寺内酒税課長
 類似する多数のいろいろな商品が販売されているわけであります。
 この資料の課税移出数量をご覧いただきますと、これは日本酒造組合中央会が今年の1月に再調査したものでございますが、平成11年度以降、純米酒の課税移出数量の方は毎年1割減と減少してきております。他方で、この「米だけの酒」の方は、平成12年度、43%、平成13年度、32%と、大幅に増加しております。平成13年度の数字を見ますと、1万3,777キロリットルということで、純米酒の移出数量の、今や4分の1まで市場規模が拡大しております。
 また、下の参考の方にございますが、「米だけの酒」は、平成11年以降、最初は灘地方の大手の清酒メーカーを中心として発売されておりましたが、その後全国の中小メーカーでも発売されるようになり、製造者数も年々増加いたしております。
 このように「米だけの酒」といいますものは、今や市場といいますか、消費者に純米酒と変わらないイメージで受け入れられているわけでございます。米だけからつくった清酒で、市場が余り純米酒と品質が変わらないと評価していると思われる清酒が「純米酒」と「米だけの酒」というそれぞれの名称で市場に混在していると。このことについてどう考えていくか、どう整理していくべきかという問題が出てきているわけでございます。その結果、「純米酒」と「米だけの酒」のそれぞれの内容とか区分が消費者にとってわかりにくいと。また、製造者にとっても、その特徴、違いにつきまして積極的かつ客観的な説明が難しくなってきているという状況もあるわけでございます。
 次に13ページの方をお開きいただきまして、資料8というところに、別の話としまして、「精米歩合を表示している特定名称酒の状況」をつけております。この資料は、平成12年1月から14年12月までの間に、酒類製造業者から税務署に提出されましたラベル等におきまして、精米歩合、つまり玄米からどのぐらいぬかとか胚芽とかを取り除いたかと、残っている部分の度合いでございますが、その精米歩合を表示している特定名称酒、これを酒類ごとに割合等をまとめたものでございます。
 特定名称酒全体の精米歩合割合といいますのは、その表の、上の方の表の右隅にございますが、37.1%と、約4割に達しております。酒類ごとに見ますと、「純米大吟醸酒」が50.5%で一番割合が高いと。次いで「大吟醸酒」が45.4%と、「純米吟醸酒」が42.0%となっております。
 この精米歩合を表示しております特定名称酒の割合というのは、すべての酒類におきまして年々上昇してきております。このことからも、精米歩合の表示というのは今や消費者がこの特定名称酒を購入する際の一つの判断基準となっており、また、製造業者もそれを意識して表示をしているということが窺われるわけでございます。
 この表の下の方にあります、参考の表でございますが、これは前回申し上げました、「純米酒」と「米だけの酒」の70%という基準を取り払うということで、他方で、「純米酒」、「純米大吟醸酒」、「純米吟醸酒」のすべてに、精米歩合を表示することを義務づけてはどうかという話を申し上げましたが、その場合の精米歩合割合といいますか、表示割合を示したものでございます。この場合、特定名称酒の、全体の68.9%、約7割に精米歩合が表示されるということになります。
 それでは、お手数ですが、11ページの方の資料6をご覧いただきたいと思います。これは清酒の製法品質基準、先ほど文書の方で表示基準そのものをご覧いただきましたが、図でお示ししたものでございます。
 まず、先ほど来、申し上げております、上の部分にあります、精米歩合でございます。これは白米の玄米に対する重量の割合であります。白米といいますと、いわゆる玄米からぬかとか胚芽の表層部を取り除いた状態の米でございます。その割合が精米歩合と。米の表層部あるいは胚芽等にはたんぱく質や脂肪、ビタミン等が多く含まれております。これは清酒の製造に必要な成分でございますけれども、この表層部の部分が多過ぎますと、清酒の香味あるいは色合いというか、色沢を劣化させると。
そこで、清酒の原料として使うときには、精米といたしまして、これらの成分を少なくした白米を使用しているわけでございます。一般の家庭が御飯のお米として使っておりますのは、精米歩合は大体92%程度でございます。
 なお、特定名称酒に使用できます白米でございますが、上の方に書いてございます、農産物検査法によりまして、3等以上に格付された玄米を精米したものとなっております。これは清酒の原材料として不適当な、いわゆる「くず米」と言われるようなものを除くためでございます。
 左の方の欄に、「醸造アルコール」の量について書いてございます。現行の基準では特定名称酒は、このアルコールの重量が白米の重量の10%を超えないものに限るということになっております。
 この表の中身の方でございますが、先ほど申し上げました吟醸酒の精米歩合60%でございますが、この自主的な基準において長年60%以下としてきたものでございます。この程度の精米をして、いわゆる吟醸づくりと、低温発酵というものをすれば、固有の吟香を持つ吟醸酒として満足できる品質のものが得られると経験的に判断されたということで60%以下とされているものでございます。
