ですけれども、が下船後運転をして事故を発生させたという問題です。現在、我々は、フェリーの乗客等の便宜を図るという見地から、フェリー内・船舶内部という閉鎖空間におきます酒類販売に対して特殊免許を出しているわけですが、こうした場所で酒類を販売すべきではないという社会的な要請もかなり強くなってきております。しかしながら、酒税法上の免許の目的は酒税の保全に限定されておりますので、こういった飲酒による交通事故防止・減少ということを実現する目的で免許を運用することは現在の法制上はなかなかできないということになっております。従いまして、免許をそうした目的で運用できないことが果たして適当かというような問題意識も投げかけられているところでございます。

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