寺内酒税課長
 それでは、諮問事項であります「清酒の製法品質表示基準を定める件の一部改正」につきましてご説明申し上げます。
まず、参考資料の方からご説明を申し上げます。その後に検討資料にまいりまして、改正事項をご説明いたしたいと思います。
 まず、参考資料をご用意していただきまして、2ページをお開きいただきたいと思います。「清酒の製法品質表示基準」でございます。これは現行のものでございますが、平成元年11月に制定されまして、翌年4月から適用されております。まず、本日ご出席の委員の方々の中には表示基準を初めて御覧になる方もおられるかと思いますので、最初から表示基準を定めるに至った背景につきましてご説明申し上げます。
 昭和63年当時でございますが、清酒につきましては、純米酒、吟醸酒、本醸造酒等の多様なタイプのものが市場に供給されるようになってまいりました。しかしながら、それらの表示につきましては、業界の自主的なルールが置かれているというだけでありまして、消費者からどのような品質のものかよくわからないという声がございました。また、昭和63年度の酒税法の改正によりまして、消費者に長年親しまれてまいりました、いわゆる級別制度が廃止されることとなり、清酒の製法、品質等につきまして、法的なルールの必要性が高まっておりました。
 こうした状況の中で、先ほど御覧いただきましたが、1ページ、昭和63年度の酒類業組合法の改正がございまして、86条の6に、先ほどお話がありました清酒についてもその製造方法、品質に関する基準というのを定めることが一般消費者の商品選択を保護して、ひいては、清酒の安定的な取引の確保にも資するという観点から清酒の製法品質表示基準が定められることになったわけであります。
 2ページの方でございますが、「清酒の製法品質表示基準」、とゴシック体になっている部分がありますが、この部分は後ほどご説明いたします検討資料の方での「清酒の製法品質表示基準の概要」、図にしたものを後ほどご説明申し上げますが、そこに関連する部分でございます。
 ここでは委員の皆様方にいわゆる特定名称酒ということで、例えば「吟醸酒」というものが、「精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの」であるとか、あるいは「純米酒」とは、「精米歩合70%以下の白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの」であるとか、あるいは「本醸造酒」とは、「精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの」であるとか、そういったことがここで書かれているということを、まず、恐れ入りますが、とりあえずご記憶していただければと思います。
 次に、6ページの方の資料の3というのを御覧いただきたいと思います。この6ページの資料の3にございますのは、今般これからご説明いたします表示基準の改正理由の背景の1つとなっております「米だけの酒」というものについての課税移出数量をつけております。これは後ほどご説明いたしますが、次の7ページ、「米だけの酒」というのはどんなものかといいますと、米だけの酒及びこれに類似する商品名ということで、一覧表で掲げてございますが、「米だけの酒」と申しますのは、純米酒と同様に「米、米こうじ及び水のみを原料として製造した清酒」のことでございます。使用した白米の精米歩合が70%を超えるものでございます。現在発売されている米だけの酒の精米歩合は72%、73%、75%といったものが多いわけですが、純米酒の精米歩合であります、70%以下という基準から外れるわけでございます。従いまして、この純米酒という用語を用いることができない普通酒ということになります。この名称のほかに米だけで造った酒ということを強調するために、例えば「米だけのやさしい思いやり」とか「米100%の酒」とか「米と宮水だけの酒」とかそういったような類似する商品が多数あるわけでございます。
 恐縮ですが、再び前の6ページの方にお戻りいただければと思います。6ページの資料3でございますが、こちらの方で「米だけの酒」が、どのくらい世の中に出ているかという課税移出数量ということでございます。「米だけの酒」は醸造設備や製造技術の進歩によりまして、精米歩合75%の白米を原料として造った清酒であっても純米酒の品質に匹敵すると、そういうものが製造できるようになったと言われております。平成11年以降、特に灘地方の大手の清酒メーカーを中心に発売されたものでございますが、その後全国の中小メーカーでも発売されるようになったものでございます。現時点において、日本酒造組合中央会で調べました「米だけの酒」の製造者数は、一番上の方にあります、平成13年度で39社ということでございます。