 他方、純米酒あるいは本醸造酒として一定の品質を保持するためには、精米歩合は70%以下が適当だとこれまで考えられてきたわけであります。
 したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、米だけでつくった酒でありましても、精米歩合が70%を超えているもの、これは先ほど申し上げたとおり普通酒となるわけであります。「米だけの酒」というのは、現行規定では、ここの普通酒のところに入っているということであります。
 吟醸酒のうち、米、米こうじ及び水のみを原料として製造したものについては純米吟醸酒、それから、吟醸酒のうち、精米歩合が50%以下の白米を原料としたものは純米大吟醸というのがこの表でございます。
 それでは、次に、現在私どもが考えております表示基準の改正素案について御説明いたします。
 恐れ入りますが、別綴じの検討資料の方をご覧ください。
 1ページ目の資料のローマ数字の1の「清酒の製法品質表示基準」改正素案でございます。
 今般の改正は、四つの改正事項と、それに伴う所要の整備を行うこととしております。施行期日は来年の1月1日あたりを予定いたしております。
 まず、1番目の改正事項でございます、純米酒の「製法品質の要件」について、「精米歩合70%以下」というのを削除する。というふうに書かれてございます。この改正内容の背景には、一つには、先ほど申し上げましたように、製造技術等の進歩によりまして、純米酒に匹敵する「米だけの酒」のようなものが製造できるようになったと。市場において、これらが、「純米酒」と「米だけの酒」が混在していると。その内容の違いが消費者にとってわかりにくいと。また、製造者にとっても客観的な説明が難しくなっているということでございます。
 それと二つ目には、清酒の製造技術が著しく進歩を遂げている中で、一般的に精米歩合を上げることが、削れば削るほど、即品質向上につながるという考え方が必ずしも技術革新の中で通用しなくなっていると。むしろ米が原料であるという特徴を生かす、あるいはアピールするということで、各地の生産者によって、特徴のある、特色のある純米酒がつくられるということが求められているということが背景にございます。
 そこで、今回の改正は、これらの観点から純米酒の枠を「米だけの酒」にも広げる方向で改正しようというものでございます。
 2番目の改正事項でございますが、「本表の適用に関する通則」について、「米こうじの定義」及び「特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合が15%以上のものに限る」ということを追加するということでございます。これは特定名称酒につきまして、清酒本来の酒質を確保するために、すべての特定名称酒についてこうじ米の使用割合を白米使用量の15%以上とするということでございます。
 清酒は、こうじによりまして米のでんぷんがぶどう糖に変化する、いわゆる糖化するわけでありますが、この糖化したものが、また、そのブドウ糖が酵母によってアルコールになると、これは発酵でございます、糖化と発酵ということによってつくられると。「並行複発酵」という、ほかの酒類に例のない製造方法によっております。こうじは、その意味で、清酒製造には欠くことのできないものでございます。
 同時に、こうじ菌の代謝物でありますビタミンは、発酵のもとになります酵母の栄養源になると同時に、清酒特有の「うまみ」、「こく」といった味を形成しております。
 このように、こうじは清酒の製造において必ず使用されるわけでありますけれども、今般の改正によりまして、純米酒の精米歩合を外す、あるいは、その他、今後の品質低下を防止するという観点から、特定名称酒全体につきまして、一定の品質を確保するという観点から、このこうじ米の使用割合の要件を設けるということでございます。
 この15%という数値でございますけれども、清酒もろみの糖化発酵というのは、こうじの生産する酵素、アルファアミラーゼあるいはグルコアミラーゼといったようなものの力価、力の価ということでございますが、力価に左右されるということから、通常のこうじでは15%以上を使わないと、これらの酵素力価が不足して糖化発酵がうまくいかない、ということが杜氏の長年の経験からもわかっております。15%以上とすれば、清酒本来の酒質を持つ、一応満足できるお酒ができるということから15%ということにしております。
 3番目の改正事項でございますが、特定名称を表示する清酒については、原材料名の表示の近接する場所に、先ほど申し上げました精米歩合というものを併せて表示することを追加するわけでございます。
 この改正事項につきましては、前回の分科会におきまして、純米酒の精米歩合を廃止すると、一方で、消費者のこれまでの商品選択の判断基準の一つでありました精米歩合が全く無くなってしまうということもどうかと考えられますので、純米酒について新たに精米歩合の表示を義務づけることを考えているものであることを御説明申し上げました。