 次に、2にございます課税移出数量、これにつきましては、13年度の数字でございますが、日本酒造組合中央会の調べでは、全国で1万450キロリットルとなっております。右側に純米酒の課税移出数量がございますが、既に5分の1まで市場規模が拡大をしております。なお、その下の数字は、近畿圏のメーカーの課税移出数量ということで限っておりますけれども、平成11年以降、純米酒の課税移出数量は毎年2割減、純米酒の方を御覧いただきますと12年度、13年度と2割減と大幅に減少してきておりますが、一方、「米だけの酒」の方は伸びておりまして、平成12年度は15%、平成13年度は5%と着実に増加しております。「米だけの酒」は、灘地方のメーカーを中心に発売されているわけでありますが、この表から見ましても近畿圏でその数量が6,243キロリットルあります。こうなりますと、全国のシェアが約1万でございますので、約6割のシェアを占めています。現時点で全国ベースの経年データが手元にございませんので恐縮なのですが、近畿圏のメーカーの課税移出数量のトレンドを見ますと、全国ベースでも市場において今後「米だけの酒」が「純米酒」のシェアに食い込んでいくというようなことになるのではないかと考えられるところでございます。
 このように、「米だけの酒」というのは、今や市場といいますか、消費者に純米酒と変わらないイメージで受け入れられてきているわけでございます。米だけから造った清酒であって、また、市場におきましてあまり品質が変わらないと評価したと思われている清酒につきまして、「純米酒」と「米だけの酒」という名称で市場に混在している形になっています。このことについてどう考えていくかといいますか、どう整理していくべきかと、そういう問題が出てこようかと考えているわけでございます。
 それで、次に、現在私どもが考えております表示の改正事項についてご説明を申し上げたいと思います。検討資料の方を御覧いただきたいと思います。
 検討資料の方の4ページでございますが、こちらの方に「清酒の製法品質表示基準の概要」ということで、先ほど文章でご説明しましたこの基準について、製法、特定名称酒、いわゆる特定名称酒に係る製法品質要件について図に整理いたしました。
 上の方にあります精米歩合と、先ほど来申し上げておりますが、精米歩合と申しますのは、白米、これは玄米からぬか、胚芽等の表層部を取り去った状態のものでございますが、その玄米に占める白米の重量の割合でございます。米の玄米の表層部あるいは胚芽にはたんぱく質、脂肪、ビタミンなどといったようなものが多く含まれておりまして、これが多過ぎますと清酒の香味あるいは色沢を低下させると。そこで、清酒の原料として使うときには精米をしまして、これらの成分を少なくした白米を使用するわけでございます。一般家庭で飯米として使っているお米は精米歩合が大体92%ということでございます。
 なお、この特定名称酒に使用できます白米でございますが、農産物検査法によりまして3等以上に格付けされた玄米、これは、いわゆる「くず米」等を多く含んでいる「等外」「規格外」の米を除くためでございます。
 左側の方を御覧いただきまして、醸造用アルコールの添加率という欄がございます。現行基準におきましては、特定名称酒は当該アルコールの重量が白米の重量の10%を超えない、10%以内のものとなっております。
 アルコールは古くから酒の香味を整え、酒質を強化するという目的で使用されてきておりますが、アルコール使用量をどの程度にすれば吟醸酒または本醸造酒と呼ぶにふさわしい清酒となるかというのは確立した概念があるわけではありませんが、専ら長い間の酒造りの経験によってこういう形に決められてきたものでございます。
 そこで、この図の中身の方でございますが、吟醸酒の精米歩合につきましては、清酒業界の自主的な基準において長年、これを御覧いただきますと、60%以下ということになっております。この程度、60%ぐらいに米を削っていけばいわゆる吟醸造り、低温発酵していけば固有の吟香を持つ吟醸酒として満足できる品質のものが得られると、経験的に判断されたので60%以下というふうになっています。
 他方、純米酒の方でありますが、あるいは本醸造酒、これは一定の品質を保持するためには精米歩合は70%以下が適当であると考えられたわけでございます。従いまして、米だけで造った清酒でありますが、精米歩合が70%超のものは先ほど申し上げましたとおり「普通酒」となりまして、先ほどから申し上げております「米だけの酒」というものは、現行の規定ではこのカテゴリーに入ってくるわけでございます。
 なお、吟醸酒のうち、米、米こうじ及び水のみを原料として製造したものにつきましては、特に「純米吟醸酒」の用語を用いることができます。また、純米吟醸酒のうち精米歩合が50%以下の白米を原料として製造したものについては、「純米大吟醸」の用語を用いることができることとなっております。
 それから、次に表示基準の改正事項についてご説明を申し上げます。次のページの方、資料の2−3でございますが、「「清酒の製法品質表示基準」の改正事項」として考えているものでございます。まず、1番目の改正事項でございます。この改正内容の背景には1つは製造技術等の進歩によりまして、精米歩合70%超の白米を使用して製造した清酒であっても、精米歩合70%以下の純米酒に匹敵する「米だけの酒」のようなものが製造されるようになってきました。市場において、これらが混在して、その内容の違いが消費者にとってもわかりにくいと。あるいは製造者にとっても、その特徴について客観的な説明が困難になっているという状況がございます。
 それから、2つ目には、清酒の製造技術、これが著しく進歩を遂げているという中で、一般的に精白歩合を上げることが即品質向上につながるという考え方は必ずしも通用しなくなってきている。むしろ米が原料であるという特徴を生かして、各地の生産者によって特色のある純米酒が造られることが求められているということがございます。
 それから、もう一つとして、特定名称酒の要件というのは、これはあくまで原材料の製法の仕様を定めているものでございます。その品質の善し悪しというものが基本的には消費者の判断にゆだねられるものであると。こう考えますと、その要件は、消費者の商品選択に対してこれに中立的であるべきだという考え方もございます。
 こうした観点から改正内容につきましては、「米だけの酒」を「純米酒」のカテゴリーに包含するという形で、70%という精米歩合の制限を廃止することとしたいと考えております。ただし、精米歩合を廃止することによりまして、今度は一方で、消費者のこれまでの商品選択の判断基準の1つであります精米歩合の表示が全くなくなってしまうというのもどうかと考えられますので、新たに精米歩合の表示を義務づけることとするということでございます。
 なお、実際に精米歩合を表示するに当たっては、できるだけ消費者にわかりやすくするように、1%単位あるいは5%刻みで表示するということにしてはどうかと考えております。例えば、66%から70%の場合は「70%以下」、71%から75%の場合は「75%以下」といった表示をしてもよいという考え方でございます。これは例えば複数の精米歩合の異なる原料を使用する、あるいは複数のタンクの清酒をブレンドするといった場合に、例えば加重平均して表示をしてもよいということもあるわけでありますけれども、そうした場合も含めて消費者のわかりやすさということを考慮したものでございます。
 次に2番目の改正事項の方で、四角の2つ目でございます。これは特定名称酒について清酒本来の酒質を確保するため、すべての特定名称酒についてこうじ米の使用割合を白米使用量の15%以上にするという制限を新たに義務づけるものでございます。清酒の醸造が米と水を原料といたしまして、こうじによって米のでんぷんがブドウ糖になります。糖化と申しますが、また、酵母によってそのブドウ糖からアルコールになるという、糖化と発酵が同時に行われる、ほかの酒に類のない「並行複発酵」というものでございます。その意味で、こうじは清酒製造には欠かせないものでございます。同時に、こうじ菌の代謝物でありますビタミン類等は酵母の栄養源になるとともに、清酒特有のいわゆるうまみとかコクを構成するものになるわけであります。
 このようにこうじは清酒の製造には欠かせないものでございますので、やはり品質低下ということを防止する、あるいは一定の品質を確保するという観点から新たに特定名称酒全体にこうじ米使用割合の要件を設けるということを考えております。
 この15%という数字でございますが、清酒もろみの糖化というのが、こうじの生産する酵素であるアルファ・アミラーゼなどのこうじの酵素力、酵素力価でございますね、その力価に左右されます。通常こうじでは15%以上使わないと酵素力価というのが不足して、糖化がうまくいかない可能性があるというふうに言われております。また、杜氏の長年の経験則というのもございまして、こうじ米の使用割合を15%以上とすれば清酒本来の酒質を一応満足できるという清酒ができると言われております。
 また、各国税局の鑑定官室におきましても、鑑評会や醸造技術等の指導の際に把握したデータにおきましても、最小値というのが、ほぼ15%であるということでございます。
こういったことからこうじ米の重量はもろみに使用する白米重量の15%を下限といたしました。
 以上で、本日の「清酒の製法品質表示基準の一部改正」についてご審議をいただくに際しまして、ご用意いたしました資料の説明を終わらせていただきます。

田島分科会長
 ありがとうございました。
 では、この件につきましてのご質問・ご意見等ございましたら、どうぞご自由にご発言をお願いしたいと思います。どうぞ、どなたからでも結構でございます。

立石委員
 よろしいですか。いま一つ飲み込めないんですけどね、これは5ページの60、75、70以下と3つに分かれておりますね。このうち70%の制限を廃止して従来の50%と60%というものはそのまま残ると、こういうふうに理解すればよろしいわけですか。

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