 その後、国税庁におきまして、特定名称酒の精米歩合の表示状況について調査いたしました。それは先ほど御説明したところでございますが、精米歩合を表示している特定名称酒は年々増加しておりまして、純米酒以外の特定名称酒にも精米歩合表示が行われているケースが増えているということが明らかになりました。平成14年1年間で、先ほどご覧いただきました特定名称酒の約4割に精米歩合の表示がなされているという状況でございました。これは、精米歩合の表示が消費者の商品選択の基準の一つになっていると、それを企業が認識していると、業者が認識しているということでございます。
 したがいまして、今般の改正におきましては、消費者利益の視点に立ちまして、すべての特定名称酒に精米歩合を義務づけるということでございます。
 お手数ですが、参考資料の方の12ページでございますが、資料7というのがございます。これは「米だけの酒」の表示例ということでございます。改正後の基準によって、純米酒に該当する「米だけの酒」と該当しない「米だけの酒」の表示例を示したものでございます。該当しない「米だけの酒」については後ほど御説明します。
 上の表示例の左下の方に、原材料名の表示の近接する場所に精米歩合が表示されております。既にされているものもあるわけでありますが、この精米歩合の表示にあたりましては、できる限り消費者に正確でわかりやすくするという観点から、実際に使用した白米の精米歩合について1%単位で原材料名のところに表示すると。精米歩合の異なる複数の米を使った場合には、精米歩合の一番高いものを表示することとして差し支えないものと考えております。
 この12ページの方を、後ほどもご覧いただきますのでそのままお開きいただきまして、再び検討資料1ページの資料1ですが、最後に4番目の改正事項ということで、「表示禁止事項」ということで、「特定名称以外の清酒について特定名称に類似する用語」を追加するということでございます。なお、併せて、「ただし、第3号に掲げる事項については、当該事項の近接場所に、第4項に規定するポイント以上の大きさで、特定名称の清酒に該当しないことが明確にわかる説明がされている場合には、表示することとして差し支えない。」を加えると、こう書いております。ちょっとわかりにくいのでございますが、これは特定名称酒以外の清酒につきまして、特定名称酒に類似する用語を使用することをまず禁止するものでございます。これはこの「米だけの酒」と関係するわけですが、今回のこの改正後におきましても、現在市場にあります「米だけの酒」のうち、規格外のお米、先ほどの表の上の方にありました農産物検査法により3等以上に格付された玄米以外のものといったものがございました。それから、米の粉、米粉を原料に使用しているようなもの、こういったものというのは、これは特定名称酒には該当しないということになります。これが約4割近くあるようでございます。
 今回、「米だけの酒」のうち、純米酒に該当するものに表示を認めるわけですが、その純米酒と、この4割近くある純米酒ではないものの、「米だけの酒」、これがあたかも、この表示が純米酒であるかのようになってしまうと、逆に消費者の商品選択に混乱を来すということから、まず表示禁止事項に特定名称の清酒以外の清酒について、この類似用語を使うことを禁止するということを決めるものでございます。
 ただ、一方で、純米酒に該当しない「米だけの酒」も、既に「米だけの酒」ということで表示が使われているわけであります。しかも米だけしか使っていないのも事実でございますから、そうしますと、この米だけの酒というネーミングも全面的に使ってはならんということは、これは規制が強過ぎるといいますか、開発を一生懸命やってきた事業所にとっても過大な負担をかけ過ぎるということになります。そこで、「米だけの酒」の表示の近接する場所に、例えば純米酒の規格に該当していませんといったような、純米酒に該当しない「米だけの酒」であることが消費者に理解できるような表示、これがただし書きにあるわけであります。その場合には、その類似する用語である「米だけの酒」という表示を認めようとすると、こういうことになりまして、消費者に純米酒に該当する米だけの酒と、該当しない「米だけの酒」というのを認識させることができると。消費者の商品選択に資することができると考えておるわけでございます。
 お開きいただいております12ページの参考資料の7でございますが、この表示例で、これは純米酒に該当しないと「米だけの酒」の表示の下の方にございます、「米だけの酒」と表示された商品名の左側に「純米酒の規格に該当していません」と表示されております。このほか、「特定名称の清酒に該当しないことが明確にわかる説明表示」ということで、下の参考の方に、例えばそういったような表示が考えられると。これらの表示に使用する文字は8ポイントの活字以上の大きさとするというようなことでございます。
 検討資料の2ページ以降に新旧対照表をつけております。
 以上が「清酒の製法品質表示基準の一部改正」についてでございます。長くなりましたが、御説明を終わらせていただきます。

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